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出会い <48> 原始的ワインの超現代型アップデート
Les Tetes, Gamuto 2021. ¥3,900 世界最古のワイン とは、どのようなスタイルだったのだろうか。 赤ワイン、白ワイン、ロゼワイン、あるいはオレンジワインだったのか。 結論から言うと、 不明 である。 しかし少なくとも、現代的なスタイルに近い 白ワインやロゼワインが、大昔には存在していなかった可能性は非常に高い 。 その理由は、 保存性 にある。 極々僅かなタンニンしか抽出していない白やロゼは、 原始的な環境下においては、あまりにも脆弱だった ことは想像に難くない。

梁 世柱
2023年11月5日


Vouette et Sorbée 後編 ~シャンパーニュのその先へ~
後編となる本編では、 シャンパーニュ地方の未来が様々な角度から見え隠れする内容 となる。 決して良いことばかりではない が、それでもシャンパーニュ地方は 先へ先へと進んでいる のだ。 コトー・シャンプノワ かつては 珍品の類 であり、 価格もギリギリ相応と言える ものだった コトー・シャンプノワ (シャンパーニュ地方で造られる非発泡性ワインで、品種は主にピノ・ノワールとシャルドネ)が 大きな転換期 を迎えている。 ここにも 温暖化の影がちらつく が、コトー・シャンプノワをリリースするシャンパーニュ・ハウスが かなり増えた のは間違いない。 流石の技術力もあってか、 品質的にはなかなか優れたものが多い が、その高価格は(少なくとも個人的には)許容できる範囲を超えている。 理由は明確だ。 シャンパーニュはそもそも無敵の存在であるが、コトー・シャンプノワは違う。 スパークリング・ワインというカテゴリーにおいて、世界各国の技術水準が大幅に上昇したにもかかわらず、極上のシャンパーニュに並び立つワインは、このカテゴリー内には、いまだに存在していない。つまり、

梁 世柱
2023年10月26日


Vouette et Sorbée 前編 ~父から娘へ~
私が ベルトラン・ゴトロー と出会ったのは、遡ること11年前のこと。 飲料ディレクターを務めていたNYのレストランに、初渡米を果たしたベルトランがやってきた日のことは、今でも鮮明に覚えている。 歯に布を着せる、などという言葉とは無縁の、無慈悲なNYerたちの洗礼を浴びたのだろうか、6時間という微妙な時差がじわじわと効いていたのか、少し疲れた顔をしていたのも良く覚えている。 私もまた、日々の激務で疲れ果てていたタイミングだったが、ベルトランと話し、彼のワインを飲んだ瞬間、完全に目が覚めた。 ベルトランのワインを飲むと、不思議と元気が出る 。 細胞の隅々にまで染み渡る彼の魔法は、今も健在だ。 ベルトラン・ゴトローは、1993年に葡萄農家を継いだが、アンセロム・セロス(ジャック・セロス)の元で学びつつ、自身の畑から残留肥料と農薬が抜け、ビオディナミ農法の認証を得た2001年まで、シャンパーニュをリリースすることはなかった。 理想を実現するためなら、いかなる苦境にも真正面から立ち向かう。 ベルトランの高潔な精神、奥深い思慮、鋭い観察眼、豊かな感受性、そし

梁 世柱
2023年10月24日


SommeTimes’ Académie <54>(フランス・ボルドー地方:ボルドー左岸まとめ)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回も ボルドー地方 について学んでいきます。 ボルドー地方に関する基礎的な情報は、無料のものが十分に存在していますので、本シリーズでは基本的に割愛しますが、その代わりにより深いところを探っていきます。 ボルドー地方シリーズ第七回は、第一〜六回までで学んできた内容に、個別ではカヴァーしなかったエリアを加えた 「ボルドー左岸まとめ」 と致します。 メドック地区その他 個別に解説をしてこなかったボルドー左岸のアペラシオンは、 Listrac-Médoc 、 M é doc、Moulis、Graves の4つ。 その中で、最終的な新格付けへの編入に相応しいシャトーが存在しているのは、現状では Moulis と M é doc のみとなります。 Moulis 第四級相当 Ch. Chasse-Spleen Ch. Poujeaux

