本シリーズの第一回で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。
ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。
本シリーズの第四回となる今回は、日本発祥のハイブリッド品種である「マスカット・ベイリーA」を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。
マスカット・ベイリーA(以降、MBAと表記)は、川上善兵衛氏によって、アメリカ系葡萄品種のベイリー種、そして、フランスやイタリアで主に生食用の葡萄として栽培されていたヴィニフェラの一種であるミュスカ・ド・ハンブール(イタリア語ではモスカート・ディ・アンブルゴ、英語ではブラック・マスカット)の交配品種として、1927年に開発されました。
日本では、「ベーリーA」と表記される方がより一般的で、「ベリーA」や稀にですが「ベーリA」という表記も見かけます。しかし、親品種であるベイリー種の綴りが「Bailey」であることから、「ベイリーA」と表記するのが最も正確(*)でしょう。
*国際的な葡萄登録機関であるO.I.Vには同義語として、ベイリーA、ベリーA、ベーリーA、ベーリAという四種類の呼称も一応登録されているので、(なぜ登録したのかという疑問はさておき)仮にベリーAと表記しても間違いではありません。
MBAも、ハイブリッド交配品種の宿命として、ヴィニフェラよりもラブルスカの特徴が強く生じています。
さらに、その特徴は、同年に川上善兵衛氏によって開発されたブラック・クイーンよりも強く立ち現れていると言えます。
分かりやすくいうと、非常に強いキャンディー香があるということです。。
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