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韓国伝統酒の奥深き世界 Part.3
Part.3では、 韓国訪問時に実際にテイスティングしたマッコリを解説していこう。 なお、国内流通用のボトリングであることから、ほとんどのマッコリが韓国語でのラベル表記となっていたので、銘柄名は表記せず、写真を追う形で紹介していく。 また、今回の試飲は、Namsun Sool Clubというスル専門のバーにて行った。 試飲したマッコリの共通点としては、フレーバードの有無に関わらず、保存量、調整剤的な添加物を使用していない、伝統製法マッコリのカテゴリーに該当するという点だ。 写真左 どぶろくに限りなく近い、非常に分厚くクリーミーな濁り具合。 ヴァニラ、洋梨を思わせる風味は程よい甘さを感じさせ、わずかなタンニンが輪郭をもたらしている。濃厚だが、不思議なほど軽やかなに楽しめる逸品。 写真右 軽快でフレッシュ感に優れたタイプ。柑橘類を思わせる鋭い酸味や、スパイス感が非常に個性的。甘さを感じさせる要素は皆無に等しく、マッコリとしては際立って辛口の仕立てとなっていた。

梁 世柱
14 時間前


韓国で芽吹く、驚きのクラフトビールシーン
韓国を久々に訪れた目的は、伝統酒(スル)のリサーチにあったのだが、ライフワークの一環として、気分転換に韓国産のクラフトビールを口にしたとき、強烈な衝撃を受けた。 ご存知の通り、日本でもクラフトビールの熱狂は長く続いており、「クラフトな」ビールを醸造するブリュワリーもまた、雨後の筍が如く急増し続けている。 私自身、非常に深い興味をもっているエリアであるため、日本産のクラフトビールは相当な数をテイスティングしてきているが、実は心から美味いと感じるクラフトビールは決して多くない。 ただし、ここはあくまでも私の主観によるもの、と前置きしておいた方が良いだろう。

梁 世柱
11月17日


韓国伝統酒の奥深き世界 Part.2
Part.2では、韓国伝統酒(スル)の中で、マッコリ以外の主要なものを解説していこう。 チョンジュ 漢字(韓国ではすでに漢字の公的使用が実質的に廃止されている)では 「清酒」 と書くチョンジュは、 マッコリを濾した後の上澄みだけを抜き出したスル である。 つまり、マッコリはどぶろくと、チョンジュは日本の清酒とシンクロするような関係性にある。 マッコリに比べると遥かにマイナーな存在ではあるが、古代三国時代(4~7世紀)の文献にはすでに、宮廷で濁酒と清酒を使い分けていたと記述されているため、歴史は非常に古い。 李氏朝鮮王朝時代(14末〜19世紀末)には、ポプジュ(法酒)と呼ばれた宮廷専用のチョンジュが重用され、特にキョンジュ(慶州)で造られたものは、キョンジュポプジュと呼ばれて名を馳せた。

梁 世柱
10月26日


韓国伝統酒の奥深き世界 Part.1
韓国で活躍する同業のプロフェッショナルたちから、何度も何度も聞かされていた。 韓国国内には、驚くべき品質の マッコリ、ソジュ、薬酒 (韓国ではこれらの総称として、 「スル」 という言葉が用いられる)が存在していると。 しかしそれら韓国の歴史深い国酒に対して、日本では韓国料理店や焼肉店における、「安価な選択肢」としてしか、市場が開かれていない。 市場が無いなら、当然輸入も著しく制限される。 つまり、最上のマッコリやソジュを体験するためには、韓国へと行くしか無かった。 なかなか機会を作ることができなかったが、今回12年ぶりに韓国を訪問することができたため、スルの集中テイスティングを行なった。

梁 世柱
10月18日


進化するAIとワインの学び Part.4
ChatGPTなどの生成AIが世界の在り方を変え始めてから、数年が経った。 初期の頃は、ハルシネーションと呼ばれる、事実に基づいていないが、もっともらしい誤情報を生成してしまう現象があまりにもひどく、本格的なリサーチにはまだ到底使えるような代物ではなかったのだが、進化著しい分野だけに、定点観測は行ってきた。 Part.4では、 品種と価格帯指定をして、より広範囲のおすすめをChatGPT5に訊ねる という検証を行った。 指示 「ワインショップにおける小売価格3000円代で、おすすめのピノ・ノワールと生産地の組み合わせを教えてください。」

