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出会い <46> 島ワインの最高到達点
Azores Wine Company, Arinto dos Açores Solera NV. ¥12,000 2023年10月の時点で、私が本年度最大の衝撃と断言できる「出会い」のワインは、大西洋にひっそりと浮かぶ未知の島で造られていた。 イタリア・シチリア島の躍進を皮切りに、ギリシャ・サントリーニ島など大小様々な島が名乗りを上げ、今や島ワインは群雄割拠の様相を呈している。 私が考える島ワイン最大の面白さは、古典的価値観に基づいた縦軸評価と、個性を重んじる横軸評価の間で、至高とすべきワインが決定的に異なる点にある。 縦軸評価の場合、ネッビオーロやサンジョヴェーゼにすら比肩し得るポテンシャルを発揮している、シチリア島・エトナ火山の土着品種ネレッロ・マスカレーゼが、「至高」に該当することに、異論を唱える人は少ないだろう。 横軸評価はより「主観」が強くなるため、個人差が生じるのは当然のことなのだが、私はスペイン・カナリア諸島のワインを、これまでは横軸評価の「至高」としてきた。 他にも、ギリシャのクレタ島、トスカーナ州のジリオ島、前回の「出会い」で

梁 世柱
2023年10月8日


Wine Memo <13>
José Piteira, Vinho de Talha Tinto 2018. ロシアによるウクライナ侵攻を発端とした物価と輸送費の高騰、歴史的な円安によって、日本国内でもあらゆる物価とエネルギー費が上昇し、輸入ワインの価格もどんどん釣り上がっている。 大幅な賃上げという幸運を享受できている人なら問題ないのかも知れないが、5%程度の賃上げでカヴァーしきれるほど、昨今の物価高は緩くない。 限られた資金源は、生活必需項目に優先して回され、娯楽や嗜好品にかけられるDisposable incomeは縮小していく一方だ。 私がワインに携わってから20年余りの間で、今ほどワインの「コストパフォーマンス」を強く意識したことは無いだろう。 長年買い続けてきた銘柄を、価格高騰を理由に見限ることは、もはや日常茶飯事となった。 なかなか心が痛むのだが、仕方のないことだ。 ワインの世界において、コストパフォーマンスの王者は、昔も今もチリであることは間違いない。

梁 世柱
2023年10月6日


Limoncelloの魅力
イタリアといえば、ワインファンにとっては、もちろんワイン大国だが、食通にとっては、パスタやピッツァの国、そして、カクテル好きにとっては、リキュール王国となる。 イタリアンリキュールの中でも人気が高いのは、ハーブ類を中心に独自のレシピで配合したビター系リキュール(Amaroと呼ばれる)で、その王者は間違いなくCampariだが、アルコール濃度がCampariの半分程度で、苦味も穏やかなAperolも非常に良く知られている。 他にもカンパーニャ州のStregaやロンバルディア州のFernet-Brancaをはじめ、バジリカータ州のAmaro Lucano、エミリア=ロマーニャ州のAmaro Montenegro、シチリア島のAmaro Avernaなど、「ご当地Amaro」の枠を超えて、世界的に愛される名品は数多い。 もしイタリア産のAmaroが無くなってしまったら、世界中でどれだけ膨大な数のカクテルレシピが消失してしまうかは、もはや想像すらつかない。 そして、そんなイタリアンリキュールの中でも、孤高の存在と言えるのが今回の主役となるカンパーニャ州発

梁 世柱
2023年10月4日


再会 <46> 好適品種と不良少年
Delinquente, Weird faces series. ¥2400~2700 青森のりんご、鳥取の梨、愛媛のみかん、岡山の桃、熊本のスイカ、山形のさくらんぼ。 我々は日常的に、様々な果物で、名産地たる優れた味わいを当たり前のように楽しんでいる。 そして、当たり前だからこそ、すぐに忘れてしまう。見えなくなってしまう。理解することを止めてしまう。 なぜその場所が、名産地と呼ばれるようになったのかを。 要因は多々あれど、真理は実にシンプルだ。 その果物が、その地に適応することができたから。 それだけのことなのだ。

