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出会い <90> ポルトガル=オレンジワインのホットゾーン
Espera, Espera Curtimenta 2022. ¥3,900 オレンジワインとは、つくづく興味の尽きないジャンルだと思う。 その理由は、「常識の破壊」にある。 シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング。我々が白ワインとして慣れ親しんだ葡萄が、オレンジワインとなった途端に、全く未知の姿を見せる。

梁 世柱
2025年9月25日


再会 <70> ポルトガルの至宝
Casa Ferreirinha, Douro Reserva Especial 2014. 現地価格約€280 日本は世界で最も成熟したワイン市場の一つだが、「なんでもある」というわけでもない。 低価格〜ある程度の高価格帯までであれば、十分過ぎるほどのバリエーションで世界各地から集められているが、実は、意外なほどに最高級クラスには穴がある。 その「穴」の代表的なものの一つが、ポルトガル最高峰の赤ワインとして、あの分厚い教本にもその名が載っている、Casa FerreirinhaのBarca Velhaだ。 1952年に誕生したBarca Velhaは、現在に至るまで、僅か21ヴィンテージしかリリースされていない。 最新ヴィンテージは2024年の7月にリリースされたばかりの2015年で、その前は2011年、そのさらに一つ前は2008年ヴィンテージだった。 非常に興味深いことに、Barca Velhaは単一畑ワインではない。 標高120~280mにあるQuinta de Ledaの畑からのセレクションと、標高650mを超えるDouro...

梁 世柱
2024年10月13日


Wine Memo <21>
Quinta do Noval, Branco Reserva 2022. ポートが売れない。というのは、何も日本でだけ起こっていることではない。 酒精強化酒を含むあらゆる甘口ワインの売り上げは、世界的にずっと右肩下がりの状況が続いている。 流石に消滅してしまうことはなかなか無いだろうが、造り手としても在庫を余らせておくよりかは、限られた葡萄畑を他のスタイルのワイン用に回してしまった方がスマートであることは間違いない。 フランス・ボルドー地方には、世界最高峰の貴腐ワインと名高いソーテルヌ(とバルサック)があるが、近年のトレンドはもっぱら辛口仕立てのワイン造り。 ドイツのリースリングや、ハンガリーのトカイ(フルミント)にも全く同じ状況が当てはまる。

梁 世柱
2024年3月16日


臥龍鳳雛 <ポルトガル特集:知られざるDouro編>
Vinho Verdeでのツアーを終えた後、個人で取材を行うために、Douroの中心地であるCima Corgoへと向かった。 ポート・ワインのリサーチを更に進めることは早々から決めていたが、スティル・ワインとしてのDouroに関しては、どこに焦点を当てるか随分悩んだ。 二日半しかない期間の内、半分はPort用の葡萄畑を訪れるスケジュール。 選択肢は無数にあったが、時間は限られていた。 その中で、メインターゲットとして私が選んだのは、おそらくワイン識者のほとんどが知らず、ワイン愛好家の大部分が興味など示さないであろうエリアだった。 なぜその場所へ行くことにしたのか。 「そこに呼ばれている気がした。」 もっともらしい理由は、それだけだった。 ローカルのタクシー運転手には、「なぜジャーナリストがあんな場所へ行くんだ。何もないぞ。」と牽制されたが、気にも止めなかった。 Cima Corgo北部 ピニャオンの町を取り囲む壮大なテラス状の葡萄畑は、世界遺産としても良く知られている。 ピニャオンから町から北へと車を走ら

梁 世柱
2024年2月13日


再会 <54> 熟成ナチュラルVinho Verde
Aphros, Ten 2012. Vinho Verdeは高い長期熟成能力を有する。 その事実は、先日レポートしたSoalheiroにおける大垂直テイスティングでも、Vinho Verde特集記事後編で紹介した、Sem Igualにおける垂直テイスティングでも確認することができたが、果たしてナチュラル志向なワインの場合はどうだろうか? ナチュラルワインの長期熟成能力は、適切な(時に過剰な)亜硫酸添加によって守られたクラシックなワインよりも、ランダム性が強いことは間違いない。 低アルコール濃度で、高酸度のワインを造ることを目的とした不用意な早摘み、発酵・熟成時の不適切な管理、自然の力に対する精緻な観測を無視し、盲目的に信じ込んでいるかのような亜硫酸無添加など、「そもそも長期熟成に向いたテロワールと葡萄品種の組み合わせではない」こと以外にも、ナチュラルワインが長期熟成能力を著しく失する要素はある。 一方で、完全な調和に至ったナチュラル・ワインは、一般的なクラシック・ワインを遥かに凌駕する、圧巻の超長期熟成能力を得るのもまた事実だ

