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A Place for Rosé (期間限定特別無料公開)
「日本では、ロゼワインが定着しない。」 「今年こそは、ロゼワインブームがくる。」 もう何年、この言葉を聞いてきただろう。 春になると、ワイン業界は思い出したようにロゼを売り始める。 桜が咲き始める。 そうだ、ロゼはピンク色だ。 よし、合わせよう。 発想としては、小学校低学年の色合わせと大差ない。 売り場には桜の写真が並び、SNSでは花見の風景にロゼのボトルが紛れ込む。 「桜色のワインで乾杯を」と一斉にプロモーションが展開される。 そして桜が散る。 ロゼも消える。 桜の開花から散るまで、せいぜい数週間。 その短い期間へロゼの需要を押し込み、自分たちの手で「期間限定商品」に仕立て上げたあと、 「日本ではロゼがなかなか定着しませんね」などと言っている。 これでは、そもそも定着させる気があるのか疑いたくなる。 もちろん、花見でロゼを飲むこと自体には何の問題もない。 満開に咲いた桜の樹の下で、良く冷えたロゼを開ければ、色彩的にも気分的にもよく似合う。 ただ、それを主な販売理由にした瞬間から、いろいろとおかしくなる。 国、産地、品種、テロワール、歴史、造り手

梁 世柱
8月12日


ナチュラルワイン:その自由は、どこで育ったか(期間限定無料公開)
ナチュラルワインを語るとき、私たちはしばしば、クラシックワインとは別の言語を使おうとする。 エネルギーがある。 生命力がある。 揺らぎがある。 身体に馴染む。 整えすぎたワインにはない、剥き出しの説得力がある。 たしかに、そういうナチュラルワインは数多く存在する。 グラスに注いだ瞬間、産地名、格付け、熟成ポテンシャルといった言葉を一度脇へ押しやり、飲み手の感覚へ直接触れてくるワイン。 果実、酸、タンニン、アルコールといった要素へ分解される前に、一つの動きとして身体にするりと入ってくるワイン。 ナチュラルワインがワインの世界にもたらした功績の一つは、この種の感受性を、無視できないものとして差し出したことだと思う。 だが、新しい言葉が必要だったことと、新しい言葉だけでワインの価値を説明できることは違う。 ここを取り違えると、ナチュラルワインを取り巻く話は急に危うさを帯びてくる。 クラシックワインの世界では、品質はいくつかの基本条件と結びつけて考えられてきた。 どの畑か。 その畑は、本当に優れているのか。 そこに植えられた葡萄は、その土地に適しているの

梁 世柱
5月21日


出会い <103> 陸の孤島と秘宝
Botanica Wines, The Mary Delany Chenin Blanc 2024. 本稿で登場する「出会い」ワインは、去る4月に都内で開催された、南アフリカ在住のMWであり、世界的な南アフリカワインの権威として知られる、Cathy Van Zyl MWによるマスタークラス内で紹介された。 南アフリカワインの推進力を担うような、クールでトレンディーなラインナップは、まさに最先端。 南アフリカのワイン地図には、中心から眺める者には見えにくい場所がある。 見えないのは、遠いからではない。 名声の光が、そこまで届くようには設計されていなかったからだ。 Skurfberg(スカーフバーグ)は、その典型である。 ケープタウンから北へ、湿った緑が少しずつ後退し、風景が乾き、砂と岩と低い灌木の言葉へ変わっていく。 Olifants River流域、Citrusdal Mountainの山あい。 大西洋からそれほど遠くないにもかかわらず、感覚としては陸の孤島に近い。 海はある。山もある。風もある。むしろ葡萄にとっては理想的とも言える条件で。

梁 世柱
5月2日


SNSを荒らした、自然派を「装った」ワインとは(特別無料公開)
突然、「日本ワイン 自然派」という語をめぐって、SNSがざわつき始めた。 何をいまさら、と思いながら経緯を追っていくと、日本のワイン産業に対して強大な影響力をもつとある人物が、「日本の自然派を装ったワインの98%は、飲めたものではない。あのようなものが、初めてワインを飲む人の口に渡ったら大変だ」という趣旨の発言をされたらしい。 この種の騒ぎではいつも、対象の輪郭も、言葉の射程も、文脈も十分に確かめられないうちに、断定だけが一人で歩き始める。 今回もまた、その見慣れた光景が、少しばかり華やかに再演されているように見える。 「自然派を装った日本ワイン」なるものを一括して断罪する声は、案の定、勢いよく増殖している。 SNSという劇場は相変わらず、考えるより先に合唱することにかけて、実に勤勉だ。 もっとも、ひとつ留保しておきたい。 私はその発言がなされた場に居合わせたわけではなく、ここで接しているのは、あくまで文脈を失った断片情報である。 したがって、以下は発言全体の精密な再現に基づく批評ではなく、現在流通している表現に対する限定的な応答にすぎないため、

