top of page
検索


出会い <16> 中国で発見、ピノ・ノワールの好適地
Silver Heights, Jia Yuan Pinot Noir 2019. ¥5,700 中国はかねてからニューワールド新興産地として、大いに期待されてきた。 生産量ベースではすでに世界10位近辺におり、ニュージーランド、オーストリア、ギリシャといった国々を上回り、年によってはポルトガルさえも超える。 当然、日本の生産量は、中国には遥か遠く及ばない。 中国がワイン産地として期待されてきた理由は、主に 2つ ある。 一つはその 圧倒的な国土の広さ だ。 超大量生産型も可能だが、それ以上に、 「あれだけ国土が広ければ、どこかに最高の好適地があるはずだ。」 という期待の方がずっと大きい。 それもそうだろう。超大量生産型ワインはすでに飽和状態だし、そもそもそのコンセプト自体が時代と逆行している。 もう一つの理由は 資本力 だ。 ワイン造りにはお金がかかる。特によりインターナショナルなスタイルでワインを造る場合、ヨーロッパ伝統国やニューワールド各国のワインと対抗するためには、莫大な設備投資が必要になる。 また、ワイン造りそのものの経験にも乏しいため

梁 世柱
2022年7月17日


再会 <16> ピラジンの何が悪いのか
Latta, Cabernet Franc “Benovolent” 2021. ¥5,500 ワインプロフェッショナルと一口に言っても、様々なタイプの人がおり、当然のようにそれぞれ異なったフィロソフィーをもっている。 私自身は基本的には非常にオープンなタイプだが、ある特定の考え方に対しては、頑なな態度を見せることも少なからずある。 例えば、ブルゴーニュ、ボルドー、シャンパーニュ、バローロ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、リオハ、プリオラートといった世界最高峰の銘醸地に対して、全くリスペクトをもっていないタイプのワインプロフェッショナルとは、どうも馬が合わない。 意外といるものだ。カリフォルニア至上主義とか、ゴリゴリのナチュラル至上主義とか、なかなかに偏った人たちが。 ワインの世界は広いから楽しいのに 、と何とももどかしい気持ちになる。 それが本人の「好み」なのであれば、何の問題も無いのだが、ワインのことを他者に伝える立場として、「カリフォルニアのピノ・ノワールは、ブルゴーニュよりも遥かに優れている。」なんて堂々と発言してしまうのは、流石にどう

梁 世柱
2022年7月10日


出会い <15> 常識を書き換えたワイン
Arnot-Roberts, Sauvignon Blanc “Randle Hill Vineyard” 2020. ¥5,300 圧倒的な才によって、 その産地のイメージを一変させてしまう 。 そんな造り手が、世界各地に僅かながら存在している。 その最たる例の一つは、カジュアルワインというイメージがこびりついて離れなかったフランス・ロワール渓谷の小産地プイィ・フュメを、ソーヴィニヨン・ブランの聖地へと押し上げた故ディディエ・ダグノー。 ダグノーの場合は、純粋な品質面での劇的な進化でもって世界を驚かせたのだが、少し違った角度から、イメージが一新されるパターンもある。 例えば、カリフォルニアの アルノー=ロバーツ がそうだ。 アルノ=ロバーツが登場する前は、(正確に言うと、同時多発的に同様の造り手が複数誕生したが、インパクト面ではアルノ=ロバーツがダントツ) カリフォルニアのワインは、白、赤共に樽のしっかりと効いた濃厚で重厚なワインと言う画一的なイメージに支配されていた 。そしてその味わいは、 テロワールの特徴とすら言われていた 。 そんな中、ア

