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揺れ動くヒエラルキー <Alsace Grand Cru特集:Part.1>
フランスとドイツの国境に位置する アルザス地方 は、私にとっては特別な場所だ。 ワインを学び始めた時、当時はまだまだフランスワインが世界のスタンダードであったため、私も例外なくフランスからスタートした。 しかし、何かとすぐに脇道へ逸れたがる性格故か、最初に私が興味をもったのは、ブルゴーニュでもボルドーでもシャンパーニュでもなく、 アルザスだった のだ。 そう、 私のワイン人としての歩みは、アルザスと共に始まった と言っても良い。 初めて激しく心を揺さぶられた 「グラン・ヴァン」 も、アルザスのワイン(Marcel DeissのSchoenenbourg)だった。 Alsace 何が私をアルザスへと導いたのか、あまり記憶が定かではないが、おそらくその 「歴史的背景」 がそうさせたのだろう。 アルザスの歴史を辿ると、いかにこの地が権力者たちの争いに、深く、そして理不尽に巻き込まれてきたかが分かる。 西暦870年 に、 東フランク王国 (後に神聖ローマ帝国、ドイツ帝国、現在のドイツへと繋がる一大国家)の一部となったアルザスは、最後にして最大の宗教戦争と

梁 世柱
2023年8月15日


味が変わる=悪、なのか
去年と味が違う。10年前の方が良かった。30年前は全てが素晴らしかった。 ワインというのは、何かにつけて、 味わいの変化が否定的にみなされる 事が多い(その逆もあるが)飲み物だ。 もちろん、そう言いたくなる気持ちも分からないではない。 ビール に関して、「昔のキリンの方が良かった」なんていう意見は滅多に聞かないし、 ウォッカやジン もそうだ。 我々が日常的に口にするアルコール飲料の中に、本質的には 味わいが変化しないタイプのものが数多くある からこそ、一部の「変わるもの」に対して、時に過敏に反応してしまう。 少し 例外 が見え隠れしてくるのは、 ウィスキーや日本酒 などだろうか。 ウィスキーはブレンドマスターの交代や、原酒の過不足、熟成樽の変更などによって、どうしても味わいが変わるし、日本酒も代替わりなどによってスタイルが全面的に刷新されることが多い。 これらの「変わることがある」アルコール飲料に共通しているのは、 その変化が「人的要因」によって引き起こされている 点と言えるだろう。 そして、人的要因による変化なのであれば、それは 批判の対象とな

梁 世柱
2023年8月12日


出会い <42> 幻の極甘口
L’Arco, Recioto della Valpolicella 2017. ¥11,500 世界三大貴腐ワイン といえば、フランス・ボルドーの ソーテルヌ 、ドイツ(主にモーゼル)のリースリング TBA 、そしてハンガリー・トカイの エッセンシア 。 バランスに優れた優等生的ソーテルヌ、強烈な甘味と強烈な酸のコントラストがダイナミックなTBA、グラスで普通に飲むとその高過ぎる糖分(と粘性)で、血糖値が一瞬で上がり過ぎるので、専用の小さなスプーンで「舐める」という、何とも尖りまくったエッセンシア。 三大貴腐ワインはどれもなかなか個性があって面白いのだが、ある程度生産量があるソーテルヌ以外(ディケムなどのトップシャトーを除いて)は、どれも 非常に高価なワイン となる。 そもそも貴腐菌で萎んだ葡萄から、なけなしの果汁を搾り出して造るのだから、コストが上がるのは当然だが、その最も極端な例である エッセンシア に至っては、 1haの葡萄畑から最大でも1 ℓ程度のワインしか造れないという、もはやビジネスとして成立しないレベルのものだ。...

