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出会い <94> 日本ワインの新たな方程式
The Rias Wine, Albarino 凪 2024. ¥3,200 日本における現在進行形のワイナリー設立ブームには、不安を覚える側面も多くあるが、希望の光も同時に多く見えている。 その最たる光とは、 フランス系国際品種偏重からの脱却 だ。 そもそも、ヨーロッパの中には、日本のワイン産地と気候条件がある程度近しい産地が、フランス以外にそれなりにある(むしろ、フランスの中にはあまり無い。)のだが、1980年代以降の日本ワインの発展は、実質的にフランス系品種に支配されてきた。 醸造用ブドウは、ちゃんと熟してこそ、真に意味性をもつ。 適していないテロワールで無理やり育てられ、結果としてしっかりと熟していない葡萄から造られた、密度が極端に低く薄いワインに、「日本らしさ」という言い訳を覆い被せるのは、実にナンセンスだと私は常々主張してきた。

梁 世柱
1 日前


再会 <94> 見つからない伝説
Valentini, Montepulciano d’Abruzzo 2012. この世界に 「伝説」 とされるようなワインは、意外とたくさんある。 そして、その多くは、伝説と呼ばれる割には、簡単に探し出すことができる。 ただし、プレミア価格がついて二次市場で高額取引されるケースが残念ながら非常に多いため、実際の問題は、見つかるかどうかではなく、その対価を払えるかどうか、になるのだ。 もし誰かが私に、ロマネ・コンティを探して欲しいと頼んできた場合、ヴィンテージと価格にさえ縛りがなければ、数分もあれば探し出すことができるし、そもそも空港の免税店でも売っていたりする。 では、本当に見つからない伝説のワインとはどういうものなのだろうか。 真っ先に思い浮かぶのは、 ヴァレンティーニ だ。

梁 世柱
11月18日


出会い <93> またまた出会った、最高のイタリアマイナー品種
Vignamato, Lacrima di Morro d’Alba 2022. 完全な専門分野として特化でもしない限り、イタリアのマイナーの地品種ワインは、とてもとても追いきれるものではない。 ブレンドまで含めると、そのヴァリエーションはまさに無数であり、そしてその事実は、我々を永遠に楽しませてくれるものでもある。 ネッビオーロ、サンジョヴェーゼ、アリアニコ、ネレッロ・マスカレーゼといった高名な葡萄への敬愛はなかなか捨てきれないので、ついついそういったワインに手を伸ばしがちだが、そこに「安心」はあっても、「驚き」はよっぽどのワインでも無い限り、そうそう訪れてはくれない。

梁 世柱
11月10日


Wine Memo <36>
Astobiza, Arabako Txakolina “Pil Pil” 2024. ¥3,200

梁 世柱
11月9日


再会 <93> デキャンタージュは万能薬ではない
Mathilde et Yves Gangloff, Côte Rôtie La Serène Noire 2010. 私は普段、無闇に デキャンタージュ することを、 非推奨 としている。 長い間瓶の中で 強い還元的状態 に置かれていたワインを、ウルトラデキャンターのような大きなデキャンタに移してしまうと、 急激な酸化によって、ある種の過呼吸的なパニック状態に陥る ことがある。 そのワインが秘めていたあらゆる繊細さが失われ、豊かな香りは消えさり、果実味は二次元的になる。 そのような最悪の結果を避けるために、デキャンタージュするかの判断は、極めて慎重に行うべきだと考えている。

梁 世柱
11月3日


Wine Memo <35>
Arnoux-Lachaux, Vosne-Romanée 1er Cru Les Chaumes 2013. 先代のワイン、と聞くと、不思議とロマンの香りが漂ってくる。 ただしそのロマンは、往々にしてノスタルジアに似たものであり、ワインそのものの素晴らしさとは、少し評価の軸がずれたところにポイントが置かれていることも多くある。(その逆もまた然りだが。) 今回のWine Memoで取り上げたいのは、ブルゴーニュの「先代」ワイン。 ヴォーヌ=ロマネ村の古参ドメーヌとして知られた ロベール=アルヌー が、2008年に改称して誕生したのが、 アルヌー=ラショー だ。

梁 世柱
10月31日


出会い <92> 中国ワインの巨星
Dan Sheng Di, Célèbre Red 2018. もう、6~7年前だろうか。私が初めて最高峰の 中国ワイン をテイスティングしたとき、少なからずショックを受けた。 今ではすっかり日本国内でも知名度が上がった Ao Yun は、日本で造られる同形品種のワインが(品質的に)到達することが極めて難しい領域にすでにいると、認めざるを得なかった。 もちろん、 品質だけがワインの全てではない。 その国、その産地だからこそ成し得た個性には、素晴らしい価値が宿る。 ただし、ワインをそのような価値観でもって受け止めることができる人は、国産バイアスが強烈にかかる初心者か、あらゆる国々のワインを飲み重ねてきた、歴戦の玄人くらいなものだ。

