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ヴィニュロンの一年 <2023年3月>
3月中旬で既に春を感じる長野市。 標高630mの圃場に雪は無く、 オオイヌノフグリ の花が既に美しく咲き乱れている。森の木々も芽吹き、 檀香梅 (クロモジ属)は満開を迎えている。植物達は例年よりも早い春の訪れを感じ、それを私たちに知らせてくれているようである。ちなみにオオイヌノフグリの花言葉は「 春の喜び 」。 冬の厳しい寒さが長く続く長野県。この地に住む身として、春の訪れはとても嬉しく喜び溢れる季節でもある。気温の上昇とともに、自然界に住む生き物達が活動を開始し、そこから大きなエネルギーが発するのを感じることができる。寒さ厳しい地だからこそ、より一層春の到来に喜びを感じるのだろう。 1月下旬に開始した剪定作業がようやく終わり、ここからは 4月の萌芽に向けて準備 を進めていかなければならない。

ソン ユガン
2023年3月25日


La Maliosa ~時代の先を行く農の在り方~
私はそこへ行ったのではなく、大きな世界の小さな一部として、ただそこに在った。 ラ・マリオーザ 。 世界の理とは、在り方が異なる存在。 パルテノン神殿、マチュピチュ、そして霊峰富士のように。 その隔絶性は、ただならぬ神性を纏い、人々を強烈に蠱惑する。 踏み締める 大地...

梁 世柱
2023年3月23日


フランスワインの多様性
フランスワインの特徴とは何でしょう? どうしても一部の有名産地に偏りがちなのですが、実はその 多様性 にこそ魅力があると私は思います。 そして、フランスワインを深掘りしていくと見えてくる面白さが、 フランスという国そのものの多様性 。 それぞれの地方の 気候、民族、文化が影響しあい、歴史を積み重ねてきた集合体 。 それは、ワインにも現れております。 また、ワインと料理の結びつきが昔から強く、 地方料理とその土地のワインのペアリング を楽しむ文化があります。 実はここに、 ペアリングを考えるヒント があります。 ペアリングのポイントとなる、 土地を合わせる という考え方。 その土地柄、気候風土に根付いた料理とワインの組み合わせは理にかなったものが多く、特にフランス地方料理の場合は、 古くから合わせられ取捨選択をされてきた歴史 があります。 お勧めする上での ストーリー性 があり、イメージ共有がしやすく説得力があります。 私がペアリングを考えるうえでのポイントとして、お料理の味わいなどを分析し、どのパターンにするのかと理論立てて検討するのですが、イメ

SommeTimes特別寄稿
2023年3月18日


大いなる前進 <トスカーナ特集:Chianti Classico編 Part.1>
代わり映えしないフィレンツェの街並み。 街中に張り巡らされた、妙に洗練された路面電車。 荘厳と佇むサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂。 見覚えのあるホテル。 苦々しい記憶が徐々に蘇ってくる。 再訪を強く望んできたのに、私の心には嬉しさなど一欠片も宿っていなかった。 そう、トスカーナは4年前の私に、随分と長引いた 敗北感 を刻んだ地だったからだ。 トスカーナワインに関する知見と経験が根本的なレベルで足りなかった当時の私に、高貴なサンジョヴェーゼは分厚い壁となって立ちはだかった。 不安げにスワリングを繰り返すグラスの中に、確かにあったはずの真理。 私はそこへついぞ到達できぬまま、帰路についた。 ワイン人として次のステージへ進むために、私が乗り越えねばならない試練を残したまま、4年という時間だけが、無情に刻まれ続けてきた。 久々に降り立ったフィレンツェに私がもち込んだのは、覚悟だった。 再び敗北を味わうことになったなら、求道者として大きな回り道を強いられると。 サンジョヴェーゼ 長らくの間、私はイタリアに数多くある地場黒葡萄品種の中でも、 ネッビオ