梁 世柱
2023年10月17日


SommeTimes’ Académie <53>(フランス・ボルドー地方:Pessac-Léognan)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回も ボルドー地方 について学んでいきます。 ボルドー地方に関する基礎的な情報は、無料のものが十分に存在していますので、本シリーズでは基本的に割愛しますが、その代わりにより深いところを探っていきます。 ボルドー地方シリーズ第六回のテーマは、 「Pessac-Léognan」 と致します。 Pessac-L é ognan Pessac-Léognan は、グラーヴ地区の北部に位置するアペラシオンです。より大きなGrave AOCの一部ですが、その歴史的な名声と高い品質から、1987年にようやく、独立したアペラシオンとして認定されました。葡萄畑の総面積は約1435haで、メドック地区のマルゴーとほぼ同等の規模になります。 ジロンド河の左岸に位置するメドック地区、そしてガロンヌ河の左岸に位置するグラーヴ地区を総称して、ボルドー左岸とするのが一般的となっています。 土壌はガロンヌ河がもたらした 砂礫...

梁 世柱
2023年10月10日


SommeTimes’ Académie <52>(フランス・ボルドー地方:Haut-Médoc)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回も ボルドー地方 について学んでいきます。 ボルドー地方に関する基礎的な情報は、無料のものが十分に存在していますので、本シリーズでは基本的に割愛しますが、その代わりにより深いところを探っていきます。 ボルドー地方シリーズ第五回のテーマは、 「Haut-Médoc」 と致します。 Haut-Médoc Haut-Médoc はSub-Regional、という中域アペラシオンに該当します。葡萄畑の総面積は約4320haで、メドック地区全体の約28%に相当。 平均的な総生産量は約2950万本となります。 メドック地区の中でも最も広大なアペラシオンであり、 226の独立したシャトー がありますが、その中でも1855年の公式格付けに名を連ねたのは、 僅か5シャトーのみ です。 土壌は基本的には、ガロンヌ河からもたらされた砂利や砂礫ですが、南北に約60kmという広さ故に、 Haut-Médoc というアペラシオン自

梁 世柱
2023年9月26日


決別の先へ <Alsace Grand Cru特集:Part.3>
気候変動と温暖化が猛威を振るう中、アルザスの輝かしいGrand Cruは、その栄名に見合った魅力を発揮し続けることができるのか。 私がAlsace Grand Cruの特集を組んだのは、極私的な疑問がきっかけだった。 改めてアルザスと真摯に向き合い、膨大な数のGrand Cruに関する記憶と記録を辿り、現在の酒質を確認し続ける中、私は確信に至っている。 このままではダメだ 、と。 いや、正確に言うと、 今この瞬間はまだ、問題ないどころか、品質は限りなくピークに近い領域へと到達している 。 端正な辛口、という古い価値観に縛られさえしなければ、現在のAlsace Grand Cruは総じて、 歴史上最高品質にある とすら言えるだろう。 しかし、おそらく、いやほぼ間違いなく、 ここがピーク だ。 これ以上温暖化が進めば、いかにGrand Cruといえど、決壊したダムのように、急速に崩れていくことは避けられないだろう。 Part.2の冒頭では、糖度を基準にした追加表記に関して深く言及したが、本稿では 認可品種の再選定 と、 アッサンブラージュの是非 につ

梁 世柱
2023年9月12日


SommeTimes’ Académie <51>(フランス・ボルドー地方:Margaux)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回も ボルドー地方 について学んでいきます。 ボルドー地方に関する基礎的な情報は、無料のものが十分に存在していますので、本シリーズでは基本的に割愛しますが、その代わりにより深いところを探っていきます。 ボルドー地方シリーズ第四回のテーマは、 「Margaux」 と致します。 Margaux 葡萄畑の総面積は約1500haで、メドック地区全体の約9%に相当。 平均的な総生産量は約900万本となります。 65の独立したシャトーのうち21シャトー が、第一級〜第五級に渡って、1855年の公式格付けに名を連ねています。 メドック6地区の中で最大面積となるマルゴーは、格付けシャトーの数も最大となります。 AOC Margauxを名乗れるのは5つの村々で、北から南に、Soussan、Margaux、Cantenac、Labarde、Arsacの順となっていますが、1855年の公式格付けを元に考えると、最重要コミューンは

