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La Maliosa ~時代の先を行く農の在り方~
私はそこへ行ったのではなく、大きな世界の小さな一部として、ただそこに在った。 ラ・マリオーザ 。 世界の理とは、在り方が異なる存在。 パルテノン神殿、マチュピチュ、そして霊峰富士のように。 その隔絶性は、ただならぬ神性を纏い、人々を強烈に蠱惑する。 踏み締める 大地...

梁 世柱
2023年3月23日


ビオディナミのリアル
3月10日、オレゴンから Evening Land Vineyardsのサシ・ムーアマン (他関連ワイナリー: Sandhi Wines、Domaine de la Côte、Piedrasassi )をゲストに迎え、「ビオディナミを説く」と題したオンライン・セミナーを開催した。 信じるか信じないか、といったどうにも宗教的な見解に至りがちなビオディナミ農法だが、原理はさておき、結果でのみその是非を判断すべき、というのが私自身の考え方だ。 だからこそ、ゲストにサシ・ムーアマンを迎えた。 以前、カリフォルニアの特集記事を組んだ際にも、徹底した現実主義者のサシならではの正直な言葉に、随分と助けられたからだ。 本記事はサシとの対談をもとに、ビオディナミのリアルを(私自身の備忘録も兼ねて)掘り下げていく内容となる。 また、ビオディナミ農法そのもに関する説明は、以前寄稿した Adavanced Académie 15 と 16 をご参照いただきたい。 実際のセミナーでは、5つのテーマに分けてディスカッションを行ったが、内容が重複する部分もあったため、整理した

梁 世柱
2023年3月11日


ヴィニュロンの一年 <2023年2月>
暖冬の続く長野県。 1月下旬および2月初旬の大寒波によって一時的な大雪は降ったものの、例年に比べて非常に雪が少ない。2月下旬には日中に10℃を越える暖かい日も多く、雪ではなく雨が降っている。 現時点で生育期の天候を予想することは難しいが、近年続く悪天候がまた今年も来るのでは...

ソン ユガン
2023年2月27日


【実験】ワイングラスと実際の味わいの関連性
久しぶりにやってまいりました。苅田のソムリエ実験レポート第3段。 ( 第1弾 、 第2弾 も合わせてお読みください。) 今回はグラスによる違いです。 今さらと思う方も多いかもしれません。 でも今自分が出しているワインに、最高の相性のグラスを使用できているといいきれますでしょうか? ある有名ベトナム料理屋さんではシャンパン、白、赤、ロゼ、オレンジ、すべてグラスは1種類、それに合うようなワインをチョイスしている。補充も楽だしといっていたのを聞いて、目から鱗だったことがあります。 万能なグラスがある一方でグラスは様々なものがあり、有名グラスメーカーのサイトを覗けば品種ごと、ランクごとにかなり種類があるのに驚かされます。 弊店では1つの料理に対して2種類のドリンクを提供しており、様々なお酒の種類に合わせて、8種類のグラスを使い分けています。もちろんドリンクのマッチにあったものを組み合わせて提供しておりますが、グラスの性質を理解することでより素晴らしい体験をお客様にしていただけるのではないかと、今回の実験を思いついた次第です。 お店をやる、新しいグラスを

SommeTimes
2023年2月11日


世界で活躍する日本人ワインプロフェッショナル <1>
日本人シェフが世界各地で活躍してきたのは、多くの方々がご存じのことだろう。そして、日本人ワインメーカーや日本人ソムリエが海外で活躍していることも、それなりによく知られているだろう。 しかし、 海外でワインの世界に生きる日本人は、何もワインメーカーやソムリエだけではない 。 この新シリーズでは、筆者が海外で出会った様々な日本人ワイン関係者にスポットライトを当て、彼らのストーリーを語っていきたいと思う。 彼らの歩んできた道のりは、将来的にワイン関係の仕事で海外移住を考えている人々にとっては、この上ないインスピレーションとなるだろう。 第一弾としてご登場いただくのは、 イタリア・トスカーナ州モンタルチーノ在住のYoshiaki Miyajima (愛称は Yoshi )さん。

