top of page
検索


出会い <91> 北海道で華開くドイツ系品種
山田堂, Yoichi Blanc 2024. ¥2,800 寒冷地である 北海道 が、 1970年代 から ドイツ・オーストリア系品種 に目をつけたのは、英断だった。 1976年のパリスの審判 をきっかけに、世界各地で爆発的に フランス系国際品種 が広まることになったのだが、その大波が本格化する前に、 ミュラー=トゥルガウ、ケルナー、バッカス、ツヴァイゲルト(レーベ) などの葡萄が北海道に導入されたのは、運命のいたずら、とすら言えるのかも知れない。 パリスの審判から、ロバート・パーカーJrの台頭という一連の流れの中で、2010年代に入るまでは、パワー型ワインの全盛期となったため、繊細な北海道のドイツ・オーストリア系ワインがセールスに苦しんだことは想像に難くないが、耐え忍んだだけの価値はあったと、私は思う。

梁 世柱
2 日前


再会 <91> 最強シャンパーニュの大当たりボトル
Alain Robert, Le Mesnil Réserve 1988. (Magnum) 私はシャンパーニュが大好きだ。シャンパーニュの無い人生など、もはや考えられない程に。 確かに、世界的な気候変動や技術向上によって、一般的なレベルのシャンパーニュと比べた場合、遜色ないと言える品質のスパークリングワインは、世界各地で劇的に増えた。 しかし、頂点と呼べる品質領域においては、 シャンパーニュが王者のまま 、というのが私の見解である。 今回は、そんな頂点シャンパーニュの中でも、特に私が執着しているワインとの再会。 アラン・ロベール 。

梁 世柱
9月30日


再会 <90> 頂点であるということ
Domaine de la Romanée-Conti, Grands Échézeaux 2015. ワインには、 ヒエラルキー というものが存在する。 嗜好品だから個人の好みなのに、飲んだら消えてしまうようなものなのに。 色々と言いたいことが出てくる気持ちは分かるが、こればかりはどうしようもない。 音楽で例えてみよう。 中学生の素人が宅録した音源には、そこにしか無い素朴で原始的な魅力が確かにあると思うが、一流のプロが経験と技術とお金を注ぎこんで作り上げた音楽との「品質」的差異は、否定のしようがない。

梁 世柱
9月17日


出会い <89> 無添加甲州の可能性
Kitani Wine, 甲州 キュヴェ・タカシ 2023. ¥2,800 日本が誇る地品種(厳密に言うと中国からの渡来品種ではあるが)である 甲州 は、まだまだ完成系と言える姿を示していないと、私は考えている。 中央葡萄酒(Grace)の三澤甲州(旧キュヴェ三澤 明野甲州)のように、逸脱した領域に踏み込み始めたワインも登場してきてはいるが、それでもまだ、甲州という葡萄はあらゆる進化の可能性を残しているのではないだろうか。 映画「ウスケボーイズ」のモデルとなった人物としても知られるシャトー・メルシャン元工場長の浅井昭吾(ペンネーム:麻井宇介)氏が、フランス・ロワール地方のミュスカデから着想を得た、甲州に シュール・リー製法 を用いるという手法を、1985年に他の日本ワイナリーへ公開して以降、そのスタイルは確かに現代に至るまで甲州ワインの地盤を固めているが、まだまだ見えていない「その先」があるはずなのだ。

梁 世柱
9月10日


再会 <89> 正規価格なら、世界最高レベル
Terre de Ciel, Raisin Chardonnay 2024. ¥3,400 市場原理とは、ワインの世界においてなんとも憎らしいものだ。 特定のワインに人気が集中し、需要とバランスの供給が崩れ始めると、入手困難→抽選販売(もしくはかなり重い抱き合わせ販売)→二次市場での価格高騰、というお決まりのパターンを辿る。 しかし、こういう現象が起こった際に、私は造り手が蔵出し価格を上げること自体は、手放しで大歓迎している。 二次市場価格が高騰してしまうほどの人気を得るということは、並大抵の努力で実現できることではない。

梁 世柱
9月3日


出会い <88> 食用ブドウのデザートワイン
ひるぜんワイン, 岡山 ピオーネ 2023. ¥2,300 飲食店に行く醍醐味の一つは、 「発見」 にあると私は思う。 料理そのものが美味しいか、自分の好みに合うかどうか、という発見ももちろんだが、ワイン人としては、飲み物面での発見に、心踊らされるのは当然のことだろう。 特に、普段の私なら選ばないようなものや、そもそもレーダーにすらかかっていなかったものと出会うと、その飲食店での体験は、深く記憶に刻まれることとなる。

