top of page
検索


出会い <72> カルト・シャンパーニュ
Brigitte Fallon, Millesimé 2014. ¥18,000 私がワインを学び始めた20年と少し前の頃は、シャンパーニュと「カルト」というワードが結びつくことは、ほとんど無かったように思う。 ジャック・セロス、エグリ・ウーリエなどのレコルタン・マニピュラン(RM)ブームがすでに押し寄せてはいたが、RMとはいえ、それなりの生産量はあったため、全く手に入らないというほどのものでも無かった。 それから5年が経ち、10年が経った頃のタイミングから、どうも様子が異なり始めたと感じたのを、今でもはっきりと覚えている。 そう、カルト・シャンパーニュとでも呼びたくなるような極少量生産型のシャンパーニュが、続々と市場に出現し始めたのだ。

梁 世柱
2024年11月18日


再会 <72> カジュアルフレンチの救世主
Domaine Cauhapé, Jurançon Sec “Quatre Temps” 2020. ¥3,500 高騰を続けるワインの世界に救いはあるのか。 新型コロナ禍直前に比べると、複合的な理由から、平均して1.3~1.5倍の高騰となってしまった中、新たなカジュアルワインの発掘は、日本のワイン市場にとって、死活問題となっている。 特に、ブルゴーニュ、シャンパーニュ、ボルドーだけでなく、アルザス、ロワール、ローヌ、ジュラなどの産地にも高騰の大波が押し寄せているフレンチワインは、(不思議なことに、超高価格帯だけは堅調だが)我々の日常から、急速に遠ざかろうとしている。

梁 世柱
2024年11月10日


出会い <71> もう一つの大銘醸地
Prieler, Ried Steinweingarten 2022. ピノ・ブランは「偉大なワイン」となれるのだろうか。 おそらく、100人のワイン好きに訊ねても、Yesと答える人は1人いるかいないか、だろう。 それもそのはず。 そもそも、ピノ・ファミリーの中では圧倒的にピノ・ノワールの知名度と人気が高く、ピノ・ブランは実質的に、ピノ・ノワールの劣化版亜種のような扱いを受けている。 さらに、ピノ・ブランが一般的に最も良く知られている産地は、フランスのアルザス地方だと思うが、そのアルザスにおいても、ピノ・ブランは主役の座からは程遠く、高貴品種には同じピノ・ファミリーであるピノ・グリが名を連ねている。

梁 世柱
2024年11月4日


Wine Memo <29>
Smallfry Wines, Gewurz Bomb 2022. ¥4,000 オレンジワインは楽しい。 白ワインとして、長年にわたって練り上げられてきた、「クラシックな佇まい」とやらが、オレンジワインになった瞬間から、様変わりするからだ。 白ワインの常識は、オレンジワインには通用しない。 もしかしたら我々は、白葡萄の数だけ「学び直し」が求められている時代を生きているのかも知れないが、その分だけ楽しさが増えたと思えば、なんてことはないだろう。

梁 世柱
2024年11月3日


再会 <71> シャブリの黄金時代
Alice et Olivier de Moor, Chablis l’humeur du temps 2022. ¥6,600 ワインを学び始めた頃、白ワインの「基本中の基本」として、シャブリを知った人は多いだろう。 シャープな酸が持ち味の、淡麗辛口型白ワインの典型。 シャブリというワインをそう教わったはずだ。 しかし、近年の気候変動により、その「シャブリらしさ」は随分と影を潜め始めている。酸はまだなんとか高いレベルで維持できているが、フルーツの性質が明らかに「淡麗」の域を超えてきているのだ。 近年では、遅霜の被害による収量の激減と、ブルゴーニュ全域を襲う価格高騰で、「安くて美味しいワインの代名詞」だったシャブリが、すっかり非日常のワインになってしまったことを嘆く声が多く聞かれる。 確かに、シャブリが昔のままの酒質で、価格だけが高騰したのであれば、その嘆きも仕方のないことと思うが、実際には少し様子が異なっていることに、一体どれだけの人が気付けているのだろうか。

梁 世柱
2024年10月28日


出会い <70> ノーマークだった、極上シャルドネ
Markus Altenburger, Ried Jungenberg Chardonnay 2022. 完全にノーマークだった産地と葡萄品種の組み合わせに、心底驚かされることが時々ある。 そのような発見は、ワインを広く深く探究していくことの、最大の醍醐味の一つだ。 今回の「出会い」ワインは、オーストリア・ブルゲンラント州で、ブラウフレンキッシュやツヴァイゲルトを集中的にテイスティングする最中で出会った、驚異的なシャルドネ。 このシャルドネが育まれたのは、Leithaberg DAC内の小地区であるJois(ヨイス)。ノイジードル湖の北端から北、ライタ山脈の麓に広がる、Leithaberg最東端のエリアだ。