梁 世柱
2023年10月1日


南イタリアの粋 〜魅惑のトマトリキュール〜
海外のワイン産地を巡る際には、スケジュールの隙を見計らって、現地のショップを訪れるようにしている。 残念ながら、特にヨーロッパでは、ほとんどのショップは保管状況(常温保存は当たり前)が良くないので、(例え安くても)ワインを買うことは滅多に無いのだが、トレンドや古いヴィンテージワインの価格チェックは入念に行う。 そして、一通りワインを眺めた後に必ず行うのは、ローカルリキュール探しだ。 現地の素材を使った、ローカル感満載のリキュール類は、その地の文化とも深く繋がっているし、日本に輸出されていないことも多い。 その地方ならではのジンなども相当面白いが、最高のリキュールに出会った時の衝撃は、何物にも変え難い。 今回の旅唯一の自由時間は、到着翌朝から正午にかけてだったが、ほとんどのショップは10時以降に開店するため、実質的には最大1時間半程度しか猶予が無かった。 一応情報サイトを駆使して、ある程度の目星をつけてから動くのだが、経験上、8割はハズレだ。

梁 世柱
2023年9月21日


出会い <45> 未知の島ワイン
Masseria Frattasi, Capri Rosso 2021. 現地価格:約19,000円 過去10年間ほどを遡って、ワイン市場のトレンドを探ってみると、一つの興味深いジャンルが浮かび上がってくる。 島ワイン、だ。 栽培面積、生産量を鑑みると、特定の島ワインがトレンドになっていると言えるほどの流通量は無いため、ヨーロッパ各地の様々な島ワインを統合した、一つのジャンルとして捉えた方が実態に即しているだろうか。 ただし、このトレンドのきっかけとなったのが、イタリアのシチリア島であることは間違いない。 エトナ火山のネレッロ・マスカレーゼ(黒葡萄)とカッリカンテ(白葡萄)、ヴィットーリアを中心としたエリアのネロ・ダヴォラとフラッパート(共に黒葡萄)、そしてその量品種をブレンドしたDOCGであるCerasuolo di Vittoriaは、島ワインというマニアックなジャンルを、メインストリームに押し上げるに十分なほど、高次元で個性と品質が両立されたワインだった。 シチリア島産ワインの躍動によって、ワイン市場の最先端にいる人々の関心が、強烈に「その

梁 世柱
2023年9月18日


Wine Memo <12>
Vigne Sannite, Barbera Sannio DOP 2021. 日本ではなかなかお目にかかれない、ある種の珍品的ワインとの出会いは、海外行脚の醍醐味の一つだ。 イタリア・カンパーニャ州のサンニオ(詳しくは、今月末の特集記事にて)で出会ったのは、Sannio DOPとしてリリースされている、こちらのBarbera。 そう、カンパーニャ州のBarberaだ。

梁 世柱
2023年9月17日


再会 <45> 新時代の価値観
Lamoreaux Landing, T23 Cabernet Franc “Unoaked” 2021. ¥4800 かつてはマイナスだったものが、時代の変化によって魅力的な要素へと昇華するというのは、ワインの世界においては良くあることだ。 そのようなトレンドのサイクルは、最短だと2~3年、最長でも10年あれば回ってしまうため、つくづく、ワイン業界に身を置く人々が日常的に晒されているアップデートの重要性を痛感する。 ワイン産業全体としての情報量も昔より遥かに多いため、全世界のワイン産地を対象にして研鑽してきた私も、いよいよアップデートを行い続ける対象を取捨選択するタイミングに来ているのではと、思い悩んでもいる。 気候変動が深刻化している近年は特に、私やその上の世代のプロフェッショナルたちが、膨大な時間をかけて理解してきた、世界各地のワインとそのティピシテに関する情報が、急速に「期限切れ」となってきているため、それこそ「世界規模」の学び直しを迫られている。 なかなか厳しい状況だが、また学べるのは幸せなこと、とも言えるので、楽しみながらアップデート