梁 世柱
10月3日


進化するAIとワインの学び Part.3
ChatGPTなどの生成AIが世界の在り方を変え始めてから、数年が経った。 初期の頃は、ハルシネーションと呼ばれる、事実に基づいていないが、もっともらしい誤情報を生成してしまう現象があまりにもひどく、本格的なリサーチにはまだ到底使えるような代物ではなかったのだが、進化著しい分野だけに、定点観測は行ってきた。 Part.3では、私の専門分野である ペアリング を題材にするという、禁じ手とも言える検証を行う。 指示1 「辛口のカレーライスに合うワインをおすすめしてください。」

梁 世柱
9月23日


進化するAIとワインの学び Part.2
ChatGPTなどの生成AIが世界の在り方を変え始めてから、数年が経った。 初期の頃は、ハルシネーションと呼ばれる、事実に基づいていないが、もっともらしい誤情報を生成してしまう現象があまりにもひどく、本格的なリサーチにはまだ到底使えるような代物ではなかったのだが、進化著しい分野だけに、定点観測は行ってきた。 Part.2では、 飲食店や酒販店における現場で十分にあり得るシチュエーション に対して、2025年9月時点のChatGPT5が、どのような答えを示すのか検証してみよう。 指示1 「普段はカンパリオレンジやモスコミュールを好む25歳の女性に対して、白ワインをおすすめしてください。」 ChatGPT5による回答は以下の通り。 カンパリオレンジ(ビターでオレンジの爽やかさ)やモスコミュール(ライムとジンジャーのすっきり感)を好む25歳女性におすすめする白ワインでしたら、「爽やかさ」「柑橘系」「苦味やスパイシーさとの相性」を軸に選ぶと良いと思います。

梁 世柱
9月16日


オールド・ボトリング・ウィスキー
ウィスキーは、 樽から瓶へと移された瞬間に「成長が止まる」 。 つまり、瓶詰め後のウィスキーには、 瓶熟という概念が無く、風味の変化は起こらない 。 それが、ウィスキーに関して教わる 一般的な常識 である。 しかし、果たしてそれは真実なのだろうか? 少なくとも私が体験してきた限りでは、常識通りとはいかないように思える部分がある。 同じ銘柄でも、30年前のオールド・ボトリングと現行ボトリングとでは、味が違うことが多い。

梁 世柱
9月14日


進化するAIとワインの学び Part.1
ChatGPT などの 生成AI が世界の在り方を変え始めてから、数年が経った。 初期の頃は、 ハルシネーション と呼ばれる、 事実に基づいていないが、もっともらしい誤情報を生成してしまう現象 があまりにもひどく、本格的なリサーチにはまだ到底使えるような代物ではなかったのだが、進化著しい分野だけに、定点観測は行ってきた。 2025年9月時点の ChatGPT5 が、ワインの学びにおいてどれほど有益となり得るかを検証してみよう。 ChatGPT5に出した指示は、 「以下に挙げるワインの、色調、香り、味わいを表現する。」 だ。 最初の指示は、十分に簡単と思われる 「NZ・Marlboroughのソーヴィニヨン・ブラン」 。 ChatGPT5による回答は以下の通り。 Marlborough, Sauvignon Blanc 色調 淡いレモンイエロー。若々しく輝きがあり、わずかに緑がかったニュアンスを帯びる。透明感が強く、フレッシュさを視覚的に印象づける。

