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出会い <23> 140年後の奇跡

Alheit Vineyards, Lost and Found 2019.


あのタイプの産地に行ったのは久しぶりだった。


真っ直ぐに伸びる道の左右に、遠くの小山にぶつかるまで広がる平坦な葡萄畑。

レッドブルでも飲んだかのように、異様に元気な葡萄樹。

寸分の狂いもなく、精緻に整えられた畝の配列。

ぴたりと姿を消す鳥たち。


一眼見ればすぐにわかる。そこは、超大量生産型の産地だった。


ブリードクルーフBleedekloofの総作付面積は13,000ha強。造り手の数は僅か30軒足らず

平均値を出すと、なんと1ワイナリー辺り433haという凄い数字が出てくる。


日本的な表現をすると、1ワイナリー辺りの作付平均値が東京ドーム約92個分に相当するというのだから、その広さが具体的に想像できる人はほとんどいないだろう。


もちろん、あくまで平均値であるため、それよりも遥かに小さいワイナリーも、その逆もまた存在する。


ブリードクルーフにあるワイナリーだけを集めたテイスティングも、あの葡萄畑を通過した後だったからか、どうも最初はなかなかスイッチが入らず。


ワイナリーの人と話していても、小規模の自社ワイン生産(と言っても、それほど“小規模”でも無いが。)よりも桁違いに大きいヴォリュームで、バルクワインの生産を行なっているところが多いという印象だった。


偏見はなるべくもたないように努めてはいるが、気だるい時差ぼけを吹き飛ばすほどのインパクトとソウルをもつワインには、ほとんど出会わなかった。


そう、ほとんど、だ。

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