梁 世柱
2022年7月3日


再会 <15> 最後の再会
La Ferme de la Sansonnièr, Anjou “Vignes Françaises en Foule” 2002 敬愛する造り手は誰か、と問われたら、私は真っ先に彼の名を思い浮かべる。 マルク・アンジェリ 。 フランスのロワール渓谷で、孤高のワインを生み出す 賢人 だ。 マルクは『 ラ・フェルム・ド・ラ・サンソニエール (以下、 サンソニエール )』という名の農場を経営しており、ワイン造りだけに留まらず、驚異的なジュ・ド・ポム(リンゴジュース)や、ミエル(蜂蜜)なども生産している。 農園は1990年から既に ビオディナミ で管理され、マルク自身も自然の力を最大限に引き出すために苦心しながら、様々な挑戦を続けてきた。 特定のワインに対してあまり思い入れをもたない筆者にとっても、そんなマルクのワイン(サンソニエール)は特別な存在だ。 なにせ、私とサンソニエールの間には、いくつものエピソードがある。 もう15年以上前になるだろうか。 当時は、いわゆるクラシックワインというものを集中的に学んでいた私が、徐々にナチュラル回帰の世界へと引

梁 世柱
2022年6月26日


出会い <14> 温暖化時代のロゼ
Dom. du Moncaut, Rosèita 2020 ¥2,700 ロゼは夏の飲み物 だ。 筋金入りのロゼ好きである筆者のような飲み手にとっては、ロゼはオールシーズンなのだが、世界的なスタンダードとしては、ロゼとは夏の季語である。 しかし、日本ではなぜか春の、桜の時期の飲み物と印象付けられてきた。 世界中を見回しても、ロゼ=春、となっているのは日本だけ だ。 挙句の果てには、春のロゼプロモーションが始まると、「桜の香り〜」といった理解不能なテイスティングコメントまで氾濫する。 もし筆者が間違っていたら素直に認めるので、誰か私に飲ませて欲しいものだ。桜の香りがするロゼなるものを。 ロゼにまつわる誤解はこれだけではない。 ロゼ=甘い、というイメージもかなりの謎。 確かに、昔田舎で見た一升瓶に詰められた謎めいたロゼは甘かったし、フランス・ロワール地方のロゼ・ダンジュや、アメリカ・カリフォルニア州のホワイト・ジンファンデルのように甘いロゼは存在しているが、生産量ベースで見ると、 間違いなく圧倒的なマイノリティー だ。 いつか、本格的なリサーチをして

梁 世柱
2022年6月19日


再会 <14> ガリシアの秘宝
Quinta da Muradella, Muradella Blanco 2012 2000~2010年前後頃のスペインワインは、実に楽しかった。 現在はカタルーニャ州の各地やマドリード近郊を中心に新たな盛り上がりを見せ、また違った楽しさが生まれているが、 ほんの10年ほど前まで、スペインワインのホットゾーンは、間違いなく北西のガリシア地方だった 。 そのシーンを引っ張っていた象徴的存在は、 ラウル・ペレス 。 天才 の名をほしいままにした希代の醸造家は、ガリシアの各地に点在していた気概溢れる造り手たちとタッグを組み、時に自らの名を冠し、時に彼らの名を冠して、数えきれないほどの傑作群を世に送り出していた。 ラウルとタッグを組んだことによって、結果的にその名声や評価が大きく高まった造り手も多く、フォルハス・デル・サルネスのロドリゴ・メンデス(リアス・バイシャス)、アデガス・ギマロのペドロ・ロドリゲス(リベラ・サクラ)などは、すでにスーパースター級の存在となっている。 そんなラウルに連なる造り手たちの中でも、最も地味で、最も奥深く、最も難解かつ異質

梁 世柱
2022年6月12日


高級ビールを嗜む <1> 聖地ポートランド
レヴュー企画の不定期連載として、 「高級ビールを嗜む」 をスタート致します。 ビールには、ワインも顔負けの 非常に奥深い世界 が広がっています。 基本のスタイル( 製法カテゴリー )に、 様々な副材料 も含まれば、 そのヴァリエーションはまさに無限大 。 筆者はビールの専門家ではありませんが、飲料のプロフェッショナルとしての目線から、厳選したビールをレヴューして参ります。 基本的なテーマはタイトルの通り、「高級ビール」です。 つまり、日常の中で、乾いた喉を潤すために飲むビールではありません。 ここで言う高級ビールとは、(価格も高いですが)特別な時間を演出してくれる、孤高のビールたちのことです。 日本でも、クラフトビールがブームからスタンダードへと移り変わりつつありますが、 世界のクラフトビール事情は、思ったよりも遥か先へと進んでいます 。 本企画の初回は、クラフトビールの中でも、特に クリエイティヴなビールの聖地 とされる、 アメリカ・オレゴン州の州都ポートランド で誕生した、驚きの一本です。

