眠れる巨人と呼ばれてきたポルトガルは、もう眠ってなどいない。
それどころか、ヨーロッパで造られる「フランス品種系非フレンチワイン」に世界中がそっぽをむき出して以降、かつての大波に乗り損ねたポルトガルは、魅力的な地品種が数多く残る、周回遅れのトップランナーとでも呼ぶべき存在になった。
とはいえ、フレンチ味に慣れすぎた市場がそう簡単に未知の味わいを評価する、ということもない。
面白いだけでは、偉大にはなれない。
ヨーロッパ中の地品種ワインが挑んだその高き壁の前には、無数の残骸が積み上げられている。
もちろん、優れたワイン=偉大なワイン、という時代でも無いのだから、進む方向は様々だ。
ヴィーニョ・ヴェルデの多種多様な表現、リスボンを中心とするナチュラル・ワインの盛り上がり、ドゥロやダオンの混植混醸、アレンテージョにおけるターリャ(アンフォラ)の復興、テロワールをより重視するようになったポルト。ポルトガル各地で様々な伝統が再発掘されつつ、「らしさ」もまた多様化しつつある中で、その全てをやってしまっているだけでなく、伝統品種ワインを「偉大なワイン」へと進化させる偉業をも成し遂げている、異次元の造り手がいる。ドゥロの地で5代続く家族経営ワイナリー、Niepoortニーポートだ。
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