梁 世柱
2023年8月6日


樽とワイン <後編>
後編となる本稿では、 David Ramey氏 が語った 「樽を使う本当の意味」 に、焦点を当てていく。 なお、今回の話は一人の醸造家による「意見」であるため、別の見解も当然存在していることはご理解いただきたい。 樽とはワインを入れるための容器である 私がDavidに対して最初に投げかけた質問は、 「なぜ樽を使うのか?」 というシンプルなものだった。 この質問を最初にもってきたのも、ちゃんとした意図があってのこと。 1980~2000年代をトップワインメーカーとして駆け抜けてきたDavidは、当時強大な影響力をもっていた米国のワイン評論家、ロバート・パーカーJr.の嗜好を、ワイン産業及びワイン市場が、部分的に「湾曲解釈」したことによって生まれた 「パーカリゼーション」時代 の当事者だ。 「More is More」 とでも言わんばかりの、濃厚で芳醇で、極端に凝縮したワインがもてはやされた時代を走ってきたDavidにとって、現代の 「Less is More」 な風潮はどう見えているのだろうか。 新樽100%が正義とされていた過去と、新樽比率が低い

梁 世柱
2023年8月5日


Not a Wine Pairing <3> 紹興酒と四川料理
クラシック・ペアリングというものは、何もワインの専売特許という訳ではない。 特定の食と飲が同一文化の中で共存し続けた結果、一部の組み合わせが完璧なクラシックへと昇華する例は、世界各地に少なからず存在する。 ペアリングの新シリーズ「 Not a Wine Pairing 」では、『ワイン以外のクラシック・ペアリングから、ワイン専門家や愛好家が何を学べるのか』をテーマとして、様々な検証を行なっていく。 第三回のテーマは、近年日本でも爆発的に人気が出てきた 四川料理と 、中国酒を代表する 紹興酒 との組み合わせ。 余談だが、筆者は生粋の辛党だ。 辛いものを食べ過ぎると味覚が鈍る、だからソムリエは辛いものを食べない 、なんていう謎めいた話もあるが、これは 嘘と誤解 によるものだ。

梁 世柱
2023年8月3日


テロワールと葡萄 <Languedoc特集:後編>
優れたテロワールから、凡庸なワインが生まれることは少ない。 凡庸なテロワールから、優れたワインが生まれることも少ない。 時折、テロワールの高き壁を突破したかのような造り手に出会うこともあるが、そんな天才がそこら中に転がっているわけなどない。 ワインという飲み物と、常にセットで語られるこのテロワールというものの正体は、温情のかけらも無い、徹底的に非寛容な存在なのだ。 ラングドックの重要AOP 前編では、筆者が私見に基づいて改変した、ラングドック地方のAOP格付けをご紹介した。 わざわざ公式なものを改変した理由はただ一つ、「テロワールは嘘をつかない」と私が信じているからだ。 より優れたテロワールに、適切な葡萄が植えられていれば、(ある意味極論ではあるが)よほど稚拙な仕事をしない限り、その偉大さは必ずワインに宿る。 ブルゴーニュの特級畑モンラッシェなどは、その良い例だろう。 モンラッシェという偉大なテロワールを前にしては、多少の実力差など、誤差程度の変数にしかならない。 後編となる本編では、格付けでリストアップしたAOPの中から、特に重要度が高いと判断

梁 世柱
2023年7月31日


樽とワイン <前編>
2023年7月29日。 オンラインワインスクール 「Vinoteras」 にて筆者が開催したセミナーは、海外のワインメーカーをゲストに招き、特定にテーマに基づいてディスカッションを行なっていくシリーズの第二弾だった。 サシ・ムーアマンをゲストに招いた、第一弾の ビオディナミ編 に続いてテーマとしたのは、 「樽」 。 今回のゲストは、アメリカ・カリフォルニア州のトップワインメーカー、 Ramey Wine CellarsのDavid Ramey氏 だ。 Davidは樽に関する数多くの研究を行なってきたことでも知られ、セミナーでは 「目から鱗」 の内容も多々含まれていた。 本レポートの前編では、ワイン樽に関する一般論について、一度整理しておく。 ワイン樽の歴史 樽とワインが関連した最初の記述が登場するのは、 紀元前2,500年頃 に関するもの。 「ヤシの木」 から造られた樽で、アルメニア産ワインがバビロンへと運ばれていたという記録が残っている。(記述したのは、紀元前5世紀に活躍した古代ギリシアの歴史家ヘーロドトス。)

