ナチュラルワイン・ペアリング・シリーズの第二弾以降では、「欠陥的特徴」とも呼ばれるナチュラルワインに散見される風味を、あえてポジティヴに捉え、積極的にペアリングで用いていく方法を検証していく。
その初回となる本稿では、揮発酸に関して考えていく。
揮発酸は、発酵が長期に渡った場合、好気的環境下におかれた場合等に発生し、支配的になると、除光液とも表現される様な、鼻腔に突き刺さる鋭い香りとなる。最悪の場合はワインを酢に変えてしまうため、各国の原産地呼称制度で含有量が規制されているケースも多い。
ワインに含まれる揮発酸の中でも、不快臭として欠陥扱いされることが多いのは、酢酸と酢酸エチルだが、実際には、ワインの香味を構成する重要な要素の1つであり、正しい調和の中で存在している場合は、梅しそ、アセロラ、ラズベリー、パッションフルーツ、グレープフルーツを思わせる香味をもたらし、ワインに複雑性を与える要素として、必ずしも欠陥として捉えられるわけではない。
ペアリングで揮発酸を利用する際には、これらの特徴から導き出される、大きな2つの側面から考えていくと良いだろう。