梁 世柱
2022年6月7日


出会い <13> ワインファンのロマン
SRC, Etna Rosso “Alberello” 2019 ¥9,400 近年爆発的な人気の高まりを見せ、今では イタリアの銘醸地 として、真っ先に名前が挙がっても不思議では無いほどの地位を得た シチリア島・エトナ火山 。 『火山の山肌で葡萄を育て、火山のテロワールが宿る。』 なんていうパワーワードも素敵だが、 それだけで人気が出るほど世界のワイン市場は甘くない 。 そう、エトナの人気が高まった理由は、その 圧倒的な個性と品質 にあるのだ。 イタリアのワイン史にその名を残す名醸造家 サルヴォ・フォティ による一連のワイン群や、 フランク・コーネリッセン のようなカルト的人気を誇る生産者など、エトナを彩る造り手たちの魅力も申し分ない。 成功すべくして成功した 。エトナとは、そういう産地だと思う。 そして、エトナの底知れない可能性に心を奪われ、この地に移住してきた新たな造り手たちも多い。 今回の出会いは、そんなエトナのニュージェネレーション組と。

梁 世柱
2022年6月5日


再会 <13> アリゴテの覚醒
Benjamin Leroux, Bourgogne Aligoté 2018, ¥4,340 長年のブルゴーニュファンであれば、 アリゴテ という葡萄のことをご存じの方も多いだろう。 ブルゴーニュで栽培されるシャルドネ以外の葡萄品種としては、最も良く知られているアリゴテだが、 その評価は極めて低かった と言える。 もちろん、 ドメーヌ・ドーヴネ (不世出の大天才、マダム・ビーズ・ルロワが率いるドメーヌ)のアリゴテのように、突然変異的に異常な品質に到達したワインはあったものの、アリゴテと言えば「安いけど、薄くて酸っぱくて微妙」というのが定評だった。 DRC (世界で最も高価なワイン群の一つを手がける、ブルゴーニュのトップ・ドメーヌ)の所有者も、(プライベートワイナリーの ドメーヌ・ド・ヴィレーヌ として)ブルゴーニュのマイナーエリア(ブーズロン)でアリゴテに注力してきたりもしたが、それも影響力としてはあまりにもピンポイントだった。 ドーヴネにしても、ドメーヌ・ド・ヴィレーヌにしても、造り手がとにかく有名過ぎたため、アリゴテ自体の評価を上げたとい

梁 世柱
2022年5月29日


出会い <12> 若者の感性
Indomiti, “Arga” IGT Garganega 2020 ¥3,800 私もとうに「若手」ではなくなり、すっかりと「中堅」になって久しい。むしろ、ベテランに片足を突っ込み始めたぐらいのタイミングだろうか。年を重ねるにつれ、学ぶ機会よりも教える機会の方が増えてくるのは必然なのだが、どちらかというと学ぶことの方が好きな私にとっては、少々悩ましい問題だ。インプットとアウトプットのバランスを取るのは、とても難しい。 というと、年を重ねるのが辛いように思えてしまうかも知れないが、楽しい部分もたくさんある。特に、若手の台頭にはいつも心が踊らされるのだ。 ワインを扱う業種(ソムリエやショップ店員、インポーターなど)であれば、随分と前からたくさんの後輩や若者たちと接してきたのだが、最近は ワインを造っている人でも、私より若い人がかなり増えてきた 。 彼らのワインを飲むのは本当に 楽しく刺激的 で、もはや趣味と言えるほど、ついついのめり込んでしまう。 今回出会った造り手はまだ30歳にもなっていない、ミレニアル世代の シモーネ・アンブロジーニ...