梁 世柱
2023年7月30日


ヴィニュロンの一年 <2023年7月>
6月8日に始まった長い長い 梅雨 が、ようやく明けた。 気象庁は7月22日、長野県を含む関東甲信地方が梅雨明けしたとみられると発表、 平年より3日遅く去年より1日早い梅雨明けで、 梅雨明け前90日間の合計降水量は393.5mm(平年比131%) であった。 6月末から7月に発生した日本各地の豪雨により、多くの方が被災された。 ブドウにとっても厳しい天候が続き、特に開花前後の降雨による果実への影響、高湿度による病気の発生が多く発生し、雨の恐ろしさを再認識する年となった。 10月の収穫までまだ3か月近く残っており、今後の晴天を祈るばかりである。 【開花】 6月中旬から開花を始めたブドウ達。

ソン ユガン
2023年7月27日


ガストロノミック・ペアリング <1>
ペアリング研究室の新企画となる ガストロノミック・ペアリング では、中級者以上を対象に、より高度かつ複雑な技法を駆使した、美食的完成度の高いペアリングを紹介、検証していく。 第一回のテーマは、 『とうもろこしのフラン、黒トリュフソース』 。 複雑なペアリングを成立させるための第一歩は、 基礎部分を強固に固める ことにある。 つまり、ロジカル・ペアリングの中でもより優先度が高い、 「酸、甘味、渋味、アルコール濃度」 の4項目で、 「間違えない」 ことが重要となるのだ。 まずは、 ワインの酸 。 カットの対象となる、塩分、油分、脂肪分の全てがやや低めの料理であり、調和の対象となる料理側の酸も無い。 つまり、ワインの酸が高い必要は無い、ということになる。

梁 世柱
2023年7月26日


ワインとAI Part.3
本シリーズでは、AIの進化が、ワインの世界に携わる人々にどのような影響を与え得るのかについて、実際に Google Bard でコマンド入力を行いながら検証していった。 Part.1では、AIがもっともらしいウソをつく「 ハルシネーション 」と、その問題点について、Part.2では、AIが苦手とする 曖昧さへの対応 と、現状での問題点に関して考察してきた。 そして、最後となるPart.3では、 一般的な人の反応や対応 に着目しつつ、AIとの比較を行なっていく。 まずは、 消費者目線 から考えていこう。 実は、消費者にとって、「ハルシネーション」や「曖昧さへの不対応」は、 さほど問題にはならない ことが多いのでは無いだろうか。

梁 世柱
2023年7月18日


ナチュラルワイン・ペアリング <5>
「欠陥的特徴」とも呼ばれるナチュラルワインに散見される風味を、あえてポジティヴに捉え、積極的にペアリングで用いていく方法を検証していく当シリーズ。 最終回となる今回は、 「ネズミ臭」 をテーマとして考えていくが、実はネズミ臭だけはポジティヴなペアリングを展開することが非常に難しい。 よって、ネズミ臭に関しては、ペアリング要素としての積極的な使用法ではなく、いかに発現を抑えるかについて検証していく。 ネズミ臭 は、発酵中、もしくは熟成中のワインが、過剰に酸素にさらされたときに起こると考えられている、細菌汚染の一種。現時点での研究では、乳酸菌が主因である可能性が高いとされているが、酵母菌のブレタノマイセスとの関連を指摘する研究結果も報告されている。

梁 世柱
2023年7月15日


未来の担い手 <Languedoc特集:前編>
ワイン王国フランス。 おそらく、ワインを学んできた人々の大多数が、最初にその知識を深めた国だ。 もちろん、生産量世界一位の座をもう一つのワイン王国であるイタリアと毎年のように競いあっているフランスが、 世界で最も重要なワイン産出国の一つ であることには、疑いの余地もない。 また、ニュー・ワールド諸国で栽培されている主要葡萄品種のほとんどが、 「フランス系国際品種」 (そのオリジンはさておき)に該当するという点においても、フランスが 世界的なワインの「基準」 となっていることも事実。 さらに、 テロワールの横軸(差異)と縦軸(優劣)の両方 において、 「格付け」、「原産地呼称制度」というアイデアを高次元で先導してきた のもフランスだ。 このように、ワインという飲み物を世界規模で理解する(イタリア、スペインなど、特定の国に専門化した場合はその限りでは無い)のであれば、 確かにフランスは避けて通れない 。 世界的銘醸地とされるシャンパーニュ、ボルドー、ブルゴーニュの名声は天よりも高く、ロワール、アルザス、ローヌ、プロヴァンス、ジュラなどもじっくりとその