梁 世柱
2023年2月10日


ヴィニュロンの一年 <2023年1月>
2019年に植樹したブドウ達は、今年5年目を迎える。 長野県長野市北部、自然豊かな中山間地「浅川地区」のとある森の中にある約2haの土地。 標高630m、南向き、若干の傾斜で日当りは良く、優しい風が通り抜ける。周りは木々に囲まれ、山の中に静かに佇み、鳥達の歌声だけが聞こえてくるブドウ畑。 昨年10月に念願の初収穫を終えた畑は、それから時が止まったかのように静まり返り、 ブドウ樹は、冬の寒さに耐えながら春の訪れを待っている。 収穫後の安堵した時間も束の間、2023年1月、いよいよ今シーズンの始まりである。 「暖冬」 通常なら2月から開始する剪定作業なのだが、今年は少し早める事にした。 理由は“暖冬”。今年は雪が異常に少なく、例年に比べて非常に暖かい。1月に気温が15℃近くまで上がった日もあり、さらに雪ではなく雨まで降っている。地元の方に聞いたが、1月に雨は経験がないと言っている。

ソン ユガン
2023年1月31日


南アフリカの冷涼気候産地 <後編>
前編 に続き、後編でも昨年11月28日に開催された、オンラインセミナー 【 キャシー・ヴァン・ジルMWと巡る壮大な南アフリカワインの世界 Episode.2~冷涼気候産地~ 】の内容をレポートしていく。 前編では、南アフリカの冷涼気候を形成する決定的な要素である「 標高...

梁 世柱
2023年1月7日


南アフリカの冷涼気候産地 <前編>
11月28日、南アフリカワイン協会(Wines of South Africa : WOSA )が、オンラインワインスクール大手 Vinoteras との共催で、 【 キャシー・ヴァン・ジルMWと巡る壮大な南アフリカワインの世界 Episode.2~冷涼気候産地~...

梁 世柱
2022年12月10日


ポルトガルの巨星
眠れる巨人と呼ばれてきたポルトガルは、もう眠ってなどいない。 それどころか、ヨーロッパで造られる「フランス品種系非フレンチワイン」に世界中がそっぽをむき出して以降、かつての大波に乗り損ねたポルトガルは、魅力的な地品種が数多く残る、 周回遅れのトップランナー とでも呼ぶべき存在になった。 とはいえ、フレンチ味に慣れすぎた市場がそう簡単に未知の味わいを評価する、ということもない。 面白いだけでは、偉大にはなれない。 ヨーロッパ中の地品種ワインが挑んだその高き壁の前には、無数の残骸が積み上げられている。 もちろん、優れたワイン=偉大なワイン、という時代でも無いのだから、進む方向は様々だ。 ヴィーニョ・ヴェルデの多種多様な表現、リスボンを中心とするナチュラル・ワインの盛り上がり、ドゥロやダオンの混植混醸、アレンテージョにおけるターリャ(アンフォラ)の復興、テロワールをより重視するようになったポルト。ポルトガル各地で様々な伝統が再発掘されつつ、「らしさ」もまた多様化しつつある中で、その全てをやってしまっているだけでなく、伝統品種ワインを「偉大なワイン」へと

梁 世柱
2022年12月8日


ボルドーのワイン不正
僅か10年ほどの間に、産地全体の約8割が認証を取得 するという、世界でも前例の無いほどの 大々的なサスティナブル化に成功 したボルドーは、再び世界最先端の銘醸地へと返り咲こうとしているように思えた。 C.I.V.B (ボルドーワイン委員会)を中核としたこの驚くべき変化に関しては、以前の 特集記事 でも詳しくレポートしたが、今回届いたニュースは、その喜びも、賞賛も、努力も、何もかもを木っ端微塵に破壊してしまいかねないものだった。 2022年10月27日、ボルドーの裁判所で、2016年から2019年に渡って行われた「 重大な不正行為 」に関する裁判が行われた。

