La Stesa, Tasto Bianco, 2021.
教育者として仕事をしていると、「ワインを理解するために、現地(葡萄畑)に行く必要はあるのか?」という質問を受けることが良くある。
おそらく多くのワイン関係者がYesと答えるであろう質問だが、私の答えはNoだ。
私自身、世界各地のワインを、それなりの規模で網羅する形で学んできたが、実際に訪れたことのある産地は、(大きな範囲で括れば)両手で足りるくらいしかない。
むしろ、シャンパーニュ、ボルドー、ブルゴーニュなどに至っては、少々意識的に避けてきたのもあり、一度も訪れていない。
だが、それらの産地を訪れていないことが、(現実に必要なレベルでの)理解の深まりを本質的に妨げているとは、全く思わない。
理解をするために必要なのは、知識と実体験のコネクトのみであり、理解を深めるために必要なのは、そのコネクトの精度と深度となる。
つまり、正確かつアップデートされた「活きた情報」を収集し(この辺りは少々の英語力が無いと難しいかも知れないが、実際には高校一年生レベルの英語で十分。)、その情報を一方向からだけ見るのではなく、コンテクストをしっかりと意識しながら整理した上で、その知識と実体験(テイスティング)を連動させていく、という作業を真剣に繰り返せば、現地訪問など必要なくなる。