梁 世柱
8月27日


クラフトビールと地ビールの違い
クラフトビール が世界的なブームとなって以降、日本国内も含めて小規模ブリュワリーの数は激増した。 私自身も、このジャンルのビールはとにかく好きで、様々なものを日常的に試しているのだが、ふと冷静になって 疑問を抱く ことも多い。 クラフトビールで採用されることが多いIPA、セッション、セゾンといったスタイルは、世界中で異常とも思えるほどのヴァリエーションが誕生しているにもかかわらず、結局のところ、(総合的な品質の差はあれど) 似たような味わいが実に多い 。

梁 世柱
8月26日


再会 <88> 伝説と継承
Emmanuel Rouget, Vosne-Romanée 1er Cru Cros Parantoux 2013. レストランという現場で働いていると、(特に高級店の場合)店舗で販売したものと、持ち込みワインを合わせれば、かなり頻繁に高級ワインを味わうことができる。 飲食店の現場は体力的にも精神的にもかなり過酷ではあるが、それでも「役得」というものはあるのだ。 しかし、不思議なことに、頻繁にそのようなクラスのワインに触れていると、段々と 感覚が麻痺 してきてしまう。 「普通」の高級ワインでは、もはや心が激しく揺さぶられなくなってしまうのだ。

梁 世柱
8月19日


出会い <87> 特別編 仮面ライダーという名の究極
仮面ライダー1号 x 伯楽星, 仮面ライダー 純米大吟醸. ¥160,000 精米歩合 を極限まで突き詰める、というムーヴメントの先駆け(より大きな動きを生み出すという意味で)となったのは、山口県・旭酒造が手がける「獺 祭2割3分磨き 」の登場だろうか。 それまで(今でも基本的には同様だが)、大吟醸酒の精米歩合は35%がスタンダードだったが、「2割3分磨き」は超高精白(素数である23という数字自体の美しさも、マーケティング上では見逃せない)という 新たなアイデンティティをかかげた日本酒 を、国内だけでなく、世界市場へと多いに広めていった。 その後、福井県・加藤吉平商店が手がける「梵 超吟 純米大吟醸 」(精米歩合20%)などが人気を博すなど、高精米ブームにいよいよ火が付くこととなる。

梁 世柱
8月7日


出会い <86> 圧巻のグリニョリーニョ
Gaudio, Grignolino del Monferrato Casalese 2022. 有名産地のマイナー品種 はなかなか難しい。そこに、「よほどの理由」がなければ、なかなか手が伸びないからだ。 品質、味わい、個性の全てにおいて、その壁を突破するのは決して容易ではなく、多くのマイナー品種ワインが 「珍品」 の類のままである。 それが、 ネッビオーロ という王者を有するイタリアの ピエモンテ州 なら尚更のことだろう。

梁 世柱
7月22日


再会 <86> 紙パックワインの躍進
Giovannini Giorgio, Trebbiano IGT Rubicone. ¥4,900(3ℓ) 四角い 紙パック に収められたワイン。 それは、瓶に入った牛乳よりも、紙パックに入った牛乳が安っぽく見えてしまうことなどとは比べ物にならないほど強烈に、中に入ったワインのイメージを悪くしてしまうのだろうか。 重厚な瓶、見目麗しいラベル、目の詰まった天然コルク、そして抜栓という儀式。 視覚から得られる情報には、大多数の人が印象を操作されてしまう。 そういうものだ。いや、そういうものだと思われていた。

梁 世柱
7月14日


Wine Memo <34>
Ch. Rieussec, R de Rieussec 2016. ¥6,000程度 装飾品がどれだけ豪華に見えても、中身は随分と「普通」なことは、ワインの世界では往々にしてある。 マーケティングのために使われる、数々のワインを飾る言葉。 その中に真実がどれだけあるのだろうかと、私はすっかり懐疑的になってしまっているが、実際に、懐疑的なくらいがちょうど良いと思うのだ。 先日、仕事帰りにふらっと立ち寄ったワインバーで出てきたのは、こちらのワイン。 ボルドー・ソーテルヌ地区でも、高名なシャトー・ディケムに次ぐ名声を誇るグループの一角が、こちらの シャトー・リューセック 。

梁 世柱
7月13日


出会い <85> 思い込みの恐ろしさ
André Brunel, Côtes du Rhône Villages Cuvée Sabrine 2022. ¥2,800 思い込みは恐ろしい。 20年以上ワインと向き合ってきて、何度も何度も思い込みによって失敗を重ねてきたが、今回もまた、経験則が完全に外れてしまった。 特に、相当程度 総体的な個性が固まっているクラシックワイン の方が、このリスクは高い。 原産地呼称を名乗っているワイン なら、尚更。 その審査過程の相応の厳しさも含めて理解しているため、どうしてもイメージが固定化しやすいのだ。

