「ここがワイン産地として成立しているのか、まだ良く分からない。」
ドメーヌ・ナカジマの中島豊さんが語った言葉は、この旅の中でも特に印象に残るものの一つだ。
現在千曲川ワインヴァレーには、30軒の(醸造所付き)ワイナリーがある。
この数を少ないと思うか、意外と多いと思うのかは人それぞれだが、少なくとも「ワイン産地」と呼ぶには、世界各地の実情を鑑みる限り、数だけなら十分と言えるだろう。
一つの原産地呼称制度内に、一つのワイナリーしか存在していないケースは多々あるし、20軒程度でも原産地呼称を得ている広い産地も少なからずある。
では、それらの産地と千曲川ワインヴァレーを隔てるものがあるとしたら、それはなんなのだろうか。
千曲川ワインヴァレーを総合的に見ると、まだワイン産地とは言い切れない理由があるとしたら、なんなのだろうか。
それは、歴史と文化だ。
歴史はそのまま年数でもあるため、この点はもうただただ待つしかない。
しかし、文化は違う。
文化とは人が作り上げるものだ。そして、文化の構築はより広範囲で行えば、短時間でも可能だ。
その文化を作り上げる役割を、造り手以外で担っている人々が、長野にはいる。
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