『レトロなワインであり、昔のスタイルのワイン。』
アメリカ西海岸の最前線に立つサシ・ムーアマンは、自身のワインをそう表現した。
カリフォルニアでは、Domaine de la Côte、Sandhi、Piedrasassi、そしてオレゴンではEvening Landのワインメーカーとして活躍するサシは、筆者とも懇意にしている造り手だが、私はあえて彼のワインをこう表現しようと思う。
『現代の知見で精巧に再現された、アンティーク調のワイン。』
そう、確かにレトロで昔風だが、サシのワインは、「今」の先頭を駆け抜けているのだ。
ワインにおけるスタイル上の世界的なトレンドは、常に「揺り戻し」を繰り返しながら前進してきた。
1990〜2010年代初頭にかけての約20年間は、広義でいうと「技術の時代」と考えて差し支えないと思うが、今の最先端は、1960~1980年代と第二次世界大戦以前のアプローチを混ぜ合わせた上で、最新の知見を随所に取り入れたスタイルが主流となりつつある。
そして、その最先端スタイルの根幹を成しているものは、「冷涼気候」と「低介入醸造」だ。
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