top of page

未来のワインリストを考える(後編)

前編の記事を読んで頂き有難うございます。

まだの方は、良ければ御読み下さい。


そもそもワインリストは必要なのか?

皆さんはどう思いますか?


1.業態別による必要性

以下の三つの業態に分けて考えてみたいと思います。

①ワインバー

②ビストロ

③ファインダイニング



①ワインバー

【一般的な特徴】

少人数での利用が多数。

黒板や手書きのメニューなど、店主のその日の気分や仕入、更にお店側のスタッフの試飲も兼ねて色々と空けながら試しているように感じる。料理と合わせてというよりも「ワイン単体」で楽しむシチュエーションが多い。


グラスワインリストがある、またはない。

ワインリストはほぼないイメージで、ボトルで頼まれる方にはセラーの中から店主のおすすめの1本が出てくる。

お店の特色がワインのセレクトで決まる。


【ソムリエに必要なスキル】

話術、ニッチなセレクト力、提案力、カウンター間でお客様と金額に関しての口頭のやり取りが少ないので、「予算感」でもお客様をよむスキルが必要。

お客様に一番近い為、一番人間力が必要と感じる。



②ビストロ

【一般的な特徴】

定番のお料理(シグネチャーディッシュ)に合わせて、必須となる定番ワインがあるように感じる。

(例)カスレにはラングドック、ブイヤベースにはカシーなど。

ポーションが大きくシェアスタイルのお店であれば、3名以上いると品数も楽しめるし、ワインの種類もボトルで色々と開けられる。

数種類のグラスワインリスト、約100種類のワインリスト。又は、ワインリストなし。


【ソムリエに必要なスキル】

季節毎に変わるお料理に合わせたワイン。

郷土料理が提供されているようなお店では、そのコンセプトに沿ったセレクト。



③ファインダイニング

【一般的な特徴】

晴れの日やお祝いで使われるようなシチュエーションが多いと予想される。

金額と比例して期待値が高い。

個室などの会食を除いては1〜3名の人数でのご利用が多いのではないだろうか。

コース料理に合わせて、バイザグラス、ペアリング、ワインリストと一番多彩なサービスが求められると感じる。グランメゾンなどでは歴代のシェフソムリエから引き継いだワインコレクションがある。


【ソムリエに必要なスキル】

紙面、又はデジタルにしろ、「ワインのアイテムや金額の可視化が求められる。」

ペアリング能力。

お客様が自宅で味わうことのできないヴィンテージや銘柄を加味したワインリスト作り。

三つの業態の中では、一番サプライズ能力が必要とされる。



総括

3つの業態で考えた時に、一番ワインリストが必要なのはファインダイニングと考えられる。

でも、ファインダイニングでは、長い時間ワインリストを覗くのは相手や会食のオケージョンを選びますね。

それも含めてワインペアリングはお任せできるし、時短で手間を省くという意味では有効で日本人の気質に合っているかもしれません。




ワインリストを作るメリットとデメリット

【メリット】

明朗会計である。

外国人のお客様に対して親切。

ワインが詳しい人は、お店の人に頼らなくても選べる。

ソムリエ以外のスタッフも含めて把握しやすくなる。

PRという観点からでも、HPに記載したりセレクト次第では来店動機へと繋がる。


【デメリット】

なんと言っても更新が大変である。




近年の飲食店での流れ

紙面が良いのか?デジタルが良いのか?

日本の飲食店では(特にワインを扱わない業態の居酒屋やカフェ)、最近は本当に紙のメニューが少なくなった。

パネルタッチやQR読み取りで携帯から注文を送るシステムが、かなり増えつつある。

DX化の観点からも紙面は、どんどん減っていくでしょう。

しかし、銀座レカンみたいな分厚いレザーのブックカバーのワインリストはかっこいいですし、残してほしい文化とも感じます。

それぞれのお店の雰囲気に合わせて提案する事がベストだと感じます。



セレクトについて

ブルゴーニュを始めとした、銘醸地の有名生産者のワインの割り当ての少なさ、円安の問題、更にコロナ時のような輸入品の物流の動きが悪くなる事も想定していくと、必然と日本ワインのセレクトや先まで熟成を見据えた購入なども、もっと考えないといけないと感じます。



