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Wine Memo <32>
Hermann J. Wiemer, Cabernet Franc 2018. NYでのソムリエ修行時代、とにかくギリギリの生活をなんとか乗り切っていた私は、アメリカという大ワイン産出国に住んでいたにも関わらず、産地訪問をすることがほとんどできなかった。 今思えば、実にもったいないことをしていたと思うが、そもそも東海岸のNYからカリフォルニア州へと飛ぶのにも相当お金がかかるし、車も運転できず、無名のソムリエだった私には、ワイナリーに迎えに来てもらうなどという発想もなかった。 そんな中で、私にとって 人生で初めてのワイナリー訪問 となった場所は、今回Wine Memoで紹介するNY州フィンガーレイクの Hermann J. Wiemer だった。

梁 世柱
2月7日


再会 <76> メルローの掘り出しもの
Castellina, Daino Bianco 2019. ¥5,000

梁 世柱
2月3日


出会い <75> ハイコスパピノを求めて
Mound Edward, Ted Pinot Noir 2022. ¥4,350 世界的なワイン価格の高騰が止まらない中、我々の日常生活から最も遠いところへ行ってしまった品種は、おそらく ピノ・ノワール だろうか。 その原因は、兎にも角にも ブルゴーニュ にある、と考える人がほとんどだと思うが、それは 半分正解 と言ったところ。 確かに、ブルゴーニュが(特にコート・ド・ニュイ赤)なかなか天井が見えない高騰を続けているため、その価格に世界各地のピノ・ノワールが引っ張られている側面はある。 しかし、そもそも ピノ・ノワールという葡萄の性質 を理解してみると、 別の理由 も見えてくるのだ。

梁 世柱
1月27日


再会 <75> バックヴィンテージ定点観察の楽しさ
Sato Wines, Pinot Noir “Northburn” 2017. 同じワインを、新しいヴィンテージが出るたびにテイスティングすることは、ワインを深く理解していく上で、非常に大切だ。 ヴィンテージごとに全く異なる気象条件と、それらが最終的なワインに及ぼす影響を理解するという目的は当然だが、造り手の変化や進化に加え、「本質的に変わらない」テロワールを知る上でも、定点観測は大切になる。 しかし、 同じボトルを年月を跨いでテイスティング をする、という別の定点観測は、なかなか環境は整わないと難しい。 そもそも、「それをやり出したらキリがない」というのもあるが、コンディションを保つためのセラーリングも、それに必要なスペースも、用意するのは簡単ではない。

梁 世柱
1月20日


SommeTimes’ Best Performance Award 2024
本年もついに大晦日を迎え、また一年の締めくくりとなるBest Performance Awardの選出をする時がきた。 例年通り、選出基準は単純な価格でも味わいでもなく、その総合評価であり、さらにその中でも印象に強く残っているワインから、これぞというものを選出させていただい...

梁 世柱
2024年12月31日


出会い <74> 新世代ナチュラルボルドーの楽しさ
Marius Bielle, Pigalle 2021. ¥4,600 ボルドー といえば、 クラシックワインの殿堂 。 それは基本的に正しい見解だ。 左岸と右岸にそれぞれ存在する様々な 公式格付けシステム は、まさにその象徴であるし、大衆の多くは、確かにボルドーに 「格式」 を求めている。 それでもなお、多様性が広がる時代のうねりは止められない。

梁 世柱
2024年12月23日


Wine Memo <31>
Inglenook, Edizione Pennino Zinfandel 2019. ¥9,900 ジンファンデル はなかなか興味深い葡萄だ。 長らく 南イタリア・プーリア州のプリミティーヴォ種 と同品種という紹介が主流だったが、DNA解析によって、その源流が クロアチアのマイナー品種 である ツーリエンナーク・カーステラーンスキー (もしくは トリビドラーグ )にあると判明してからは、説明文に少々変化が起きた。 少々煩わしい。 ツーリエンナーク・カーステラーンスキーと言われても、名前も覚えにくく、味わいの想像もつかない。

梁 世柱
2024年12月21日


再会 <74> もう一つの、シャネルのボルドー
Château Canon 2021. 前回の再会 <73>では、 シャネル が1994年に取得し、長期計画で改革を行なった シャトー・ローザン=セグラ を取り上げたが、シャネルがボルドーに所有する最高レベルのシャトーは、もう一つある。 ボルドー右岸 サン=テミリオン 地区の、 シャトー・カノン だ。 シャトー=カノンが辿ってきた道のりもまた、シャトー・ローザン=セグラと良く似ている。 シャトー=カノンはサン=テミリオン公式格付けにおいて、 グラン・クリュ・クラッセB に格付けされてきたが、その評価は決して安定したものではなかった。