梁 世柱
2024年10月20日


再会 <70> ポルトガルの至宝
Casa Ferreirinha, Douro Reserva Especial 2014. 現地価格約€280 日本は世界で最も成熟したワイン市場の一つだが、「なんでもある」というわけでもない。 低価格〜ある程度の高価格帯までであれば、十分過ぎるほどのバリエーションで世界各地から集められているが、実は、意外なほどに最高級クラスには穴がある。 その「穴」の代表的なものの一つが、ポルトガル最高峰の赤ワインとして、あの分厚い教本にもその名が載っている、Casa FerreirinhaのBarca Velhaだ。 1952年に誕生したBarca Velhaは、現在に至るまで、僅か21ヴィンテージしかリリースされていない。 最新ヴィンテージは2024年の7月にリリースされたばかりの2015年で、その前は2011年、そのさらに一つ前は2008年ヴィンテージだった。 非常に興味深いことに、Barca Velhaは単一畑ワインではない。 標高120~280mにあるQuinta de Ledaの畑からのセレクションと、標高650mを超えるDouro...

梁 世柱
2024年10月13日


出会い <69> サントリーニ島の赤ワインとは
Gavalas, Mavrotragano 2020. ¥9,800 マイナー品種特有のクセの強さは、一度その世界に魅了されてしまうとなかなか抜け出せないほど楽しさに満ち溢れたものだが、特に絶滅危惧種ともなると、興味は尽きないものだ。 かつてはヨーロッパ大陸のあらゆる場所に、個性豊かな地品種が数えきれないほど多く根付いていたが、その多くはすでに絶滅、または絶滅に瀕している。 直接的とも言える原因は、ワインを真剣に学んだことがある人なら、一度はその名を耳にしたことがあるであろう、史上最悪の害虫フィロキセラだ。 フィロキセラ(和名:ブドウネアブラムシ)は、葡萄樹の根や葉に毒を注入してコブのようなものを生成することによって、葡萄樹の生育を著しく阻害し、最終的には枯死にいたらせてしまう昆虫の一種。 1845~1858年の間、当時は未知の病害であった「うどんこ病」への対応に追われ、すっかり疲弊していたヨーロッパのワイン産業を、フィロキセラが襲い始めたのは、1863年のこと。

梁 世柱
2024年10月6日


再会 <69> マイクロ・グローワー・シャンパーニュの世界
Domaine de Bichery, Champagne “la source” NV (2020). ¥10,000 シャンパーニュの在り方、というのは随分と変化してきた。 かつては、大手メゾンが文字通り「全て」と言いたくなるほど牛耳っていた時代もあったり、ジャック・セロス、エグリ・ウーリエなどの人気に引っ張られたレコルタン・マニピュランのトレンドがあったり、サロンやジャクソンなど、超大手とレコルタンの中間的規模のシャンパーニュが注目を集めたり。 なかなか目まぐるしい変化だが、ただ一つ変わらないのは、どのようなトレンドが押し寄せても、シャンパーニュが偉大な飲み物である、ということだ。 そして、過去10年間のトレンドとなっているのは、従来の一般的なレコルタンよりも更に小規模な、マイクロ・レコルタン、もしくはマイクロ・グローワーとも呼ばれる、超小規模生産者たち。 もちろん、その生産量の少なさもあって、セールス面では大手メゾンに遥か遠く及ばないが、マイクロ・グローワーが激増したこともあって、「集の力」が働き始めているのだ。 さらに、マイクロ・グ

梁 世柱
2024年9月29日


出会い <68> オリジナルのプライド
Ostal Levant, olé 2022. ¥4,100 ニューワールド諸国でのワイン造りは、大航海時代にヨーロッパから葡萄樹、葡萄栽培、ワイン醸造がセットになって持ち込まれたことによって始まった。 ワインの歴史におけるこの常識は、品質面においても大きな意味がある。 当然、オリジナルであるオールドワールド諸国では、「一日の長」どころか、場合によっては「数百年、数千年の長」がある。 長い年月の中で淘汰が繰り返された結果としてその地に残った葡萄は、テロワールとの親和性が極めて高く、栽培、醸造の「レシピ」に関しても、高い精度で完成しているケースが圧倒的多数となるのだ。 しかし、ニューワールド諸国におけるワイン造りの歴史も数百年がすでに経過し、あらゆる技術もグローバルなものとなった今、オリジナルとの品質格差はどれほど縮まったのだろうか。

