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【無料公開】New York Wineレポート Part.2

Part.1に続いて、本編はNY州産ワイン(Finger Lakes)のレヴューパートとなる。

今回の生産者来日では、Long Island、Hudson River、Lake Erieからもワインが出展されていたが、産地ごとの特徴を掴むには数が少なかったため、本レポートでは、詳説は割愛させていただく。


Long Islandに関しては、かつては樽の影響が強く、テロワールが非常に見えにくい側面があったが、現在はかなりスマートに変化している。海風が強烈に吹き付けるというテロワール通り、全体的に塩味を感じさせる味わいが特徴として立ち現れるようになった。


その変化は、Long Islandの人気ワイナリーであるWölfer Estateのワインからも確認できるだろう。







Riesling

スレート土壌に似た頁岩(Shale)土壌の影響が強く、ニューワールドとドイツの中間的性質となるのが、Finger Lakesリースリングの基本。

このタイプの個性は、世界的にもかなり貴重な存在となる。


リースリングにミネラル感を求めるが、ドイツ産ほど強烈なミネラルと酸は必要ない、というシチュエーションにはこれ以上なくハマるワインとなる。


全体的にアルコール濃度が低い点も、ドイツ産に似ているため、食のライト化も追い風となって非常に使いやすい印象だ。


Hermann J. Wiemerは、Finger Lakesのトップランナー。

オーガニック栽培が非常に難しい地であるにも関わらず、勇気と信念をもって取り組み続けてきた先鋭的なワイナリーでもある。

Riesling Dryは、フレッシュな青リンゴ系のアロマが心地よく、デリケートな果実味、芯の強いミネラル感、絶妙なバランスの酸が印象的な傑作リースリング。Finger Lakesリースリングの実力を知るためには、真っ先に体験すべきワインだ。



Red Newt Cellarsは、古典美が漂う端正な味わいが魅力。Finger Lakesの中でも、最もヨロッパの雰囲気が強く滲み出ると表現しても良いだろう。国内輸入に至っていないのが、実に残念ではあるが。

Riesling “The Knoll, Lahoma Vyd.”は、Finger Lakesリースリングの最高傑作。フレッシュでありながらも重厚感のあるアロマ、凝縮した果実味と強靭なミネラル、エッジの効いた酸、長い余韻。その三次元的構造と味わいは、この地の秀逸なリースリング群の中でも、頭二つ抜けた品質だ。



Dr. Konstantin Frankは、ニューヨーク州にヴィニフェラ種をもたらしたブドウ栽培博士のコンスタンティン・フランクが、1962年に創設したワイナリー。

古くからFinger Lakesをリードしてきたワイナリーだが、3代目となった現在でも、その存在感は変わらない。

Rieslingは、Dry RieslingとSalmon Run Rieslingの2種が国内輸入されている。前者はスマートな辛口タイプだが、ソフトタッチなバランスが心地よい快作。後者は僅かに残糖がある半辛口タイプで、モーゼルのハーフトロッケンを彷彿とさせるような、チャーミングでカジュアルな良ワインだ。夏のピクニック、ペアリングなどでは大活躍する味わいとも言える。




Lamoreaux Landingは、1940年代から続くFinger Lakes屈指の葡萄栽培農家が、1990年に興したワイナリー。どのワインにも絶妙すぎる「ライト感」が貫かれていて、個人的には、Finger Lakesの中でも最も好きなワイナリーの一つだ。

Dry Rieslingは、アルコール濃度10.4%、残糖8.1g/Lと、フェザー級のタッチが最高だ。迫力や凝縮感とは無縁の、淡く繊細な世界観は、日本人の感性ともマッチするだろう。



Osmote Wineは、若きベンジャミン・リカルディが2014年に設立した新世代ワイナリー。環境に最大限配慮し、ワイン造りでは緻密にテロワールを表現して見せる。

Senaka Lake Rieslingは、Finger Lakesの中でも際立った極辛口仕立て。その一直線に進んでいくような、迷いの無い味わいからは、Finger Lakesリースリングの新たな可能性が垣間見える。





Chardonnay

Finger Lakesのシャルドネは、かつてのシャブリ的なテロワールと、シャルドネ本来のフラットな性質が相まって、少々インパクトに欠けるかも知れないが、別方向から見ると、世界的に貴重な個性を宿しているとも言える。温暖化によって、世界中のシャルドネが高アルコール濃度化する中、Finger Lakesの低アルコールでスマートかつ、程よい緊張感を保ったシャルドネというのは、確かに光るものがある。


ステレオタイプなシャルドネらしさを求めるのではなく、この地らしさが全開に出た薄く淡い世界観を楽しむのが良いだろう。



個人的に特に素晴らしいと思ったのは、Lamoreaux LandingのChardonnay。2017年ヴィンテージは、アルコール濃度12.4%ながら精妙なバランス感を実現しており、ミッドパレットも充実している。樽使いも絶妙で、ワインのテクスチャーを程よく丸めている。




