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葡萄樹と共に <トスカーナ特集:Montalcino編 Part.2>
E掴めそうなのに、手をすり抜けていく。 蜃 気楼 のように、神秘と現世を往来し、 奇跡の残り香 だけが、かろうじてその実在を示唆する。 グラスに注がれた美麗なルビー色の液体は、まだ私に真実を語ってくれない。 ならば、 確かに存在しているもの を、先に理解するべきなのだろう。 今回のAnteprima展示会(新ヴィンテージのお披露目)には、モンタルチーノは含まれていなかったが、私は前倒しでトスカーナ入りし、モンタルチーノで数日間過ごすことにした。 久々のイタリアというのもあり、次の機会をどうしても待てなかったのだ。 本章は、モンタルチーノという産地の解説でも、Brunello di Montalcinoというワインのレヴューでもない。 モンタルチーノで訪れた造り手たちと私が話したことの、純粋な記録 となる。 Stella di Campalto (Podere San Giuseppe) モンタルチーノを訪れると決めた時、 真っ先にアポイントメントを取った のが、 ステッラ・ディ・カンパルト が率いる Podere San Giuseppe (銘柄

梁 世柱
2023年5月31日


ヴィニュロンの一年 <2023年5月>
5月に入っても気候の安定しない長野市。例年ならGW明けから急激に暖かくなり、完全な春の訪れを感じるのだが、 日毎の寒暖差が激しく 、最高気温が 30 ℃近い日もあれば、 15 ℃という日もある。雨も多く降っており、さらに先日、ゲリラ豪雨とともに「雹(ひょう)」が降った。 霰と雹の間くらいの小粒で短時間だった為に、農園被害は無かったが、「もし粒がもっと大きく長時間降っていたら。」と考えると非常に恐怖を感じた。 ブドウ達は萌芽後すくすくと生長し、長い新梢で40cmを超えている。 雨が多ければブドウも育つが雑草も育つ。さらに病害虫リスクも高まるため、必要な作業をしっかりとこなし、観察し、対処していかなければならない。 【定植(品種)】 いよいよ栽培する品種が決定し、植え替えの定植を行った。 植樹から5年目、ようやく昨年に初収穫を迎えたブドウ樹を切り、新しい苗を植えるという行為をなかなか理解してくれない方も多いが、私は未来へ向けて進んでいきたい。 今年200本、来年250本、再来年は様子を見て追加の定植を行う予定でいる。

ソン ユガン
2023年5月28日


名声と呪縛 <トスカーナ特集:Montalcino編 Part.1>
あくまでも個人的には、としておくべきだろう。 私がこれまでにテイスティングしてきた膨大な数のサンジョヴェーゼの中から、仮にトップ10を選ぶとしたら、少なくとも 上から3つは確実に、Brunello di Montalcinoがランクインする 。むしろ4位から下は候補があり過ぎて、選定が難航するのは間違いない。つまり私は、Brunello di Montalcinoに対して、 頭一つも二つも抜けた評価を、個人的にはしてきた ことになる。 他者の評価や、世間的な名声ではなく、自身の体験に最大の重きを置く普段の私なら、Brunello di Montalcinoこそがトスカーナ最上のサンジョヴェーゼである、と断言してもおかしくは無いのだが、 私はまだ確信にも核心にも至ってない 。 なぜBrunello di Montalcinoに、これほどまで心惹かれてしまうのか。 なぜBrunello di Montalcinoが、Chianti ClassicoとVino Nobile di Montepulcianoを上回っていると感じることが多いのか。...

梁 世柱
2023年5月25日


レッツィーナの面白い可能性
皆さまこんにちは。 乃木坂しんの飛田です。 最近では周囲に独立された素晴らしいソムリエ、ソムリエールが増えてきており、その働き方の多様性を間近で見ながらますます面白い時代になってきたぞと可能性を感じつつ、自分においては危機感を感じる日々を過ごしております(苦笑)。 とは言いつつ、私自身も店舗以外のお仕事の機会を少しずついただいているので、様々なペアリングを考えていく際に、何かこう、「 困ったときのこれ1本 」となる複数のポジションをこなせる ユーティリティープレイヤー的存在 をいつも探しており、今日はそんなワインの中から1本をご紹介させていただきます。 そう、それはタイトルにも上げた「 レッツィーナ 」というワインです。 ソムリエの方はもちろん知っているのですが、一般の方には全く馴染みのないワインでしょうか。いや、ソムリエさんも教本で読んだだけで知らない、テイスティングしたこともない、という方ももしかしたら多いかもしれません。かくいう私もそうでした(笑)。 松脂を醸造時に添加して造る レッツィーナは、ギリシャにおける 伝統的ワイン...

