野菜の一番好きな食べ方は?と問われると、迷うことなく「蒸し」と答える。
水分を含んで柔らかくなったテクスチャー、存分に引き出される甘味、皮のマイルドな苦味が、シームレスに繋がる。
野菜の「質」が味わいに大きく影響する料理でもあるため、さらなる美味しさを求めるとコストが意外と高くなってしまうのは難点だが、体に良いのはもちろんのこと、塩やソースで味付けを自由に変えることも可能なので、様々な楽しみ方ができる。
さて、このような料理は、ワインペアリングの基礎技術を習得する上でも最高の教材となる。
まずは、NG例から考えていこう。
多くの蒸し野菜にとってNG対象となりやすいのは、渋味の強い赤ワインだ。
タンニンとたんぱく質の互いに結びつこうとする性質、がNGの理由となる。
つまり、料理にたんぱく質がほとんど含まれていない場合、ワインのタンニンが行き場を失って暴走し、結果として苦味に近い味わいが生じてしまう、ということだ。
一方で、軽いタンニンの赤ワインなら問題とならないケースもあるが、ここにも理由がはっきりとある。一部の緑野菜や、根野菜の皮に主に含まれる少量の苦味は、タンニンと調和の関係となるため、(苦味と渋味のバランスが取れている限りは)タンニンが行き場を失わないのだ。なお、同様の現象が、一般的なオレンジワインでも確認できる。
とはいえ、総合的に考えれば、赤ワインは回避した方が無難と言える。
ここまでのポイントをまとめると、以下の通りとなる。
1. 渋味の強い赤はほぼ無条件でNG。
2. 渋味の弱い赤、もしくはオレンジワインなら、苦味のある野菜にはOK。