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Advanced Académie <26> テロワールとワイン vol.2 酸

「テロワール」が実際にワインに対してどのような影響を及ぼすのかを検証していくシリーズの第二弾となる。


このような検証を行う際に最も気をつけるべきなのは、ワインという飲み物は様々な要因が極めて複雑に関係性を築きながら最終的な形へと繋がっていくという、紛れもない事実である。


つまり、ただ一つの要因だけを抜き出して、「結果」と結びつけてしまった場合、往々にして不正解となるということだ。


第二回となる本稿では、ワインの酸とテロワールの関係性を探っていく。


酸とテロワールの関連性に関しては、あらゆる種類のワインに当てはまるため、対象は文字通り「全て」となる。


葡萄に含まれる酸は主に2種類あるが、それぞれ役割が大きく異なっている。


酒石酸は、最終的には味わいにも影響を及ぼすが、その主な役割は発酵時の化学的安定性を高めることと、色調を安定させることにある。葡萄を原料としたワインが、膨大な淘汰をくぐり抜けて果実醸造酒の王者となった理由は、まさに酒石酸にある。ほとんどの植物や果実には極微量しか含まれないこの有機酸が、葡萄には多く含まれていることから、世界中のあらゆる場所で、ワインを安定して醸造することができたのだ。酒石酸のもう一つの特徴としては、完熟後にもある程度維持されるという点が挙げられる。この特性が故に、温暖地でも基本的には問題なくワインが造れるのだ。酒石酸量は土壌タイプによっても変動するため、テロワールと無縁では無いが、葡萄品種によっても大きく異なってしまうため、このテーマにおいては、関連性が低いとしておいた方が理解しやすいだろう。余談だが、ワインを冷蔵庫等に長期間保存した際に生じるクリスタル状の沈殿物は、結晶化した酒石酸であり、完全に無害なものである。


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