SommeTimes特別寄稿
2023年5月19日


難易度Maxなトムヤムクン
無類の辛党である私がこよなく愛する料理の一つが、 タイ料理 。 これまでに訪れた国々の中でも、ここの料理なら毎日食べても平気、と思える数少ない国の一つでもある。 そんなタイを代表する料理といえば、 トムヤムクン で間違いないだろう。 世界三大スープの一つ?などとも呼ばれるこの料理は、 唐辛子の辛味、タマリンドやライムの酸味、レモングラスやバイマックルー(コブミカンの葉)、パクチーの香り が特徴的な一皿。 パンチの効いた辛味と酸味、そして東南アジア圏特有のハーブ感が調和し、立体的で奥深い味わいが形成される。 その料理としての完成度は、確かに世界三大スープと呼ばれても納得の高さだ。 しかし、 トムヤムクンとのワインペアリングは難易度最高レベル 。 スパイス、ハーブのニュアンスが 非常にピンポイント な上に、スープの強い 酸味 、そして 軽いテクスチャー にも対応させる必要がある。

梁 世柱
2023年5月18日


躍動するブリット・フィズ -Gusbourneの挑戦-
イングランドは、オールド・ワールドか、ニュー・ワールドか。 もし一般的な「 大航海時代より前に 」という法則を当てはめるなら、 11世紀 には南イングランドでワイン造りが行われていた記録が残っている(*1)ため、れっきとした オールド・ワールドに該当 する。しかし、...

梁 世柱
2023年5月12日


ナチュラルワイン・ペアリング <2>
ナチュラルワイン・ペアリング・シリーズの第二弾以降では、「 欠陥的特徴 」とも呼ばれるナチュラルワインに散見される風味を、あえて ポジティヴ に捉え、積極的にペアリングで用いていく方法を検証していく。 その初回となる本稿では、 揮発酸 に関して考えていく。 揮発酸は、発酵が長期に渡った場合、好気的環境下におかれた場合等に発生し、支配的になると、 除光液 とも表現される様な、鼻腔に突き刺さる鋭い香りとなる。最悪の場合はワインを酢に変えてしまうため、各国の原産地呼称制度で含有量が規制されているケースも多い。 ワインに含まれる揮発酸の中でも、不快臭として欠陥扱いされることが多いのは、 酢酸と酢酸エチル だが、実際には、ワインの香味を構成する重要な要素の1つであり、正しい調和の中で存在している場合は、 梅しそ、アセロラ、ラズベリー、パッションフルーツ、グレープフルーツ を思わせる香味をもたらし、ワインに複雑性を与える要素として、 必ずしも欠陥として捉えられるわけではない 。 ペアリングで揮発酸を利用する際には、これらの特徴から導き出される、 大きな2つの

梁 世柱
2023年5月10日


インバウンドゲストへのアプローチ
皆さんこんにちわ。ソムリエの矢田部です。 今回はホテルソムリエとして、海外ゲストのワインオーダーの、最近の傾向と対策をお話しさせていただきます。 インバウンドゲストの現状 まずはインバウンドゲストの現状として。 私が勤務している東京エディション虎ノ門では、 レストラン、バー利用者の80% 近く、 宿泊滞在者の90% 近くが、海外ゲストとなっています。 昨年12月半ばから渡航のボーダーが開けたことにより、ホテルの稼働と宿泊料金が爆あがりしている状況です。最も安い宿泊料金は10万円を超えていて、素泊まりでも1泊1室15万円から20万円のハイレートになっています。これはエディションが特別という状況ではなく、都内の外資系ホテルではどこでも同じことが起きています。恐らく、もっと高い宿泊料金設定になっているホテルも、少なからずあると思います。 この状況になると当然、今までご利用していた国内ゲスト、リピーターは宿泊出来なくなり、宿泊も兼ねた新規インバウンドゲストのレストラン利用がメインになって行きます。 国籍の割合は 中国系が40%、USAが30%、EU圏が2