梁 世柱
4月5日


資格試験の意味 なぜ挑戦すべきなのか。(無料公開)
2025年は、ソムリエ・ワインエキスパート呼称資格認定試験(以下、省略して「資格試験」と表記)の試験対策講座を、主任講師として務めるという新たなチャレンジの一年となった。 実は、過去に試験対策講座担当へのオファーは少なからずあったのだが、頑なに断ってきた。 理由は明白だった。 試験への対策という単純な意味であれば、(講師側に)特殊な領域の知識や、より現実的な見解などは必要ではなく、要点さえ押さえれば、ワインプロフェッショナルならできる人はたくさんいる。ワインの深部を探究することに情熱を燃やしに燃やしてきた私にとって、広く浅い世界を担当することに、限られた時間的リソースを割く意味性がなかなか見出せなかったのだ。 しかし、その考えは徐々に変化してきていた。 もちろん、そこにも理由がある。 資格試験を突破した人々から、「資格試験のせいで、ワインへの情熱を失ってしまった。」という声をあまりにも多く、頻繁に耳にしたからだ。 その結果だけを見るなら、まさに本末転倒としか言いようがない。 何が足りなかったのか、自分なら何ができたかも知れないのか。...

梁 世柱
1月10日


Sonoma Coast の可憐なリースリング
日本人女性オーナー兼醸造家としては、カリフォルニアで唯一無二の存在。 アメリカ合衆国の大統領や副大統領が主催する、国賓をもてなす晩餐会での採用。 輝かしい実績と人気を誇る Freeman Winery が、新たにポートフォリオに加わった リースリング...

梁 世柱
2024年11月18日


新時代のサスティナブル茶園 <AMBA Estate>
NYでサーヴィスを学んだ私は、徹底した分業制というシステムこそが、絶対的に正しいと信じるようになっていた。 ソムリエである私が、皿を下げたり水を注いだり、裏に回って皿洗いをしたり、ワイングラスを磨いたり、トイレ掃除をしたりすることは、メキシコなどから文字通り命懸けで越境し、...

梁 世柱
2024年7月27日


最強のワイン保存ガジェット、Coravinの進化と多様化
古くは Vacu Vin に代表される瓶内の空気を抜く方式のものから、比較的新しいものでは Pulltex のような瓶口に被せるだけのものまで、ワインをできるだけ長く保存させるための「ガジェット」は数多く開発されてきた。 私自身も様々なものを使用してきたが、...

梁 世柱
2024年5月21日


串10本に、10種のワインでペアリング <前編> 特別無料公開
先日、東京・根津にある比内地鶏を使った焼き鳥の名店 「照隅」 にて、 ペアリングワイン会 を開催した。 「10種の串それぞれに全く異なるワインを合わせる」 、というコンセプトの元、SommeTimesでも公開してきた ペアリング理論...

梁 世柱
2024年5月8日


PIWI品種はワイン産業を救うのか
近年、PIWI品種の是非がワイン業界関係者を問わず、議題として挙がることが格段に増えたと感じている。 PIWI(ピーヴィーと発音する)は、ドイツ語で「真菌耐性付き葡萄品種」を意味するPilzwiderstandsfähigen Rebsortenの略となり、日本語ではそのままPIWI品種、もしくは「カビ耐性品種」と呼ばれている。 まさにこの「カビ耐性」に特化した特性が、一般的なハイブリット品種とPIWI品種の決定的な違いとなるのだが、PIWI品種ならではの利点もまだある。 まず、長い時間(と研究開発費)をかけて時に30000回を超える交配を繰り返しながら開発されているPIWI品種は、伝統的なワイン造りの基本となるヴィニフェラ種が強く優位となるように調整されているため、古いハイブリッドにありがちなフォクシー・フレイヴァー(いわゆるキャンディー香)が限りなくゼロに近い。 さらに、PIWI品種の多くが、カビ耐性に加えて、寒冷、酷暑、旱魃への耐性も備えているため、気候変動への対応力も格段に高い。 カビ系疾病と気候変動への耐性が高いとい