梁 世柱
9月5日


欠陥的特徴の経過観察 <6>
期間限定の新シリーズとなる「欠陥的特徴の経過観察」では、とあるナチュラルワインに生じた問題が、どれくらいの時間で「沈静化」(経験上、完全消失する可能性は低い)、もしくは変化するのかを、約2ヶ月おきに検証していく企画としてスタートした。 前回検証時(2025年1月3日)には、欠陥的特徴のほぼ完全な沈静化を確認できたため、今回は味わいを中心に検証を行う。 本企画の検証対象となるスパークリングワインは、同ケースのロットで11本入手したため、本来ならば瓶差という可能性は極限まで排除できていると考えて良いが、それでも十分な亜硫酸添加によって、菌類、微生物類の活動を最小限まで低減、かつ平均化させたワインではないため、その「誤差」はより大きくなる傾向にある。 検証対象とする欠陥的特徴の項目は、揮発酸、還元臭、ブレタノミセス、ネズミ臭とし、五段階評価(1が最も弱く、5が最も強い。)で記録していく。 また、ネズミ臭に関しては、抜栓後に欠陥が顕在化したタイミングも合わせて記録していくこととする。 *各欠陥的特徴の詳細は、 過去記事 をご参照いただきたい。

梁 世柱
5月15日


ナパ・ヴァレーのエレガンス <Screaming Eagle>(特別無料公開)
世界に名だたる銘醸地 ナパ・ヴァレー でも、最も カルト的 と言えるステータス。 ボルドー左岸メドック地区公式格付け第一級シャトーを遥かに上回り、 シャトー=ペトリュスにすら迫る販売価格 。 有力評論家による、複数回の 満点評価 。...

梁 世柱
2月8日


偉大なるメルロー Masseto
かつて、 スーパートスカン(タスカン) と呼ばれる数々のワインが世界のワイン市場を席巻するほどの大ブームとなった頃、その 頂点に2つのワインが鎮座 していた。 一つは テヌータ・サン・グイドが手がけるサッシカイア 。1985年ヴィンテージがワイン・アドヴォケイト誌で満点を獲得したことをきっかけに、イタリア産カベルネ・ソーヴィニヨン・ブレンドの象徴となった銘柄だ。 もう一つに関しては、多少の異論はあるかも知れないが、アンティノリ一族が手掛ける オルネライア ではなく、同じオルネライアのスペシャルなメルローのキュヴェとなる、 マッセート がその地位に相応しいだろう。

梁 世柱
1月18日


欠陥的特徴の経過観察 <5>
「欠陥的特徴の経過観察」では、とあるナチュラルワインに生じた問題が、どれくらいの時間で「沈静化」、もしくは変化するのかを、約2ヶ月おきに検証していく企画としてスタートした。 前回検証時(2024年9月21日)では、2本を同じタイミングでテイスティング、2本ともに、揮発酸、還元臭、ブレタノミセスが複雑性の一部となり、高い次元のバランスに至っていた。 本企画の検証対象となるスパークリングワインは、同ケースのロットで11本入手したため、本来ならば瓶差という可能性は極限まで排除できていると考えて良いが、それでも十分な亜硫酸添加によって、菌類、微生物類の活動を最小限まで低減、かつ平均化させたワインではないため、その「誤差」はより大きくなる傾向にある。

梁 世柱
1月13日


熟成ドン・ペリニョンの妙
リリース後に長期熟成したシャンパーニュ には、 ロマン が宿る。 想像を遥かに超えた喜びも、その逆の絶望も。 経験上、長期瓶熟シャンパーニュは ギャンブル性が非常に高い 。 だから、ロマンなのだ。 その理由は明確だ。 シャンパーニュに 正しい熟成 をもたらすものが、 低温静置環境 であることは、意外なほどに見逃されているのかもしれない。

梁 世柱
2024年12月13日


ナパ・ヴァレーの宝石、Inglenook
Inglenook の名を見た時、カリフォルニアワインファンは、随分と複雑な気持ちになるのだろうか。 かつて、 ジョン・ダニエルJr. という天才の元に栄華を誇ったInglenookは、長らくの間、高品質ワインとはかけ離れた大衆ブランドへと成り下がっていたからだ。 私も一度だけ、 1954年ヴィンテージのInglenook Cask Cabernet Sauvignon を口にしたことがある。 そのワインは、まるで時が止まったままかのように若々しく、優美で奥深い味わいだった。 一生の記憶に残るワイン。 そう言い換えても良いだろう。 1879年 に、 フィンランド人の大富豪グスタフ・ニーバム によって設立されたInglenookは、1908年にグスタフが急逝した後、禁酒法時代には一度閉鎖されたが、1933年にグスタフの未亡人となったスザンヌ・ニーバムの手によって再建され、グスタフの又甥にあたるジョン・ダニエルJr.がワイナリーを引き継いでから、 ニューワールドワインの歴史に残る偉大な黄金期 へと入った。

