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タコライスは強敵!
我々が日常的に食す料理、食材の中には、真面目にペアリングを考えようとすると、かなりの難敵となるものがある。 例えば、 ラーメン、うどん、蕎麦 といった 「汁+麺」 にカテゴライズされる料理は強敵揃いだし、 納豆 のような特殊な発酵食、 梅干し のような五味が極端に偏っているものも難しい。 ただし、ここでいう「難しい」というのは、不可能と同義ではなく、 実際には攻略可能なのだが、その攻略法そのものが特殊かつ、一般受けしづらい もの(梅干しと貴腐ワインなど)になりがちだ。 さて、今回挑むカジュアルフードは タコライス 。 沖縄県の料理であることは良く知られているが、その実態は一般的な日本料理からは程遠く、カレーライスやハンバーグと同様の「日本風洋食」と考えて差し支えない。 (そもそも、その起源は沖米国海兵隊の間で人気だったタコスを白飯に乗せた、安価でヴォリューム感のある料理として生まれたものだ。) 基本となるレシピは、 白飯、レタス、トマト、チーズ に牛挽肉をスパイシーに仕立てた タコミート 、もしくはトマトベースの 辛いサルサソース となる。...

梁 世柱
2023年1月4日


共に歩み、共に得る <南アフリカ特集:第3.5章>
一人で叶えられることは、とても限られている。 人がどれだけ孤独という人生のスパイスを好んだとしても、真の孤独が奇跡的な確率でのみ生みだすことができるのは、永遠に語り継がれる様な至極の芸術作品しか無い。 人はその真理を理解しているからこそ、手を取り合う。 そして、共に歩み、共に得ようとする。 南アフリカのワインが、驚異的なスピードで世界のトップ層へと躍進した理由は、恵まれたテロワールの存在だけでは無い。 そこには人がいて、人と人の繋がりがあった。 成功も失敗も共有し、共に学び、鼓舞しあい、切磋琢磨する。 南アフリカで見た無数の「繋がり」こそが、躍動の原動力なのだ。 生産者団体 ワインの世界には、様々な生産者団体がある。中には、 ドイツのV.D.P のように、国のワイン法すら変えてしまうほどの絶大な影響力をもつ団体や、 Renaissance des Appellations のように、国境を越えたビオディナミ生産者の団体もあるし、 カリフォルニアのI.P.O.B のように、志半ばで空中分解してしまった団体もある。 規模の大小や性質の違いはあれども、

梁 世柱
2022年12月22日


意外と強敵?豚の生姜焼きとペアリング
師走真っ盛りの12月。 夏バテと並ぶ「お疲れシーズン」のため、少しでもスタミナを補充しようと、家庭でこのメニューが登場することも多いだろう。 そう、 豚の生姜焼き だ。 シンプルな食材構成、簡単な仕込み、手短な調理、そして抜群のスタミナ補給力。 そんな家庭の味方には、 良く冷えたビールを 、と言いたいところだが、ワインで合わせるのも、ちょっとしたご褒美感があって良いものだ。 さて今回は、豚肉以外の食材を 玉ねぎ、生姜、りんご (定番レシピ)に限定して検証してみようと思う。 大前提として、豚肉、特に生姜焼きに使うような ロース は、 基本的には白ワイン向きの食材 だ。 しかし、 食材単体として見てしまうと、あらゆるタイプの白ワインが候補に上がってしまう ため、 副材料で焦点を定めていく 必要がある。

梁 世柱
2022年12月17日


古きものが、未来を照らす <南アフリカ特集:第3.0章>
私の祖母は、他国間の戦場と化し、唐突に、強引に分断された国から、命懸けで脱出した。そして、祖母が負ったリスクのずっと先に、私という存在がいる。 祖母の歩んだ激動の人生は、そのまま私の人生観、そして価値観の土台となった。 今は過去の先にあり、未来は過去と今の先にある。 その繋がりこそが、輝きをもたらす。 南アフリカで、私が亡くなった祖母のことを思い出したのは、決して偶然ではない。 あの地にはあった。私は確かに、この目で見た。 古きものが、過去と今を繋ぎ、未来を照らす姿を。 Old Vine Project 南アフリカワイン産業の極めて重要な取り組みとして、その名を挙げない訳にはいかないのが、 Old Vine Project だ。 南アフリカでも最も尊敬を集める、葡萄栽培のトップ・エキスパートである ローサ・クルーガー が、2002年に複数の栽培家と共に南アフリカ全土に点在する古樹の調査を開始したのが、このプロジェクトの始まり。 2006年に イーベン・サディ がOld Vine Seriesを初リリースしたのをきっかけに、2010年ごろには...

