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再会 <19> ワインに宿った狂気
Dominio del Urogallo, Las Yolas 2011. どんなマイナー産地にも、どんなに評価が低い産地にも、一人や二人くらいは、 特別な存在 が居たりする。 ワインという世界の興味深いところだ。 しかし、たとえ彼らのワインが凡百の「その他」とは明らかに一線を画し、象徴的存在となったとしても、 数多くの追従者が現れなければ、その産地自体の評価を押し上げるにはなかなか至らない 。 例えば、イタリアのアブルッツォ州。 モンテプルチアーノ・ダブルッツォ というこの地の赤ワインは、長らくの間大量生産型のカジュアルワインとして存続してきたという歴史がある。 アブルッツォには、Valentini、そしてEmidio Pepeという世界的な名声を誇る特別な造り手達がいるが、彼らの品質に追いつくほどの追従者は結局現れていない。 その結果として、モンテプルチアーノ・ダブルッツォというワインは今でもカジュアルワインから脱却できていない。 これもまた、ワインの面白いところであると同時に、ワイン市場の残酷さを示す例と言えるだろう。

梁 世柱
2022年8月27日


出会い <18> 常識の外側
Bat Gara, Txakoli “Uno” 2014 ワインの世界にも、 「常識」 というものはある。 シャンパーニュ地方でシャンパーニュ製法に基づいて造ったスパークリングワインのみが、シャンパーニュを名乗れる。 ブルゴーニュのシャルドネは、バトナージュして、MLFして、それなりに新樽を使う。 優れたバローロは、少なくとも10年は寝かせる。 ワインという文化を形成する様々な要素に、常識はついて回る。 そして、常識を知らないと恥ずかしい思いをすることも、確かに少なからずある。 しかし、それらの常識には必ずと言ってよいほど 例外がある ものだ。

梁 世柱
2022年8月13日


再会 <18> 塗り替えられる「ティピシテ」
Christophe Pacalet, Côte de Brouilly. 2020 ¥4,800 プライヴェートではほぼナチュラルワインオンリーの筆者は、同類の例に漏れず、ガメイが大好きだ。 華やかなベリー香に、ほのかなワイルド感が加わる蠱 惑的 なアロマ。 ピュアな果実味と踊るような酸。 軽やかで、伸びやかで、自由なワイン。 そんな ナチュラルガメイの聖地 といえば、当然 ボジョレー である。 マルセル・ラピエール をはじめとして、ナチュラルワインを代表するような偉大な造り手たちがひしめくこの地のワインを飲んで人生が変わった、と言う人にも数えきれないほど出会ってきた。 そんな聖地にも今、 温暖化と言う荒波 が押し寄せている。 1970年代頃 までのボジョレーは、 アルコール濃度11%を超えることは滅多にない ワインだった。 やがて、徐々にインターナショナル化していったボジョレーは、 補糖によって12.5%程度までかさ増し することが一般的となった。 12.5%は、それでも 十分気軽にグビグビ飲める 、というアルコール濃度であり、ガメイ特有の「

梁 世柱
2022年8月7日


出会い <17> ブルゴーニュ味のワイン
Racines Wine, Chardonnay “Sanford & Benedict Vyd.” 2018. ¥16,000 ブルゴーニュが高い。いくらなんでも高過ぎる。 ワインファンを大いに悩ませるこの問題は、実に深刻だ。 特に、新しくワインの魅力に目覚めた人たちにとって、世界最高峰のクラシックワインを体験するためのハードルがとてつもなく高くなってしまったという現実は、非常に厳しいものだ。 それなのに、 先輩たちは口を揃えて「クラシックを学べ」と言う 。 よほどの経済力か、稼ぎのほとんどをワインに捧げるほどの覚悟、もしくは、ごく僅かな幸運に恵まれた人しか入れない特殊な環境やグループにでも属していない限り実現不可能な「指導」など、もはや ただの理不尽 でしかない。 それに、ブルゴーニュにしても、ボルドーにしても、 気候変動の影響で「クラシック」な味わいは、すっかり迷子 になっている。 例えば2018年ヴィンテージのブルゴーニュに大枚を叩いてその味わいを体験したとしても、それはクラシックワインの体験などとは到底言えないだろう。(例外的に素晴らし

