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アルコール濃度という目安の意味
葡萄に含まれる糖分が、サッカロミセス・セレヴィシエという微生物によって、エタノール(アルコール)へと姿を変える。 自然のいたずらか、神の設計か。 人類が形作ってきた文明の歴史は、常に「アルコール発酵」と共にあった。 そんな「アルコール」という存在は、ワインを分析的に見る際には、「重さ」の指標となり続けてきた。 過去形、だ。 しかし、その背景を正しく理解しておくことは、現在の変化を知る上で、極めて重要だ。

梁 世柱
3月1日


格安ワインのアドヴァンテージ
神はディテールに宿る。 あらゆるディテールに徹底的にこだわり、そのこだわりが完璧な精度で行き届く量のワインしか造らない。 少量生産=高品質、という方程式自体は、基本的には間違っていない。 実際に、世界最高峰と謳われるワインには、この方程式通りに造られているワインが非常に多い。 一方で、シャンパーニュのプレスティージ・キュヴェや、ボルドーのトップ・シャトーのように、かなりの生産量と極まった高品質を両立させている例もある。 つまり、方程式自体は正しいと言えるが、唯一の条件ではない、ということだ。 そして、少量生産だが、品質的に優れているとは言えないワインも、残念ながらかなり存在している。 この複雑に見える因果関係の中で、どのようにワインの価格は決められていくのだろうか。 ワインの価格は、基本的にコスト+市場原理で決まる。

梁 世柱
2月7日


終わりなきワイングラス沼に刺す、一筋の光
ワイングラス、というのは実に奥が深い酒器である。 世界中の酒器を検証したわけではないが、ヴァリエーションという意味においては、あらゆる酒器の中で、最も複雑怪奇なカテゴリーとなっていることは、間違いなさそうだ。 それほどのヴァリエーションが存在していることに、果たして意味はあるのだろうか? 本当にグラスによって大きく味わいは変わるのだろうか? 答えはYESである。

梁 世柱
2月1日


クラシックとナチュラルの境界線
かつてワイン市場では、クラシックvsナチュラルという内戦が勃発していた。 あえて、過去形にしているのだが、今回のテーマはまさにその点にある。 そもそも嗜好品であるワインは、飲む本人が好きならそれで良い、というのがど真ん中の正論なはずだが、自称知識人の中には、どうしても他者の趣味嗜好を攻撃したい人が多いようだ。 不毛なマウントポジションの奪いあい。そんなくだらないことを、どうかこの美しい趣味の世界に持ち込まないでいただきたいものだ。 さて、ひと昔前の対立構造を、少し丁寧に紐解いてみよう。

梁 世柱
1月23日


資格試験の意味 なぜ挑戦すべきなのか。(無料公開)
2025年は、ソムリエ・ワインエキスパート呼称資格認定試験(以下、省略して「資格試験」と表記)の試験対策講座を、主任講師として務めるという新たなチャレンジの一年となった。 実は、過去に試験対策講座担当へのオファーは少なからずあったのだが、頑なに断ってきた。 理由は明白だった。 試験への対策という単純な意味であれば、(講師側に)特殊な領域の知識や、より現実的な見解などは必要ではなく、要点さえ押さえれば、ワインプロフェッショナルならできる人はたくさんいる。ワインの深部を探究することに情熱を燃やしに燃やしてきた私にとって、広く浅い世界を担当することに、限られた時間的リソースを割く意味性がなかなか見出せなかったのだ。 しかし、その考えは徐々に変化してきていた。 もちろん、そこにも理由がある。 資格試験を突破した人々から、「資格試験のせいで、ワインへの情熱を失ってしまった。」という声をあまりにも多く、頻繁に耳にしたからだ。 その結果だけを見るなら、まさに本末転倒としか言いようがない。 何が足りなかったのか、自分なら何ができたかも知れないのか。...

梁 世柱
1月10日


無知を騙す分かりやすさの罪
※注:日本の政治に絡んだ言及がありますが、本題はそちらではありませんので、あらかじめご理解いただけますと幸いです。 参政党なる政党には、さしたる興味をもっていなかったのだが、先日の参院選の結果を見て、少し調べてみることにした。

梁 世柱
2025年7月29日


リスキー過ぎる生ワイン
ジャーナリストとして、深く首を傾げるワインと出会った時、そのことに言及すべきかどうかは、実に悩ましい問題だ。 失敗は誰にでもある。 どれだけ熟達した造り手でも、人間である以上は、時に間違った選択をしてしまうことも、当然あるのだ。 そう思っているからこそ、私は基本的には、静観という立場を取るようにしているのだが、事態の重さ次第では、やはり書くべきではないか、と思い立つこともある。 今回は、そのケースに該当すると思っていただきたい。

梁 世柱
2025年7月19日


クラシックの定義と個性の行方
最近、クラシックとされるワインに対して考えを巡らせることが増えた。 そもそもクラシックの定義とはなんだろうか? ナチュラルワインに法的な定義が無いように、クラシックワインにもまた法的な定義は存在しない。 だが一般的には、その産地と品種の個性として広く認知されたスタイル、を指していると考えて差し支えないだろう。