梁 世柱
2024年2月11日


Alvarinho大垂直テイスティング
昨年末のVinho Verdeツアー最終日、大トリとなったワイナリー訪問は、Monção e Melgaçoを代表する名ワイナリー、Soalheiroだった。 Soalheiroは1974年に、ジョアン・アントニオ・セルデイラと彼の両親が、サラザール政権下で領地の端へと追いやられていた葡萄樹を、ひとつなぎの畑全体に植え直したことをきっかけとしてスタートした。 以降、徐々にその名声を高め、Alvarinhoの王者となったSoalheiroは、現在3世代目へと突入している。 中核を担うのは二人の姉弟。 姉のマリア・ジョアンは栽培を担当し、オーガニック農法を自社畑で導入した。 また、美しい自社畑に自生するハーブや花から、ハーブティー(筆者も購入して帰国後に飲んだが、驚くほど美味しかった!)を開発したりと、多方面でのサスティナビリティーにも余念が無い。 弟のアントニオ・ルイシュは醸造を担い、伝統の継承とさらなる洗練に邁進している。Soalheiroが極小規模で手掛ける数々の「実験的ワイン」は、彼の先進的精神の賜物なのだろう。 ...

梁 世柱
2024年2月3日


9つの個性 <ポルトガル特集:Vinho Verde後編>
処理しきれない多様性は、混乱を生む。 放置されたままの混乱は、拒絶を生む。 そして拒絶は、理解を遥か彼方へと遠ざける。 それでも構わない、という人々を責めるつもりなど、私には毛頭無い。 それもまた、多様性の一部なのだから。 興味とは常に私的なものであり、探究は往々にして孤独な旅だ。 そして、もしあなたが、その道を辿りたいと願うなら、この声無きことばを、せめてもの道標としていただきたい。 Sub-Regionの全体像 Vinho Verdeには9つのサブ・リージョンが制定されている。 しかし、実態としての各サブ・リージョンの特性を探っていくには、情報を整理し、取捨選択しつつ、工夫も重ねていく必要がある。 Vinho Verdeが内包する多様性は、あまりにも膨大で複雑なものである。 原産地呼称制度でもって、その全てに理路整然とした枠組みを作るのは、不可能とすら言えるだろう。 もちろん、最終的には「上澄み」を含めた方が当然面白いのだが、まずは数多くの「例外」を丁寧に取り除きながら、テロワールの本質へと迫っていくの

梁 世柱
2024年1月31日


出会い <52> 地品種+国際品種
Quinta do Mouro,Tinto 2018. 現地価格39€ 世界には膨大な種類のワインがある。 間違いなく、一生かけても全てをテイスティングするのは不可能だ。 だからこそ、私はワイン探求において、超広範囲をカヴァーしつつも、相当程度「取捨選択」をしながらテイスティングを重ねている。 どうせ「全てを知ることはできない」のであれば、闇雲に節操なくテイスティングし続けるよりも、テーマをもって集中的にやった方が遥かに身になることは、経験上断言できるのだが、当然ながら、私のレーダーに引っかからないタイプのワインは無数にある。 特にヨーロッパ産のワインであれば、私は優先的に「国際品種系」のワインをテイスティング対象から外す。 地品種から造られたワインにこそ、その地の歴史、伝統、文化が真に宿り、完全にユニークな表現を見出すことができる。 その主張を崩すつもりは毛頭無いし、地品種の魅力は、他に変え難いものがある。 しかし、だからと言って私が国際品種系のワインを低評価しているということでは決してない。