梁 世柱
2023年9月10日


出会い <44> 超マイナー産地に芽吹く、若き才能
Henri Chauvet, Au Chant de la Huppe 2022. ¥7,900 「最近の若いもんは」という言葉が、私は昔も今も大嫌いだ。 若者たちのことを本気で考え、案じた上でそう言っているのなら良いのだが、実際は先達による「自己肯定」の手段以外の何ものでも無いことがほとんど。 わざわざ未来ある若者を卑下してまで美化する必要があるプライドに、何の価値があるのだろうか。 特に現代の若者(ワインの話なので、一応20~30代、としておこう)は、いわゆる「ゆとり世代」になるため、先述のような批判に極めて晒されやすいと感じている。 奇妙なことだ。 大谷翔平、羽生結弦、藤井聡太、高梨沙羅といった、各分野においてすでに歴史を書き換えるような活躍をしてきた偉大な才能たちは、皆20代で、皆ゆとり世代だ。 先人の誰もが成し遂げられなかった偉業を、あっさりと達成する若者を数多く輩出する世代こそがゆとり世代なのだから、それができなかった大人たちが、なぜ彼らを批判できるのだろうか。 先日行われた全日本最優勝ソムリエコンクールに出場していた、中村僚我、山本

梁 世柱
2023年9月3日


再会 <44> 地球の裏側で再会 Part.2
Olifantsberg, Grenache Blanc 2021. ¥4300 日本に輸入されているワインの種類(量ではない)は、世界でも間違いなくトップクラス。銘柄数に関する統計が見当たらないので正確なことはわからないが、もしかしたら世界一の可能性すらある。 しかし、そんな日本にもまだ届いていない未輸入ワインは、世界各地に星の数程存在している。 ジャーナリストとして海外産地を訪問した際に、素晴らしい品質の未輸入ワインに出会うことは良くあるのだが、私はインポーターでは無いので、情報を発信する以外にできることは、ほとんどない。 ツアーにインポーターの方々が同行している時などは、私の発見と出会いが彼らのお眼鏡に叶わないものかと、密かに期待したりしてもいるのだが、なかなかそうもならないものだ。

梁 世柱
2023年8月27日


Wine Memo <11>
Dom. Muller-Koeberle, Mobylette 2021. 俗に「ピンクワイン」と呼ばれる「ごちゃ混ぜ系ワイン」(それほど浸透している呼び名ではないが)に関しては、以前の出会い <35>でも紹介したが、今回は少し違う目線から、この特殊な新カテゴリー候補に関して考えてみようと思う。 再度、ピンクワインの定義(法的な定義はもちろん存在していない)だけは明記しておいた方が良いだろうか。 ピンクワインとは、白ワイン、ロゼワイン、オレンジワイン、赤ワインという主要4カテゴリーのワインを、それぞれ別に醸造した後にブレンドしたワイン(一応、ロゼか赤は必ずブレンドされている、としておこう)のことを意味している。

梁 世柱
2023年8月24日


出会い <43> 二人のマウレ
Il Cavallino (Sauro Maule), Oran-G 2020. ¥4,400 今から12年ほど前のこと。 NYの伝説的なトップシェフとして名高いDavid Bouleyの新店で、ヘッド・ソムリエをしていた頃の話だ。 Davidは、当時まだ完全に無名の若いアジア人ソムリエだった私を見出して、責任ある職を任せてくれた大恩人だ。 そんなDavidは正真正銘の天才(異次元の天才、という表現は彼にこそ相応しい)だったが、とてつもない「無茶振り」や「奇行」が多いことでも知られていた。 まだまだレストランのキャッシュフローが危うい段階だったのに、突然「在庫を3倍に増やせ。」と言ってきたり、セレブ層のために用意しておいた高級ワインを「このレストランの料理には合わない。」と言い出して片っ端から飲み尽くしたりと、今となっては良い思い出だが、当時はなかなか神経をすり減らす日々だった。 猛烈に忙しかったクリスマスシーズンを抜け、少し余裕が出始めた年末のある日、Davidの唐突な無茶振りが飛んできた。 「年明けに子持ち昆布を使った料理を出すから、それまで