SommeTimes特別寄稿
2023年5月6日


日本料理と酸
日本料理と日本酒 の間には、ワインの世界で言うところの「 クラシックペアリング 」となる組み合わせが多々存在している。 その 結びつきは非常に強力 で、そうそう簡単にワインが「それ以上の」組み合わせとなることは無い。 ロジカルな側面 からその理由を説明すると、 塩分、脂肪分、油分、酸の全てが控えめな 日本料理は飲み物に対して強い「酸」を求めることが少ないから (ご存じの通り、日本料理は非常に幅広いため、例外となるケースも多くある) 、となる。 もちろん、日本料理とワインの組み合わせの中には、大変興味深いものや、非常に完成度が高いものも少なからずあるし、私自身深い研究を重ねてきた分野ではあるものの、「結局日本酒と合わせた方がペアリングとしての完成度が高い」という結論に至ることは、決して珍しくないのだ。

梁 世柱
2023年5月5日


儚く、美しいワイン <トスカーナ特集:Montepulciano編>
なぜかいつも忘れられている。 Vino Nobile di Montepulciano は、そういうワインだ。 トスカーナ州のサンジョヴェーゼから造られる三大赤ワインの一つでありながら、最も語られることが少ない、地味な存在。 ワインのプロフェッショナルであっても、同州のサンジョヴェーゼを選ぶなら、Chianti ClassicoかBrunello di Montalcinoのどちらかから、真っ先に探す人が大多数だろう。 場合によっては、一部のサンジョヴェーゼ系スーパー・トスカンの影にすら隠れている。 日本語に直訳すると、「 モンテプルチャーノの高貴なワイン 」という実に覚えやすい名称だが、横文字のままだと、どうにも長い。 Vino Nobile di Montepulcianoにとって、Montepulcianoは地名を意味しているが、 他州には同名の葡萄品種 があり、生産量もかなり多いため、なんともややこしい。 確かにライバル産地に比べると、 生産者の数も生産量も少ない 。 さて、これらはVino Nobile di Montepulciano

梁 世柱
2023年4月29日


ヴィニュロンの一年 <2023年4月>
4月に入りすっかり春を感じる長野市。気温の上下はまだ激しいが、20度を越す暖かい日も多くなってきている。 春を告げる野花たちが顔を出し、自然の山々は新緑が初々しく、梅や桃、桜の花が咲き誇り、ちょうど今、林檎の花が満開である。畑では様々な虫たちが活動を開始し、冬の静けさから一変、生命が活発に動き出しているのを感じる。 長野地方気象台にあるソメイヨシノの標本木の開花は、なんと3月28日。例年より2週間ほど早く、統計開始以来、最も早い開花だそうだ。地元の方達も「長野で3月に桜が見れるなんて。」と驚いている。 圃場のブドウ達も例年より早く芽吹く予感がする。 ブドウが萌芽する前に、出来るだけの準備を急いで行わなければならない。 【休眠期防除】 ブドウの病害防除は、萌芽後の生育期に行うのが一般的だが、 萌芽前の休眠期に一度行う事で、その効果をより一層高める事ができると言われている 。 休眠期防除によって越冬病原菌の第一感染源となる分生子(胞子)の形成量を抑えて、伝染源密度を低下させ、生育初期の発病抑制および生育期防除の効果を高めることが出来る。

ソン ユガン
2023年4月28日


ナチュラルワイン・ペアリング <1>
より精密で完成度の高いペアリングを目指す場合、 ペアリング理論に基づいた構築 は大きな助けとなる。少なくとも、ロジックをしっかり守ることによって、 ペアリングの失敗は非常に高い可能性で防げる ようになるのだ。 しかし、その強固なロジックを、 相当程度無視できるタイプのワイン が存在している。 そう、いわゆる ナチュラル・ワイン と呼ばれるものだ。 ナチュラルワイン・ペアリングのシリーズでは、ナチュラルワインだからこそできる、特殊なペアリング方法に関して、検証を行なっていく。 まず注目したいのは、ナチュラルワイン特有の「 浸透力 」に関して。 ナチュラルワインが有する「浸透力」を、科学的に証明することは難しいかも知れないが、 実際に確認できる物理的現象 として、存在している可能性は高いと考えられる。

梁 世柱
2023年4月25日


New York Wineレポート Part.2
Part.1 に続いて、本編はNY州産ワイン(Finger Lakes)のレヴューパートとなる。 今回の生産者来日では、 Long Island、Hudson River、Lake Erie からもワインが出展されていたが、 産地ごとの特徴を掴むには数が少なかった...

