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未来のワインリストを考える(後編)
前編の記事を読んで頂き有難うございます。 まだの方は、良ければ御読み下さい。 そもそもワインリストは必要なのか? 皆さんはどう思いますか? 1.業態別による必要性 以下の三つの業態に分けて考えてみたいと思います。 ①ワインバー ②ビストロ ③ファインダイニング ①ワインバー...

SommeTimes特別寄稿
2022年11月18日


出会い <24> クスィノマヴロの、もう一つの可能性
Kir-Yianni, Kali Riza 2019. ¥3,000(税抜)

梁 世柱
2022年11月13日


再会 <24> スペインのニューリーダー
Envinate, Palo Blanco 2020. ¥4,700 スペインにおいて、進化のタイミングはクラスター的に発生することが多い。 近代を振り返ってみても、 「四人組」 を中核とした プリオラート、ペスケラ を中心とした リベラ・デル・デュエロ、ラウル・ペレス を中心とした ガリシア など、各地域がまるで順番待ちでもしているかのように異なるタイミングで、突然現れたスター生産者に引っ張られながら進化を果たしてきた。 しかし今スペインで起こっている進化は、 これまでの例とは少し異なっている 。 一つの生産者がムーヴメントを引っ張っている点では相変わらずだが、今回のスーパースターは、なんと 三箇所の全く異なる地域で、同時多発的に進化を促している のだ。 造り手の名は「 エンヴィナーテ 」。 2005年 のデビューから瞬く間に、スペインワインのスタイルを大幅にアップデートした、 新たな「四人組」 だ。 大学の同窓であった ロベルト・サンタナ、アルフォンソ・トレンテ、ラウラ・ラモス、ホセ・マルティネス は、 ガリシア地方のリベイラ・サクラ、アルマ

梁 世柱
2022年11月6日


SommeTimes’ Académie <36>(ワイン概論32:シェリー2)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。今回は 、シェリーのカテゴリーを学んでいきます。 醸造の様々な工程に関しては、醸造家ごとに異なる意見が散見されます。本シリーズに関しては、あくまでも「一般論の範疇」とご理解ください。 試験後に忘れてしまった知識に意味はありません 。ワインの勉強は、難しい外国語由来の単語との戦いでもあります。そういった単語をただの「 記号 」として覚えることにも、意味はありません。その単語が「 何を意味するのか 」を知ってこそ、本来のあるべき学びとなります。 SommeTimes Académie では、ワインプロフェッショナル、ワイン愛好家として「 リアル 」に必要な情報をしっかりと補足しながら進めていきます。試験に受かることだけが目的ではない方、試験合格後の自己研鑽を望む方に向けた内容となります。 酒精強化ワイン概論 – シェリー② ここでは多様なシェリーのカテゴリーについてまとめます。さまざまな使い方のできるシェリーで

別府 岳則
2022年11月5日


現地で飲むワインは本当に美味しいのか
「現地で飲むワインは美味しい。」 SommeTimesではさまざまな角度から度々この現象の真偽に迫ってきたが、今回はまた別の、 「保存環境」 という視点から見ていこうと思う。 というのも、筆者はこの3ヶ月間で北ギリシャ、南アフリカと立て続けに現地訪問を行ったが、 現地の方が美味しいという感覚を一切覚えなかった からだ。 むしろ、 同じワインであれば、日本の方が美味しい と感じたことも多々あった。 これまでの検証( 記事1 、 記事2 )では、どちらかというと微生物学的要素に対する仮説や、ワインを飲む環境に主眼をおいて検証を行ってきた。確かにそれらの要素は、ワインの味わいに十分なレベルの影響を及ぼし得るが、今回検証する「保存環境」というのは、もっと 根源的 なものであり、より 初心者向けの内容 ともなる。 この保存環境において、特に大きな影響を及ぼす要素は3つ。 温度、直射日光、湿度 である。 最後の湿度に関しては、そこまで極端な環境というのはそうそう無い(そもそも、人が快適に過ごせる湿度帯は限られている。)上に、 かなりの長期保存をしない限りは、