梁 世柱
2022年5月22日


再会 <12> 良薬、口に甘し
L.Garnier, Yellow Chartreuse V.E.P. シャルトリューズ というリキュールをご存じだろうか? リキュールの女王 とも称されるこの魔法の液体は、酒の世界における 都市伝説的な存在 でもある。 伝承によれば、 1605年にフランソワ・アンニバル・デストレ なる人物(当時のフランス王、アンリ4世の妾の実兄だったそう)が、カルトジオ会という修道会に、現在のシャルトリューズの元となった手書きのレシピを、「なぜか」渡したことから始まったそうだが、その話が真にシャルトリューズの起源であるという説を確実に裏付けるような証拠は発見(もしくは公開)されていない。 錬金術的な構成となっていたそのレシピには、「 長寿のためのエリクサー 」と書かれていたそうである。 それから130年後の1735年、忘れさられていた謎のレシピがカルトジオ会の本山である グラン・シャルトリューズ に届けられ、1737年には修道士の ジェローム・マウベック によってより洗練されたレシピへと改変された後に、本格的な生産が始まった。当初は販売用ではなかったが、やが

梁 世柱
2022年5月14日


出会い <11> ミッシング・リンク
Luis Pérez, La Barahuela Palma Cortada 2017 ¥10,800 「シェリーはお好きですか?」 私のソムリエ経験の中でも、かなりの回数繰り返した言葉だ。 醸造のどこかの段階で、アルコール(基本的にブランデー)を足してアルコール濃度を上げる「 酒精強化ワイン 」の一種であるシェリーは、とにかく「 好き嫌い 」がはっきりと別れる。 甘口が主体のポートなどに比べると、辛口主体のシェリーには、より一層「 分かりにくさ 」がつきまとうのだ。 ペアリングにおいては、驚くほどのポテンシャルを秘めているにも関わらず、大多数のシェリーペアリングは、「シェリーが好きである」ことが成立の前提条件になってしまう。 本記事は、そんなシェリーに焦点を当てた記事になるため、そもそもシェリーがお好きでない方には、何の興味もそそられない情報になるであろうことを、ご承知いただきたい。 美しい アンダルシア地方 の特産品であるシェリーが、時代の流れに乗って、何度かその姿を変えてきたことを知る人は、そう多くないかも知れない。 シェリーの主産地である

梁 世柱
2022年5月7日


再会 <11> スーパーナチュラル
Moric, Haus Marke Supernatural Weiss 2019. ¥4,800 今でこそ、 クリーン・ナチュラル が、ナチュラル・ワインの一派としてはっきりと認識されるようになってきたが、ほんの数年前まで、キレイな味わいのナチュラル・ワインは、ブームから爪弾きにされていた。 別の言い方をすると、そういったワインは、ナチュラル・ワインとしては、 売れ行きが良くなかった のだ。 多少の例外はあるが、ワインをクリーンに造れる人は、ワイルドにしか造れない人よりも、圧倒的にワイン造りが「上手い」。さらに、上手いだけではなく、ナチュラルかつクリーンに造るには、 勤勉さと献身が欠かせない 。それだけの技術と情熱をもった造り手のワインが、怠惰で無責任で下手だけど、ラベルを含めたプレゼンテーションは抜群に得意、といった造り手のワインよりも遥かに市場で苦戦するという実情には、なんともやりきれない思いが深まる。 しかし、ナチュラルとクリーンを両立できる造り手が、(売りにくいからといって)わざわざ自分のワインを、よりワイルドな方向へともっていくことは