今後の国内での展開

デジタルの観点からですと、一般的には少しデジタルに弱い60代ぐらいのお客様の為に

紙面でのリストは残した方が良いとも感じます。

若い人に向けては、Wine Listはどんどんデジタル化するべきです。それと同時に、その画面で生産者の情報や、ワインの詳細までも飛べるようなQRなどを付ける事が良いと感じます。そのシステムさえ作ってしまえば、海外からのお客様もよりワインが選びやすくなり売れ行きが伸びるのではないでしょうか。

日本の観光がますます盛んになる来年以降、世界中のワインラバーに「Cool」だと言われるワインリストは絶対に欠かせない。



最後に

デジタル化やDX化が加速するのは当然ですが、セレクトやソフト面でのサービスを行うソムリエのマンパワーが一番重要なのは言うまでもありません。

しっかりスタッフの育成も行いながら、生産性も上げてゆき、強い飲食産業とWine Listを作っていけるとレストランも未来も明るい。


最後に、オンリストされていると「おっ」と思うワインをご紹介。



生産者:Domaine Thillardon/ドメーヌ・ティラルドン

ワイン名:Chenas Les Blemonts/ シェナス・レ・ブレモン

葡萄品種:Gemay / ガメイ

ワインタイプ: Red/ 赤

生産国: France/ フランス

生産地: Beaujolais/ ボジョレー

ヴィンテージ:2019

インポーター:ケッパグル合同会社

希望小売価格:4,840(税込)


【Winery】

当主のポール・アンリ氏は22歳からワイン造りを始め、

ボジョレーでのワイン造りは2008年よりシェナスでスタート。

その他にムーラン・ア・ヴァン、シルーブルでAOCを取得。

自然栽培、馬での耕作、天然酵母発酵、コンクリートタンクの使用、酸化防止剤不使用。


【Region】

ChenasはCru Beaujolaisの中で最も標高が低く、面積の狭いAOCである。

こちらのワインは花崗岩、石灰質の土壌から作られる。


【Tasting】

外観

透き通った淡いルビー色。程よくフィルターをかけているモヤのかかった印象。

香り

開けたてはフレッシュなラズベリーが中心、時間の経過とともにセミドライなラズベリー、ハーブやプアールの茶葉や乾燥した椎茸のような香りも出てくる。全体的に綺麗でポジティヴな印象。


味わい

アタックから軽快でスムーズ。

ドライで酸味も心地よくミッドパレットから余韻へと続く。

タンニンは柔らかく、

アフターフレイバーで紫蘇や梅のようなフレイバーも出てくる。

本当に綺麗な薄ウマなワインとなっています。


ご提案

少し冷やし気味12-14度(セラー温度)からスタートさせると

1本おいしく楽しめるワインだと思います。

2日目のコンディションも良いのでグラスワインとしても最適な一本となっております。

合わせるお料理は、ジビエの中でも赤身の強すぎない雉をローストして、雉のジュをベースにモリーユなどのキノコを使ったソースを合わせたようなお料理が食べたいなと頭に浮かびました。



〈プロフィール〉

石原 大輝/ Daiki Ishihara

1986年 沖縄生まれ


バーテンダーからキャリアをスタートして福岡と東京のレストラン、そして地元の沖縄に戻りホテルやレストランでシェフ・ソムリエやマネージャーとして研鑽を積む。

2018年 Le Monde [Freelance Sommelierとして独立] 、J.S.A. Senior Sommelier取得。

2019年 A.S.I. Diploma取得。

2021年3月 自身がオーナーを務めるDowntown Donuts(ワインが飲めるドーナツ屋さん)が

沖縄市にオープン。



〈Le Monde〉

Freelance Sommelier、Beverage consultantとして活動。

沖縄のレストラン、ラグジュアリーホテル、鮨屋、ステーキショップやワインショップという様々なジャンルの店舗のワインリスト作成、ペアリングの提案、スタッフ教育にマネージメントなどを行う。沖縄のレストランやドリンクシーンをワールドクラスにする事を理念として日々奮闘中。





Comments


bottom of page