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山梨ワイナリーツアー「シャトー勝沼」編

去る2月のはじめ、山梨に視察に訪れました。ここ2年ほどはコロナで海外へ行くことが難しくなったこともあり、国内の産地へ出かけることが多くなりました。今回はその体験を皆様にシェアさせて頂き、メインで訪れた「シャトー勝沼」についてレポート致します。皆様が山梨をはじめとした国内の産地を訪れるキッカケとなれれば幸いです。また今回の旅は視察とは言いましても、ワインスクールの生徒さんと出かけたツアーの一環であり、読者の皆様にも再現可能な旅となっております。


【山梨へはバスが便利】

朝7時に新宿からバスで出発です。今回は貸切バスを利用しましたが、新宿の「バスタ」(新宿駅にあるバスターミナル)から山梨行きのバスが常時出ているので、こちらを利用すると便利です。私が個人で行く際は基本このバスを利用しています。片道運賃も2000円程度で、鉄道を利用するよりも「早くて安くて楽」です。朝の東名高速道路は空いていて、通常2時間弱の所要時間ですが、30分ほど早く「シャトー勝沼」に到着しました。



【勝沼最古のワイナリー「シャトー勝沼」】

創業は1877年にまで遡ります。40余のワイナリーが集中している甲州市において最古の歴史を誇るのが「シャトー勝沼」です。到着後、まずは30分程度のプチセミナーを受講しました。その中でも語られたシャトー勝沼最大の特徴は、「鳥居平」で栽培されるおよそ70%ものブドウを管理していることにあります。



【鳥居平の3つの特徴】

鳥居平とは、甲府盆地の東の斜面に拓かれたブドウ畑のことで、遠くからでも東を向けばすぐに目に入る「鳥居」のような形をしていることからその名がついたとされています。山梨県は山に囲まれた盆地であることから、基本平地にブドウ畑が拓かれています。その中で急斜面に段々畑で拓かれた鳥居平は、他の畑とは異なるミクロクリマを有しており、上質なブドウが収穫できることで古くから知られていました。


鳥居平の特徴①「日照量が豊富」

日本ワインの課題として、度々日照量の不足が指摘されます。しかし南西向きの斜面に位置している鳥居平では、豊富な日照量と高い積算温度を得ることができます。


鳥居平の特徴②「笹子下ろしにより、ブドウの酸が保たれる」

甲府盆地の夏はとても暑く、40度に達することも珍しくありません。しかし鳥居平では、富士山からの冷たい風「笹子下ろし」が一日中吹いており、朝晩の寒暖差が激しく、ブドウは酸をキープしながら成熟することができます。訪れた日の天候は快晴、無風な一日でしたが、鳥居平に入った途端強烈な風とともに、気温がグッと下がる感覚を感じたのを覚えています。


鳥居平の特徴③「水はけのよい急斜面」

鳥居平は想像以上の急斜面です。足元を確認しながら作業をしないと危険なほどです。年間の降水量が1100mmと、諸外国のワイン産地に比べ雨の多い山梨ですが、鳥居平は急斜面であることから水捌けが良いメリットがあります。


ちなみにこの日体験させて頂いた作業は「仮剪定」。そもそも「剪定」(※1)の目的とは、芽の数を制限し大まかな収穫量をコントロールすることにあります。つまり、ボランティアの方が行えるような簡単な作業ではなく、本来熟練したベテランの方が行うべき大切な作業です。この日は枝が短くなりすぎないようにある程度の長さを残して切る、剪定の前段階のような作業を体験させて頂いたというわけです。ブドウの枝はとても固く、一本のブドウを切るだけでもなかなか思うようにいきません。また棚仕立てであるために、中腰で両手は上げたままの格好をキープしなければいかず、10分も作業をしていると体のあちこちが悲鳴をあげはじめます。改めてワイン造りは農業であると実感する体験となりました。


※1:昨年伸び切った枝を切る作業のこと。北半球では新シーズンが到来する直前の2月に行うことが多い。



(ワイン名)シャトー勝沼 鳥居平今村 勝沼 鳥居平ブラン

(タイプ)白ワイン

(ブドウ品種)甲州

(ヴィンテージ)2020

(価格)2,680円(税込み)






【シャトー勝沼 鳥居平今村 勝沼 鳥居平ブラン】

鳥居平で収穫された甲州を100%使用。フリーラン果汁のみを用い、20~23度のやや高めの発酵温度でフレンチオークを用いての樽発酵、その後6ヶ月のシュール・リー。11%という低めのアルコール度数ながら、ややリッチで肉付きのよいボリューム感とフレッシュな酸味が調和する。この日レストランで頂いた「豚のポワレ マスタードのソース カブのピューレと芽キャベツを添えて」に甲州のもつほろ苦味とグリーンのトーンが良く合っていました。ややリッチな甲州を白身のお肉に合わせるのも面白いです。


本日はワイナリーを訪れた体験談を書かせて頂きました。さいごに、ワイナリーを訪れる際のワンポイントアドバイスをして終わりにしたいと思います。



【替えの靴を持っていこう】

この日のランチはシャトー勝沼併設の「レストラン鳥居平」にて頂きました。このレストランは山梨県産の食材に合わせ、ソムリエがシャトー勝沼のワインを合わせてくれるコンセプトがあり、また高台に位置していることから眺望が良く、ワイナリー訪問者のみならず地元の方にも愛されている素敵なレストランです。このように「ワイナリーツアー」では素敵なランチが頂けるという楽しみが待っています。しかし、畑で作業したばかりの靴は汚れており、そのままの状態では素敵なレストランを汚してしまいかねません。そんなときの為に、靴の替えを持っていきましょう。ワインを勉強した我々だからこそできるちょっとした心遣いにより、ワイナリーの皆様も温かく迎え入れてくれることでしょう。



<ソムリエプロフィール>

佐々木 健太(ささき けんた)


南仏ニースにある一つ星レストラン「Keisuke Matsushima」にて研鑽を積む。


帰国後フォーシーズンズホテル丸の内東京、南青山レストラン「L’AS」のソムリエを経て独立。ワインスクールの講師としては5年目に突入。強引な暗記に頼らない理解がより深まる解説が、「資格取得後に差が出る講義」として絶大な支持を得る。現在は、2020年に新たに立ち上がった、Live配信専用ヴィノテラスワインスクール専任講師。また自身のYoutubeチャンネル「サイバーワインスクール」を運営。さらに「ワイン教育」を軸に、多数企業のコンサルティング業務に従事。ワインリストの作成からアプリケーションの開発など、幅広く活動。



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