梁 世柱
2022年7月31日


再会 <17> 「らしさ」とは
農楽蔵, Nora Rouge 2017 日本でワインの仕事をするなら、日本ワインのことを無視するわけにはいかない。 時代は、インターナショナル&ボーダーレス。海外のワインプロフェッショナルやワインファンから、日本ワインのことを訊ねられるのはもはや日常茶飯事だ。 日本酒(清酒)、焼酎、お茶など、これまでは「日本色」の強い飲料に関して聞かれることの方が多かったが、近年は 日本ワインへの海外からの関心も確実に高まっている 。 「だから」、というとなんとも調子の良い話に聞こえると思うが、もちろん、自発的な興味は十分にもって、日本ワインとなるべく頻繁に接してきたつもりだ。 過去10年ちょっとの間に、様々な側面で、 日本ワインの品質は確かに向上してきた 。 だが、正直なところ、それでもまだ、大多数の日本ワインは、私にとっては「 ものたりない 」。 そう感じる理由もわかっている。 インターナショナルスタイル(*1)というカテゴリーのワインが、すでに旧時代の遺物となりつつある からだ。

梁 世柱
2022年7月23日


出会い <16> 中国で発見、ピノ・ノワールの好適地
Silver Heights, Jia Yuan Pinot Noir 2019. ¥5,700 中国はかねてからニューワールド新興産地として、大いに期待されてきた。 生産量ベースではすでに世界10位近辺におり、ニュージーランド、オーストリア、ギリシャといった国々を上回り、年によってはポルトガルさえも超える。 当然、日本の生産量は、中国には遥か遠く及ばない。 中国がワイン産地として期待されてきた理由は、主に 2つ ある。 一つはその 圧倒的な国土の広さ だ。 超大量生産型も可能だが、それ以上に、 「あれだけ国土が広ければ、どこかに最高の好適地があるはずだ。」 という期待の方がずっと大きい。 それもそうだろう。超大量生産型ワインはすでに飽和状態だし、そもそもそのコンセプト自体が時代と逆行している。 もう一つの理由は 資本力 だ。 ワイン造りにはお金がかかる。特によりインターナショナルなスタイルでワインを造る場合、ヨーロッパ伝統国やニューワールド各国のワインと対抗するためには、莫大な設備投資が必要になる。 また、ワイン造りそのものの経験にも乏しいため

梁 世柱
2022年7月17日


再会 <16> ピラジンの何が悪いのか
Latta, Cabernet Franc “Benovolent” 2021. ¥5,500 ワインプロフェッショナルと一口に言っても、様々なタイプの人がおり、当然のようにそれぞれ異なったフィロソフィーをもっている。 私自身は基本的には非常にオープンなタイプだが、ある特定の考え方に対しては、頑なな態度を見せることも少なからずある。 例えば、ブルゴーニュ、ボルドー、シャンパーニュ、バローロ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、リオハ、プリオラートといった世界最高峰の銘醸地に対して、全くリスペクトをもっていないタイプのワインプロフェッショナルとは、どうも馬が合わない。 意外といるものだ。カリフォルニア至上主義とか、ゴリゴリのナチュラル至上主義とか、なかなかに偏った人たちが。 ワインの世界は広いから楽しいのに 、と何とももどかしい気持ちになる。 それが本人の「好み」なのであれば、何の問題も無いのだが、ワインのことを他者に伝える立場として、「カリフォルニアのピノ・ノワールは、ブルゴーニュよりも遥かに優れている。」なんて堂々と発言してしまうのは、流石にどう

