「欠陥的特徴」とも呼ばれるナチュラルワインに散見される風味を、あえてポジティヴに捉え、積極的にペアリングで用いていく方法を検証していく当シリーズ。
今回は、「ブレタノマイセス」をテーマとして考えていく。
酵母菌の一種である腐敗酵母菌ブレタノマイセス(通称ブレット)は、葡萄畑や醸造所に潜んでいる。その繁殖力は強力で、支配的になった場合は、馬小屋臭とも表現される強烈な異臭を生じさせる。葡萄畑にも潜んでいることから、特にヨーロッパの伝統産地においては、調和の中にある少量のブレタノマイセスは、複雑なテロワールを形成する要素の一つとして考えられることも多く、その場合は、野性味やなめし革と言った好意的な表現が用いられる。また、リリース時には支配的であったブレタノマイセスは、5~10年程度の熟成によって、美点とも捉えることができる変化に至るケースがある。
ブレタノマイセスは、還元臭と同様に「アロマ」の一種と考えるため、ペアリングにおけるポジティヴな利用方法は、「風味」の一点張りとなる。
ここでも、基本的な考え方は、よく似た風味同士の調和だ。