本シリーズの第一回で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。
ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。
本シリーズの第六回となる今回は、西日本側で主に栽培されている「小公子」を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。
小公子は、日本葡萄愛好会の澤登晴雄氏が開発した品種ですが、日本だけでなく、中国圏やロシア圏の「ヤマブドウ」も含めてヤマブドウ系品種を複雑に交配したものと考えられていますが、詳細は依然不明のままです。
一般的にはヤマ・ソーヴィニヨンや、ヤマ・ブランと同様にヤマブドウ改良種の範疇に入っていますが、独特の個性を得るに至っています。
そんな小公子の最大の特徴は、ヴィニフェラ種に非常に近い特性をもっている点です。
野趣溢れるアロマ、非常に濃い色調、高い糖度、豊かな酸とタンニン、力強い余韻。
非ヴィニフェラ種や、ハイブリッド品種に一般的に見られる特徴とは明らかに反する、非常にヴィニフェラ的な性格がはっきりと確認できます。
先述した交配品種の不透明さも相まり、なぜ小公子がこのような特性を得たのかは非常に気になるところですので、いつの日か解明される日を願うばかりです。