梁 世柱
2022年7月10日


出会い <15> 常識を書き換えたワイン
Arnot-Roberts, Sauvignon Blanc “Randle Hill Vineyard” 2020. ¥5,300 圧倒的な才によって、 その産地のイメージを一変させてしまう 。 そんな造り手が、世界各地に僅かながら存在している。 その最たる例の一つは、カジュアルワインというイメージがこびりついて離れなかったフランス・ロワール渓谷の小産地プイィ・フュメを、ソーヴィニヨン・ブランの聖地へと押し上げた故ディディエ・ダグノー。 ダグノーの場合は、純粋な品質面での劇的な進化でもって世界を驚かせたのだが、少し違った角度から、イメージが一新されるパターンもある。 例えば、カリフォルニアの アルノー=ロバーツ がそうだ。 アルノ=ロバーツが登場する前は、(正確に言うと、同時多発的に同様の造り手が複数誕生したが、インパクト面ではアルノ=ロバーツがダントツ) カリフォルニアのワインは、白、赤共に樽のしっかりと効いた濃厚で重厚なワインと言う画一的なイメージに支配されていた 。そしてその味わいは、 テロワールの特徴とすら言われていた 。 そんな中、ア

梁 世柱
2022年7月3日


再会 <15> 最後の再会
La Ferme de la Sansonnièr, Anjou “Vignes Françaises en Foule” 2002 敬愛する造り手は誰か、と問われたら、私は真っ先に彼の名を思い浮かべる。 マルク・アンジェリ 。 フランスのロワール渓谷で、孤高のワインを生み出す 賢人 だ。 マルクは『 ラ・フェルム・ド・ラ・サンソニエール (以下、 サンソニエール )』という名の農場を経営しており、ワイン造りだけに留まらず、驚異的なジュ・ド・ポム(リンゴジュース)や、ミエル(蜂蜜)なども生産している。 農園は1990年から既に ビオディナミ で管理され、マルク自身も自然の力を最大限に引き出すために苦心しながら、様々な挑戦を続けてきた。 特定のワインに対してあまり思い入れをもたない筆者にとっても、そんなマルクのワイン(サンソニエール)は特別な存在だ。 なにせ、私とサンソニエールの間には、いくつものエピソードがある。 もう15年以上前になるだろうか。 当時は、いわゆるクラシックワインというものを集中的に学んでいた私が、徐々にナチュラル回帰の世界へと引

梁 世柱
2022年6月26日


出会い <14> 温暖化時代のロゼ
Dom. du Moncaut, Rosèita 2020 ¥2,700 ロゼは夏の飲み物 だ。 筋金入りのロゼ好きである筆者のような飲み手にとっては、ロゼはオールシーズンなのだが、世界的なスタンダードとしては、ロゼとは夏の季語である。 しかし、日本ではなぜか春の、桜の時期の飲み物と印象付けられてきた。 世界中を見回しても、ロゼ=春、となっているのは日本だけ だ。 挙句の果てには、春のロゼプロモーションが始まると、「桜の香り〜」といった理解不能なテイスティングコメントまで氾濫する。 もし筆者が間違っていたら素直に認めるので、誰か私に飲ませて欲しいものだ。桜の香りがするロゼなるものを。 ロゼにまつわる誤解はこれだけではない。 ロゼ=甘い、というイメージもかなりの謎。 確かに、昔田舎で見た一升瓶に詰められた謎めいたロゼは甘かったし、フランス・ロワール地方のロゼ・ダンジュや、アメリカ・カリフォルニア州のホワイト・ジンファンデルのように甘いロゼは存在しているが、生産量ベースで見ると、 間違いなく圧倒的なマイノリティー だ。 いつか、本格的なリサーチをして