梁 世柱
2022年11月25日


Coravinの有用性
抜栓したワインの品質をできるだけ長く維持するためのガジェットは、様々なフォーマットで、膨大な数のアイテムが開発されてきた。 それなりに有用なものもあれば、疑問点が多々あるもの、実に珍妙なものまで、そのヴァリエーションもまた非常に興味深く、ガジェット好きには興味の尽きないジャンルのアイテムとなっている。 そんな中で、まさに革命的なガジェットとして登場したのが、 Coravin だ。 すでにかなり認知されてはいるが、Coravinは、 ワインを抜栓しないままコルクに細い針を刺し、ガス注入と同時に針からボトル内のワインを吸い上げ、コルクの自然収縮を利用して針穴を閉じる、という仕組み になっている。 その効果は 「正しく使えば」 まさに絶大で、Coravinの発明によって、超高額ワインのグラス販売や、超多数のグラスワイン販売(200種類以上をグラスで提供という例もある)といった夢のようなプログラムを、非常に低いリスクで叶えることが可能になった。 また、家庭で保管してある大切なワインを少しずつ長期に渡って楽しむ、という凄いことまで出来てしまう。...

梁 世柱
2022年9月20日


【コルク抜き、ソムリエナイフの歴史について】
こんにちは、恵比寿にあるワインショップ、ワインマーケット・パーティーの沼田です。 今回は抜栓に使われるソムリエナイフなど、 コルクスクリュー の話を一つ。 コルク抜きの原型は、おそらく 17世紀 、銃筒を掃除する為に使われていたスクリュー(螺旋状の道具)か、それを改造したものに違いないとされています。 そのスクリューは先込め式銃や拳銃用のさく杖(銃身の中を手入れする細長い金属棒)の先に付いていて、詰まった銃弾や不発の弾薬を取り除くのに、ちょうどワインのコルク栓を抜くのと同じ要領で使われていました。 屋外にあっては瓶の中にあるコルクを抜く行為は容易なものではなかった時代があったことから、この偶然の一致は、兵士や猟師達を大いに喜ばせたのではないでしょうか。 それよりも以前の時代、 ワイン栓の原型はなんと液体 でした。 ギリシア人はワインを運ぶ時、ボトルに封をする方法として 松脂 を使用していました。

SommeTimes特別寄稿
2022年8月4日


Bouchon Family Wines ~ワイルド・ヴィンヤードの魅力~
過去2年ほどの間だろうか、最先端のアイデアに敏感なソムリエやワインプロフェッショナルをじわじわと賑わせてきたワインがあった。 その名は、 パイス・サルヴァヘ 。 チリの中でもややマイナーな、 マウレ・ヴァレー から登場したこのワインが、多くのトッププロフェッショナルを魅了してきた理由は、その個性豊かな味わいだけでなく、 非常に特殊な葡萄畑 にもあった。 葡萄品種は パイス 。樹齢は不明(おそらく、200年以上)。無灌漑、無農薬、そして、 無剪定 のこの葡萄は、まさに「手付かず」のまま、 自然環境と完全に一体化 する形で、数えきれないほどの 悪天候による試練 、旱魃、 病害を 自力のみで乗り切ってきた 。 今でも栽培において人の手が入ることは一切なく、収穫時にのみ、ありのままの自然の恵みを人が分けて貰っている形だ。 さて、このワインの特殊性を深掘りする前に、まずはパイスという葡萄の話をしておこう。 パイスは、 16世紀 に当時「黄金の世紀」と呼ばれるほどの最盛期を謳歌していた スペイン王国・ハプスブルグ朝 が中南米大陸に対して非常に積極的な植民地化

梁 世柱
2022年7月24日


奥深く粋な、スイスワインの世界
SommeTimesでは、私が粋(Iki=生=活)と感じるワインを色々と紹介させていただきたいと思っております。 以前のSommeTimesのコラム(オンラインサロンにアーカイヴがありますが、Web版でも特別掲載中)でも、スイスワインの話題をとりあげたことがありました。その...