Pinot Noir

Finger Lakesのピノ・ノワールはシャルドネと同様に、「淡い世界観」にこそ魅力がある。典型的なニューワールド・ピノ・ノワールとは、何もかもが異なる個性であるため、どちらかと言うと、1970~80年代頃のブルゴーニュやドイツのピノ・ノワールがニューワールドでリヴァイヴァルしたと考えれば、ピントが合いやすいだろう。



Element Wineryは、シェフであり、多数のレストランを経営する実業家であり、ソムリエ最高位資格のMaster Sommelierでもあるクリストファー・ベイツが運営するワイナリーだ。クリスはHermann J. Wiemerのオーナーであるオスカー・バインクと共に、Finger Lakesの新時代を力強く引っ張ってきた。

Element WineryのPinot Noirは、まさに「40年前のブルゴーニュ」が現代に蘇ったかのような味わいで、淡くデリケートな味わいの中に、奥深い複雑性が宿る。シャルドネと同様に、現在このようなスタイルのピノ・ノワールが造られている場所は極めて限られているため、レパートリーに加えておくと、活躍する局面は多々存在するはずだ。






Cabernet Franc

Part.1でも解説した通り、Finger Lakesの本命はカベルネ・フランで間違いない。リースリング、シャルドネ、ピノ・ノワールも、それぞれFinger Lakesならではの、そして世界的にも貴重な個性をもっているが、「個性プラス品質」という側面から見れば、カベルネ・フランが圧倒的に優位なのは確実だ。


カベルネ・フランの品種特性であるピラジンを、精妙なバランスの中で、美点として表現できるFinger Lakesのテロワールは、この地をカベルネ・フランの世界的な聖地として押し上げるのに十分過ぎるほどのものだ。



Living Rootsは、Finger LakesとオーストラリアのAdelaide Hillsにワイナリーを構えている。若い夫婦が運営するだけあって、環境への配慮、ミニマルなアプローチ、ポップなデザインが光る注目のワイナリーだ。

Finger Lakesでは、ハイブリッドとヴィニフェラをブレンドした「エコ仕様」のワインや、リースリング、ピノ・ノワールなども手がけているが、白眉はCabernet Franc。ピラジンの影響を最小限にとどめるため、一般的には行わない全房発酵を取り入れ、品種特性をあえて全面的に押し出したようなワインには、ある種の爽快感すら覚える。




Element WineryのCabernet Francは、世界中のワインに精通するMaster Sommelierらしく、フランス・ロワール渓谷の大銘醸地Saumur-Champignyを彷彿とさせるようなスタイルに仕上がっている。むしろ、凝縮感とエレガンスが、低いアルコール濃度の中で目一杯表現されたような個性は、現代の(暑くなった)ロワール渓谷では、実現するのが難しくなってしまった味わいだ。



Hermann J. WiemerのCabernet Francもまた、クラシックなスタイルが魅力の傑作ワイン。長期熟成能力も抜群に高く、ヴィンテージから10年程度は、余裕でフレッシュさを保っている。総合的なバランス面では、Finger Lakesのカベルネ・フランらしさを最も緻密に表現したワインと言えるだろう。



Red Newt CellarsのCabernet Francは、つい笑みが溢れてしまうほどの、振り切った古典美がたまらない。Saumur-Champigny的なElement Wineryに対して、こちらはChinon的な味わいとなり、野太いミネラル感とアーシーなニュアンスが実に素晴らしい。



Lamoreaux LandingのT23 Unoaked Cabernet Francは、卓越したリースリングと同様に、この地の「最軽量級」となる。樽を使用していない影響もかなり大きいが、地域特性、品種特性が、どこまでも正直に表現されたチャーミングなワインには、もはや好感しかもてない。




最高のFood Wineとして

全体的にFinger Lakes産のワインを見ると、どの品種であっても一貫した「淡さと軽さ」が特徴となっていることがわかる。これは、ワイン単体として見た場合はインパクト不足にも繋がりやすいが、ペアリング用として考えれば、最高レベルのアドヴァンテージとなる。


近年は、世界的なワインの高アルコール濃度化と食のライト化が反発しているため、ペアリングに使いやすいワインがどんどん減少してしまっているが、Finger Lakesのワインならこの問題を楽々と突破することができる。


一般的には、一長一短といえば確かにそうかもしれないが、Finger Lakesの場合は「長」の部分が極めて有用であるため、もはや「短」(個人的には短とは思っていないが)の部分は無視してしまえるほどだ。


家庭の食卓や、レストランでこそ輝くワイン。Finger Lakesの魅力を、改めて認識した素晴らしい機会となった。

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