梁 世柱
2024年12月9日


出会い <73> 魔法のサンジョヴェーゼ
Chiara Condello, Predappio Sangiovese 2021. ¥4,500 サンジョヴェーゼ といえば、 イタリア・トスカーナ州 。 その地位と名誉と実力は、確かに揺るぎないものだ。 Chianti Classico 、 Brunello di Montalcino 、 Vino Nobile di Montepulciano 。サンジョヴェーゼの象徴たる三つの産地は、まるで不可侵の聖域が如く、色褪せない輝きを放ち続けている。 私自身、サンジョヴェーゼには強い関心と愛情を注いできたため、三大銘醸地に限らず、トスカーナ州以外やニューワールド諸国も含め、様々な産地のワインをテイスティングしてきたが、心の琴線に深く触れるワインは見つからなかった。 Chiara Condello と出会うまでは。

梁 世柱
2024年12月1日


再会 <73> シャネルのボルドー
Château Rauzan-Ségla 2021. ボルドーというワインが品質向上を果たすには、とにかく 時間とお金 がかかる。 相当な量で生産されているにも関わらず、価格が高い傾向にあるのは、 投資金の回収が大変だから という側面もかなり大きいのだ。 しかし、本腰を入れて、忍耐強く、優れたテロワールで品質改革を行えば、 「結果」 が付いてくる、というのもボルドーの面白いところだろうか。 過去に長らく低迷していたワインが大復活を果たした例も、実際に多くあるのだ。

梁 世柱
2024年11月25日


Wine Memo <30>
Tsukuba Winery, Twin Peaks Marselan 2022. ¥4,900 温暖化 を見据えて、 ボルドー を名乗れる品種として新たに認可された6種の葡萄。 黒葡萄は、マルスラン、トゥリガ・ナシオナル、カステット、アリナルノア。 白葡萄は、アルヴァリーニョとリリオリラ。 トゥリガ・ナシオナルとアルヴァリーニョは比較的良く知られた品種だが、その他はかなりマイナー。 黒葡萄のカステットは元々ボルドー近辺の絶滅危惧種。マルスランとアリナルノアは交配品種。白葡萄のリリオリラも交配品種だ。

梁 世柱
2024年11月23日


出会い <72> カルト・シャンパーニュ
Brigitte Fallon, Millesimé 2014. ¥18,000 私がワインを学び始めた20年と少し前の頃は、シャンパーニュと 「カルト」 というワードが結びつくことは、ほとんど無かったように思う。 ジャック・セロス 、 エグリ・ウーリエ などの レコルタン・マニピュラン(RM) ブームがすでに押し寄せてはいたが、RMとはいえ、 それなりの生産量はあった ため、全く手に入らないというほどのものでも無かった。 それから5年が経ち、10年が経った頃のタイミングから、どうも様子が異なり始めたと感じたのを、今でもはっきりと覚えている。 そう、カルト・シャンパーニュとでも呼びたくなるような 極少量生産型のシャンパーニュ が、続々と市場に出現し始めたのだ。

梁 世柱
2024年11月18日


再会 <72> カジュアルフレンチの救世主
Domaine Cauhapé, Jurançon Sec “Quatre Temps” 2020. ¥3,500 高騰を続けるワインの世界に救いはあるのか。 新型コロナ禍直前に比べると、複合的な理由から、平均して1.3~1.5倍の高騰となってしまった中、 新たなカジュアルワインの発掘 は、日本のワイン市場にとって、死活問題となっている。 特に、ブルゴーニュ、シャンパーニュ、ボルドーだけでなく、アルザス、ロワール、ローヌ、ジュラなどの産地にも高騰の大波が押し寄せているフレンチワインは、(不思議なことに、超高価格帯だけは堅調だが)我々の日常から、急速に遠ざかろうとしている。

梁 世柱
2024年11月10日


出会い <71> もう一つの大銘醸地
Prieler, Ried Steinweingarten 2022. ピノ・ブラン は 「偉大なワイン」 となれるのだろうか。 おそらく、100人のワイン好きに訊ねても、Yesと答える人は1人いるかいないか、だろう。 それもそのはず。 そもそも、 ピノ・ファミリー の中では圧倒的にピノ・ノワールの知名度と人気が高く、ピノ・ブランは実質的に、ピノ・ノワールの劣化版亜種のような扱いを受けている。 さらに、 ピノ・ブランが一般的に最も良く知られている産地 は、 フランスのアルザス地方 だと思うが、そのアルザスにおいても、ピノ・ブランは主役の座からは程遠く、高貴品種には同じピノ・ファミリーであるピノ・グリが名を連ねている。

梁 世柱
2024年11月4日


Wine Memo <29>
Smallfry Wines, Gewurz Bomb 2022. ¥4,000 オレンジワイン は楽しい。 白ワインとして、長年にわたって練り上げられてきた、 「クラシックな佇まい」 とやらが、オレンジワインになった瞬間から、 様変わり するからだ。 白ワインの常識は、オレンジワインには通用しない 。 もしかしたら我々は、白葡萄の数だけ 「学び直し」 が求められている時代を生きているのかも知れないが、その分だけ楽しさが増えたと思えば、なんてことはないだろう。