梁 世柱
2022年11月2日


出会い <23> 140年後の奇跡
Alheit Vineyards, Lost and Found 2019. あのタイプの産地に行ったのは久しぶりだった。 真っ直ぐに伸びる道の左右に、遠くの小山にぶつかるまで広がる平坦な葡萄畑。 レッドブルでも飲んだかのように、異様に元気な葡萄樹。 寸分の狂いもなく、精緻に整えられた畝の配列。 ぴたりと姿を消す鳥たち。 一眼見ればすぐにわかる。そこは、 超大量生産型の産地 だった。 ブリードクルーフBleedekloof の総作付面積は 13,000ha強 。造り手の数は僅か 30軒足らず 。 平均値を出すと、なんと1ワイナリー辺り433ha という凄い数字が出てくる。 日本的な表現をすると、1ワイナリー辺りの作付平均値が 東京ドーム約92個分 に相当するというのだから、その広さが具体的に想像できる人はほとんどいないだろう。 もちろん、あくまで平均値であるため、それよりも遥かに小さいワイナリーも、その逆もまた存在する。 ブリードクルーフにあるワイナリーだけを集めたテイスティングも、あの葡萄畑を通過した後だったからか、どうも最初はなかなかスイッチ

梁 世柱
2022年10月28日


再会 <23> 天使の歌声か、悪魔の囁きか
Klein Constantia, Vin de Constance. ¥11,000 (2018年ヴィンテージ国内価格) ぎっしりと詰まった南アフリアでのスケジュール表を眺めていたら、心の昂りを抑えきれなくなった。 いつか必ず訪問したいと願ってきた、 クライン・コンスタンシア 。 その輝かしい名が、プリントアウトされたなんとも無機質な紙に、確かに刻まれていたのだ。 そもそも私は昔から歴史が好きなので、最古参のワイナリーとか、始まりの地といったパワーワードにはすこぶる弱い。 流石に、最古参のワイナリーだからワインも素晴らしいに違いない!などと言った安直な色眼鏡をかけたりはしないが、そういう場所には何かと特別な雰囲気が漂っているものだ。 南アフリカで最初の葡萄畑は、大航海時代の1652年に、オランダ東インド会社の現地法人代表だったヤン・ファン・リーベックによってケープ・タウンに開墾され、1659年には南アフリカで(記録上)最初のワインが造られた。そして、30年後の 1685年 に、クライン・コンスタンシアの大元となった 「コンスタンシア・エステート

梁 世柱
2022年10月23日


出会い <22> 極甘口ワインの聖地、南アフリカ
Savage, Not tonight Josephine 2020. ¥6,000(375ml) 南アフリカでの旅では、数多くの古いヴィンテージをテイスティングする機会に恵まれた。歴史を少しずつ紐解いていくような体験は何者にも代え難かったが、一貫して納得せざるを得ないことが一つあった。 それは、 南アフリカワインは、新しいヴィンテージの方が確実に品質が高い 、ということだ。 その根源たる理由は11月からの南ア特集記事で詳細に書く予定だが、端的にいうと、 アパルトヘイトの終 焉がターニングポイントとなっているということになる。 アパルトヘイトが完全に終わったのは、ネルソン・マンデラが大統領となった1994年。そして、 1994年以前の南アフリカは、国際社会から「総スカン」をくらっていた のだ。 分かりやすく表現するなら、現在のロシアや北朝鮮と同じような扱い(軍事的脅威故ではなく、人道的な意味で)を受けていたとも言える。 当然、 40年近くもの間、苛烈な経済制裁 が課されていたため、南アフリカワインが先進国の目に触れる機会は極めて限られていた。 つ

梁 世柱
2022年10月16日


巨匠から新世代の象徴へ
今回ご紹介するのは、アルザスに於いて最も著名と言っても過言ではない作り手、マルセル・ダイス。テロワールへの並々ならぬ情熱はAOC法の改正まで成し遂げ、ボトルに品種名の記載を行わなくて良くなる等の革新を齎した。 基本的には混植によるテロワールの表現を至上とするマルセル・ダイス...

SommeTimes特別寄稿
2022年10月14日


SommeTimes’ Académie <34>(ワイン概論30:酒精強化ワイン概論)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのがSommeTimes’ Académieシリーズ。初心者から中級者までを対象としています。今回は、酒精強化ワインの基礎を学んでいきます。 醸造の様々な工程に関しては、醸造家ごとに異なる意見が散見されます。本シリーズに関しては、あくまで...