梁 世柱
2022年6月19日


再会 <14> ガリシアの秘宝
Quinta da Muradella, Muradella Blanco 2012 2000~2010年前後頃のスペインワインは、実に楽しかった。 現在はカタルーニャ州の各地やマドリード近郊を中心に新たな盛り上がりを見せ、また違った楽しさが生まれているが、 ほんの10年ほど前まで、スペインワインのホットゾーンは、間違いなく北西のガリシア地方だった 。 そのシーンを引っ張っていた象徴的存在は、 ラウル・ペレス 。 天才 の名をほしいままにした希代の醸造家は、ガリシアの各地に点在していた気概溢れる造り手たちとタッグを組み、時に自らの名を冠し、時に彼らの名を冠して、数えきれないほどの傑作群を世に送り出していた。 ラウルとタッグを組んだことによって、結果的にその名声や評価が大きく高まった造り手も多く、フォルハス・デル・サルネスのロドリゴ・メンデス(リアス・バイシャス)、アデガス・ギマロのペドロ・ロドリゲス(リベラ・サクラ)などは、すでにスーパースター級の存在となっている。 そんなラウルに連なる造り手たちの中でも、最も地味で、最も奥深く、最も難解かつ異質

梁 世柱
2022年6月12日


高級ビールを嗜む <1> 聖地ポートランド
レヴュー企画の不定期連載として、 「高級ビールを嗜む」 をスタート致します。 ビールには、ワインも顔負けの 非常に奥深い世界 が広がっています。 基本のスタイル( 製法カテゴリー )に、 様々な副材料 も含まれば、 そのヴァリエーションはまさに無限大 。 筆者はビールの専門家ではありませんが、飲料のプロフェッショナルとしての目線から、厳選したビールをレヴューして参ります。 基本的なテーマはタイトルの通り、「高級ビール」です。 つまり、日常の中で、乾いた喉を潤すために飲むビールではありません。 ここで言う高級ビールとは、(価格も高いですが)特別な時間を演出してくれる、孤高のビールたちのことです。 日本でも、クラフトビールがブームからスタンダードへと移り変わりつつありますが、 世界のクラフトビール事情は、思ったよりも遥か先へと進んでいます 。 本企画の初回は、クラフトビールの中でも、特に クリエイティヴなビールの聖地 とされる、 アメリカ・オレゴン州の州都ポートランド で誕生した、驚きの一本です。

梁 世柱
2022年6月7日


出会い <13> ワインファンのロマン
SRC, Etna Rosso “Alberello” 2019 ¥9,400 近年爆発的な人気の高まりを見せ、今では イタリアの銘醸地 として、真っ先に名前が挙がっても不思議では無いほどの地位を得た シチリア島・エトナ火山 。 『火山の山肌で葡萄を育て、火山のテロワールが宿る。』 なんていうパワーワードも素敵だが、 それだけで人気が出るほど世界のワイン市場は甘くない 。 そう、エトナの人気が高まった理由は、その 圧倒的な個性と品質 にあるのだ。 イタリアのワイン史にその名を残す名醸造家 サルヴォ・フォティ による一連のワイン群や、 フランク・コーネリッセン のようなカルト的人気を誇る生産者など、エトナを彩る造り手たちの魅力も申し分ない。 成功すべくして成功した 。エトナとは、そういう産地だと思う。 そして、エトナの底知れない可能性に心を奪われ、この地に移住してきた新たな造り手たちも多い。 今回の出会いは、そんなエトナのニュージェネレーション組と。

梁 世柱
2022年6月5日


再会 <13> アリゴテの覚醒
Benjamin Leroux, Bourgogne Aligoté 2018, ¥4,340 長年のブルゴーニュファンであれば、 アリゴテ という葡萄のことをご存じの方も多いだろう。 ブルゴーニュで栽培されるシャルドネ以外の葡萄品種としては、最も良く知られているアリゴテだが、 その評価は極めて低かった と言える。 もちろん、 ドメーヌ・ドーヴネ (不世出の大天才、マダム・ビーズ・ルロワが率いるドメーヌ)のアリゴテのように、突然変異的に異常な品質に到達したワインはあったものの、アリゴテと言えば「安いけど、薄くて酸っぱくて微妙」というのが定評だった。 DRC (世界で最も高価なワイン群の一つを手がける、ブルゴーニュのトップ・ドメーヌ)の所有者も、(プライベートワイナリーの ドメーヌ・ド・ヴィレーヌ として)ブルゴーニュのマイナーエリア(ブーズロン)でアリゴテに注力してきたりもしたが、それも影響力としてはあまりにもピンポイントだった。 ドーヴネにしても、ドメーヌ・ド・ヴィレーヌにしても、造り手がとにかく有名過ぎたため、アリゴテ自体の評価を上げたとい

