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SommeTimes’ Académie <33>(ワイン概論29:シャンパーニュ醸造 5)

一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのがSommeTimes’ Académieシリーズ。初心者から中級者までを対象としています。今回は、スパークリングワインの世界的スタンダードであるシャンパーニュの醸造フローを学んでいきます。


醸造の様々な工程に関しては、醸造家ごとに異なる意見が散見されます。本シリーズに関しては、あくまでも「一般論の範疇」とご理解ください。


試験後に忘れてしまった知識に意味はありません。ワインの勉強は、難しい外国語由来の単語との戦いでもあります。そういった単語をただの「記号」として覚えることにも、意味はありません。その単語が「何を意味するのか」を知ってこそ、本来のあるべき学びとなります。SommeTimes Académieでは、ワインプロフェッショナル、ワイン愛好家として「リアル」に必要な情報をしっかりと補足しながら進めていきます。試験に受かることだけが目的ではない方、試験合格後の自己研鑽を望む方に向けた内容となります。

なお、煩雑なシャンパーニュ醸造のシリーズにおいては、なるべく理解を容易にするために、通常のSommeTimes’ Viewではなく、POINTとして要点を押さえていきます。

また、本シリーズでは、あくまでも「シャンパーニュ」の醸造法に関して述べており、「シャンパーニュ製法」「トラディショナル製法」等、他産地で採用されているものとは、規定が異なることが多いので、注意してください。



ルミアージュ

瓶内二次発酵の終わったワインから、ボトルを少しずつ傾けながら瓶口に澱を集めていく作業をルミアージュと呼びます。クラシックな「ピュピトル」(瓶を固定しながら回すことができる穴が多数空いた木製の台)を使った手法は、19世紀初めごろにヴーヴ・クリコ・ポンサルダンとアントニ・ミュラーによって発明されました。シャンパーニュをシャンパーニュたらしめる、画期的な発明の一つと言えます。ピュピトルを使ったルミアージュの場合、平均して30~45日程度の日数がかかり、熟練した専門の職人も必要となります。現代では、この作業を自動化できるジャイロパレット(ジロパレットとも)という機械でルミアージュを行うことが一般的で、この場合約1週間程度で完了します。シャンパーニュ地方におけるジャイロパレットの使用率は99%近いとも言われていますので、大量生産が基本のシャンパーニュをピュピトルと結びつけることはもはや難しいでしょう。一方で、シャンパーニュ製法という括りでみた場合、世界各地の小規模生産者によって、ピュピトルは今も変わらず使用され続けています。


POINT

ピュピトルとジャイロパレットの品質的な差に関しては、長年議論が行われてきましたが、現代では「両者間に品質差は無い」という結論に落ち着いたと言えます。厳密な話をすれば、ジャイロパレット使用の際は必須となる添加物であるアジュヴァンの存在、ルミアージュにかかる期間(=澱との僅かな接触期間の差)、ジャイロパレットがワインに与え続ける微細な振動など、ワインに影響を十分に与え得る要素がありますが、その差は

「ブラインドテイスティングで100%看破できるようなもの」では無いということです。


記事の続きは…

sommetimes.net を定期購読してお読みください。

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