梁 世柱
2023年7月14日


アルゼンチン テロワールと品種の探求(後編)
前編の最後にお見せしたこの写真から、後編を始めようと思う。 アルゼンチンの今の品種の多様性を端的に表しているこの写真だが、実はそれに留まらない。全てウコ・ヴァレーのワインだが、 品種名の下にはその生産地区の名前が書かれている ところに注目してほしい。 セミヨン(トゥプンガト)、シュナン・ブラン(ビスタ・フローレス)、ソーヴィニヨン・ブラン(トゥプンガト)、アルバリーニョ(サン・パブロ)、ベルデホ(サン・パブロ)、カベルネ・フラン(サン・パブロ)。 これが今のアルゼンチンを表す もう一つの多様性 、つまり テロワール である。 アルゼンチンのワインにテロワールを感じたことがあるだろうか? メンドーサはどこでも一緒だと思っていないか? ウコ・ヴァレーの名前を聞くことはあっても、その特徴とはなんだろうか? そして、アルゼンチンにグラン・クリュは存在するのだろうか? メンドーサ 前編でも説明したようにアルゼンチンは4つの産地に大別されるが、 最も重要な産地はクヨ だ。なぜか。 単純な理由である。 アルゼンチンのブドウ畑の95%がここにある のだ。 さらに

別府 岳則
2023年6月28日


ナチュラルワイン・ペアリング <4>
「欠陥的特徴」とも呼ばれるナチュラルワインに散見される風味を、あえてポジティヴに捉え、積極的にペアリングで用いていく方法を検証していく当シリーズ。 今回は、 「ブレタノマイセス」 をテーマとして考えていく。 酵母菌の一種である腐敗酵母菌ブレタノマイセス(通称ブレット)は、葡萄畑や醸造所に潜んでいる。その繁殖力は強力で、支配的になった場合は、 馬小屋臭 とも表現される強烈な異臭を生じさせる。葡萄畑にも潜んでいることから、特にヨーロッパの伝統産地においては、調和の中にある 少量のブレタノマイセスは、複雑なテロワールを形成する要素の一つとして考えられることも多く、 その場合は、 野性味やなめし革 と言った好意的な表現が用いられる。また、リリース時には支配的であったブレタノマイセスは、5~10年程度の熟成によって、美点とも捉えることができる変化に至るケースがある。 ブレタノマイセスは、還元臭と同様に「アロマ」の一種と考えるため、ペアリングにおけるポジティヴな利用方法は、「風味」の一点張りとなる。 ここでも、基本的な考え方は、 よく似た風味同士の調和 だ。

梁 世柱
2023年6月24日


ワインとAI Part.2
生成系AIは「正解」してこそ価値がある。 Part.1では、「 ハルシネーション 」と呼ばれる、AIが「 もっともらしいウソ 」(事実とは大きく異なる内容や、文脈と関連性の無い内容)を生成してしまう現象と、その問題点について考えていった。 しかし、現在の主流技術となっている 大規模言語モデル (膨大なテキストデータを用いてトレーニングされた、自然言語処理モデル)が、この先も急速に洗練されていくのは間違い無いため、ハルシネーションの解決は時間の問題と言えるかも知れない。 さらに、Facebookを運営する米IT大手の Meta 社で、チーフ・AIサイエンティストを務めるヤン・ルカン氏(AI研究の第一人者として知られる)は、2023年6月13日に、 「生成AIは既に過去のものであり、最悪だ。人には常識があるが、機械には無い。我々はこの技術を捨て、JEPA(抽象的なアイデアの概念化を可能にすることを目指す、新たな予測アーキテクチャー)を採用する。」 と語った。

梁 世柱
2023年6月16日


アルゼンチン テロワールと品種の探求(前編)
ワインの世界における アルゼンチン の存在は、我々が思っている以上に大きい。 2021年 の国別のワイン生産量では 1,250万hLで7位 。オーストラリア(1,420万hL、5位)やチリ(1,340万hL、6位)とほぼ並んで 南半球最大の生産量を毎年争っている 。 1,060万hLで8位だった南アフリカも含め、これだけ生産量がある国なら、 そのワインも一般的には多様 だ。 例えばオーストラリアは、フルボディで甘いシラーズの画一的なイメージから、完全に脱却したと言っていいだろう。ヨーロッパがすっぽり入るだけの巨大な国土に散らばる、産地や品種の多様さは枚挙にいとまがない。 チリはいまだにスーパーマーケットの棚の大きな部分を占める、低価格なヴァラエタルワインの産地ではあるが、フンボルト海流とアンデスに挟まれた特殊な気候条件や、北のアタカマ、南のイタタやビオビオなどのテロワールへの理解も少しずつ進んできている。新しい品種なら、特にイタタやビオビオのパイスやサンソー、マスカットが注目だ。 南アフリカ?今更言うまでもなく、日本のマーケットで今最も注目されて