梁 世柱
2024年9月22日


再会 <68> 大人のナチュール
L’Anglore, Tavel 2022. ¥8,500 造り手の変化は、「進化」として常に好意的に受けとめられるわけではない。 より良いワイン造りと誰よりも真摯に向き合っているのは、造り手自身に他ならないのだから、彼らの情熱が、時に理不尽な理由で拒絶される時、どうにも居た堪れない想いが込み上げてくる一方で、私自身にも確かに「覚え」がある。 私がこのテーマに関して考えるとき、二者の造り手が真っ先に頭に浮かぶ。 一つはシャンパーニュ地方のジャック・セロス。 かつては私も、必死になって探し求めていたシャンパーニュだったが、リューディ・シリーズをリリースし始めた頃から始まった、極端とも言えるような酸化的な味わいに、理解が全く追いつかなかくなった。

梁 世柱
2024年9月15日


出会い <67> キャリアチェンジへの憧れ
Domaine Chahut et Prodiges, Les Gros Locaux 2022. ¥3,800 「いつか自分でもワインを造るのか。」 知人、顧客、生徒たちから頻繁に受ける質問だが、答えはNo。 自分でモノづくりをしてしまうと、ジャーナリスト、教育者としての徹底した公平性を保てなくなる。 それが建前だが、本音は少し異なる。 大阪市内で生まれ育ち、NYで学び、東京で働く私は、生粋のシティ・ボーイ(ボーイというほどの年齢でも無いが)で、運転免許すらも取得していない。 取材などで国内外の田舎に赴くことは多々あるし、ゆったりと流れる時間の心地良さは十分に理解しているが、それでも自分がそのような場所で生きていくイメージはどうにも沸かない。

梁 世柱
2024年9月8日


Wine Memo <28>
金井醸造場, Vino da Manriki+Tenjin 朝焼2020. 今から約12年前、私がまだNYにいた頃の話だが、当時は現在でいう「オレンジワイン」の解釈がまだまだ固まっていなかった。 オレンジワインという言葉自体は徐々に浸透してきていたものの、その時代においては、ジョージアとゴリツィア周辺(イタリアとスロヴェニアの国境地帯)のワインのみがオレンジワイン(もしくはアンバーワイン)とみなされていたし、醸し発酵白ワイン(skin fermented white wine)という通称も現役だった。 さらにややこしかったのは、グリ葡萄を使用したオレンジワイン。 フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の銘醸、La CastelladaがリリースしたPinot Grigio(グリ系葡萄であるピノ・グリージオに、長期のマセレーションを施したワイン)は、NYのマーケットでも大きな衝撃と共に、流行に敏感なソムリエたちの話題を独占していたが、あくまでも同州の伝統的なワインであるRamato(偶発的にマセレーションが長期化したことによって誕生した、非常に淡い

梁 世柱
2024年9月6日


再会 <67> マニア向けの極上バローロ
Pio Cesare, Barolo “Mosconi” 2018. ¥23,000 ワインの探究と固有名詞の数々は、切っても切り離せない関係にある。 ワインでしか用いられない特殊な専門用語も多々ある上に、それらを理解していないとアドヴァンスな話には全くついていけなくなったりもする。 その最たる例と言えるのは、葡萄畑名だろうか。 世界中に無数に存在する葡萄畑名は、それ単体では、基本的に「識別記号」として機能している。 このことは、人の名前に当てはめてみるとわかりやすいかも知れない。

梁 世柱
2024年9月1日


出会い <66> 聖地のニュースター
Daniel Jaunegg, Sauvignon Blanc “Muri” 2021. 近年の日本における学校教育の実態を聞いて、私は開いた口が塞がらなくなった。 どうやら子供達に、徹底的に「競争」を避けさせている学校が数多くあるらしいのだ。 勝者と敗者を同時に生む競争の弊害に関しては、理解できる部分ももちろんある。しかし、運動会の徒競走で順位を決めないなどは、正直あまりにも極端に思えてならない。 切磋琢磨、という言葉はもはや死語なのだろうか。 そういう私自身も、旧時代の遺物として揶揄されることになるのかも知れないが、私は純然たる事実をここに書き記そう。 今の私は、絶え間ない競争の果てに在る、と。