梁 世柱
2023年3月16日


ビオディナミのリアル
3月10日、オレゴンから Evening Land Vineyardsのサシ・ムーアマン (他関連ワイナリー: Sandhi Wines、Domaine de la Côte、Piedrasassi )をゲストに迎え、「ビオディナミを説く」と題したオンライン・セミナーを開催した。 信じるか信じないか、といったどうにも宗教的な見解に至りがちなビオディナミ農法だが、原理はさておき、結果でのみその是非を判断すべき、というのが私自身の考え方だ。 だからこそ、ゲストにサシ・ムーアマンを迎えた。 以前、カリフォルニアの特集記事を組んだ際にも、徹底した現実主義者のサシならではの正直な言葉に、随分と助けられたからだ。 本記事はサシとの対談をもとに、ビオディナミのリアルを(私自身の備忘録も兼ねて)掘り下げていく内容となる。 また、ビオディナミ農法そのもに関する説明は、以前寄稿した Adavanced Académie 15 と 16 をご参照いただきたい。 実際のセミナーでは、5つのテーマに分けてディスカッションを行ったが、内容が重複する部分もあったため、整理した

梁 世柱
2023年3月11日


完璧なクラシック
その土地の料理とワインが、長年に渡って「共に在った」結果として、両者の間に強力な繋がりが自然と形成されることがある。 しかし、軽い繋がり程度であれば、例は無数に存在しているが、 完璧とも言えるクラシック・ペアリングへと昇華したケースは稀 と言えるだろう。 一般的なイメージとは違い、実際のところは多くの「クラシック」が かなり適当 なペアリングだったりするのだ。 さて、今回ご紹介するのは、完璧と断言できるケース。 イタリア・トスカーナ州の名物料理である ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ と、サンジョヴェーゼを主体とした同州の名ワインという組み合わせだ。

梁 世柱
2023年3月9日


真のテロワールワイン -West Sonoma Coast AVA- 【特別無料公開】
オールドワールドはテロワールのワイン、ニューワールドはワインメーカーのワイン。 そう思っている、いや思い込まされているワインプロフェッショナルとワイン愛好家が、少なくとも日本では圧倒的大多数となるのは間違いない。 確かに多くのニューワールド産地では、ヨーロッパの銘醸地(特に...

梁 世柱
2023年3月3日


グレドスワインの軌跡
スペインの首都、 マドリード の中心部から車で約1時間の距離にある グレドス山脈 は、首都圏に住む人々の間で人気のハイキング場所だ。 週末ともなれば、家族連れの観光客が遠足気分を満喫している。 東京に例えるなら高尾山のような感覚だろうか。 その場所が今や、 世界に知られるワイン産地 になるとは、20年ほど前には想像もできなかったであろう。 絶景のハイキング場所は、標高500mから1000m超だが、中心部が500mの標高に位置するマドリードからの移動は、山を登ってきた感覚はない。ハイウェイで向かっていくと、美しい壮大な山脈が出迎えてくれる。険しい山間に葡萄畑があるのだが、まるで何十年も我々を待ってくれていたような、いや安易に近づいてはいけないような、おどろおどろしくも見える 古樹 達が点々と植っている。 今や高級ワイン産地として、まさに 「穴場」的な場所からのシンデレラストーリー をもつ産地だが、スペインの中で、このような形で高級ワイン産地として世界中から注目を浴びた場所は、約30年前の プリオラート 以来であろうか。 ほとんどのぶどう畑は 6

SommeTimes特別寄稿
2023年3月2日


ヴィニュロンの一年 <2023年2月>
暖冬の続く長野県。 1月下旬および2月初旬の大寒波によって一時的な大雪は降ったものの、例年に比べて非常に雪が少ない。2月下旬には日中に10℃を越える暖かい日も多く、雪ではなく雨が降っている。 現時点で生育期の天候を予想することは難しいが、近年続く悪天候がまた今年も来るのでは...

ソン ユガン
2023年2月27日


フリーランスの観点から考察する、地方とワイン
ソムリエ朝倉達也です。 フリーランスとして独立をし、自らの会社を設立してちょうど1年が経った。 いざ自身で始めると今まで知らなかった事が本当に多いことに気が付いて、まだまだ至らぬ点は多いながらも独立して良かったと感じている。...