梁 世柱
2023年4月22日


ポトフとシードル
なんだかジブリ映画になりそうなタイトルだが、このペアリングは狙ってやったのではなく、 偶然によって生まれた 。 そして、意図していたわけではないので少々悔しいが、実に美味しかった。 ポトフ といえば、 フランスの良く知られた家庭料理。 分かりやすくいうと、「 フランス版おでん 」のような食べ物だ。(フランス人からしたら、日本のおでんが日本版ポトフなのだろうけども。) 色んな肉類やソーセージ、ベーコンなどを、かなり大きめにカットした玉ねぎ、ニンジン、キャベツ、じゃがいもなどと一緒にコンソメで煮込むだけ。 仕上げにハーブを添えたり、黒コショウを散らせば完成だ。 味わいは「素朴」という言葉がぴったりで、良く言えば野菜やお肉の素直な味わいが楽しめる料理、悪く言えば意外と無表情で平坦な料理、となるだろうか。 その味わいの平坦さ故に、基本的にはカットした肉や野菜に 粒マスタード を結構しっかりと塗って食べるのが一般的。 おでんに和辛子を塗るのと一緒だ。 さて、夕食にポトフなどと洒 落込んで みたのだが、冷蔵庫を開けると(筆者宅にはワインセラーは無い)、どうに

梁 世柱
2023年4月15日


飛躍の時 <トスカーナ特集:Chianti Classico編 Part.3>
Chianti Classico Collectionでの二日間を終えた時、私は不思議な高揚感に包まれていた。 極限まで集中したテイスティングを、連日8時間近く休みなく続け、舌も足も思考も、疲弊しきっていたはずなのに、私は妙に興奮していたのだ。 4年前の辛酸を晴らすべく、地道に研究を重ねてきたChianti Classico。 その答え合わせをひたすら繰り返した2日間。 確信に変わった数多くの仮説。 新たな発見。 未知のワインとの出会い。 新世代の躍動と、ベテランのプライド。 複雑に絡み合う思惑。 そして、思い知らされたChianti Classicoの偉大さ。 会場で見聞きした全てが、私を刺激し続けていたのだ。 Chianti Classico編最終章を執筆するにあたり、私は今、安堵感と共に、寂しさに似た感情を抱いている。 2020年代のワイン産業 新型コロナ禍の本格化と共に幕を開けた2020年代。様々なワイン関連ニュースも飛び交ったが、その中でも最もインパクトが大きかったのは、間違いなく ボルドーの話題 だろう。 2021年後半にC.I.V.

梁 世柱
2023年4月14日
![生まれ変わるドイツ [New German Wine Law]](https://static.wixstatic.com/media/568330_bb1322beb9b446089482311d756edb14~mv2.jpg/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_30,blur_30,enc_avif,quality_auto/568330_bb1322beb9b446089482311d756edb14~mv2.webp)
![生まれ変わるドイツ [New German Wine Law]](https://static.wixstatic.com/media/568330_bb1322beb9b446089482311d756edb14~mv2.jpg/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_90,enc_avif,quality_auto/568330_bb1322beb9b446089482311d756edb14~mv2.webp)
生まれ変わるドイツ [New German Wine Law]
伝統的な文化やしきたりを守る事に人間は固執する。 「日本古来の伝統を守る。」 「先祖代々そうしてきたからそれに従う。」 我々日本人もそれが好きな人種である。 「伝統に背く。」 「新しく何かを変えよう。」 と運動を起こすと、他方から強制の圧力が強くかかるのは必然といえる。 ワインの法律に対しても、勿論それは例外ではない。特に歴史ある生産国程、様々な障害や問題が付き纏う。 ある国で今正にその伝統へ正面から向き合い、国を挙げて一新しようとする大きな動きが見られる。 それは国民性を見ても勤勉でルールを遵守することに重きを置く、旧世界生産国 ドイツ である。 去年の8月末日、幸運にもドイツを訪れる機会に恵まれた。まだまだ日本も残暑を感じる夏の終わりだった。 今回はドイツ・ワインインスティテュート(DWI)が発足した、世界13か国共通の教育制度 German Wine Academyの、日本における運営オフィスWines of Germany様のご招待によりラインガウとラインヘッセンを巡るプログラム。 元々三年前にお声がけいただいた案件ではあったものの

