top of page
検索


Wine Memo <3>
Kondo Vineyard, Nakai Mü lleワ 2022. ¥2,500 北海道。 山梨県、長野県と並んで、ワイン産地として広く認識されている、数少ない場所の一つだろう。 最近では、特にピノ・ノワール(余市産など)が注目を浴びていて、その品質もかなりのものだが、それ以上に面白いと個人的に感じるのは、ドイツ系品種だ。 適地適品種 、という考え方に基づくのであれば、(北海道といっても、ご存じの通り非常に広いので、ものすごく単純化した考え方となるが)共に寒い北海道とドイツの間には、確かに共通点が見えやすい。 (それほどシンプルなものでは決してないが)ドイツで上手くいく品種なら北海道でも、と考えるのは、少なくとも決定的に間違っているということはなさそうだ。

梁 世柱
2023年4月20日


出会い <26> 脱フレンチコンプレックス
Cantina Riezo, Ciao Ciao Rosso “Aglianico” 2020. ¥2,600 長い間、不思議に思ってきたことがある。 19世紀後半、ヨーロッパ全土がフィロキセラ禍に襲われた際に、失職したフランス人ワインメーカーの多くがニューワールドへと進出した、という歴史があるとはいえ、それから100年以上経った今でも、なぜ フランス系品種ばかりが「国際品種」となっている のか。 確かにフランス系国際品種は、 栽培学上も、醸造学上も研究が進んでいる ため、導入はしやすいだろう。 しかし、 世界中に数多あるテロワールに、フランス系国際品種しか適合しない、と考えるのは流石にどうにも無理がある 。 そして、このことが長年疑問視されてこなかった、と言う不思議もまたある。いや、正確に言うと、その他品種にチャレンジはしていたが、売上が悪かったので撤退した、と言うケースもかなりあるのだが、それにしても 世界のワイン産業は、異常なほどフランス色の強い文化を受け入れ続けてきた のだ。

梁 世柱
2022年12月11日


日本ワインペアリング <7> 山幸
本シリーズの第一回 で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。 本シリーズの第七回となる今回は、北海道で開発された 「山幸」(やまさち) を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。 山幸は、北海道の池田町にある十勝ワイナリー(日本では初の自治体が運営しているワイナリー)が「寒冷地に適した葡萄」として開発に携わった葡萄です。 親にあたる葡萄は、片方がフランスで開発されたハイブリッド品種のセイベル13053を基にして1970年に誕生した 「清美」 、そしてもう片方は日本の在来品種である 「山ぶどう」 です。 山幸が完成したのは、清美の誕生から36年後。山幸の6年前に誕生した「清舞」を含めれば、なんと 20,000回を遥かに超える試験栽培 が繰り返されたそうです。 十勝の期待を一身に背負った山幸は、2020年、 OIV(国際ブドウ・ワイン機構) に、甲州、MBAに次ぐ3番目

梁 世柱
2022年10月1日


98の勇気
まるでそこは、忘れ去られたかのような小さな集落が甦る、山梨県甲州市、塩山の福生里(ふくおり)。 塩山の美しく古い街並みの中には古寺も多く、武田信玄公の菩提寺 乾徳山恵林寺もある。一面に広がる葡萄畑や、多くのワイナリーが点在する同じ甲州市の勝沼近辺からは少し外れた、言わば山奥...

SommeTimes特別寄稿
2022年9月22日


出会い <20> 葡萄品種を気にしない、という自由
Gi ó Hills, thoải m ái Blanc 2021. ¥2,700 長野県・千曲川ワインヴァレー特集の 第2章 でも触れたが、2022年現在、 ワインを品種名で売らないといけない時代が終焉へと向かっている 。 ヨーロッパ伝統国の複雑な原産地呼称制度を覚えなければ、何もワインのことがわからない。そんな極端に高いハードルを、 「品種名で売る」 というアイデアが豪快に破壊し、ワインの裾野を広げるために、 多大なる貢献 をしてきたのは間違いない。 筆者がソムリエ修行をしていたニューヨークでも「品種名の便利さ」は顕著で、ごく一部の熱心なワインマニア以外は、ほぼ必ず品種名でワインを選んでいた。それがどの国のワインであっても、だ。 原産地呼称よりもはるかに使い勝手の良い 「共通言語」 となった品種名は、ワインをサーヴィスする人と、ワインを飲む人たちの間のコミュニケーションを劇的に簡素化し、様々なミス・コミュニケーションや、ロスト・イン・トランスレーションのリスクを低下させてきた。 実は、品種名でワインを売るというアイデアが、これほどまでに強力な