梁 世柱
2023年8月20日


再会 <43> ブルゴーニュである理由
Dom. Georges Mugneret-Gibourg, Vosne-Romanée 2014. (市場価格:6~7万円) 少し気が重いが、今日はブルゴーニュの話をしようと思う。 修行時代、どっぷりとクラシックワインに浸かっていた私は、王道のブルゴーニュにも真正面から挑んできた。 「ブルゴーニュは好きか?」(師) 「もちろん。」(私) 「そうか。君がもし、好きじゃない、なんて言ったら、もう君をリスペクトできないところだったよ。」(師) などという、恩師とのなんとも危なっかしい会話は、今となっては一生の記憶に残る思い出だが、このエピソードは、いかにブルゴーニュがワインの世界にとって重要であるかを、物語っているとも言える。 世界各地のワインをテイスティングするようになり、プライヴェートでは、ほぼナチュラルワインしか飲まなくなった今でも変わらず、私はブルゴーニュが好きだ。 ブルゴーニュという神秘的な液体を、一人のワイン人として、最大限にリスペクトしている。 その前提の上で、あえてこう書こう。 単純な品質面で見るのであれば、ピノ・ノワールやシャルドネ

梁 世柱
2023年8月13日


Wine Memo <10>
Ito Farm, Hanamusubi Petillant 2022. 私は物持ちがかなり良い方だ。 特に、家具や家電を壊れてもいないのに買い替えることには、かなり抵抗がある。 日本に戻ってきてから10年が過ぎたが、今ある家具や家電のほとんどが、一度も買い替えられることなく(壊れた洗濯機を除く)、元気に役割を果たしている。 趣味のギター関連機材に至っては、20年以上使い続けているものも数多くある。 大豪邸に住んでいるわけでも、倉庫があるわけでも無いので、何か大きな物を買う時は、以前にあったものを捨てねばならない。 もちろん、過去には捨てたこともあるのだが、その捨てられたものがどこへ行ってどのように処理されるのか、と考えると、どうにも自分の行いが正しいと思えなくなってしまうのだ。 現代風に良く言えばSDGs、昔風に悪く言えば貧乏くさい考え方だが、私は「捨てない」方が心地良い。 同じ目線で、ワインのことを見るのもまた面白かったりする。

梁 世柱
2023年8月10日


出会い <42> 幻の極甘口
L’Arco, Recioto della Valpolicella 2017. ¥11,500 世界三大貴腐ワインといえば、フランス・ボルドーのソーテルヌ、ドイツ(主にモーゼル)のリースリングTBA、そしてハンガリー・トカイのエッセンシア。 バランスに優れた優等生的ソーテルヌ、強烈な甘味と強烈な酸のコントラストがダイナミックなTBA、グラスで普通に飲むとその高過ぎる糖分(と粘性)で、血糖値が一瞬で上がり過ぎるので、専用の小さなスプーンで「舐める」という、何とも尖りまくったエッセンシア。 三大貴腐ワインはどれもなかなか個性があって面白いのだが、ある程度生産量があるソーテルヌ以外(ディケムなどのトップシャトーを除いて)は、どれも非常に高価なワインとなる。 そもそも貴腐菌で萎んだ葡萄から、なけなしの果汁を搾り出して造るのだから、コストが上がるのは当然だが、その最も極端な例であるエッセンシアに至っては、1haの葡萄畑から最大でも1ℓ程度のワインしか造れないという、もはやビジネスとして成立しないレベルのものだ。 三大貴腐ワインの全てを体験すべき、とは流石

梁 世柱
2023年8月6日


再会 <42> The Greatest Riesling on the planet
Weingut Keller, Riesling G.G. “Oberer Hubacker Monopol” 2021. 講演でも、SommeTimesでも、プライヴェートでも、私は底なしの「リースリング愛」を包み隠さず話してきた。 もちろん、シャルドネも、ソーヴィニヨン・ブランも好きだし、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーも好きだ。 ヨーロッパ各地の土着品種にも、ネッビオーロ、サンジョヴェーゼ、テンプラニーリョといった代表的なものに限らず、好きな葡萄品種はたくさんある。 葡萄品種という括りからは外れるが、シャンパーニュだって大好きだ。 それでも、私に至上の感動を与えてくれる、魂を奥底から揺り動かしてくれる唯一無二の葡萄が、リースリングであることには変わりない。