梁 世柱
2023年9月6日


出会い <44> 超マイナー産地に芽吹く、若き才能
Henri Chauvet, Au Chant de la Huppe 2022. ¥7,900 「最近の若いもんは」という言葉が、私は昔も今も大嫌いだ。 若者たちのことを本気で考え、案じた上でそう言っているのなら良いのだが、実際は先達による「自己肯定」の手段以外の何ものでも無いことがほとんど。 わざわざ未来ある若者を卑下してまで美化する必要があるプライドに、何の価値があるのだろうか。 特に現代の若者(ワインの話なので、一応20~30代、としておこう)は、いわゆる 「ゆとり世代」 になるため、先述のような批判に極めて晒されやすいと感じている。 奇妙なことだ。 大谷翔平、羽生結弦、藤井聡太、高梨沙羅といった、各分野においてすでに歴史を書き換えるような活躍をしてきた偉大な才能たちは、皆20代で、皆ゆとり世代だ。 先人の誰もが成し遂げられなかった偉業を、あっさりと達成する若者を数多く輩出する世代こそがゆとり世代なのだから、それができなかった大人たちが、なぜ彼らを批判できるのだろうか。 先日行われた全日本最優勝ソムリエコンクールに出場していた、 中村僚我

梁 世柱
2023年9月3日


太陽の丘 <Alsace Grand Cru特集:Part.2>
最大アルコール濃度規定 が大きな壁として立ちはだかっている。 Part.1で述べた アルザス最大の問題点 に対して、いくつかの解決策が実行、模索されているが、その中でも 残糖度に準じた追加表記の義務化 は、大きな議論を巻き起こしている。 個人的に、 追加表記の導入自体は正しいステップ だと心から思うのだが、問題はその中身だ。 現状を再確認するために、 相当数のアルザス産ワインで、過去5年間のヴィンテージを中心にアルコール濃度を調査した が、リースリングとミュスカは上限の13%(もしくは特例の13.5%)、ゲヴュルツトラミネールとピノ・グリも上限の15%(同様に15.5%)と表記されているケースが、大多数を占めた。 つまり、大前提として、アルザスにおいて、 規定範囲内での完全辛口発酵が極めて難しくなっている事実 が、改めて確認できたということだ。 この大前提をもとに、追加表記に関してより深く考えてみると、様々な問題点や疑問点が確かに浮かび上がってくる。 Sec(~4g/L) demi-sec(4~12g/L) moeulleux(12~45g/L)

梁 世柱
2023年9月1日


Wine Memo <11>
Dom. Muller-Koeberle, Mobylette 2021. 俗に 「ピンクワイン」 と呼ばれる 「ごちゃ混ぜ系ワイン」 (それほど浸透している呼び名ではないが)に関しては、以前の 出会い <35> でも紹介したが、今回は少し違う目線から、この特殊な新カテゴリー候補に関して考えてみようと思う。 再度、ピンクワインの定義(法的な定義はもちろん存在していない)だけは明記しておいた方が良いだろうか。 ピンクワインとは、白ワイン、ロゼワイン、オレンジワイン、赤ワインという主要4カテゴリーのワインを、それぞれ 別に醸造した後にブレンド したワイン(一応、 ロゼか赤は必ずブレンドされている 、としておこう)のことを意味している。

梁 世柱
2023年8月24日


SommeTimes’ Académie <50>(フランス・ボルドー地方:Saint-Estèphe)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回も ボルドー地方 について学んでいきます。 ボルドー地方に関する基礎的な情報は、無料のものが十分に存在していますので、本シリーズでは基本的に割愛しますが、その代わりにより深いところを探っていきます。 ボルドー地方シリーズ第三回のテーマは、 「Saint - Estèphe」 と致します。 Saint-Est è phe 葡萄畑の総面積は1229haで、メドック地区全体の約8%に相当。 平均的な総生産量は約800万本となります。 第一級は無く、 57の独立したシャトーのうち僅か5シャトーのみ が、第二級〜第五級に渡って、1855年の公式格付けに名を連ねています。 格付けシャトーが少ない理由は、 各シャトーの立地に関係 していると推察されます。 Calon-Ségur (アペラシオンの中央東側に位置)は例外ですが、 他の格付け4シャトー は全て、 Pauillacとの境界に近い、アペラシオン南東部に集中 して

