再会 <10> 真ん中を射抜く

Rivers-Marie, Chardonnay Sonoma Coast 2019. ¥6,500


筆者はかつて、個室しかない高級店に勤めていたことがある。


連日連夜、政財界や芸能界の重鎮たちが訪れるそのお店には、個室が大小合わせて16室あった。


個室でのサーヴィスというのは、オープンスペースでのテーブルサーヴィスと比べると、体感で2~3倍は手がかかる。個室である以上、サーヴィスマンやソムリエが入室する回数は極限まで少なくする必要があり、当然、一度入室したら目的を果たすまで易々とは退室できない。つまり、一回のサーヴィス時間がどうしても長くなるのだ。


さらに難しかったのは、その店に訪れる顧客の90%以上が、ビジネスディナーとして利用していたという点だ。これが一般客向けの個室なら、テーブルサーヴィスと同様に、適度に「お待ちいただく」という技術も使えなくはないのだが、ビジネスディナーの場合、基本的には「最速が正解」だ。


16室ある個室が完全満室になった場合(週末以外はそういう日が多かった)、分身の術でも使わない限り、全ての個室に対して真っ当なワインサーヴィスをするのは、物理的に不可能だった。


しかし、ソムリエは売上を上げてこそ価値がある、というのはアメリカ時代からの厳しい教え。そうそう簡単に諦めるわけにもいかなかった。


そこで私は、ドリンクに特化した顧客データを作り始めた。記憶に頼るほど、自身の能力を過大評価していないので、しっかりと記録に残すようにしたのだ。


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