梁 世柱
10月28日


再会 <92> 折衷派バローロの真髄
Aldo Conterno, Barolo Bussia Cicala 2017. ブルゴーニュの爆発的な高騰が終息しないなか、いわゆる「グラン・ヴァン(偉大なワイン)」を飲みたいと思った時、私の食指が バローロ・バルバレスコ へと動くことは格段に増えた。 かねてから、最上クラスのバローロ・バルバレスコは、ブルゴーニュに対しても全く見劣りしないと考えてきたが、これほど価格差が開いてしまうと、もはや私には偉大なブルゴーニュを自ら買って楽しむ「言い訳」を探すことが不可能となっている。 ブルゴーニュのグラン・クリュ一本に10万円を支払うなら、最高のバローロを4本飲みたい、というのが私の本音である。 さて、そんなランゲ地方の雄たちだが、現在は モダン派、古典派、折衷派の 3大スタイルが共存している。

梁 世柱
10月21日


出会い <91> 北海道で華開くドイツ系品種
山田堂, Yoichi Blanc 2024. ¥2,800 寒冷地である 北海道 が、 1970年代 から ドイツ・オーストリア系品種 に目をつけたのは、英断だった。 1976年のパリスの審判 をきっかけに、世界各地で爆発的に フランス系国際品種 が広まることになったのだが、その大波が本格化する前に、 ミュラー=トゥルガウ、ケルナー、バッカス、ツヴァイゲルト(レーベ) などの葡萄が北海道に導入されたのは、運命のいたずら、とすら言えるのかも知れない。 パリスの審判から、ロバート・パーカーJrの台頭という一連の流れの中で、2010年代に入るまでは、パワー型ワインの全盛期となったため、繊細な北海道のドイツ・オーストリア系ワインがセールスに苦しんだことは想像に難くないが、耐え忍んだだけの価値はあったと、私は思う。

梁 世柱
10月14日


再会 <91> 最強シャンパーニュの大当たりボトル
Alain Robert, Le Mesnil Réserve 1988. (Magnum) 私はシャンパーニュが大好きだ。シャンパーニュの無い人生など、もはや考えられない程に。 確かに、世界的な気候変動や技術向上によって、一般的なレベルのシャンパーニュと比べた場合、遜色ないと言える品質のスパークリングワインは、世界各地で劇的に増えた。 しかし、頂点と呼べる品質領域においては、 シャンパーニュが王者のまま 、というのが私の見解である。 今回は、そんな頂点シャンパーニュの中でも、特に私が執着しているワインとの再会。 アラン・ロベール 。

梁 世柱
9月30日


出会い <90> ポルトガル=オレンジワインのホットゾーン
Espera, Espera Curtimenta 2022. ¥3,900 オレンジワインとは、つくづく興味の尽きないジャンルだと思う。 その理由は、 「常識の破壊」 にある。 シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング。我々が白ワインとして慣れ親しんだ葡萄が、オレンジワインとなった途端に、 全く未知の姿 を見せる。

梁 世柱
9月25日


再会 <90> 頂点であるということ
Domaine de la Romanée-Conti, Grands Échézeaux 2015. ワインには、 ヒエラルキー というものが存在する。 嗜好品だから個人の好みなのに、飲んだら消えてしまうようなものなのに。 色々と言いたいことが出てくる気持ちは分かるが、こればかりはどうしようもない。 音楽で例えてみよう。 中学生の素人が宅録した音源には、そこにしか無い素朴で原始的な魅力が確かにあると思うが、一流のプロが経験と技術とお金を注ぎこんで作り上げた音楽との「品質」的差異は、否定のしようがない。

梁 世柱
9月17日


出会い <89> 無添加甲州の可能性
Kitani Wine, 甲州 キュヴェ・タカシ 2023. ¥2,800 日本が誇る地品種(厳密に言うと中国からの渡来品種ではあるが)である 甲州 は、まだまだ完成系と言える姿を示していないと、私は考えている。 中央葡萄酒(Grace)の三澤甲州(旧キュヴェ三澤 明野甲州)のように、逸脱した領域に踏み込み始めたワインも登場してきてはいるが、それでもまだ、甲州という葡萄はあらゆる進化の可能性を残しているのではないだろうか。 映画「ウスケボーイズ」のモデルとなった人物としても知られるシャトー・メルシャン元工場長の浅井昭吾(ペンネーム:麻井宇介)氏が、フランス・ロワール地方のミュスカデから着想を得た、甲州に シュール・リー製法 を用いるという手法を、1985年に他の日本ワイナリーへ公開して以降、そのスタイルは確かに現代に至るまで甲州ワインの地盤を固めているが、まだまだ見えていない「その先」があるはずなのだ。