梁 世柱
2022年12月15日


南アフリカの冷涼気候産地 <前編>
11月28日、南アフリカワイン協会(Wines of South Africa : WOSA )が、オンラインワインスクール大手 Vinoteras との共催で、 【 キャシー・ヴァン・ジルMWと巡る壮大な南アフリカワインの世界 Episode.2~冷涼気候産地~...

梁 世柱
2022年12月10日


ポルトガルの巨星
眠れる巨人と呼ばれてきたポルトガルは、もう眠ってなどいない。 それどころか、ヨーロッパで造られる「フランス品種系非フレンチワイン」に世界中がそっぽをむき出して以降、かつての大波に乗り損ねたポルトガルは、魅力的な地品種が数多く残る、 周回遅れのトップランナー とでも呼ぶべき存在になった。 とはいえ、フレンチ味に慣れすぎた市場がそう簡単に未知の味わいを評価する、ということもない。 面白いだけでは、偉大にはなれない。 ヨーロッパ中の地品種ワインが挑んだその高き壁の前には、無数の残骸が積み上げられている。 もちろん、優れたワイン=偉大なワイン、という時代でも無いのだから、進む方向は様々だ。 ヴィーニョ・ヴェルデの多種多様な表現、リスボンを中心とするナチュラル・ワインの盛り上がり、ドゥロやダオンの混植混醸、アレンテージョにおけるターリャ(アンフォラ)の復興、テロワールをより重視するようになったポルト。ポルトガル各地で様々な伝統が再発掘されつつ、「らしさ」もまた多様化しつつある中で、その全てをやってしまっているだけでなく、伝統品種ワインを「偉大なワイン」へと

梁 世柱
2022年12月8日


蒸し野菜をさらに美味しく!?
野菜の一番好きな食べ方は?と問われると、迷うことなく「蒸し」と答える。 水分を含んで柔らかくなったテクスチャー、存分に引き出される甘味、皮のマイルドな苦味が、シームレスに繋がる。 野菜の「質」が味わいに大きく影響する料理でもあるため、さらなる美味しさを求めるとコストが意外と高くなってしまうのは難点だが、体に良いのはもちろんのこと、塩やソースで味付けを自由に変えることも可能なので、様々な楽しみ方ができる。 さて、このような料理は、 ワインペアリングの基礎技術を習得する上でも最高の教材 となる。 まずは、 NG例 から考えていこう。 多くの蒸し野菜にとってNG対象となりやすいのは、 渋味の強い赤ワイン だ。 タンニンとたんぱく質の互いに結びつこうとする性質 、がNGの理由となる。 つまり、 料理にたんぱく質がほとんど含まれていない場合、ワインのタンニンが行き場を失って暴走し、結果として苦味に近い味わいが生じてしまう 、ということだ。 一方で、 軽いタンニンの赤ワインなら問題とならないケースもある が、ここにも理由がはっきりとある。一部の緑野菜や、根野