梁 世柱
2024年1月21日


古くて新しい銘醸地 <ポルトガル特集:Vinho Verde前編>
2ヶ月連続で同じ国を訪れる、というのは初めての経験だった。 Dãoの日差しと、Bairradaの海風がまだ肌の記憶に残ったまま、再びポルトに降り立った。 今回の目的地はVinho Verdeだ。 Vinho Verdeは、日本では最も知られているポルトガルの産地であると同時に、最も理解されていない地でもある。 長年に渡って安価なワインを超大量生産し続けた産地は、どこもかしこも同じような問題を抱えているが、Vinho Verdeが急ピッチで繰り返してきたアップデートに、世間が全く追いついていない。 まるで、現地では最新のWindows 11を搭載しているのに、日本ではWindows 98のままで止まっているかのようにすら思える。 リアルタイムのVinho Verdeは、ポルトガル最高峰の白ワインが生まれる、紛れもない銘醸地なのだが、今でも過小評価のどん底から抜け出す気配すらない。 だからこそ、責任をもってお伝えしようと思う。 この特集記事が、Vinho Verdeが見直されるきっかけになることを切に願いながら。

梁 世柱
2024年1月16日


未完の銘醸地 <ポルトガル特集:バイラーダ編>
少しマイナーな産地で、驚くべきワインの数々と出会った時、私は一人のワイン人として、この上ない喜びを覚える。 日本では話題に上がることすらないような未開の地に足を踏み入れると、私はジャーナリストとして、強い使命感を感じる。 真摯にワインと向き合い、楽しみ、喜ぶ人たちと出会う度に、私はワインを好きになって本当に良かったと心から感じる。 Bairradaへの一人旅は、そんな「出会い」に満ち溢れていた。 歴史 Bairradaが、ワイン産地として公式にその境界線を定められたのは1979年。 その事実だけを見るとまるで新興産地のようだが、真実は異なる。 10世紀にはすでに、キリスト教徒によってワイン造りが行われていたBairradaは、古都コインブラ(1139年から1255年までの間、ポルトガルの首都でもあった)、そして北西部の大都市ポルトにとって、極めて重要なワインの供給源だった。

梁 世柱
2023年12月30日


Quinta do Noval ~谷間のグラン・クリュ・ポート~ <ポート特集:Part3>
ポートの銘醸地Cima-Corgoの中心部、ドウロ川沿いを南北に挟み込む段々畑は、世界遺産として良く知られた風景だが、最高位の「A」にレーティングされるグラン・クリュは、川沿いにだけあるわけではない。 少し内陸に入ったエリアにも、見過ごすべきではない、いや、より重要とすら言えるグラン・クリュゾーンが存在しているのだ。 Cima-Corgoの中心にあるピニャオンから北部のアリージョ(スティルワインの産地として要注目の場所であるため、別の機会でレポートする。)に至る中間地点に広がるのが、ポート用(スティル用としても)の葡萄畑としては最上位の筆頭候補とすら言える、Vale de Mendiz。 ポート用としてはTaylor’sの看板ヴィンテージ・ルビーの一角を成すQuinta de Terra Feitaが、スティル・ワイン用としてはNiepoortの野心とウィットに富んだCharmeの葡萄畑があることでも知られているが、Vale de Mendizの象徴といえば、なんといってもQuinta do Novalなのではなかろうか。

梁 世柱
2023年12月26日


Ferreira ~南向き斜面のグラン・クリュ・ポート~ <ポート特集:Part2>
ポルトガル第二の都市ポルトで、ポート・ワインハウスのロッジ(貯蔵庫)を訪れて感心したのは、そのワインツーリズムとしての圧倒的な完成度と豊かさだ。 ポート自体が造られているのは、基本的にDouroだが、硬く分厚いシスト土壌の母岩を掘って広大な地下セラーを造ることは現実的ではなかったことから、歴史的にポートは船で(今はもちろんトラック)ポルトへと運ばれ、巨大な貯蔵庫での熟成を経て出荷されてきた。 ポルトを横断するドウロ川の南側に位置するヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアには、高名なポート・ハウスのロッジやショップが軒を連ね、ギュスターヴ・エッフェル(パリのエッフェル塔で知られる)が設計した美しいマリア・ピア橋と並んで、ポルトの街を象徴する景色となっている。 今回の旅でロッジを訪問(Kopkeも訪れたが、ロッジ見学をしたのは系列ブランドのCálem)したのは、ポートの名門Ferraira。 1751年にフェレイラ家によって創立されたFerreiraは、19世紀に入るとドナ・アントニア・アデレイデ・フェレイラの辣腕によって名実ともにポート最上の一角へ