梁 世柱
2022年5月29日


出会い <12> 若者の感性
Indomiti, “Arga” IGT Garganega 2020 ¥3,800 私もとうに「若手」ではなくなり、すっかりと「中堅」になって久しい。むしろ、ベテランに片足を突っ込み始めたぐらいのタイミングだろうか。年を重ねるにつれ、学ぶ機会よりも教える機会の方が増えてくるのは必然なのだが、どちらかというと学ぶことの方が好きな私にとっては、少々悩ましい問題だ。インプットとアウトプットのバランスを取るのは、とても難しい。 というと、年を重ねるのが辛いように思えてしまうかも知れないが、楽しい部分もたくさんある。特に、若手の台頭にはいつも心が踊らされるのだ。 ワインを扱う業種(ソムリエやショップ店員、インポーターなど)であれば、随分と前からたくさんの後輩や若者たちと接してきたのだが、最近は ワインを造っている人でも、私より若い人がかなり増えてきた 。 彼らのワインを飲むのは本当に 楽しく刺激的 で、もはや趣味と言えるほど、ついついのめり込んでしまう。 今回出会った造り手はまだ30歳にもなっていない、ミレニアル世代の シモーネ・アンブロジーニ...

梁 世柱
2022年5月22日


再会 <12> 良薬、口に甘し
L.Garnier, Yellow Chartreuse V.E.P. シャルトリューズ というリキュールをご存じだろうか? リキュールの女王 とも称されるこの魔法の液体は、酒の世界における 都市伝説的な存在 でもある。 伝承によれば、 1605年にフランソワ・アンニバル・デストレ なる人物(当時のフランス王、アンリ4世の妾の実兄だったそう)が、カルトジオ会という修道会に、現在のシャルトリューズの元となった手書きのレシピを、「なぜか」渡したことから始まったそうだが、その話が真にシャルトリューズの起源であるという説を確実に裏付けるような証拠は発見(もしくは公開)されていない。 錬金術的な構成となっていたそのレシピには、「 長寿のためのエリクサー 」と書かれていたそうである。 それから130年後の1735年、忘れさられていた謎のレシピがカルトジオ会の本山である グラン・シャルトリューズ に届けられ、1737年には修道士の ジェローム・マウベック によってより洗練されたレシピへと改変された後に、本格的な生産が始まった。当初は販売用ではなかったが、やが

梁 世柱
2022年5月14日


出会い <11> ミッシング・リンク
Luis Pérez, La Barahuela Palma Cortada 2017 ¥10,800 「シェリーはお好きですか?」 私のソムリエ経験の中でも、かなりの回数繰り返した言葉だ。 醸造のどこかの段階で、アルコール(基本的にブランデー)を足してアルコール濃度を上げる「 酒精強化ワイン 」の一種であるシェリーは、とにかく「 好き嫌い 」がはっきりと別れる。 甘口が主体のポートなどに比べると、辛口主体のシェリーには、より一層「 分かりにくさ 」がつきまとうのだ。 ペアリングにおいては、驚くほどのポテンシャルを秘めているにも関わらず、大多数のシェリーペアリングは、「シェリーが好きである」ことが成立の前提条件になってしまう。 本記事は、そんなシェリーに焦点を当てた記事になるため、そもそもシェリーがお好きでない方には、何の興味もそそられない情報になるであろうことを、ご承知いただきたい。 美しい アンダルシア地方 の特産品であるシェリーが、時代の流れに乗って、何度かその姿を変えてきたことを知る人は、そう多くないかも知れない。 シェリーの主産地である