梁 世柱
2022年12月3日


呼応するニュー・ワールド <南アフリカ特集:第2章>
集合意識 というのは、非常に興味深い概念だ。直接的なコミュニケーションをとっているわけでも無いのに、何かしらのミディアムを通じて、度々 全世界を包み込むようなイデオロギーの変化 が生じる。 人種差別、性差別、人権侵害、軍事的侵略行為への反対といった人そのものの在り方に関わるもの、オーガニックやサスティナビリティの推進といった地球と人間の双方に関わるもの、食のライト化といった人の趣味嗜好に関わるもの。近代から現代にかけて起こった集合意識によるイデオロギーの変化だけでも、まだまだ長いリストができるだろう。 そして、 変化と自戒は往々にして表裏一体 である。 様々な差別を繰り返してきたことに対する自戒、人類史のほとんどを戦争と侵略で埋め尽くしてきたことへの自戒、環境破壊を積み重ね深刻な気候変動を招いたことに対する自戒、生活習慣病の爆発的増加への自戒。 先述した全ての変化に、その根源となった自戒が存在し、折り重なった自戒は、やがて集合意識となって、全世界規模の改善を促し始める。 それらに比べるとずっと規模は小さいが、ワインの世界でも、同様の集合意識による

梁 世柱
2022年11月30日


Advanced Académie <27> テロワールとワイン vol.3 アルコール濃度
「テロワール」が実際にワインに対してどのような影響を及ぼすのかを検証していくシリーズの第三弾となる。 このような検証を行う際に最も気をつけるべきなのは、ワインという飲み物は様々な要因が極めて複雑に関係性を築きながら最終的な形へと繋がっていくという、紛れもない事実である。 つまり、ただ一つの要因だけを抜き出して、「結果」と結びつけてしまった場合、往々にして不正解となるということだ。 第三回となる本稿では、ワインの アルコール濃度とテロワールの関係性 を探っていく。 ワインに含まれるアルコールは、 葡萄果汁中の糖分が分解 されることによって生じる。 そしてその原料となる糖分を生み出しているのは、植物の 「光合成」 という働きである。 光合成は 非常に複雑なメカニズム でもあるため、本稿ではなるべく簡略化して話を進めていくが、どうしても例外となるケースが生じることはご理解いただきたい。

梁 世柱
2022年11月26日


ボルドーのワイン不正
僅か10年ほどの間に、産地全体の約8割が認証を取得 するという、世界でも前例の無いほどの 大々的なサスティナブル化に成功 したボルドーは、再び世界最先端の銘醸地へと返り咲こうとしているように思えた。 C.I.V.B (ボルドーワイン委員会)を中核としたこの驚くべき変化に関しては、以前の 特集記事 でも詳しくレポートしたが、今回届いたニュースは、その喜びも、賞賛も、努力も、何もかもを木っ端微塵に破壊してしまいかねないものだった。 2022年10月27日、ボルドーの裁判所で、2016年から2019年に渡って行われた「 重大な不正行為 」に関する裁判が行われた。

梁 世柱
2022年11月25日


Black and White <南アフリカ特集:序章>
30時間の長旅を終え、私は地球の真裏へと降り立った。ため息のような深い呼吸をすると、乾燥した心地良い空気に、知らない香りが混ざり込む。深緑色の野草。紅色の花。未知の風景に沸き立つ感情が、体の節々を駆け回る鈍い痛みを優しく包み込んだのも束の間、だんだんと私の心は灰色に濁り始め...

梁 世柱
2022年11月12日


ゴーヤチャンプルーに挑戦
私は無類の 沖縄料理好き だ。 ミミガー、ソーキ、ラフテー、タコライス、ジーマーミ豆腐、テビチ、海ぶどう、島らっきょう、沖縄そば、サーターアンダギーと、まさに大好物のバーゲンセール状態。 そんな沖縄料理の中でも、特に愛してやまないのが、 ゴーヤチャンプルー である。 スパム(豚肉)、木綿豆腐、卵、ゴーヤ、鰹節という食材を油で炒めるというシンプル極まりない構成ながら、塩、旨、苦味が高次元で融合するゴーヤチャンプルーは、日本の郷土料理を代表する一皿。 もちろん、泡盛やシークァーサーサワーが最高のお供なのだが、ワインで合わせるのも非常に楽しい。 しかも、ゴーヤチャンプルーへの合わせは、 ペアリングにおける複数の「例外パターン」が当てはまる ため、ペアリングの学びにとっても最適な一皿なのである。