梁 世柱
2023年8月22日


揺れ動くヒエラルキー <Alsace Grand Cru特集:Part.1>
フランスとドイツの国境に位置する アルザス地方 は、私にとっては特別な場所だ。 ワインを学び始めた時、当時はまだまだフランスワインが世界のスタンダードであったため、私も例外なくフランスからスタートした。 しかし、何かとすぐに脇道へ逸れたがる性格故か、最初に私が興味をもったのは、ブルゴーニュでもボルドーでもシャンパーニュでもなく、 アルザスだった のだ。 そう、 私のワイン人としての歩みは、アルザスと共に始まった と言っても良い。 初めて激しく心を揺さぶられた 「グラン・ヴァン」 も、アルザスのワイン(Marcel DeissのSchoenenbourg)だった。 Alsace 何が私をアルザスへと導いたのか、あまり記憶が定かではないが、おそらくその 「歴史的背景」 がそうさせたのだろう。 アルザスの歴史を辿ると、いかにこの地が権力者たちの争いに、深く、そして理不尽に巻き込まれてきたかが分かる。 西暦870年 に、 東フランク王国 (後に神聖ローマ帝国、ドイツ帝国、現在のドイツへと繋がる一大国家)の一部となったアルザスは、最後にして最大の宗教戦争と

梁 世柱
2023年8月15日


再会 <43> ブルゴーニュである理由
Dom. Georges Mugneret-Gibourg, Vosne-Roman é e 2014. (市場価格:6~7万円) 少し気が重いが、今日は ブルゴーニュ の話をしようと思う。 修行時代、どっぷりとクラシックワインに浸かっていた私は、王道のブルゴーニュにも真正面から挑んできた。 「ブルゴーニュは好きか?」(師) 「もちろん。」(私) 「そうか。君がもし、好きじゃない、なんて言ったら、もう君をリスペクトできないところだったよ。」(師) などという、恩師とのなんとも危なっかしい会話は、今となっては一生の記憶に残る思い出だが、このエピソードは、 いかにブルゴーニュがワインの世界にとって重要であるか を、物語っているとも言える。 世界各地のワインをテイスティングするようになり、プライヴェートでは、ほぼナチュラルワインしか飲まなくなった今でも変わらず、私はブルゴーニュが好きだ。 ブルゴーニュという神秘的な液体を、一人のワイン人として、最大限にリスペクトしている。 その前提の上で、あえてこう書こう。 単純な品質面で見るのであれば、ピノ・ノワール

梁 世柱
2023年8月13日


SommeTimes’ Académie <49>(フランス・ボルドー地方:Saint-Julien)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回も ボルドー地方 について学んでいきます。 ボルドー地方に関する基礎的な情報は、無料のものが十分に存在していますので、本シリーズでは基本的に割愛しますが、その代わりにより深いところを探っていきます。 ボルドー地方シリーズ第二回のテーマは、 「Saint-Julien」 と致します。 Saint-Jullien 葡萄畑の総面積は910haで、メドック地区全体の約6%に相当。 平均的な総生産量は620万本となります。 第一級はありませんが、第二級~第四級まで秀逸なシャトーが多く、その 平均的な品質の高さは、ボルドー左岸でも屈指 と言えます。 19の独立したシャトーのうち、11が1855年の公式格付けに名を連ねています。 総体的な特徴としては、 粘土石灰質の表土層 には 大きな岩石 が含まれ、 硬い地盤層 もあることから、 力強く豊満な果実味、緻密なミネラル、ボルドー左岸でも最も滑らかなタンニン が際立ちます。

梁 世柱
2023年8月8日


テロワールと葡萄 <Languedoc特集:後編>
優れたテロワールから、凡庸なワインが生まれることは少ない。 凡庸なテロワールから、優れたワインが生まれることも少ない。 時折、テロワールの高き壁を突破したかのような造り手に出会うこともあるが、そんな天才がそこら中に転がっているわけなどない。 ワインという飲み物と、常にセットで語られるこのテロワールというものの正体は、温情のかけらも無い、徹底的に非寛容な存在なのだ。 ラングドックの重要AOP 前編では、筆者が私見に基づいて改変した、ラングドック地方のAOP格付けをご紹介した。 わざわざ公式なものを改変した理由はただ一つ、「テロワールは嘘をつかない」と私が信じているからだ。 より優れたテロワールに、適切な葡萄が植えられていれば、(ある意味極論ではあるが)よほど稚拙な仕事をしない限り、その偉大さは必ずワインに宿る。 ブルゴーニュの特級畑モンラッシェなどは、その良い例だろう。 モンラッシェという偉大なテロワールを前にしては、多少の実力差など、誤差程度の変数にしかならない。 後編となる本編では、格付けでリストアップしたAOPの中から、特に重要度が高いと判断