梁 世柱
2023年12月22日


Kopke ~北向き斜面のグラン・クリュ・ポート~ <ポート特集:Part1>
歴史深いポート最上のエリアとして名高い、ドウロ川中流域のCima-Corgo。 ドウロ川沿いの超急斜面に切り開かれた、壮大なテラス状の段々畑は圧巻そのもので、この風景がユネスコ世界遺産に登録されているということに、誰も異論など抱かないだろう。 このような場所を訪れるたびに、(少なくとも筆者が携帯しているカメラでは)写角に全く収まりきらない雄大な景色を、目と記憶にしっかり焼き付けるようにしている。 さて、本レポートの主役となる、最古参(1638年創業)のポート・ハウスであるKopke(コプケ)について語る前に、Douroにおける葡萄畑の格付けを解説しておこうと思う。 詳細は下の表にまとめてあるが、興味深い点をピックアップしておこう。 1948年、アルヴァロ・モレイラ・ダ・フォンセカによって確立されたDouroの葡萄畑格付けは、ワイナリー単位ではなく、葡萄畑そのものが対象となっているため、基本的にはブルゴーニュ方式だが、その範囲と評価方法はシャンパーニュ地方にかつて存在したエシェル・デ・クリュのそれに近い。 ...

梁 世柱
2023年12月21日


Let’s drink more Port!!!
ポートは偉大な飲み物だ。 そのことに疑いの余地は微塵も無い。 しかし、2005年以降、ポートの売り上げは右肩下がりの状況が続いている。 今回訪問したポート・ハウスでも、その苦境ぶりが例外なく聞こえてきた。 「甘口離れ」は世界的な潮流であり、「辛口マッチョ信仰」の勢いは止まることを知らない。 だが、本当にポートが売れなくなっている理由は、「甘いから」なのだろうか、と疑問が湧いてくる。 確かに、甘いというだけで無条件毛嫌いするワイン消費者が多いのも、甘口ワインに対して全く理解を示さないプロ(立場を考えれば恥ずべきことと思うが)が一定数いることも事実だが、問題の本質は少し違うところにあるような気がするのだ。

梁 世柱
2023年12月20日


出会い <51> リスボンの熱狂
Marinho Vinhos, Tube Tinto 2020. もちろん例外は多々あるが、全体論で言うと、田舎よりも都会の方が、オーガニックやサスティナビリティに対する意識が高い人たちは多い。 田舎の人たちに言わせて見れば、都会人は自分で農業をやっていないから、オーガニック化する大変さを知らない(まさに私自身がそうだ)とか、経済的に余裕があるから多少物価が上がっても問題ないとか、色々と意見が出そうなものだが、都会の人は外側から好き放題言うものだし、購買力も高いので、結局田舎の人たちは都会の意見を無視しきれなくなる。 あまり健全とは言い切れないこのあたりの関係性には、私もアカデミックな意味で強い興味をもっているが、都会の近くにあるワイン産地が、都会人のサスティナブル思考に強い影響を受け、急速にその姿を変化させていくことは、少なからず世界各地で起こっている。 古い例だと、サン・フランシスコに近いナパ・ヴァレーが該当するし、比較的新しい例だとバルセロナに近いペネデスや、メルボルンに近いアデレード・ヒルズなどが該当する。 ...

梁 世柱
2023年12月17日


Wine Memo <17>
Quinta do Soito, Dão Espumante 2019. 私は世界中のありとあらゆるスパークリング・ワインの中で、シャンパーニュが最も好きだ。総合力で見れば、最も優れている、とも思っている。 散々権威主義的ワイン道に否定的な立場を取りながら、結局シャンパーニュか、と後ろ指を指されても仕方ないかもしれないが、「良いものは良い」と、どこまでもフラットであり続けることこそが、私なりのバランス感覚である。 しかし、高価なシャンパーニュを日常的に飲むことはできないので、シャンパーニュ・オルタナティヴは常に探している。 優れたものに出会えば、心踊る気分にもなる。 特に最近強い興味をもっているのは、シャンパーニュ品種ではなく、地葡萄を使用したタイプのもの。