別府 岳則
2023年6月13日


ナチュラルワイン・ペアリング <3>
「欠陥的特徴」とも呼ばれるナチュラルワインに散見される風味を、あえてポジティヴに捉え、積極的にペアリングで用いていく方法を検証していく当シリーズ。 今回は、 「還元臭」 をテーマとして考えていく。 還元臭は、ワインが嫌気的環境に晒された時、及び発酵中のワインに窒素が欠貧した際などに発生する。軽度の場合は、 火打ち石 の様な香りを発し、欠陥とはされず、クラシック・ワインの中にこの香りが出ているワインは多々存在している。重度の場合は、亜硫酸の揮発に由来する茹で卵を思わせる 硫黄臭 (白ワインで特に顕著)や、チオールに由来する 焼けたゴム の様な強烈な香り(赤ワインとオレンジワインで特に顕著)が生じる。 デキャンティングやスワリング等の手段で、ワインを空気に触れさせると、不快臭を揮発させることも可能ではあるが、現実的な範囲の時間内で改善するとは限らない。また熟成によって、還元的特徴が潜むことがあるが、逆により強まってしまうケースもあるため、確実な予測を立てた対処は非常に難しい。 還元臭はシンプルに「アロマ」の一種であるため、ペアリングにおけるポジティヴ

梁 世柱
2023年6月8日


ワインとAI Part.1
OpenAI社の ChatGPT 、Google社の Bard 、Microsoft社の BingAI 。 文章生成AIや対話型AI(以降、統一して 生成系AI と表記)などと呼ばれるこれらの新技術は、私のようなワインプロフェッショナルが聖域と信じて疑わない領域に、いよいよ足を踏み入れようとしているのだろうか。 現代人の必須ツールとなって久しい 検索エンジン は、すでにGoogleやMicrosoftなどによって、 生成系AIとの統合 が進んでいる。 今後さらに、 SiriやAlexa といった、 音声認識・ヴァーチャルアシスタントアプリケーションとも統合 されていくのは間違いないだろう。 そして、生成系AI、高機能検索エンジン、進化した音声認識アプリケーションが 高次で統合 された時、私は いよいよ聖域が荒される可能性 があると感じている。 「高次で」 と書いたのは、 現状ではまだ不完全な部分があまりにも多い からだ。 生成系AIもまた、 プログラムの一種 であることには変わらない。 つまり、他のあらゆるプログラムと同様に、望んだレスポンスを正

梁 世柱
2023年6月7日


アメリカ西海岸の最前線 -Sashi Moorman-
『レトロなワインであり、昔のスタイルのワイン。』 アメリカ西海岸の最前線に立つ サシ・ムーアマン は、自身のワインをそう表現した。 カリフォルニアでは、 Domaine de la Côte、Sandhi、Piedrasassi 、そしてオレゴンでは Evening Land のワインメーカーとして活躍するサシは、筆者とも懇意にしている造り手だが、私はあえて彼のワインをこう表現しようと思う。 『現代の知見で精巧に再現された、アンティーク調のワイン。』 そう、確かにレトロで昔風だが、サシのワインは、 「今」の先頭を駆け抜けている のだ。 ワインにおけるスタイル上の世界的なトレンドは、常に 「揺り戻し」 を繰り返しながら前進してきた。 1990〜2010年代初頭 にかけての 約20年間 は、広義でいうと 「技術の時代」 と考えて差し支えないと思うが、今の最先端は、 1960~1980年代と第二次世界大戦以前のアプローチを混ぜ合わせた 上で、 最新の知見を随所に取り入れたスタイル が主流となりつつある。 そして、その最先端スタイルの根幹を成しているもの

梁 世柱
2023年6月5日
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