SommeTimes特別寄稿
2022年7月5日


銘醸地のカジュアル赤ワイン、世界NO.1決定戦
日常の私は、カジュアルなワインばかりを飲んでいる。 カジュアルな価格帯で良いワインを探し出してこそプロフェッショナルだ!なんてのは建前で、仕事で散々ワインの事は考えるので、オフの時間くらいはあまり頭を使わずに済むワインを飲みたい、というのが本音だ。 マイナー産地のカジュアルワインも好きなのだが、実は銘醸地のカジュアルワインはもっと好き。さすがのテロワールの底力を感じさせられることが多いからだ。 さて、そんな銘醸地カジュアルワインに癒される日々の中、ふと思い立った。 世界各地に、カジュアルの枠を超えた素晴らしいワインがあるが、果たしてどのワインが最も優れているのか?と そういえば、このテーマに関して、冷静に客観視したことが一度も無かった。 ということで、ここに開催を宣言する。 第一回「 銘醸地のカジュアル赤ワイン、世界NO.1決定戦 」を!! 審査員は私、選考も私。 完全に独断だが、 偏見も忖度も一切無し で争って頂こうかと思う。 エントリー条件 は以下の通り。 1. その産地の顔となるワインが、世界的な銘醸ワインであること 2. .

梁 世柱
2022年7月1日


孤高のアルザス <Rolly-Gassmann>
北東フランスの銘醸地、アルザス。 歴史的に数多くの侵略を受けてきた「東の玄関」は、今もまだ、いびつな多様性という形でその影響を強く残している。 ワイン産地として見れば、フランスとドイツの文化が融合した場所であり、同じくドイツ領となっていた時代があったロワール地方のモゼールと...

梁 世柱
2022年6月11日


南アフリカのパイオニアたち <後編>
前編ではクライン・コンスタンシアを中心にレポートしたが、ワイン産地としての豊かな歴史を誇る南アフリカには、まだまだパイオニアたちがいる。 確かにクライン・コンスタンシアは象徴的な存在ではあるが、それだけでは決して全容は見えない。多様なアイデンティティとスタイルが混在する在り...

梁 世柱
2022年5月18日


南アフリカのパイオニアたち <前編>
4月25日、南アフリカワイン協会(Wines of South Africa : WOSA)が、オンラインワインスクール大手Vinoterasとの共催で、【キャシー・ヴァン・ジルMWと巡る壮大な南アフリカワインの世界 Episode.1~先駆者たち~】と題したオンラインセミ...

梁 世柱
2022年4月26日


Sato Wines 衝撃の自社畑ワイン
ニュージーランド南島のセントラル・オタゴは、国土の北から南までワイン産地が点在するニュージーランドの中でも、最南端に位置するエリア。南半球で、最南端側となると、無条件寒いエリアだと思うかも知れないが、実際には冬は氷点下に入るほど寒く、夏は逆に暖かく乾燥しており、日照量も平均...

梁 世柱
2022年3月2日


驚天動地の酒「新政」
本質を知ることを怠ると、自分にとって都合の良い形で理解してしまいがちだ。こういった 曲解 は、作品という結果を純然に楽しむだけの消費者であれば問題にはならないが、その価値を伝える役割と責任を担う「 伝え手 」にとっては、重大な過失に繋がり得る 深刻な怠慢 だ。 知らないなら語らない 。しかし、伝え手が本来守るべき約束事は、破られることが常。 私は新政を、いや、新生した新政を良く知らなかったから、語ることは避けてきた。しかし、他の有識者らしき人たちによって切り取られ、植え付けられてきた筆者の新生新政に対する断片的な認識は、その本質にいよいよ触れたとき、 何もかもが間違っていた と断じざるを得ないものだった。 筆者が21歳の時、ニューヨーク・マンハッタンで職を得た「酒蔵」という巨大な日本酒バーには、旧新政が常備されていた。刈穂、飛良泉、紅まんさく、雪の茅舎といった銘酒どころ秋田の佳酒が並ぶ中、旧新政は際立って地味な酒だった。売れ行きも芳しくなく、スタッフの誰かが抜栓しては他のスタッフに迷惑がられ、抜栓後の日数が経過し過ぎないギリギリのタイミングで急い

梁 世柱
2022年2月9日
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