別府 岳則
2022年10月12日


再会 <22> 地球の裏側で再会
Capensis, “Fijnbosch 2019”. ¥27,000(国内予想価格) 3年に一度、南アフリカのケープワインで開催される巨大な南アフリカワイン展示会 「Cape Wine」 。 前回は2018年に開催されたが、新型コロナ禍の影響により延期となり、2022年10月に満を持しての開催となった。 乗り継ぎ待ちの時間次第では30時間ほどの旅程となる南アフリカは、日本からすれば文字通りの「地球の裏側」となるが、西ケープの壮大な山々と、ダイナミックにうねる丘陵地に拓かれた葡萄畑を見ると、疲れもどこかへ吹き飛んでしまう。 筆者にとっても、待ちに待った初めての南アフリカだったからか、アフリカ大陸に降り立つこと自体が初めてだったからか、肌にピリピリと感じる、どうにも慣れない鋭い視線(南アフリカにはアジア人は非常に少ない)からか、高揚感と共に、いつもよりは少し気が引き締まっていたように思う。 Cape Wine 2022は3日間に渡って開催 されたが、巨大な会場と数多のワイナリー、そして膨大な数のワイン、会場を埋め尽くす人々の熱気に圧倒され、3日間の

梁 世柱
2022年10月10日


Think Simple
Sommetimes読者の皆様、こんにちは。 ライターの森本 浩基です。 暑さが少し和らぎ、これからより一層ワインが美味しく感じる季節ですね。 さて今回は、ワインを飲むシチェーションのお話です。 シェフ自慢のスペシャリテと共に、ピカピカに拭き上げられた上質なグラスでソムリエ...

SommeTimes特別寄稿
2022年10月6日


SommeTimes’ Académie <33>(ワイン概論29:シャンパーニュ醸造 5)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。今回は 、スパークリングワインの世界的スタンダードであるシャンパーニュの醸造フローを学んでいきます。 醸造の様々な工程に関しては、醸造家ごとに異なる意見が散見されます。本シリーズに関しては、あくまでも「一般論の範疇」とご理解ください。 試験後に忘れてしまった知識に意味はありません 。ワインの勉強は、難しい外国語由来の単語との戦いでもあります。そういった単語をただの「 記号 」として覚えることにも、意味はありません。その単語が「 何を意味するのか 」を知ってこそ、本来のあるべき学びとなります。 SommeTimes Académie では、ワインプロフェッショナル、ワイン愛好家として「 リアル 」に必要な情報をしっかりと補足しながら進めていきます。試験に受かることだけが目的ではない方、試験合格後の自己研鑽を望む方に向けた内容となります。 なお、煩雑なシャンパーニュ醸造のシリーズにおいては、なるべく理解を容易にする

梁 世柱
2022年10月4日


出会い <21> 誰かが選んだワイン
Scheurmann, Rosé 2020. ¥5,400 固定概念というのは本当に厄介なものだ。 私自身は普段から相当気を使って、自分を縛り付けるような考えは可能な限りもたないようにしているのだが、それでも 積み重ねた経験とやらが半自動的に邪魔をしてくる ことが少なからずある。 「老い」も経験の一種なのだから、「年は取りたくないなぁ」と自分の思い込みが機会損失につながってしまう度にため息の一つや二つはつくものだ。 そんな時の特効薬は、 誰かにワインを選んでもらう こと。 これもまた、経験を重ねるほど機会や動機が減ってきてしまうものなので、積極的にそうしようと意識していないとなかなか難しいのだが、大きな学びを得ることが実に多い。 さて、今回出会った最高のワインもまた、誰かが選んだワインだった。 しかも、 普段の自分なら選ばない可能性もあるワイン だっただけに、その喜びも大きかった。

梁 世柱
2022年10月2日


え!そんなことするの?
「え!そんなことするの?」 20年前にフランスで思った正直な感想だ。 当時僕は22,3才だったかな。日本ではバーテンダーとして数年働いたあとフランスにわたって少しの間、現地で働いてみた時に思ったこと。ワインの勉強でというとかっこいい感じに聞こえるけど、単純に海外に出てみたか...

SommeTimes特別寄稿
2022年9月29日


SommeTimes’ Académie <32>(ワイン概論28:シャンパーニュ醸造 4)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。今回は 、スパークリングワインの世界的スタンダードであるシャンパーニュの醸造フローを学んでいきます。 醸造の様々な工程に関しては、醸造家ごとに異なる意見が散見されます。本シリーズに関しては、あくまでも「一般論の範疇」とご理解ください。 試験後に忘れてしまった知識に意味はありません 。ワインの勉強は、難しい外国語由来の単語との戦いでもあります。そういった単語をただの「 記号 」として覚えることにも、意味はありません。その単語が「 何を意味するのか 」を知ってこそ、本来のあるべき学びとなります。 SommeTimes Académie では、ワインプロフェッショナル、ワイン愛好家として「 リアル 」に必要な情報をしっかりと補足しながら進めていきます。試験に受かることだけが目的ではない方、試験合格後の自己研鑽を望む方に向けた内容となります。 なお、煩雑なシャンパーニュ醸造のシリーズにおいては、なるべく理解を容易にする