梁 世柱
2024年8月25日


再会 <66> 北海道生まれ、最高のVin de Soif
Domaine Ichi, op.10 Petillant Naturel Rosé 2023. Vin de Soif(ヴァン・ド・ソワフ)という言葉に明確な定義があるわけでないが、一般的には、フレッシュかつフルーティーで、アルコール濃度が低く、極めてドリンカビリティに長けたワインのことを指す。 ワンフレーズで言い表すなら、「超グビグビ系ワイン」、といったところだろうか。 グビグビ、はサラサラでもスルスルでもゴクゴクでも構わない。どちらにしても、似たようなものだ。 この言葉自体がナチュラルワインを示唆しているわけでもないのだが、低亜硫酸醸造の方が、Vin de Soifらしい性質を遥かに実現しやすいというのもあり、実際にはナチュラルと呼べるカテゴリー内に入っていることが非常に多い。 そんなVin de Soifは、私にとって極めて重要な役割をもったワインである。

梁 世柱
2024年8月18日


出会い <65> 新世代のスタイリッシュなナチュラルワイン
Peltier Ravineau, les Bois brûlés 2023. ¥3,800 世代が変わればワインの味も変わる、というのは、ワインの世界では延々と繰り返されてきたことだ。 基本的には、だいたい10年単位で一世代と括ることができるので、私がワインを学び始めてから20年ちょっとの間に、その前の世代とさらに前の世代を遡って体験したことを踏まえれば、少なくとも四世代分、様々な産地の変化を見届けてきたことになる。 もはや多少の変化では驚きすらしなくなってきたことには、少々の寂しさと物足りなさを覚えもするが、それは仕方のないことだろう。 近年の世代交代で見られてきた変化の全体感を捉えると、オーガニック化と、テロワール重視への大幅な醸造技術のシフトという二つの傾向が真っ先に挙がる。 そしてその変化は、クラシック、ナチュラル関係なく、あらゆるジャンルのワインに及んでいる。

梁 世柱
2024年8月11日


Wine Memo <27>
Laurent Bannwarth, Riesling Bildstoeckle 2019. ソムリエとしての修行を始めて間もない頃。今から20年ほど前の話だ。 私は順当に、“当時は”ワイン界の中心にいたフランスの銘醸地、つまりブルゴーニュ、ボルドー、シャンパーニュから学び始めていたが、ワインの教科書を読み進めるうちに、とある産地に強く興味をもった。 フランスのアルザス地方だ。 理由は大したものではない。フランスなのにドイツ語が飛び交うだとか、度重なる戦争でフランス領とドイツ領を行き来したとか、ワインのボトルがドイツと同じ細長いタイプだとか。 その背景にある悲惨な歴史と理不尽に奪われた命には興味をもたず、ただただアルザスの特異性という結果だけが私を惹きつけた。

梁 世柱
2024年8月9日


再会 <65> 大ピンチを救ってくれた、思い出のワイン
La Biancara (Angiolono Maule), Sassaia 2022. ¥3,700 約12年前の年末、私は大ピンチに陥っていた。 当時NYのワイン業界では無名に等しかった私を、なぜか新プロジェクトのワインディレクターとしてヘッドハントした、今は亡き大恩師でもあるシェフ、デイヴィッド・ブーレーは、紛れもない天才中の天才だったが、いわゆる「サイコ」としても知られていた。 無理難題を突如押し付けてくるのは日常茶飯事、その荒波をなんとか乗り切りながらの仕事は、今思えば刺激的で充実したものだった。 ところが、年末が近づいてきたある日、ブーレーは私に「Mission Impossible」と思えるような超難題を放り投げてきた。 当時働いてレストランは、フレンチの要素を取り入れた高級和食店。 そして、和食店の年末年始といえば、おせち料理にも関連した難食材や料理が多く出てくる。 普段なら、そういう料理に対するペアリングは日本酒でかわしてしたのだが、ブーレーは、「子持ち昆布のお浸し」というスーパーワインキラーに対して

梁 世柱
2024年8月4日


出会い <64> 古代型ワインの妙
Atipico, Under the Plum Tree 2023. ¥5,800 人類最古のワインカテゴリーは何なのか。 とても興味深い疑問だが、考古学である以上、どのような見解にも頻繁に「おそらく」という枕詞がついて回る。 しかし、少なくとも白ワインが最も古いカテゴリーではない、という見解は極めて信憑性が高い。 現時点で見つかっている考古学的証拠からは、紀元前3500年頃に、最初の白ワインらしきものが現代のイランで造られ始めたと考えられている。 また、紀元前460年に、「医学の父」とも呼ばれる古代ギリシアのヒポクラテスが、白ワインを患者に処方したと記録しているため、確定に限りなく近い証拠という意味では、白ワインの最古の記述はヒポクラテスの処方記録となるだろう。

梁 世柱
2024年7月28日
bottom of page