梁 世柱
2024年11月3日


再会 <71> シャブリの黄金時代
Alice et Olivier de Moor, Chablis l’humeur du temps 2022. ¥6,600 ワインを学び始めた頃、白ワインの「基本中の基本」として、 シャブリ を知った人は多いだろう。 シャープな酸 が持ち味の、 淡麗辛口型白ワインの典型 。 シャブリというワインをそう教わったはずだ。 しかし、近年の気候変動により、その 「シャブリらしさ」は随分と影を潜め始めている 。酸はまだなんとか高いレベルで維持できているが、 フルーツの性質が明らかに「淡麗」の域を超えてきている のだ。 近年では、 遅霜の被害による収量の激減 と、ブルゴーニュ全域を襲う 価格高騰 で、「安くて美味しいワインの代名詞」だったシャブリが、すっかり 非日常のワイン になってしまったことを嘆く声が多く聞かれる。 確かに、シャブリが昔のままの酒質で、価格だけが高騰したのであれば、その嘆きも仕方のないことと思うが、実際には少し様子が異なっていることに、一体どれだけの人が気付けているのだろうか。

梁 世柱
2024年10月28日


出会い <70> ノーマークだった、極上シャルドネ
Markus Altenburger, Ried Jungenberg Chardonnay 2022. 完全にノーマークだった産地と葡萄品種の組み合わせに、心底驚かされることが時々ある。 そのような発見は、ワインを広く深く探究していくことの、 最大の醍醐味 の一つだ。 今回の「出会い」ワインは、 オーストリア・ブルゲンラント州 で、ブラウフレンキッシュやツヴァイゲルトを集中的にテイスティングする最中で出会った、 驚異的なシャルドネ 。 このシャルドネが育まれたのは、 Leithaberg DAC 内の小地区である Jois(ヨイス) 。ノイジードル湖の北端から北、ライタ山脈の麓に広がる、 Leithaberg最東端のエリア だ。

梁 世柱
2024年10月20日


再会 <70> ポルトガルの至宝
Casa Ferreirinha, Douro Reserva Especial 2014. 現地価格約€280 日本は世界で最も成熟したワイン市場の一つだが、「なんでもある」というわけでもない。 低価格〜ある程度の高価格帯までであれば、十分過ぎるほどのバリエーションで世界各地から集められているが、実は、意外なほどに 最高級クラスには穴がある 。 その「穴」の代表的なものの一つが、 ポルトガル最高峰の赤ワイン として、あの分厚い教本にもその名が載っている、 Casa FerreirinhaのBarca Velha だ。 1952年 に誕生したBarca Velhaは、現在に至るまで、 僅か21ヴィンテージ しかリリースされていない。 最新ヴィンテージ は2024年の7月にリリースされたばかりの 2015年 で、その前は2011年、そのさらに一つ前は2008年ヴィンテージだった。 非常に興味深いことに、 Barca Velhaは単一畑ワインではない 。 標高120~280mにあるQuinta de Ledaの畑からのセレクションと、標高650m

梁 世柱
2024年10月13日


出会い <69> サントリーニ島の赤ワインとは
Gavalas, Mavrotragano 2020. ¥9,800 マイナー品種特有のクセの強さは、一度その世界に魅了されてしまうとなかなか抜け出せないほど楽しさに満ち溢れたものだが、特に絶滅危惧種ともなると、興味は尽きないものだ。 かつてはヨーロッパ大陸のあらゆる場所に、個性豊かな地品種が数えきれないほど多く根付いていたが、その多くはすでに絶滅、または絶滅に瀕している。 直接的とも言える原因は、ワインを真剣に学んだことがある人なら、一度はその名を耳にしたことがあるであろう、史上最悪の害虫 フィロキセラ だ。 フィロキセラ(和名:ブドウネアブラムシ)は、葡萄樹の根や葉に毒を注入してコブのようなものを生成することによって、葡萄樹の生育を著しく阻害し、最終的には枯死にいたらせてしまう昆虫の一種。 1845~1858年の間、当時は未知の病害であった「うどんこ病」への対応に追われ、すっかり疲弊していたヨーロッパのワイン産業を、フィロキセラが襲い始めたのは、1863年のこと。

梁 世柱
2024年10月6日


再会 <69> マイクロ・グローワー・シャンパーニュの世界
Domaine de Bichery, Champagne “la source” NV (2020). ¥10,000 シャンパーニュの在り方、というのは随分と変化してきた。 かつては、大手メゾンが文字通り「全て」と言いたくなるほど牛耳っていた時代もあったり、ジャック・セロス、エグリ・ウーリエなどの人気に引っ張られたレコルタン・マニピュランのトレンドがあったり、サロンやジャクソンなど、超大手とレコルタンの中間的規模のシャンパーニュが注目を集めたり。 なかなか目まぐるしい変化だが、ただ一つ変わらないのは、 どのようなトレンドが押し寄せても、シャンパーニュが偉大な飲み物である、ということ だ。 そして、過去10年間のトレンドとなっているのは、 従来の一般的なレコルタンよりも更に小規模な、マイクロ・レコルタン、もしくはマイクロ・グローワーとも呼ばれる、超小規模生産者 たち。 もちろん、その生産量の少なさもあって、セールス面では大手メゾンに遥か遠く及ばないが、マイクロ・グローワーが激増したこともあって、 「集の力」 が働き始めているのだ。...

梁 世柱
2024年9月29日
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