SommeTimes特別寄稿
2023年4月8日


New York Wineレポート Part.1
SommeTimesでは、たびたび NY州 のワインを取り上げてきた。 筆者がNYで長年ワイン修行をしていた縁、ではなく、単純にこの産地が 面白く、そして素晴らしい可能性を秘めている からだ。 現在NY州には、以下の 11つのAVA (American...

梁 世柱
2023年4月7日


Advanced Académie <28> 醸造による軽やかさの演出
近年の世界的な ワインスタイルの変化 において、特に影響が大きいのは、 気候変動と嗜好の変化 だろう。 気候変動はもちろん、具体的には 温暖化 のことを基本的に意味している。(場所によっては、温暖化よりも気候の激化の方が問題となっているが。) 温かくなると、糖度の上がるスピードが上昇し、一定のポイントを超えてしまうと、酸やフェノール類とのバランスが壊れてしまう。 さらに、2010年代以降、明らかに 世界的な食のライト が進んだため、ワインにもより軽快さが求められるようになった。この傾向は、 温暖化が葡萄に及ぼす影響とは真逆の方向 であったため、まず最初に多く採用された対策は、 大幅な早摘み だった。 しかし、温暖化によって糖度上昇が早まる中で無理な早摘みを行うと、(酸は十分に確保できるが) フェノール類が熟していない ため、 著しくミッドパレットに欠けた味わい になりがちであっただけでなく、多くのワイン(主に赤ワイン)から 長期熟成能力も奪う 結果となってしまった。

梁 世柱
2023年4月5日


キアンティの頂 <トスカーナ特集:Chianti Classico編 Part.2>
膨大に積み重ねられてきた歴史の最先端を生きている我々は、先人達が苦難の末に辿り着いた偉業にフリーアクセスできる。 ワインの世界においても、偉業とすべき成果は数多存在しているが、その中でもいつも私が心惹かれるのは、 中世を生きた先人たち が会得した、 優れたテロワールを見定める秘術 だ。 現代では銘醸地となった地の多くが、その最初期は決して大きな産地ではなかった。 そして不思議なことに、最初期、つまり オリジナルの葡萄畑があるエリアは、現代においても、最上の地であることが多い 。 歴史深いChianti Classico。 そのオリジナルたるエリア。 知る必要がある、理解する必要がある。 Chianti Classicoの真髄に、一歩でも近づくためには。 Chianti Classicoの領域 Chianti Classicoは、トスカーナ州内のサンジョヴェーゼ銘醸地としては、最も北側に位置する産地の一つとなる。 単純に最も冷涼と考えたいところだが、実際には複雑かつ多様なマイクロ気候が形成されているため、その理解は誤解を招きやすい だろう。...

梁 世柱
2023年4月1日


Not a Wine Pairing <2> 抹茶と和菓子
クラシック・ペアリングというものは、何もワインの専売特許という訳ではない。 特定の食と飲が同一文化の中で共存し続けた結果、一部の組み合わせが完璧なクラシックへと昇華する例は、世界各地に少なからず存在する。 ペアリングの新シリーズ「 Not a Wine Pairing 」では、『ワイン以外のクラシック・ペアリングから、ワイン専門家や愛好家が何を学べるのか』をテーマとして、様々な検証を行なっていく。 第二回のテーマは、日本を代表する伝統的なペアリングである「 抹茶と和菓子 」。 まずは、本題に入る前に、ペアリングの法則を一つおさらいしておこう。 食べ物に相応の甘味(砂糖などの甘味料の添加によってもたらされた甘味)が存在している場合、合わせる飲み物はそれ以上に甘い必要がある。 この法則は、数多いペアリング理論の中でも 無視できるケースが非常に限られる ものとなるため、基本的には守るにこしたことは無い。

梁 世柱
2023年3月28日
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