梁 世柱
7月8日


再会 <85> ニューワールド的カジュアル古典美
Little Giant, Coonawarra Cabernet 2022. ¥2,600 ワインを学び始めた20年と少し前のこと。 世界の銘酒とされているワインを、なけなしの稼ぎを注ぎ込んで片っ端から飲み漁っていた中で、どうにもその良さが理解できなかったワインがいくつかあった。 その中の一つが、 オーストラリア で カベルネ・ソーヴィニヨンの銘醸地 として、当時からすでに名高かった Coonawarra だ。

梁 世柱
7月1日


出会い <84> ナチュラルワインのクリエイティヴマインド
Les Chant Des Ailes, Chouchou 2022. ナチュラルワイン の多くは、 テーブルワイン格 でリリースされる。 その国が定める国産葡萄の比率さえクリアすれば、 大体のことは許容されてしまう 格付けだ。 フランスならVdF、イタリアならVdTがこのテーブルワイン格に相当する。 原産地呼称制度の規定がそもそも非常に緩いニューワールドでは関係のない話だが、ヨーロッパにおいては、 テーブルワイン格=自由 を意味する。

梁 世柱
6月24日


再会 <84> 巨大ワイナリーの超良品
Penfolds, Koonunga Hill Autmn Riesling 2023. ¥3,000 ワインを深く学んでいくにつれ、巨大ワイナリーが造るワインに対して、無意識に偏見が溜まっていってしまう人は多い。 私自身もその例外ではないのだが、どうしてもより「手作り感」のあるものに魅力を感じるようになるのは、根っからのマニア気質な私にとって、それほど違和感のあることではない。 実際、私がプライヴェートな時間に、巨大ワイナリーのワインを口にすることは、1年間でも片手で数えられる程度しかない。

梁 世柱
6月18日


Not a wine review <4>
美丈夫, 蔵ハイ 高知ゆず&山椒. 海外へと赴いた時、ワインも含め、私は徹底的に「 ご当地もの 」を飲むようにしている。 ところかまわず有名国のファインワインを飲む人も、私の同業者には多くいるが、個人的にはどうにも食指が動かない。(お疲れシャンパーニュだけは話が別。) 自分自身がそういう思考であるからか、私は海外からゲストが来た時に、可能な限り日本のご当地ものでおもてなしをしたいと考える。

梁 世柱
6月15日


出会い <83> 超熟成シャンパーニュ
Taittinger, Comtes de Champagne 1961. 超長期熟成シャンパーニュは酸化の塩梅が読みきれないため、その流通価格に対しかなり ハイリスク なワインだ。 もちろん、メゾンの蔵出しや、定温環境で長期間不動保存されていたケースであれば、相当程度信頼できるが、人の手を渡り歩いてきたボトルに関しては、まさにギャンブルである。 私もレストラン用の仕入れでは、超長期熟成シャンパーニュにかなり慎重な姿勢を保つように心がけていた。 正直なところ、 ハズレを引いたことの方が多い からだ。

梁 世柱
6月10日


再会 <83> 国際品種のダークホース
Christophe Lindenlaub, Muscat “Je Suis au Jardin” 2023. 国際品種 と聞いて、真っ先に思い浮かぶ葡萄はなんだろうか? 白葡萄ならシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング。 黒葡萄ならピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラー。 おそらくその辺りだろう。 他にも、シュナン・ブランやグルナッシュの名を挙げる人もいるかも知れないが、おそらくこの葡萄品種を思い浮かべる人は、ほとんといないだろう。

梁 世柱
5月27日


出会い <82> テロワールが薫る至高のナパ・カベルネ
Hewitt Vineyard, Cabernet Sauvignon Double Plus 2017. 現地価格$500 アメリカ合衆国・カリフォルニア州の ナパ・ヴァレー は、まだまだ 誤解 されているように思えてならない。 特に 高級品 になればなるほど、その傾向が強い。 それもそうだろう。ナパ・ヴァレーのトップエンドは、 葡萄畑のテロワールが如何に優れているか、と言うワインに取っての普遍の真理ではなく、高給取りのコンサルタントを栽培でも醸造でも雇って、如何に「高品質なイメージ」を実現させるかに躍起になってきた 。

梁 世柱
5月20日
bottom of page