梁 世柱
2022年9月18日


日本ワインペアリング <6> 小公子
本シリーズの第一回 で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。 本シリーズの第六回となる今回は、西日本側で主に栽培されている 「小公子」 を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。 小公子は、日本葡萄愛好会の澤 登晴雄氏 が開発した品種ですが、日本だけでなく、中国圏やロシア圏の「 ヤマブドウ 」も含めて ヤマブドウ系品種を複雑に交配 したものと考えられていますが、 詳細は依然不明のまま です。 一般的にはヤマ・ソーヴィニヨンや、ヤマ・ブランと同様にヤマブドウ改良種の範疇に入っていますが、独特の個性を得るに至っています。 そんな小公子の最大の特徴は、 ヴィニフェラ種に非常に近い特性 をもっている点です。 野趣溢れるアロマ、非常に濃い色調、高い糖度、豊かな酸とタンニン、力強い余韻。 非ヴィニフェラ種や、ハイブリッド品種に一般的に見られる特徴とは明らかに反する、非常にヴィニ

梁 世柱
2022年9月10日


多雨な日本でのワイン造り
雨のない日が続いた昨年の生育期とは打って変わって、平年よりも雨が降りすぎている今年の北海道・北斗市。今回は日本でのブドウ栽培の大敵、多雨について考えてみます。 ご存じの通りブドウにとって水分の欠乏は、(程度はあるものの)ワインになるブドウにとっては良いことと捉えられています...

SommeTimes特別寄稿
2022年9月1日


考え抜くものたち <長野・千曲川ワインヴァレー特集 第2章>
日本ワインに明るい未来はあるのか。 その問いへの答えを探るには、何をもって「明るい未来」と考えるかを明確にしておく必要がある。 日本ワインが、現在の在り方の延長線上、つまり 日本国内消費量が極端に多い状況で発展していくだけ なのであれば、 その未来は明るい と言えるのかもしれない。 地産地消の流れがますます加速し、まだ産声を上げたばかりの産地にも第二、第三世代が現れれば、文化が徐々に形成され、地域に根付いていく。 日本人らしい丁寧な「モノづくり」を続けている限りは、安泰と言っても基本的には差し支えないだろう。 一方で、 世界の中での立ち位置を基準に考えた場合 、現状のまま日本ワインが「明るい未来」を迎える可能性は、 絶望的に低い 。 そしてその理由は、 ワインそのものの品質や個性では決してない 。 今、突破不可能とすら思えるような サスティナビリティという巨大な壁 が、日本ワイン産業の目前にまで差し迫っていることに気付いている消費者やプロフェッショナルは、非常に少ない。 そう、現在世界中のワイン産地が最重要視していることが、何よりも日本では難しい

梁 世柱
2022年8月31日


日本ワインペアリング <5> 竜眼
本シリーズの第一回 で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。 本シリーズの第五回となる今回は、長野県で主に栽培されている 「竜眼」 を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。 竜眼はいまだに 謎の多い葡萄品種 で、明治初年に中国から長野県に渡ったという説や、奈良時代にまで遡れるという説もあったり、一時期は甲州の親品種と考えられていたり(現在は遺伝子調査によって否定されました)、中国にある同名の「竜眼(LONGYAN)」と同じはずなのですが、形態学的には異なる部分も非常に多かったり、そもそも中国原産ではなく、カスピ海周辺が起源ではないかと言われていたり、などなど、どうにもすっきりしません。 日本国内での名称も、竜眼、龍眼、善光寺ぶどう、善光寺竜眼、長野竜眼など統一感があるようで無いという微妙な状況です。(善光寺とも関連があるのですが、その話をすると長くなりますので割愛