梁 世柱
2022年9月27日


再会 <21> 熟成の果てに待ち受けるもの
R. López de Heredia, Viña Cubillo Crianza 3er Año, Late 1960s~70s. ワインの熟成というのは非常に奥が深い。 そしてその熟成に付随した「飲み頃」という考え方もまた、実に奥が深い。 筆者も頻繁にこの熟成と飲み頃に関する質問を受けるが、 シンプルかつ完璧な答えが存在していない ため、毎度のようになんとも返答に困ってしまうのだ。 いや、よく考えてみれば、一つだけ完璧な答えがあった。 「 自分の好きにすれば良い 」だ。 まぁ、それは半分くらい冗談なのだが、答えをなかなか明確には示せない理由は確かにある。 その理由とはズバリ、 主観性 の問題だ。 どの熟成タイミングのワインを「美味しい」とか「素晴らしい」と感じるかはまさに 千差万別 で、あまりにも個人差が大きい。 例えば私自身は、はっきりとしたフルーツの味わいと、程よい熟成感が相乗効果を生み出しているようなタイミングのワインが好きだが、同じワインを飲んで「若すぎる」と思う人も、「遅すぎる」と思う人も必ずいる。 一方で、それぞれの熟成タイミング

梁 世柱
2022年9月25日


98の勇気
まるでそこは、忘れ去られたかのような小さな集落が甦る、山梨県甲州市、塩山の福生里(ふくおり)。 塩山の美しく古い街並みの中には古寺も多く、武田信玄公の菩提寺 乾徳山恵林寺もある。一面に広がる葡萄畑や、多くのワイナリーが点在する同じ甲州市の勝沼近辺からは少し外れた、言わば山奥...

SommeTimes特別寄稿
2022年9月22日


Coravinの有用性
抜栓したワインの品質をできるだけ長く維持するためのガジェットは、様々なフォーマットで、膨大な数のアイテムが開発されてきた。 それなりに有用なものもあれば、疑問点が多々あるもの、実に珍妙なものまで、そのヴァリエーションもまた非常に興味深く、ガジェット好きには興味の尽きないジャンルのアイテムとなっている。 そんな中で、まさに革命的なガジェットとして登場したのが、 Coravin だ。 すでにかなり認知されてはいるが、Coravinは、 ワインを抜栓しないままコルクに細い針を刺し、ガス注入と同時に針からボトル内のワインを吸い上げ、コルクの自然収縮を利用して針穴を閉じる、という仕組み になっている。 その効果は 「正しく使えば」 まさに絶大で、Coravinの発明によって、超高額ワインのグラス販売や、超多数のグラスワイン販売(200種類以上をグラスで提供という例もある)といった夢のようなプログラムを、非常に低いリスクで叶えることが可能になった。 また、家庭で保管してある大切なワインを少しずつ長期に渡って楽しむ、という凄いことまで出来てしまう。...

梁 世柱
2022年9月20日


出会い <20> 葡萄品種を気にしない、という自由
Gi ó Hills, thoải m ái Blanc 2021. ¥2,700 長野県・千曲川ワインヴァレー特集の 第2章 でも触れたが、2022年現在、 ワインを品種名で売らないといけない時代が終焉へと向かっている 。 ヨーロッパ伝統国の複雑な原産地呼称制度を覚えなければ、何もワインのことがわからない。そんな極端に高いハードルを、 「品種名で売る」 というアイデアが豪快に破壊し、ワインの裾野を広げるために、 多大なる貢献 をしてきたのは間違いない。 筆者がソムリエ修行をしていたニューヨークでも「品種名の便利さ」は顕著で、ごく一部の熱心なワインマニア以外は、ほぼ必ず品種名でワインを選んでいた。それがどの国のワインであっても、だ。 原産地呼称よりもはるかに使い勝手の良い 「共通言語」 となった品種名は、ワインをサーヴィスする人と、ワインを飲む人たちの間のコミュニケーションを劇的に簡素化し、様々なミス・コミュニケーションや、ロスト・イン・トランスレーションのリスクを低下させてきた。 実は、品種名でワインを売るというアイデアが、これほどまでに強力な

梁 世柱
2022年9月18日
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