梁 世柱
2024年4月14日


マサイアソン <カリフォルニアをリードする現代的自然農家>
まるで自然そのものの葡萄畑 、という話は良く聞くが、そんな ユートピア は本当にあるのだろうか。 私自身、数多くの「自然な」畑を訪ね歩いてきたが、エデンの園も、シャングリ=ラも、桃源郷も 実在していないという現実 だけを知った私が、今ここにいる。 ...

梁 世柱
2024年3月7日


洗練されたナチュラルワインの是非
イタリア行脚の後半は、一人でイタリアとスロベニアの国境沿い(歴史的に非常に深い理由があるが、文字通り一つの町が2つの国に分断されている)にあるゴリツィアへ来ている。 一人旅、特にど田舎の産地では、(筆者は運転免許をもっていないので)移動面で大変な苦労を伴うが、造り手と葡...

梁 世柱
2024年2月23日


Chinonが魅せるテロワールの妙
テロワール とは、 ワイン趣味の真髄 であり、 醍醐味そのもの だ。 その場所でその葡萄が育てられたからこそ現出するユニークな味わい は、ワインという飲み物に 無限の変数 をもたらす。 生産者の個性や産地全体としての特性ももちろんあるが、結局どの生産者もどの産地も、...

梁 世柱
2023年12月27日


コルク&スクリューキャップでの20年熟成比較
コルクとスクリューキャップによる熟成の違い。ワインラバーなら一度は抱く疑問に対する問いを検証する 「コルク&スクリューキャップでの20年熟成比較:オーストラリア5生産者全15ワイン試飲セミナー」 が、開催された。 主催はインポーターの ヴィレッジ・セラーズ...

水上 彩
2023年12月8日


チリの至宝 Emiliana
チリの Emiliana をご存知だろうか? 日本では、Concha y Toro、Cono Sur、Montes、Lapostolleといった(低価格〜高価格レンジまで幅広く手がける)中〜大規模ワイナリーが特に良く知られており、AlmavivaやClos...

梁 世柱
2023年11月9日


躍動するブリット・フィズ -Gusbourneの挑戦-
イングランドは、オールド・ワールドか、ニュー・ワールドか。 もし一般的な「 大航海時代より前に 」という法則を当てはめるなら、 11世紀 には南イングランドでワイン造りが行われていた記録が残っている(*1)ため、れっきとした オールド・ワールドに該当 する。しかし、...

梁 世柱
2023年5月12日


New York Wineレポート Part.2
Part.1 に続いて、本編はNY州産ワイン(Finger Lakes)のレヴューパートとなる。 今回の生産者来日では、 Long Island、Hudson River、Lake Erie からもワインが出展されていたが、 産地ごとの特徴を掴むには数が少なかった...

梁 世柱
2023年4月22日


New York Wineレポート Part.1
SommeTimesでは、たびたび NY州 のワインを取り上げてきた。 筆者がNYで長年ワイン修行をしていた縁、ではなく、単純にこの産地が 面白く、そして素晴らしい可能性を秘めている からだ。 現在NY州には、以下の 11つのAVA (American...

梁 世柱
2023年4月7日


La Maliosa ~時代の先を行く農の在り方~
私はそこへ行ったのではなく、大きな世界の小さな一部として、ただそこに在った。 ラ・マリオーザ 。 世界の理とは、在り方が異なる存在。 パルテノン神殿、マチュピチュ、そして霊峰富士のように。 その隔絶性は、ただならぬ神性を纏い、人々を強烈に蠱惑する。 踏み締める 大地...

梁 世柱
2023年3月23日


南アフリカの冷涼気候産地 <後編>
前編 に続き、後編でも昨年11月28日に開催された、オンラインセミナー 【 キャシー・ヴァン・ジルMWと巡る壮大な南アフリカワインの世界 Episode.2~冷涼気候産地~ 】の内容をレポートしていく。 前編では、南アフリカの冷涼気候を形成する決定的な要素である「 標高...

梁 世柱
2023年1月7日
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