梁 世柱
2024年12月9日


正確無比なテロワール・シャンパーニュ <Penet-Chardonnet>
マイクロ・シャンパーニュ の世界が、以下に奥深い魅力に満ちているのかは、SommeTimeでも度々言及してきたが、今回は グラン・クリュにのみ葡萄畑を所有 しているという、非常に極端なタイプのマイクロ・シャンパーニュを紹介しよう。 その名も Penet-Chardonnet だ。 400年以上葡萄栽培をしてきたPenet-Chardonnetは、 Verzy と Verzenay に合わせて 25の小区画 、合計 約6haの葡萄畑 を所有している。 さらに、Penet-Chardonnetでは、 5種もの単一区画シャンパーニュ をリリースしているのだ。

梁 世柱
2024年11月30日


Sonoma Coast の可憐なリースリング
日本人女性オーナー兼醸造家としては、カリフォルニアで唯一無二の存在。 アメリカ合衆国の大統領や副大統領が主催する、国賓をもてなす晩餐会での採用。 輝かしい実績と人気を誇る Freeman Winery が、新たにポートフォリオに加わった リースリング...

梁 世柱
2024年11月18日


二人の名醸造家が語る、偉大なテロワールの条件
先日、個人的に親しい友人でもある醸造家の サシ・ムーアマン と会いに、東京・広尾にあるルグラン・フィーユ・エ・フィス東京を訪れたところ、思わぬ事態に遭遇した。 何とその場に、ブルゴーニュ・Volnayに拠点を置く大銘醸 Domaine de Montille の現当主、 エティエンヌ・ド・モンティーユ もいたのだ。 サシ・ムーアマン は、カリフォルニア州ではSandhi、Domaine de la Côte、そしてPiedrasassiというプロジェクトで、オレゴン州ではEvening Land Vineyardsで中核を担っている。ヨーロッパのクラシックワインに対する深い造詣とリスペクトをバックグラウンドに、アメリカ合衆国におけるニュークラシックを打ち立てた、現代を代表する醸造家の一人だ。 一方の エティエンヌ・ド・モンティーユ は、本拠地ブルゴーニュのDomaine de Montilleに加え、カリフォルニア州のSta. Rita Hills(Sandhi、Domaine de la Côteと同じ)ではRacinesというプロ

SommeTimes
2024年11月8日


常識を打ち破る、現代シャンパーニュの至宝 <Ulysse Collin>
形骸化し、風化し、ついには消滅した エシェル・デ・クリュ を惜しむ声は、どこからも聞こえてこない。 有名無実のシステムを自ら破壊し、シャンパーニュが確かな「意味性」へと舵を切ったのが英断であることは、誰の目から見ても明らかだからだろう。 「生まれ」で全てが決まり、決して覆されることはない。 そのアイデアが邪であることなど、21世紀にわざわざ論じるまでもない。 しかし実際には、大手シャンパーニュメゾンが手がける「プレステージ・キュヴェ」は、その大部分が旧Grand Cruのフルーツで構成されている。 ラベル上にも、Grand Cruの記載は認められたままだ。 だからこそ、改めて問われている。 シャンパーニュにおける、ヒエラルキーの正体とはなんなのか、と。 Grand Cruを旗として掲げることに、意味はあるのか、と。 エシェル・デ・クリュには深刻な問題がいくつもあった。 「固定された葡萄の買取り価格」は、確かにその最たるものの一つだが、その 分かりやすい問題点こそが、本当の矛盾を雲隠れさせてしまっていた 。

梁 世柱
2024年10月26日
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