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共に歩み、共に得る <南アフリカ特集:第3.5章>

一人で叶えられることは、とても限られている。


人がどれだけ孤独という人生のスパイスを好んだとしても、真の孤独が奇跡的な確率でのみ生みだすことができるのは、永遠に語り継がれる様な至極の芸術作品しか無い。


人はその真理を理解しているからこそ、手を取り合う。


そして、共に歩み、共に得ようとする。


南アフリカのワインが、驚異的なスピードで世界のトップ層へと躍進した理由は、恵まれたテロワールの存在だけでは無い。


そこには人がいて、人と人の繋がりがあった。


成功も失敗も共有し、共に学び、鼓舞しあい、切磋琢磨する。


南アフリカで見た無数の「繋がり」こそが、躍動の原動力なのだ。



生産者団体

ワインの世界には、様々な生産者団体がある。中には、ドイツのV.D.Pのように、国のワイン法すら変えてしまうほどの絶大な影響力をもつ団体や、Renaissance des Appellationsのように、国境を越えたビオディナミ生産者の団体もあるし、カリフォルニアのI.P.O.Bのように、志半ばで空中分解してしまった団体もある。


規模の大小や性質の違いはあれども、ほとんどの団体は、何かしらの共通した目的のために利害関係が一致し、結成されている。


南アフリカの生産者団体も、その点においては同様であるが、仲間意識の強さや行動力において、この国の「チーム力」には目を見張るものがある。


本章では、その中でも特筆すべき活動を行う生産者団体を4つ紹介しよう。


Cape Winemakers Guild

南アフリカを代表する42名(2022年時点)のトップワインメーカーたちが名を連ねるCape Winemakers Guild(C.W.G)は、南アフリカに数ある生産者団体の中でも、最も重要と言える存在だ。ギルドメンバーは、完全招待制となっており、「5年以上突出した品質のワインを造り続けている」という条件も課されている。また、年に一度のオークション等を通じて、様々な慈善活動を積極的に行なっている。このように、技術の研鑽だけにとどまらず、ワイン造りを社会貢献へと繋げるC.W.Gの活動は、世界各地の団体が見習って然るべきものだ。

C.W.Gに名を連ねる、本特集にも登場した(及び次章以降に登場予定の)ワインメーカーたちは以下の通り。(リスティングは、C.W.GのHPに記載された順)


Morné Vrey, Delaire Graff Estate

Abrie Beeslaar, Kanonkop

Alex Starey, Keermont Vineyards

Marc Kent, Boekenhoutskloof Winery

Kevin Grant, Atraxia Wines

David Trafford, De Trafford/Sijnn

Sebastian Beaumont, Beaumont Family Wines

David Finlayson, Edgebaston

Niels Verburg, Luddite Wines

Duncan Savage, Savage Wines

Adi Badenhorst, AA Badenhorst Family Wines

Bruwer Raats, Raats Family Wines

Andrea Mullineux, Mullineux / Leeu Passant

Peter-Allan Finlayson, Crystallum wines / Gabrielskloof

Samantha O’Keefe, Lismore Estate Vineyards

David Sadie, David & Nadia Wines

Richard Kershaw MW, Kershaw Wines

Donovan Rall, Rall Wines



Premium Independent Wineries of South Africa

通称でPIWOSA(ピーウォーサ)と呼ばれるこの生産者団体は、「南アフリカのプレミアムワインを世界に発信する」という明確な目的意識の元に集まっている。また、Independentとあるように、家族経営であるということも条件となっている。参加する12のワイナリーも、Premiumの名に恥じない実力者が集結し、高品質ワインのアピールに限らず、ワイン産業における多角的なサスティナビリティーの推進にも尽力している。



the Zoo Cru

現在最もアクティヴで「派手な」活動を繰り広げているのが、the Zoo Cru。Cape Wine会場内でも、一際目立つ「ディスコ&ヒッピー風ブース」を設営し、14のワイナリーメンバー全員が、ド派手なファッションに身を包んでいた。一見すると、「やんちゃな若者たちの集まり」と思うかも知れないが、メンバーには、クリス・アルヘイト、ダンカン・サヴェージ、ピーター・アラン・フィンレイソンを始めとした、コンテンポラリーな南アフリカワインを強力に牽引する面々が揃う。高品質かつ現代的なワイン造りだけでなく、ワインの楽しさをも全身全霊で伝える、最高にクールなチームだ。余談だが、Cape Wine後に筆者も参加したthe Zoo Cruのパーティーは、完全なディスコと化していた。招待状に書かれたドレスコードは「踊れる靴」。連日のテイスティングで疲れ果てた心身に、the Zoo Cruのメンバーによるクリーン・ナチュラルなワインは、最高に染み渡ったものだ。パーティーでは、非常に保守的なカナダのチーム、ボルドー在住の中国人MW、スペイン出身のMS候補生といったなんとも「お堅い」面々を相手に、筆者がナチュラルなワインの魅力を熱弁するという、珍妙なシチュエーションが発生したが、こういった「場」をクリエイトするのもまた、the Zoo Cruの重要な役割なのだろう。


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