梁 世柱
2022年5月7日


再会 <11> スーパーナチュラル
Moric, Haus Marke Supernatural Weiss 2019. ¥4,800 今でこそ、 クリーン・ナチュラル が、ナチュラル・ワインの一派としてはっきりと認識されるようになってきたが、ほんの数年前まで、キレイな味わいのナチュラル・ワインは、ブームから爪弾きにされていた。 別の言い方をすると、そういったワインは、ナチュラル・ワインとしては、 売れ行きが良くなかった のだ。 多少の例外はあるが、ワインをクリーンに造れる人は、ワイルドにしか造れない人よりも、圧倒的にワイン造りが「上手い」。さらに、上手いだけではなく、ナチュラルかつクリーンに造るには、 勤勉さと献身が欠かせない 。それだけの技術と情熱をもった造り手のワインが、怠惰で無責任で下手だけど、ラベルを含めたプレゼンテーションは抜群に得意、といった造り手のワインよりも遥かに市場で苦戦するという実情には、なんともやりきれない思いが深まる。 しかし、ナチュラルとクリーンを両立できる造り手が、(売りにくいからといって)わざわざ自分のワインを、よりワイルドな方向へともっていくことは

梁 世柱
2022年5月1日


真・日本酒評論 <7> 低アルコール原酒という新技術
<加茂金秀:特別純米酒 13 火入> アルコール飲料の低アルコール濃度化、というのは、酒類業界が全体として向き合っている極めて重要な課題として、声高々に叫ばれることが多い。確かに、現代の若者、特にミレニアル世代、Z世代と呼ばれる年齢層の人々は、データ上でみても、酒量が大幅に減っていることは間違いない。実はこの流れは世界規模で起こっており、日本だけの現象では全くないのだ。 新たな世代の嗜好に対応するために、低アルコール濃度化に取り組む。そこだけを見てしまうと、酒というものが、ただ一つの方向へと変化しているように思えるかも知れないが、 筆者の意見は大きく異なる 。 私の考え方の根拠となる最たる例は、 コンビニエンスストア における、酒類のラインナップだ。 ビール、酎ハイ、リキュール類に絞って陳列棚を眺めるだけでも、そこに 驚くほどのヴァリエーション が既にあることに、すぐに気付くはずだ。 完全ノンアルコールのライン、1%を下回る超低アルコールのライン、1~3%の低アルコールライン、5%前後のスタンダードライン、そして、7~9%のストロングライン。..

梁 世柱
2022年4月24日


出会い <10> チリの秘宝
Garage wine co., VIGNO Truquilemu Vyd. 2018 ¥6,000 チリというワイン産出国の奥深さには、いつも驚かされます。南北に広くワイン産地が点在し、それぞれのエリアに適合した好適品種も既に判明しています。しかも、大手メーカー(規模的には超巨大ワイナリー)が率先して 適地適品種の研究 を進めてきた歴史があり、その知見がより小規模な生産者とも共有されています。 まさに、 国を挙げての大探求作戦 。日本のワイン産業は、チリから大いに見習うべきことがたくさんあります。 そんなチリでも最も有名かつ高価なワインが集中しているのは、中央部の コルチャグア・ヴァレー。モンテス、カサ・ラポストール、クロ・アパルタ と、高名なワインが目白押しです。 他の産地でも、アコンカグア・コスタのピノ・ノワール、カサブランカ・ヴァレーのソーヴィニヨン・ブラン、レイダ・ヴァレーのシラー、リマリ・ヴァレーのシャルドネなど、ほんの触り程度名前を挙げるだけでも、魅力的な産地と品種の組み合わせがたくさん出てきます。 しかし、 チリのカリニャン...

梁 世柱
2022年4月17日
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