梁 世柱
2023年7月31日


出会い <41> 知ってる人の、知らないワイン
Herv é Villemade, Cour-Cheverny Blanc “Les Acasias” 2020. ¥6,000 ワインとの出会い、といっても、様々。 筆者のように、それなりに長い期間、世界各国のワインに幅広く触れていると、さすがに、 「知らない国の、知らない産地の、知らない造り手の、知らない葡萄品種のワイン」 、なんてものにはなかなか出会えなくなってしまうが(そろそろ、東欧、北欧、東南アジア、中米辺りにカヴァー範囲を広げるべきか。)、私が学び始めた頃は、知らないことだらけで、記憶に残る出会いがそこら中に転がっていたものだ。 その時に出会った数々のワインとのエピソードは、今も私にとって、 モチベーションの源泉 であり続けている。 では、そんな私が今、どんな出会いを楽しんでいるのか。 それは、大きく分けると4つのパターンになる。 良く知った国の、知らない産地。 良く知った産地の、知らない地域。 良く知った地域の、知らない造り手。 良く知った造り手の、知らないワイン。 そう、 知っているものと知らないものの組み合わせ に、私は出会い

梁 世柱
2023年7月23日


SommeTimes’ Académie <48>(フランス・ボルドー地方:Pauillac)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回から ボルドー地方 について学んでいきます。 ボルドー地方に関する基礎的な情報は、無料のものが十分に存在していますので、本シリーズでは基本的に割愛しますが、その代わりにより深いところを探っていきます。 ボルドー地方シリーズ第一回のテーマは、 「Pauillac」 と致します。 Pauillac 葡萄畑の総面積は1,213haで、メドック地区全体の約7.5%に相当。 平均的な総生産量は720万本となります。 5つの第一級シャトーのうち3つを有し、第二級シャトー以下にも優れたワイナリーが多いPauillacは、 総合力 で見れば、 名実共にボルドー左岸最上のアペラシオン と考えて差し支えないでしょう。 33の独立したシャトーのうち、18が1855年の公式格付けに名を連ねています。 総体的な特徴としては、 水捌けの良い砂礫質土壌が優勢 であることに起因する、 カベルネ・ソーヴィニヨン比率の高さ、西洋杉とも呼ばれ

梁 世柱
2023年7月20日


未来の担い手 <Languedoc特集:前編>
ワイン王国フランス。 おそらく、ワインを学んできた人々の大多数が、最初にその知識を深めた国だ。 もちろん、生産量世界一位の座をもう一つのワイン王国であるイタリアと毎年のように競いあっているフランスが、 世界で最も重要なワイン産出国の一つ であることには、疑いの余地もない。 また、ニュー・ワールド諸国で栽培されている主要葡萄品種のほとんどが、 「フランス系国際品種」 (そのオリジンはさておき)に該当するという点においても、フランスが 世界的なワインの「基準」 となっていることも事実。 さらに、 テロワールの横軸(差異)と縦軸(優劣)の両方 において、 「格付け」、「原産地呼称制度」というアイデアを高次元で先導してきた のもフランスだ。 このように、ワインという飲み物を世界規模で理解する(イタリア、スペインなど、特定の国に専門化した場合はその限りでは無い)のであれば、 確かにフランスは避けて通れない 。 世界的銘醸地とされるシャンパーニュ、ボルドー、ブルゴーニュの名声は天よりも高く、ロワール、アルザス、ローヌ、プロヴァンス、ジュラなどもじっくりとその

梁 世柱
2023年7月14日


再会 <40> のんびりヌーヴォーの価値
Remi Dufaitre, Beaujolais Villages Nouveau 2022. ¥3000 11月の第3木曜日午前0時。 1985年の制定以降、 ボジョレー・ヌーヴォーの解禁 を祝う瞬間として長年親しまれてきた、 日本ワイン市場最大規模のイベント である。 近年はその盛り上がりも 右肩下がりの傾向 にはあったが、 決定的な転機が2022年 に訪れたことを、記憶している人も多いだろう。 ロシアによるウクライナ侵攻が直接的な要因となって発生した 燃料危機 に伴い、 現地での物価と空路での輸送費が高騰 した結果、2022年度のボジョレー・ヌーヴォー輸入量は、前年比45%減ともされる量にまで落ち込んだ。 この数値は、サントリー社の統計によると、ピークを記録した2004年と比べると、なんと85%減にもなるとのことだ。 さらに、価格の高騰を押し切って輸入されたボジョレー・ヌーヴォーは、解禁日から半年以上経った現在でも叩き売りされている光景を頻繁に目にする。 生産者は輸出量減に苦しみ、インポーターは利益の圧縮に苦しみ、酒販店は在庫過多に苦しみ

梁 世柱
2023年6月25日
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