梁 世柱
2022年8月28日


繋ぐものたち <長野・千曲川ワインヴァレー特集 第1.5章>
「ここがワイン産地として成立しているのか、まだ良く分からない。」 ドメーヌ・ナカジマの 中島豊 さんが語った言葉は、この旅の中でも特に印象に残るものの一つだ。 現在千曲川ワインヴァレーには、 30軒の(醸造所付き)ワイナリー がある。 この数を少ないと思うか、意外と多いと思うのかは人それぞれだが、少なくとも「ワイン産地」と呼ぶには、世界各地の実情を鑑みる限り、 数だけなら十分 と言えるだろう。 一つの原産地呼称制度内に、一つのワイナリーしか存在していないケースは多々あるし、20軒程度でも原産地呼称を得ている広い産地も少なからずある。 では、それらの産地と千曲川ワインヴァレーを 隔てるもの があるとしたら、それはなんなのだろうか。 千曲川ワインヴァレーを総合的に見ると、まだワイン産地とは言い切れない理由があるとしたら、なんなのだろうか。 それは、 歴史と文化 だ。 歴史はそのまま年数でもあるため、この点はもうただただ待つしかない。 しかし、文化は違う。 文化とは人が作り上げるものだ 。そして、文化の構築は より広範囲で行えば、短時間でも可能 だ。.

梁 世柱
2022年8月23日


突き進むものたち <長野・千曲川ワインヴァレー特集 第1章>
梁世柱は日本ワインに冷たい。 散々言われてきたことだ。 確かに私自身もそれを否定できないという自覚をはっきりともっているが、そこには 明確な理由 が常にあったのもまた事実だ。 日本で造られたワインが、海外の(特にヨーロッパの)ワインに対する オマージュやイミテーション である限り、私はその元となったワインと 同じ評価基準で日本ワインを評価するしか選択肢が無くなる 。 その評価基準とは、ヨーロッパの 古典的価値観に基づいた品質評価 、そして その品質とワインに付けられた価格のバランス だ。 そもそも日本のテロワールに適合してるとは、ヨーロッパの基準で見れば到底言い難い外来種の葡萄を、極限の献身と、深い知恵でもって育てても、適地適品種という残酷なほど強大な壁にぶつかることは避けられない。当然、そこまで辿り着くための献身や知恵にも、多大なコストがかかる。 その結果、同程度、もしくはそれ以上の品質評価ができる海外産のワインが、日本ワインの半額以下で、「輸入品」として手に入ってしまう、という絶望的な状況から抜け出せくなってしまう。 私が多くの日本ワインに対

梁 世柱
2022年8月14日


日本ワインペアリング <4> マスカット・ベイリーA
本シリーズの第一回 で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。 本シリーズの第四回となる今回は、日本発祥のハイブリッド品種である 「マスカット・ベイリーA」 を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。 マスカット・ベイリーA(以降、 MBA と表記)は、 川上善兵衛氏 によって、アメリカ系葡萄品種の ベイリー種 、そして、フランスやイタリアで主に生食用の葡萄として栽培されていたヴィニフェラの一種である ミュスカ・ド・ハンブール (イタリア語ではモスカート・ディ・アンブルゴ、英語ではブラック・マスカット)の交配品種として、1927年に開発されました。 日本では、 「ベーリーA」と表記される方がより一般的 で、「ベリーA」や稀にですが「ベーリA」という表記も見かけます。しかし、親品種であるベイリー種の綴りが「Bailey」であることから、 「ベイリーA」と表記するのが最も

梁 世柱
2022年7月30日


再会 <17> 「らしさ」とは
農楽蔵, Nora Rouge 2017 日本でワインの仕事をするなら、日本ワインのことを無視するわけにはいかない。 時代は、インターナショナル&ボーダーレス。海外のワインプロフェッショナルやワインファンから、日本ワインのことを訊ねられるのはもはや日常茶飯事だ。 日本酒(清酒)、焼酎、お茶など、これまでは「日本色」の強い飲料に関して聞かれることの方が多かったが、近年は 日本ワインへの海外からの関心も確実に高まっている 。 「だから」、というとなんとも調子の良い話に聞こえると思うが、もちろん、自発的な興味は十分にもって、日本ワインとなるべく頻繁に接してきたつもりだ。 過去10年ちょっとの間に、様々な側面で、 日本ワインの品質は確かに向上してきた 。 だが、正直なところ、それでもまだ、大多数の日本ワインは、私にとっては「 ものたりない 」。 そう感じる理由もわかっている。 インターナショナルスタイル(*1)というカテゴリーのワインが、すでに旧時代の遺物となりつつある からだ。