梁 世柱
2022年11月4日


再発見された銘醸地 <ギリシャ・ナウサ特集:導出編>
私は感覚的印象と論理的考察が入り混じって生じた 確かな疑念 を抱えて、ナウサの地に降り立った。 感覚的印象は、私がこれまで ナウサに素晴らしい可能性を感じつつも、実体験として心を激しく揺さぶるようなワインにはほとんど出会ってこなかった ことに起因する。 論理的考察は、 二つの疑問点 によって疑念を強める要因となってきた。 一つは、 「ナウサがもしギリシャの産地で無ければ」 、と言う疑問だ。 この場に私自身が嫌悪するブランド至上主義をもちこむ気は毛頭無い が、例えばナウサがもし、地品種ワインの世界的リーダーであるイタリアの産地だったとしたら、これほどの注目を集め得たのだろうか、と言う疑問がどうしても残っていた。別格のネッビオーロは横に置いておいたとしても、クスィノマヴロが果たしてサンジョヴェーゼ、アリアニコ、ネレッロ・マスカレーゼ、サグランティーノといった葡萄と横並びに語れるほどの資質をもっているのか。遠く離れた日本からでは、確信に至ることはできていなかった。ギリシャの偉大な赤ワインの産地はナウサしかない(事実とは異なるが)というイメージが先行した

梁 世柱
2022年10月31日


まだまだ未知の世界、カナダワインについて
プロローグ SOMMETIMESでワインを勉強している方や、常に情報のアップデートを欠かさない方々にとっては、「カナダ」というワイン生産国はきっと定期的に登場し、そんなに珍しくはないワイン生産国かと思いますが、世界各国のワインを幅広く扱う機会のあるプロフェッショナルの方だけ...

SommeTimes特別寄稿
2022年10月29日


グリーンカレーとペアリング
世界が本格的に開き始め、海外への渡航も随分と容易になった。MySOSなるアプリを使用すれば、少々登録は面倒だが、日本入国時の検疫を楽々とスルーできるため、むしろ昔よりも(まだ空港が空いていたというのもあるが)遥かに早く到着ゲートを抜けることができる。成田空港への着陸からスカイライナーに乗り込むまでの所要時間は、わずか45分。 さて、そんな状況もあってか、突然の弾丸タイ訪問を決行したのは9月。もともとは宮古島で用事があったのだが、台風によって全てキャンセルになってしまったため、せっかく調整していたスケジュールを無駄にしまいと、出発前日にタイ渡航を 急 遽 手配 した。 バンコク を訪れるのは4年ぶり。騒がしく、雑多な街だが、 東京よりも遥かにインターナショナルでエネルギッシュ なバンコクは、大好きな場所だ。 そして何より、 とにかく食べ物が美味しい 。 ストリートフードはまぁご愛嬌といった感じだが(例外あり)、ちょっとした食堂でも十分に美味しく、それなりのお店に行けば、東京でもなかなか体験できないような美味に出会える。 タイの通貨であるタイバーツと

梁 世柱
2022年10月26日


バロッサ・ヴァレーのイメージを覆すYelland & Papps 〜ミニマム・インターヴェンションの要「適地適品種」のブドウ〜
オーストラリア、バロッサ・ヴァレーのニュースターYelland & Pappsイエランド・パップス。 スーザンとマイケルのカップルが手掛けるワインは、日本入荷がまだ昨年10月に始まったばかり。生産量もとても少ないので、見かけたらぜひ飲んでみて欲しいワインを今回はご紹介します...