梁 世柱
9月10日


再会 <89> 正規価格なら、世界最高レベル
Terre de Ciel, Raisin Chardonnay 2024. ¥3,400 市場原理とは、ワインの世界においてなんとも憎らしいものだ。 特定のワインに人気が集中し、需要とバランスの供給が崩れ始めると、入手困難→抽選販売(もしくはかなり重い抱き合わせ販売)→二次市場での価格高騰、というお決まりのパターンを辿る。 しかし、こういう現象が起こった際に、私は造り手が蔵出し価格を上げること自体は、手放しで大歓迎している。 二次市場価格が高騰してしまうほどの人気を得るということは、並大抵の努力で実現できることではない。

梁 世柱
9月3日


出会い <88> 食用ブドウのデザートワイン
ひるぜんワイン, 岡山 ピオーネ 2023. ¥2,300 飲食店に行く醍醐味の一つは、 「発見」 にあると私は思う。 料理そのものが美味しいか、自分の好みに合うかどうか、という発見ももちろんだが、ワイン人としては、飲み物面での発見に、心踊らされるのは当然のことだろう。 特に、普段の私なら選ばないようなものや、そもそもレーダーにすらかかっていなかったものと出会うと、その飲食店での体験は、深く記憶に刻まれることとなる。

梁 世柱
8月27日


クラフトビールと地ビールの違い
クラフトビール が世界的なブームとなって以降、日本国内も含めて小規模ブリュワリーの数は激増した。 私自身も、このジャンルのビールはとにかく好きで、様々なものを日常的に試しているのだが、ふと冷静になって 疑問を抱く ことも多い。 クラフトビールで採用されることが多いIPA、セッション、セゾンといったスタイルは、世界中で異常とも思えるほどのヴァリエーションが誕生しているにもかかわらず、結局のところ、(総合的な品質の差はあれど) 似たような味わいが実に多い 。

梁 世柱
8月26日


再会 <88> 伝説と継承
Emmanuel Rouget, Vosne-Romanée 1er Cru Cros Parantoux 2013. レストランという現場で働いていると、(特に高級店の場合)店舗で販売したものと、持ち込みワインを合わせれば、かなり頻繁に高級ワインを味わうことができる。 飲食店の現場は体力的にも精神的にもかなり過酷ではあるが、それでも「役得」というものはあるのだ。 しかし、不思議なことに、頻繁にそのようなクラスのワインに触れていると、段々と 感覚が麻痺 してきてしまう。 「普通」の高級ワインでは、もはや心が激しく揺さぶられなくなってしまうのだ。

梁 世柱
8月19日


出会い <87> 特別編 仮面ライダーという名の究極
仮面ライダー1号 x 伯楽星, 仮面ライダー 純米大吟醸. ¥160,000 精米歩合 を極限まで突き詰める、というムーヴメントの先駆け(より大きな動きを生み出すという意味で)となったのは、山口県・旭酒造が手がける「獺 祭2割3分磨き 」の登場だろうか。 それまで(今でも基本的には同様だが)、大吟醸酒の精米歩合は35%がスタンダードだったが、「2割3分磨き」は超高精白(素数である23という数字自体の美しさも、マーケティング上では見逃せない)という 新たなアイデンティティをかかげた日本酒 を、国内だけでなく、世界市場へと多いに広めていった。 その後、福井県・加藤吉平商店が手がける「梵 超吟 純米大吟醸 」(精米歩合20%)などが人気を博すなど、高精米ブームにいよいよ火が付くこととなる。

梁 世柱
8月7日


再会 <87> ブルゴーニュ・ループ
Pierre-Yves Colin-Morey, Meursault 1er Cru Charmes 2018. 世代交代 という側面から、フランスの ボルドー と ブルゴーニュ を比べると、非常に興味深い違いが浮かび上がってくる。 ボルドーでは、高名かつ歴史ある格付けシャトーなどが、そのまま次世代へと継承されていく(もしくは、丸ごと買収される)のがスタンダードであるため、もちろん世代交代はあるものの、劇的なというよりは 緩やかな変化 となることが圧倒的に多い。 一方のブルゴーニュでは、世代交代で葡萄畑が親族へと継承されたり、婚姻によって異なる一族の葡萄畑が部分的に夫婦の共有資産になったりなど、とにかく 葡萄畑の所有権が頻繁に移り変わる 上に、マイクロネゴシアン(買い葡萄から比較的小規模ながら優れた品質のワインを生産する造り手)の台頭なども併せて、とにかく 新たなネームが次々と誕生する 。

梁 世柱
7月30日


出会い <86> 圧巻のグリニョリーニョ
Gaudio, Grignolino del Monferrato Casalese 2022. 有名産地のマイナー品種 はなかなか難しい。そこに、「よほどの理由」がなければ、なかなか手が伸びないからだ。 品質、味わい、個性の全てにおいて、その壁を突破するのは決して容易ではなく、多くのマイナー品種ワインが 「珍品」 の類のままである。 それが、 ネッビオーロ という王者を有するイタリアの ピエモンテ州 なら尚更のことだろう。

梁 世柱
7月22日
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