SommeTimes特別寄稿
2023年2月17日


【実験】ワイングラスと実際の味わいの関連性
久しぶりにやってまいりました。苅田のソムリエ実験レポート第3段。 ( 第1弾 、 第2弾 も合わせてお読みください。) 今回はグラスによる違いです。 今さらと思う方も多いかもしれません。 でも今自分が出しているワインに、最高の相性のグラスを使用できているといいきれますでしょうか? ある有名ベトナム料理屋さんではシャンパン、白、赤、ロゼ、オレンジ、すべてグラスは1種類、それに合うようなワインをチョイスしている。補充も楽だしといっていたのを聞いて、目から鱗だったことがあります。 万能なグラスがある一方でグラスは様々なものがあり、有名グラスメーカーのサイトを覗けば品種ごと、ランクごとにかなり種類があるのに驚かされます。 弊店では1つの料理に対して2種類のドリンクを提供しており、様々なお酒の種類に合わせて、8種類のグラスを使い分けています。もちろんドリンクのマッチにあったものを組み合わせて提供しておりますが、グラスの性質を理解することでより素晴らしい体験をお客様にしていただけるのではないかと、今回の実験を思いついた次第です。 お店をやる、新しいグラスを

SommeTimes
2023年2月11日


温暖化対策 <葡萄畑>
気候変動 が世界各地に襲いかかって久しい。 ワイン産地においても例外はほぼ無く、何かしらの変化が生じている。 特に ヨーロッパ伝統産地 では、 ティピシティ (その場所で造られるワインに生じる古典的かつ典型的特徴)が失われるというのは、最も恐れていることだ。 中には特定の産地と特定の葡萄にとって、温暖化が好意的に働いていると考えられるケースもあるが、 温暖化の恩恵などという表現には、人のエゴが入り過ぎている 。 しかし、 難局を打開する工夫ができるのもまた、人間の凄さ である。 このまま無対策でいれば、ブルゴーニュの好適品種がピノ・ノワールではなく、シラーになるかも知れない。そんな未来が絶対に訪れないように、造り手たちは日々悩みながら葡萄樹と対話を繰り返し、様々な対策を行っている。 今回は、葡萄畑でどのようなことが行われているか、について解説していこう。

梁 世柱
2023年2月8日


再会 <30> 先見の明
Moreau-Naudet, Chablis 1er Cru Montmains 2013. 地方 に行く機会があれば、できる限りスケジュールに組み込んでいることが一つある。 それは、 ワインバーに行く こと。 東京で散々飲んでいるのに、なぜわざわざ地方で?と思う方もいるかも知れないが、これにはれっきとした理由がある。 東京都内にある飲食店の総数は、一つの都市内に存在する数としては、実はぶっちぎりの世界一。 World Cities Culture Forumの2019年度の統計から主要都市を抜粋すると以下のようになる。 No.1 東京、日本(148,582店舗) No.2 ソウル、韓国(83,239店舗) No.4 パリ、フランス(44,896店舗) No.7 ニューヨーク、アメリカ(26,697店舗) No.9 ロンドン、イギリス(18,110店舗) となっている。 そう、東京の飲食店数は世界2位のソウルを約65,000店鋪上回り、4位パリの約3倍、7位ニューヨークの約5.5倍、9位ロンドンの約8倍となっているのだ。 この数字が何を意味してい

梁 世柱
2023年2月4日


ナポリタンを攻略
2022年は、意外なクラシック洋食がリバイバルされ、ちょっとしたブームを巻き起こした。 そう、 ナポリタン だ。 ナポリタンと言えば、古き良き 喫茶店や洋食店の味 。 ブヨブヨにゆでたパスタを、炒めた玉ねぎ、ピーマン、ベーコン(ハムやウィンナーの場合も)などの具材とたっぷりのケチャップで絡めた、日本発祥のパスタ料理だ。 何よりも特徴的なのは、そのパスタの柔らかさ。 クラシックなレシピでは、パスタを芯がなくなるまで柔らかくゆでた上で、サラダ油で和えて、冷蔵庫で寝かしておく。 これは、忙しい(忙しかった、とすべきか)喫茶店や洋食店では、「時短策」として有効な手法だった。 さらに、 味付けに砂糖が用いられることが多い のも特徴と言えるだろう。