SommeTimes特別寄稿
2022年10月20日


Advanced Académie <26> テロワールとワイン vol.2 酸
「テロワール」が実際にワインに対してどのような影響を及ぼすのかを検証していくシリーズの第二弾となる。 このような検証を行う際に最も気をつけるべきなのは、ワインという飲み物は様々な要因が極めて複雑に関係性を築きながら最終的な形へと繋がっていくという、紛れもない事実である。 つまり、 ただ一つの要因だけを抜き出して、「結果」と結びつけてしまった場合、往々にして不正解となる ということだ。 第二回となる本稿では、 ワインの酸とテロワールの関係性 を探っていく。 酸とテロワールの関連性に関しては、あらゆる種類のワインに当てはまるため、対象は文字通り「全て」となる。 葡萄に含まれる酸は主に2種類 あるが、それぞれ役割が大きく異なっている。 酒石酸 は、最終的には味わいにも影響を及ぼすが、その主な役割は 発酵時の化学的安定性を高める ことと、 色調を安定させる ことにある。葡萄を原料としたワインが、膨大な淘汰をくぐり抜けて果実醸造酒の王者となった理由は、まさに酒石酸にある。 ほとんどの植物や果実には極微量しか含まれないこの有機酸が、葡萄には多く含まれている.

梁 世柱
2022年10月19日


復活の起点 <ギリシャ・ナウサ特集:導入編>
アラビア半島を飛び立った私は、砂海に浮かぶ星々のように小さな ギザのピラミッド群 を眼下に収め、 荘厳なアクロポリス と 静 謐 なる霊峰オリンポス を横切りながら進んだ。 古代の神秘を巡るその道のりはまるで、けたたましいエンジン音を撒き散らす無機質な巨塊ではなく、優美に羽ばたく大鷲の背に乗っているかのように軽やかで、ずいぶんあっさりと、私は幻想の世界に没入していった。 そして、アレクサンドロス大王が治めた地に降り立った私は、強引に現実世界へと引き戻された。私が向かった先は、皆が思い浮かべるような、碧い海に囲まれた美しい島々ではない。そこは、激しく隆起する大地と混じり合うように拓かれた小村が点在する山の国、 マケドニア 。ギリシャでありギリシャではない、歴史的、文化的にも極めて独自性が強いこの地には、世界中が注目する一つの小産地、 ナウサ がある。 東から西へ 〜古代ワイン文明の中心地ギリシャ〜 ギリシャにおける最も原始的なワイン造りの痕跡は、 少なくとも紀元前4,000年、おそらくは4,500年ごろまで遡れる と考えられている。どちらにしても、

梁 世柱
2022年10月15日


Advanced Académie <25> テロワールとワイン vol.1 外観
本稿から数回に渡って、「テロワール」が実際にワインに対してどのような影響を及ぼすのかを検証していく。 このような検証を行う際に 最も気をつけるべき なのは、 ワインという飲み物は様々な要因が極めて複雑に関係性を築きながら最終的な形へと繋がっていくという、紛れもない事実 である。 つまり、 ただ一つの要因だけを抜き出して、「結果」と直接的に結びつけてしまった場合、往々にして不正解となる ということだ。 第一回となる本稿では、 ワインの外観とテロワールの関係性 を探っていく。 なお、白ワイン、ロゼワイン、オレンジワインに関しては、テロワールよりも醸造手段が与える影響の方が遥かに強いため、今回の検証は 赤ワインに限定 して行っていく。 黒葡萄は(品種にもよるが)基本的には、 日照量が多く、紫外線が強いほど、果皮が濃い色調になる 。 つまり、標高が高く、開けた場所になるほど、同じ葡萄でもより濃い色調になる傾向があるということだ。

梁 世柱
2022年10月9日


日本ワインペアリング <7> 山幸
本シリーズの第一回 で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。 本シリーズの第七回となる今回は、北海道で開発された 「山幸」(やまさち) を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。 山幸は、北海道の池田町にある十勝ワイナリー(日本では初の自治体が運営しているワイナリー)が「寒冷地に適した葡萄」として開発に携わった葡萄です。 親にあたる葡萄は、片方がフランスで開発されたハイブリッド品種のセイベル13053を基にして1970年に誕生した 「清美」 、そしてもう片方は日本の在来品種である 「山ぶどう」 です。 山幸が完成したのは、清美の誕生から36年後。山幸の6年前に誕生した「清舞」を含めれば、なんと 20,000回を遥かに超える試験栽培 が繰り返されたそうです。 十勝の期待を一身に背負った山幸は、2020年、 OIV(国際ブドウ・ワイン機構) に、甲州、MBAに次ぐ3番目

梁 世柱
2022年10月1日
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