え!そんなことするの?

「え!そんなことするの?」


20年前にフランスで思った正直な感想だ。


当時僕は22,3才だったかな。日本ではバーテンダーとして数年働いたあとフランスにわたって少しの間、現地で働いてみた時に思ったこと。ワインの勉強でというとかっこいい感じに聞こえるけど、単純に海外に出てみたかったというのがそもそもの動機だった。3ヶ月のオープンチケットを片手にフランスのワイン産地をふらふら一人で旅をし、今から思えばなにもわかってないのに行っただけで何かをいろいろ知った気になってた、まさに若気の至り旅だったなあと。


2ヶ月ほどで予算を使い切ってしまったことに気づき、もう帰らなきゃダメかと諦めかけたところ、縁あって住み込みで働かせてもらえたのが南仏カンヌのオーベルジュ(レストランがある民宿)。オーナーの優しさと頑張り(滞在許可取得などの手続き)で、結局2年くらいお世話になったのがいい思い出だ。この地方はなんといってもロゼワインが有名で、地元のお客さんの多くは「アンドゥミロゼ、アヴェックデグラソン!」と注文していた。ちなみに1/2カラフェ(500ml)の地酒ロゼワインを氷と一緒に!という意味なのだが、なんといってもそこはコート・ダジュール。濃い青空に強い日差しのテラスに氷でよく冷えたピンクのロゼをグビグビ。(基本的にはカジュアルなカフェやダイニングで多い飲み方)




いくら南仏とはいえワインリストの8割以上がプロヴァンスのワインで、その半分以上がロゼだということにもびっくりしたのを覚えている。そういえば、シャンパーニュ地方を訪れた時はカジュアルなダイニングでもグラスシャンパーニュが5種類くらいあったし、ボルドー地方に行った時はボルドーワインだらけ、ブルゴーニュももちろん同じ。ちょっと考えればすぐ理解できたはずなのに、それぞれの土地の人たちが地元に誇りをもってるんだなと。あと、やっぱり地酒ワインが安くて美味しいんだ。一度発注をミスした時に近所のワイナリーにワインを買いに行ったのだけど、10Lくらい入りそうなボックスにステンレスタンクから入れてもらったのも、灯油を買いにきたみたいで驚いた。


フランスに来る前の僕は、ワインってどんな場所や雰囲気でもきちんと香りを嗅いで味わってお料理とあうように選んで、なんというか「ちゃんと」しないといけない飲み物だったのが、現地の人の楽しみ方が本当にさまざまで、もちろんしっかり香り、味わいを楽しんで、お料理との相性も考えてというシーンもたくさんあったけど、一方、ワインを飲んでるんだけどビールやチューハイを居酒屋で楽しんでるようなシーンも少なからず体験できたし、当時の僕にはそれが本当に楽しかった。


その他にも、日本ではお世辞にも人気があるとはいえない「パスティス」という名の薬草系のスピリッツが食前酒としてとても人気なことや、甘いリキュール、コアントローやグランマルニエ、Get27ミントリキュールなどを氷1つだけいれて食後酒として飲むし、デザートのレモンシャーベットにキンキンに冷やしたウォッカをかけたりする(これは美味しい!)のも嬉しい驚きだった。


今、自分でお店をやるようになってからは扱うワインのことや、その生産者の思いや信念などをお客さんに伝えれたらいいなと思う。でもそれと同じくらい、お店に来てくれているお客さんが楽しめる味わいや価格帯も大事にしたいなと思う。基本的にはもちろんそのままの味わいで、グラスの形状や温度を考えて楽しんでもらえるようにしているのだけど、たとえば若いカップルがデートで来てくれて甘いワインが飲みたいとのリクエストがあっても、グラスワインにちょうどいい価格帯の甘口ワインがない時はキール(白ワインにカシスリキュールを少しいれるカクテル)をすすめたり、メルゲーズ (スパイシーな羊のソーセージ)などのピリ辛系料理にあわせたいときは、カジュアル、シンプルなさっぱり白ワインだけどそこにベネディクティン(薬草のリキュール)を少したらしてみたりもする。お客さんの中には「そんなことしていいんですか?」と聞かれたりもするけど、そんなときは「バーテンダーなんで。」と逃げる。


お客の立場でも真夏にランチでよくやるのが一杯目に白ワインと炭酸水をそれぞれ注文して、勝手に自分好みの濃さで割る「スプリッツァー」だったりする。シャンパーニュがいい時も多いのだけどお店によってはないところもあるし、食事後のスケジュールによってはアルコールを抑えたい時もある。そんな時にぴったりなのだ。


えっと、結局何を言いたいのかというと、ワインはすごい飲み物(味わいや価格、クオリティの幅の広さや歴史的な背景などで)だと思うのでリスペクトも大事だけど、やっぱりお酒であって嗜好品なので、消費者がその時の状況(場所や気温、湿度、体調など)に合わせて自由に楽しんでる方が、結果的には生産者の方々も嬉しいんじゃないかなと思う。



<ソムリエプロフィール>

岡城 武士 / Takeshi Okajo

Le Chat Noir


1979年大阪生まれ。1997年から心斎橋にてバーテンダーとして修行を開始。

2002年フランスに渡り、2年間カンヌでワインサービスに従事。

2011年大阪心斎橋にて自店シャノワールを開店、現在も営業。 JSA シニアソムリエ資格/WSET Level.3 資格保持 Level.4 挑戦中。



<Le Chat Noir シャノワール>

フランスワインを中心に食前・食後酒を幅広く取り揃えております。 フランスの家庭料理などと一緒に大切な人と心地いい時間をすごしていただけたらと思い日々営業しております。