梁 世柱
2022年5月1日


真・日本酒評論 <7> 低アルコール原酒という新技術
<加茂金秀:特別純米酒 13 火入> アルコール飲料の低アルコール濃度化、というのは、酒類業界が全体として向き合っている極めて重要な課題として、声高々に叫ばれることが多い。確かに、現代の若者、特にミレニアル世代、Z世代と呼ばれる年齢層の人々は、データ上でみても、酒量が大幅に減っていることは間違いない。実はこの流れは世界規模で起こっており、日本だけの現象では全くないのだ。 新たな世代の嗜好に対応するために、低アルコール濃度化に取り組む。そこだけを見てしまうと、酒というものが、ただ一つの方向へと変化しているように思えるかも知れないが、 筆者の意見は大きく異なる 。 私の考え方の根拠となる最たる例は、 コンビニエンスストア における、酒類のラインナップだ。 ビール、酎ハイ、リキュール類に絞って陳列棚を眺めるだけでも、そこに 驚くほどのヴァリエーション が既にあることに、すぐに気付くはずだ。 完全ノンアルコールのライン、1%を下回る超低アルコールのライン、1~3%の低アルコールライン、5%前後のスタンダードライン、そして、7~9%のストロングライン。..

梁 世柱
2022年4月24日


出会い <10> チリの秘宝
Garage wine co., VIGNO Truquilemu Vyd. 2018 ¥6,000 チリというワイン産出国の奥深さには、いつも驚かされます。南北に広くワイン産地が点在し、それぞれのエリアに適合した好適品種も既に判明しています。しかも、大手メーカー(規模的には超巨大ワイナリー)が率先して 適地適品種の研究 を進めてきた歴史があり、その知見がより小規模な生産者とも共有されています。 まさに、 国を挙げての大探求作戦 。日本のワイン産業は、チリから大いに見習うべきことがたくさんあります。 そんなチリでも最も有名かつ高価なワインが集中しているのは、中央部の コルチャグア・ヴァレー。モンテス、カサ・ラポストール、クロ・アパルタ と、高名なワインが目白押しです。 他の産地でも、アコンカグア・コスタのピノ・ノワール、カサブランカ・ヴァレーのソーヴィニヨン・ブラン、レイダ・ヴァレーのシラー、リマリ・ヴァレーのシャルドネなど、ほんの触り程度名前を挙げるだけでも、魅力的な産地と品種の組み合わせがたくさん出てきます。 しかし、 チリのカリニャン...

梁 世柱
2022年4月17日


再会 <10> 真ん中を射抜く
Rivers-Marie, Chardonnay Sonoma Coast 2019. ¥6,500 筆者はかつて、個室しかない高級店に勤めていたことがある。 連日連夜、政財界や芸能界の重鎮たちが訪れるそのお店には、個室が大小合わせて16室あった。 個室でのサーヴィスというのは、オープンスペースでのテーブルサーヴィスと比べると、体感で2~3倍は手がかかる。個室である以上、サーヴィスマンやソムリエが入室する回数は極限まで少なくする必要があり、当然、一度入室したら目的を果たすまで易々とは退室できない。つまり、一回のサーヴィス時間がどうしても長くなるのだ。 さらに難しかったのは、その店に訪れる顧客の90%以上が、ビジネスディナーとして利用していたという点だ。これが一般客向けの個室なら、テーブルサーヴィスと同様に、適度に「お待ちいただく」という技術も使えなくはないのだが、ビジネスディナーの場合、基本的には「 最速が正解 」だ。 16室ある個室が完全満室になった場合(週末以外はそういう日が多かった)、分身の術でも使わない限り、全ての個室に対して真っ当なワイ

梁 世柱
2022年4月10日


出会い <9> ワイン界最強のリキュール
B é n é dicte & Stéphane Tissot, Macvin du Jura Rouge “Pinot Noir”. 2018 ¥8,800 Macvin du Jura(マクヴァン・デュ・ジュラ) という飲み物をご存じの方は、どれだけいらっしゃるでしょうか? 聞いたことはある、という方も中にはいらっしゃるとは思いますが、飲んだことがある人は相当少ないと思います。 マクヴァンは、 厳密にいうとワインではありません 。 葡萄を原料にした リキュール です。 原産地呼称制度では、 糖度170g/L以上 で収穫した葡萄の果汁に、 アルコール濃度52%以上 のフランシュ・コンテ産(同じジュラ地方にある産地) オー・ド・ヴィ (*1)を添加して、10ヶ月以上樽熟成をする必要があると定められています。 ちなみに糖度170g/Lというのは 非常に甘い状態 です。