梁 世柱
2023年7月29日


出会い <41> 知ってる人の、知らないワイン
Hervé Villemade, Cour-Cheverny Blanc “Les Acasias” 2020. ¥6,000 ワインとの出会い、といっても、様々。 筆者のように、それなりに長い期間、世界各国のワインに幅広く触れていると、さすがに、「知らない国の、知らない産地の、知らない造り手の、知らない葡萄品種のワイン」、なんてものにはなかなか出会えなくなってしまうが(そろそろ、東欧、北欧、東南アジア、中米辺りにカヴァー範囲を広げるべきか。)、私が学び始めた頃は、知らないことだらけで、記憶に残る出会いがそこら中に転がっていたものだ。 その時に出会った数々のワインとのエピソードは、今も私にとって、モチベーションの源泉であり続けている。 では、そんな私が今、どんな出会いを楽しんでいるのか。 それは、大きく分けると4つのパターンになる。 良く知った国の、知らない産地。 良く知った産地の、知らない地域。 良く知った地域の、知らない造り手。 良く知った造り手の、知らないワイン。 そう、知っているものと知らないものの組み合わせに、私は出会いと刺激を求めてい

梁 世柱
2023年7月23日


再会 <41> Remember Ahr
Meyer-Näkel, Spätburgunder G.G. “Silberberg” 2017. ヒトは忘れてしまう生き物だ。 たとえ相当ショッキングな出来事だとその瞬間には感じていても、情報がハイパースピード化した現代では、忘れるスピードもまた、加速度的に上がっている。 それこそ、9.11や3.11級の、かつ自身に馴染みのある地域で起こった出来事でも無い限り、多くの人々の記憶に焼きついて離れない、ということにはならない。 この悲しい現実は、大震災というカテゴリーについて考えると良く分かる。 6400人強の人々が犠牲になった1995年の阪神・淡路大震災のことを、まだ覚えている人はそれなりにいると思うが、28万人以上が亡くなった2004年のスマトラ島沖地震、31万人以上が亡くなった2010年のハイチ地震のことを覚えている人は、一体どれだけ日本にいるのだろうか。 それだけ多くの人が命を落とした出来事ですら、現代社会においては、芸能人のくだらないお騒がせ程度のことに、簡単に上塗りされてしまう。 世界では、もっともっと深刻な出来事が日々起こっているの

梁 世柱
2023年7月16日


Wine Memo <9>
domaine tetta, Bonbons Colorés 2021. その個性は、消すべきか、活かすべきか。 個性を研ぎ澄ました先にあるオリジナリティか、平均化の成れの果てとしての999/1000か。 人間社会に当てはめると、実にリアルな問題として浮かび上がってくるこのテーマは、ワインの世界でも、ようやくまともに議論がされるようになったのではないだろうか。 そして、その議論の構造もまた、人間社会と酷似している。 個性を尊重する社会に!(品種やテロワールの個性を大切に!)と声高に叫びながらも、現実での個性派は生きづらさ(売りやすさ、分かりやすさ)という呪縛から逃げきれていない。

梁 世柱
2023年7月11日


出会い <40> 極上のローカルワイン
Nomads Garden, Pinot Meunier 2022. ¥3,200 日本は、世界で最も成熟したワイン市場の一つだ。 文字通り、ありとあらゆるワインが入手できるとすら思えるほど、その規模と多様性は、世界でも群を抜いていると言えるだろう。 しかし、そんな日本にもまだ届いていない未知のワインが、実際には驚くほどたくさん存在している。 世界的銘醸地であり、日本でも人気が高いシャンパーニュ地方の例を挙げよう。 シャンパーニュ地方で、ワインを生産(自社栽培、買い葡萄に関わらず)して販売しているワイナリーの数は、2,100社を僅かに上回っている(栽培農家から生産者になるケースが、継続的に増えている)が、上位260社が全体の生産量の約70%を、全輸出量の約90%を担っている。 そして、2,100社強の全てが日本に輸入されているということは全く無い。 シャンパーニュ地方ほどのネームヴァリューがあっても、実態としての輸入は「全てをカヴァーする」規模には決して至らないのだ。

梁 世柱
2023年7月2日
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