梁 世柱
2023年2月2日


ヴィニュロンの一年 <2023年1月>
2019年に植樹したブドウ達は、今年5年目を迎える。 長野県長野市北部、自然豊かな中山間地「浅川地区」のとある森の中にある約2haの土地。 標高630m、南向き、若干の傾斜で日当りは良く、優しい風が通り抜ける。周りは木々に囲まれ、山の中に静かに佇み、鳥達の歌声だけが聞こえてくるブドウ畑。 昨年10月に念願の初収穫を終えた畑は、それから時が止まったかのように静まり返り、 ブドウ樹は、冬の寒さに耐えながら春の訪れを待っている。 収穫後の安堵した時間も束の間、2023年1月、いよいよ今シーズンの始まりである。 「暖冬」 通常なら2月から開始する剪定作業なのだが、今年は少し早める事にした。 理由は“暖冬”。今年は雪が異常に少なく、例年に比べて非常に暖かい。1月に気温が15℃近くまで上がった日もあり、さらに雪ではなく雨まで降っている。地元の方に聞いたが、1月に雨は経験がないと言っている。

ソン ユガン
2023年1月31日


別色の未来 <南アフリカ特集:最終章>
南アフリカを訪れる前は、まだ疑問が残っていた。 瞬く間に成長してきた南アフリカは、すでにアメリカ合衆国、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチンといったニューワールド先進国と、肩を並べる存在になっているのか。その立ち位置に相応しいワイン産出国としての総合力をすでに得ているのか、と。 もちろん、サスティナビリティへの取り組みや、日本に輸入されている様々なワインの実力は知っていたが、現地の様子を自身の目で見て、造り手と直接会話し、葡萄畑を歩き回り、最もフラットな現地リリースのコンディションでテイスティングしない限り、私はその産地の実力を、外部の情報とワインだけを頼りに、盲目的に信じたりはしない。いや、そんなことができると真に思うほど、自身を過大評価してなどいないのだ。 私のようなものが言うのもなんだが、活字は平気で嘘をつく。 だからこそ、真実は必ず、自ら確かめる必要がある。 過去数年間、少なからず南アフリカのワインに、遠く離れた日本の地で心躍らされてきた身としては、ついに真実を見るであろうことに不安がなかったわけではない。 だが、幸いなこ

梁 世柱
2023年1月28日


2023年のトレンド予測
ワイン産業という大海には、時折 巨大な波 が発生する。 その始まりは さざなみ 程度のものであっても、集約を繰り返しながら、徐々に勢力を増していくものがあるのだ。 現代において、その特別な波を導いているのは、 潜在的集合意識 だろう。 最終的に世界中を巻き込むような大波へと成長するさざなみは、 世界各地で同時多発 することが多いからだ。 これは、極一部の圧倒的な影響力の元に導かれていた時代とは、明らかに異なる現象でもある。 言い換えるなら、『 多様性の時代ならではの、潜在的集合意識の存在 』となるだろう。 そして、 潜在的集合意識 に導かれた波は、いくつかの トレンド となり、世界を駆け巡っていく。 本稿では、2023年をどのようなトレンドが導いていくのかを予測して行こう思う。 まず、 ワイン造り という大きな括りで言えば、 オーガニック (もしくはビオディナミやパーマカルチャーなど)と サスティナビリティ (SDGs)の 両立 が、極めて重要なテーマとして取り組まれていくことはほぼ間違いないと言える。これは、オーガニックだけではSDGsへの取り

梁 世柱
2023年1月21日


Not a Wine Pairing <1> クリームティー
クラシック・ペアリングというものは、何もワインの専売特許という訳ではない。 特定の食と飲が同一文化の中で共存し続けた結果、一部の組み合わせが完璧なクラシックへと昇華する例は、世界各地に少なからず存在する。 ペアリングの新シリーズ「 Not a Wine Pairing 」では、『 ワイン以外のクラシック・ペアリングから、ワイン専門家や愛好家が何を学べるのか 』をテーマとして、様々な検証を行なっていく。 第一回のテーマは、ワインと食というイメージからはどうにも遠い、 イギリス のクラシック・ペアリングである「 クリームティー 」。

梁 世柱
2023年1月18日


未来からの預かりもの <南アフリカ特集:第4章>
南アフリカ滞在中、一人の見知らぬ若い女性から、苦言を受けた。

梁 世柱
2023年1月15日


南アフリカの冷涼気候産地 <後編>
前編 に続き、後編でも昨年11月28日に開催された、オンラインセミナー 【 キャシー・ヴァン・ジルMWと巡る壮大な南アフリカワインの世界 Episode.2~冷涼気候産地~ 】の内容をレポートしていく。 前編では、南アフリカの冷涼気候を形成する決定的な要素である「 標高...

梁 世柱
2023年1月7日
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