梁 世柱
2022年7月23日


日本ワインペアリング <3> ブラック・クイーン
本シリーズの第一回 で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。 本シリーズの第三回となる今回は、日本発祥のハイブリッド品種である「 ブラック・クイーン 」を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。 ブラック・クイーンは、より有名な マスカット・ベイリーA と同様に、 川上善兵衛氏 によって、 アメリカ系葡萄品種のベイリー 、そして、 イギリスの食用ハイブリッド品種であるゴールデン・クイーン の交配品種として、1927年に開発されました。 親であるゴールデン・クイーン自体も、ヨーロッパ系ヴィニフェラ種とハイブリッド系品種の交配葡萄であることから、ブラック・クイーンに残った(一般的にワイン醸造に向いているとされる) ヴィニフェラ種の遺伝子割合は、かなり少ない ことがわかります。 そして、この遺伝的特徴は、ワインにも確かに現れてきます。 さて、ワインになった時の、一般的なブ

梁 世柱
2022年6月20日


山梨ワイナリーツアー「シャトー勝沼」編
去る2月のはじめ、山梨に視察に訪れました。ここ2年ほどはコロナで海外へ行くことが難しくなったこともあり、国内の産地へ出かけることが多くなりました。今回はその体験を皆様にシェアさせて頂き、メインで訪れた「シャトー勝沼」についてレポート致します。皆様が山梨をはじめとした国内の産...

SommeTimes特別寄稿
2022年4月13日


再会 <4> 日本を代表する白ワインの価値
Fermier, El Mar Albariño 2018. ¥10,000 実は、このワインには複雑な思いを抱いてきました。つい最近までは。 そして、私の考えが変わった「再会」は、 リリースされたてのワインから、その真価を測りきることがどれだけ困難なことか というのを、改めて思い知らされる貴重な学びの機会でもありました。 さて、今回の主役は アルバリーニョ 。そして、日本の、 新潟のアルバリーニョ です。 SommeTimesでも 特集記事 を組んだことがあり、コラムでも様々な執筆者から度々取り上げていますので、注目が強く集まっている産地であるのは、間違いありません。 早速ですが、本題に突入しましょう。 過去の私も含め、このワインの論点は、「 価格 」に行きがちだと思います。 新潟のアルバリーニョで一万円という価格は、確かにあまり多くの人が免疫をもっている領域では無いと思います。 しかし、熟成によってしっかりと味わいが開いた El Mar Albariño を飲んだ時の私の率直な感想は、「 一万円の価値は十分にある 」でした。

梁 世柱
2021年12月12日


久住高原に宿る山のテロワール
ある特定の果樹に、並々ならぬ興味と関心をもち続ける。 我々の行動は人々に奇妙に映っているのかもしれない。休日や暇な時間を見つけては、一般人が好むレジャースポットには目もくれず果樹を愛でる旅に出かけ、時には海を越え異国の地にまで赴くこともある。この果樹とはブドウの樹。一房のブ...

SommeTimes特別寄稿
2021年9月23日


そうだ 日本ワイン飲もう
今年の夏に起こった、例年とは違う出来事といえば、東京オリンピックでしょうか。 去年と変わらず未だ新型コロナ禍から脱せずにいる現状を悲観していてもしょうがなく、色々な意見、考えがある中で開催された今回のオリンピックですが、連日日本のメダル獲得のニュースに感動し、励まされ救われ...

SommeTimes
2021年9月16日


契約農家の重要性
北海道後志地方余市郡余市町 北海道余市郡余市町。ここ10年余りで、国内屈指のワイン産地として全てのソムリエ・ラインラヴァーに認知されるようになった注目の産地である。数々のワイン雑誌に頻繁に登場し、断片的にその情報に触れる機会も多いと思われるが、今回はそんな余市町のワインを、...

SommeTimes特別寄稿
2021年7月10日


日本ワインのグラン・クリュ
今回は日本ワインの優れた産地、つまりフランスなどのワイン産地でいうところの「グラン・クリュ」と呼べるような畑、エリアを日本のエリアの中で探究してみたい。テロワールの探究が進む今、「日本ワインのグラン・クリュ」とは何かを考えた。 ...

SommeTimes特別寄稿
2021年6月11日
bottom of page