梁 世柱
2025年7月1日


ワインの賞味期限
ワインには賞味期限が設定されていない。これは、酸性かつアルコール分を含むことから、「腐敗しにくい」ものと判断されているからだ。 確かに、腐敗するかどうかを基準とするのであれば、未開栓のワインは永遠の賞味期限をもつとも言えるのだが、ワインのポテンシャルを超えた経年熟成や、熱劣化など、ワインの味わいを決定的に損なってしまう要素は、実際には多い。 では、一般的な抜栓後のワインの賞味期限(法的な意味ではなく)はどれくらいなのだろうか。 スパークリングワインや軽い白ワイン、ロゼワインなどは1~2日。しっかりとした白ワインなら2~3日、オレンジワインなら3~4日。赤ワインなら3~5日。一部の高級ワインであれば一週間程度。

梁 世柱
2025年5月26日


ネズミ臭ワインのリターン問題
先日、ふらっと立ち寄ったイタリアンレストランが、期待を遥かに超えた大当たりで驚いた。 最初に頼んだ乾杯用のフランチャコルタが抜群に美味しく、自家製の黒オリーブ入りフォカッチャも極上で、オーダーした料理の全てが最高に美味だった。 合間合間にグラスで頼んだワインも全体的に美味しかったのだが、実は退店する時、あまり良い気分にはなれなかった。 その理由は、グラスで頼んだオレンジワインの、ネズミ臭(俗称、マメ臭)だ。

梁 世柱
2025年5月9日


テーマ・テイスティング
私は昔、音楽に明け暮れていた。 主な楽器はギター、専攻は作曲で、実はアメリカの音楽大学を卒業までしている。 今はもう、音楽は完全な趣味で、本業がワインとなっているのだが、私にとっては音楽もワインも、似ている部分が多い。 まず、どちらも何かしらのインスピレーションを元に表現をする、という点が共通している。 音楽なら感情や情景などがインスピレーションに、ワインならテイスティングそのものがインスピレーションとなる。

梁 世柱
2025年4月27日


凍ったワインはどうなるのか
先日、不覚にもワインを凍らせてしまった。 夕食用にワインを急冷しようと冷凍庫に入れたのだが、繋ぎのビールを飲みながら食事を進め、TVを観ている間に、すっかりと冷凍庫に入れたボトルの存在を失念してしまったのだ。 気付いたのは翌日の朝。 時すでに遅しだった。 ワインは完全に凍り、氷結によって膨張した液体がコルクを押し上げ、激しい液漏れを起こしていた。 急冷のために冷凍庫を利用することは良くあったが、凍らせてしまったのは初めて。 かなりショックを受けたが、ここはジャーナリスト魂を発揮して、凍ったワインに何が起こるのかをレポートさせて頂こう。

梁 世柱
2025年4月7日


トランプ関税が、日本のワイン市場をどう動かすのか?
先日、EUが米国産のウィスキーに対して50%の関税を課すとしたことに対する報復として、米国のドナルド・トランプ大統領が、EU産のワインに対して200%の関税を課すという、暴挙にも等しい報復関税策をほのめかした。 本来なら、世界の経済リーダたる米国は、世界経済に混沌ではなく調和をもたらす存在としてあるべきだと私は考えるのだが、アメリカ・ファーストを掲げ、自国の利のみを徹底的に追求する「タフ・ネゴシエーター」であるトランプ大統領は、そのようなリーダー像に興味も関心も一切無いのだろう。 「世界中がアメリカから金をむしり取っている。」などと、ご本人は随分な被害妄想を抱えているようなので、流石に200%関税のような異常事態にはならないと願いたいが、最悪の結果は十分にあり得るのだろう。 このような貿易戦争は、我々にとっても対岸の火事とは言い切れない。 米国は日本に対し、25%の自動車関税を課すことをすでに発表しているが、貿易戦争の中で、2019年の日米貿易協定が破棄され、再び米国産ワインに対する関税が上昇する(2019年以降、段階的に引き下げられていた)可能

梁 世柱
2025年3月30日


甘口産地の辛口ワイン
近年、甘口ワインの銘醸地として名を馳せてきた産地で、辛口ワインの生産が急増している。 世界的な甘口離れ、がその根底にあるのは明白であり、実際に甘口〜極甘口ワインの産地は、どこも例外なく、セールスに苦しんでいる。 そのような時流の中で、改めて冷静になって、「甘口産地の辛口ワイン」に関して、考えてみようと思う。

梁 世柱
2025年3月23日


トレンドと熟成
アメリカのワイン評論家であるロバート・パーカーJrが、世界中のワイン産業に巨大な影響力をもつに至った1990年代以降、繊細さよりもパワフルさを重視したワインが、続々と誕生した。 そのトレンドは、少なくとも2010年代前半までは続いていたのだが、2025年となった今、すっかりと軽快な味わいへと変貌したワインとの垂直試飲で、大きな違和感を感じることも増えてきた。 そう、ワインの性質が異なりすぎて、もはや垂直試飲として成立していない(ヴィンテージの差異や熟成の妙味が、強いワインメイキングによって覆い隠されている)のに加え、パワーワインの飲み頃に関して、大いに疑問が浮かんでくるのだ。

梁 世柱
2025年2月17日


国際品種とテロワール
1970~80年代。特に1976年の「パリスの審判」以降、伝統、新興問わず、世界各地のワイン産地に巨大な変化が訪れた。 カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、そしてシャルドネの大進出だ。 これらの葡萄には、ブレンドの中に15~20%程度含めるだけで、そのワインの味わいを数段階も「わかりやすい」ものとする特性があった。 わかりやすさは、圧倒的な売りやすさにも繋がる。 歴史ある銘醸地ですら、その誘惑には抗えなかったのだから、新興産地がフランス系国際品種に支配されるのは必然だった。

梁 世柱
2025年2月14日
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