梁 世柱
2023年12月9日


100年前からの贈り物 <ポルトガル特集:ダオン後編>
SommeTimes上で別府岳則氏が2021年にポルトガル特集記事を寄稿した際、氏はポルトガルのことを、「一周遅れでトップを走っているように見えるランナー」と表現した。 「一周遅れ」とは、パーカリゼーションを含む近代化に乗り遅れたことを意味し、「トップを走っているように見える」とは、結果的に古い伝統や混植畑を守ってきたことが、世界でも稀な価値となったことを意味する。 私にとって、今回の旅の大きな目的の一つは、現在のポルトガルワインが、氏が半ば疑問形で投げかけた「トップを走っているように見える」という状況通りなのか、それとも「本当にトップを走っている」のかを、自らの目と鼻と舌で確かめることだった。 先に結論を言おう。 私が体感したポルトガルワインの今は、もはや周回遅れでも、トップを走っているように見えるだけでもなく、真のトップランナーそのものであった。 全体像 ダオンもまた北部ポルトガルの通例に漏れず、葡萄畑は伝統的に多品種混植で仕立てられていたが、19世紀後半以降はフィロキセラ禍、モノポリー、クローン技術の進化、作業効率の重視、そして単一品種ワイ

梁 世柱
2023年12月4日


出会い <50> Dirk’s Children
Carlos Raposo / World Wild Wines, Touriga Nacional “Impecável” 2021. ○○’s Children(○○の子供達)、というワイン業界で時折目にする表現は、意外と古くからある。 最も有名なところだと、シャンパーニュ地方のスーパースター集団となった、Selosse’s Childrenあたりが思い浮かぶ。 Selosseとはつまり、レコルタン・マニピュラン(もはや死語か?)の頂点として崇められた、Domaine Jacques Selosseの当主アンセルム・セロスのことを指し、Selosse’s Childrenは彼の弟子達ということになる。 ジェローム・プレヴォ、ユリス・コラン、ベルトラン・ゴートロ、アレクサンドル・シャルトーニュ、ミシェル・ファロンなど、オープンな性格のアンセルムが受け入れた弟子達の名は挙げればキリがないが、その錚々たるメンバーを見る限り、もはや粒揃いどころの話ではない。 他にも、同じくフランスでは、Marcel’s Children(ボジョレー地方、故マルセル

梁 世柱
2023年12月2日


復活した銘醸地 <ポルトガル特集:ダオン前編>
初めての国を訪れる時は、いつも不思議な高揚感に包まれる。 雲のように掴みどころがないのに、カーテンの隙間から差し込む光のように、いつの間にか一点へと集約していく、どうにもチグハグな感情。 約1日かけた長旅を終え、私はついに降り立った。 ヨーロッパ最後の、ヴェールに覆われたワイン王国、ポルトガルに。 深夜にポルト空港へと到着し、慌ただしく迎えの車に乗り込む。 想像していたより、遥かに綺麗に舗装された、滑らかな道が続く。 長旅による眠気と疲れ、体の節々を襲う鈍痛、周囲を覆う暗闇、車内を流れるポルトガル・ミュージック。 初めて目にするはずの風景を楽しむこともなく、車は淡々と走り続けた。 単調で抑揚のない時間が、私の緊張をなだめていく。 1時間半後、ようやく最初の目的地に到着した。 かつてローマ街道の要所として栄えた古都Viseu(ヴィゼウ)、そして、ポルトガル屈指の銘醸地として名高い、Dão(ダオン)だ。 注:日本ではDão=ダンと表記されるケースが多いが、現地の発音を重視し、SommeTimesでは一貫してダオンと表記する。 南のブルゴーニュ...

梁 世柱
2023年11月29日


Wine Memo <16>
Luis Seabra Vinhos, Alvarinho Granito Cru 2021. 全体論で言うならば、ポルトガル・ワインの中でも私の興味レベルが最も低いのは、ヴィーニョ=ヴェルデだろうか。 アルコール濃度が低く、非常に軽く、薄く、極微発泡性で、低価格の超大量生産型ワインという典型的なヴィーニョ=ヴェルデは、どうにも私の心の琴線に触れない。 そういったワインの「役割」は十分に理解もリスペクトもしているが、最大公約数的味わいも、その造り方も、私にそのワインを堪能したいという欲をもたらしてはくれないのだ。 私はそのようなワインを、「Soulless Wine(魂の抜けたワイン)」と度々表現しているが、魂が(技術の過剰な駆使などによって)極限まで薄められたワインが私に響かないのは、私が魂を宿した存在である以上、仕方ないのではないだろうかと思う。 そして、私が抱くある種の苛立ちとも言えるその感情は、「そうではないワイン」との数々の邂逅から来ている側面も強い。

梁 世柱
2023年11月24日
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