梁 世柱
2022年4月3日


再会 <9> ブティック・ワイナリーという選択肢
Villard Fine Wines, Sauvignon Blanc “Expression Reserve” 2019. 海外に出ると、本来の目的とは別の取材を、スケジュールの隙間に入れ込むことが多い。建前としては、メイン取材に深みを与えるため、としているが、実際には、自分が興味をもっているテーマに沿って、訪問するワイナリーを選んでいることの方が多い。 少なくとも、私は。 チリ を訪問したとき、メインの取材先は例外なく、いわゆる有名ワイナリーだったため、サイド取材としてアポイントを取ったのは、そういったワイナリーとは真逆の、小さな小さなワイナリーにした。 チリは南北に長大に広がる国 。生産量ランキングでいうと、近年はアルゼンチン、オーストラリア、南アフリカと 5~8位の間 を争っている。 (1~3位はフランス、イタリア、スペインの争い、4位はアメリカがほぼ不動、一時期大躍進していた中国は低下傾向。余談だが、食用葡萄も含まれる栽培面積ランキングは、ワインにとっては無意味だ。) 参考までに 日本 の数字を出してみよう。 2020年度の「日本ワイン

梁 世柱
2022年3月26日


出会い <8> ナチュラル・ブルゴーニュのニュースター
Domaine Dandelion, Hautes-Côtes de Beaune Rouge. 2018 ¥5,200 ブルゴーニュ、特に コート・ドール 周辺のワインには、多くの人が「 理想像 」を抱いていると思います。 奥深く華やかなアロマ、ピュアな果実味と心地よいミネラル、透き通った酸、優美な余韻。 一般的なブルゴーニュの印象は、どこを切り取っても、「 澄んだ美しさ 」にあるような気がします。 しかも、コート・ドールのワインはとっても 高価 。 期待した味と違ったら、その分だけ失望も大きくなってしまうものです。 (裏切りもブルゴーニュの魅力のうち、なんていうドMなワインファンも実は多いのですが。) そんなブルゴーニュにとって、 ナチュラル・ワインは鬼門 でした。 知識、技術、経験、献身に乏しい造り手によるナチュラル・ワインには、 欠陥的特徴と呼ばれる、様々な不快臭や、独特のファンキーな香味が発生 します。 香りや味わいとしては、それが好きなら問題はないのですが、 その土地のその葡萄品種だからこそ出てくる個性を、過度な欠陥的特徴は覆い尽くし

梁 世柱
2022年3月13日


再会 <8> 最高のご褒美ワイン
The Sadie Family, Skerpioen 2012. 友人が引っ越したというので、新居の整理整頓を手伝いにった。 大きなワインセラー二台分のワインをコレクションしている友人なので、お手伝いのお礼はワインで、とちゃっかり事前リクエストをしておいた。 引っ越して三日目、やっとワインセラーの電源を入れられるようになったタイミングだったこともあり、リビングにはコレクションが詰め込まれた段ボールが山積みになっていた。 コンディションの劣化を避けるためにも、早急にワインをセラーへ移動させる必要があった。 趣味が悪いと言われるかも知れないが、他人のワインコレクションを眺めるのは、とても楽しい。飲むのを我慢して、わざわざセラーで眠らせていたワインだ、当然 一つ一つに思い出が詰まっている 。 年号の古いもの、最近のヴィンテージ、クラシックなワイン、今っぽいワイン、なぜそんなワインを?というようなものも。 いろんなタイミングで、その人がその時に好きだったワインが、コレクションという形で、日記のように残っている 。 逆にいえば、私のような人間に、ワインセ

梁 世柱
2022年3月6日
bottom of page