top of page
検索


Not a wine review <3>
Rockland Distilleries, Ceylon Arrack. (免税店価格:約4,900円) 一週間に渡って、ワインジャーナリストにとっては無縁の国を訪れた。 スリランカだ。 半分はヴァケーションも兼ねた旅であったが、紅茶の世界三大銘茶とされるスリランカの茶産地「ウバ」(他の二つはインドのダージリン、中国のキームン)を訪れることが、この旅の目的。 未知の異国故の様々な小トラブルにも見舞われつつ、腹を下す覚悟をしながら(日本の衛生感覚ではありえないような)ローカル店でスリランカカレーを堪能したり、アーユルヴェーダ(インド・スリランカの伝統医療だが、スパの一環としても楽しめる)でリラクゼーションの深淵に没入したり、激しくバウンスするジープに揺られながらサファリで40頭近い象の群れに遭遇したりと、ワインジャーナリストとしての旅では決して味わえない非日常を過ごすことができた。 ウバでの体験はまた別稿にてレポートさせていただくが、今回のレヴューシリーズで紹介したいのはスリランカのアラック。

梁 世柱
2024年7月21日


再会 <64> 飲み頃観測の難しさ
Rall, AVA Syrah 2020. ¥11,800 ワインの飲み頃予測に、完璧な方程式は無い。 産地(もしくは特定の葡萄畑)と葡萄品種だけで予測が成り立つなら簡単だが、実際にはヴィンテージ、造り手の特徴(特に収穫時期と醸造関連)、輸送環境、管理状況などの様々な変数が関わってくるため、極めて複雑なマトリックスとなってしまう。 ワインファンなら、せっかく手にしたボトルを最高の状態で楽しむために、飲み頃予測に「神の数式」が存在すれば、と願うのはいたって普通の思考だと思うが、百戦錬磨のトップ・プロフェッショナルであっても、本当の意味での正確無比な予測は100%に限りなく近いほど不可能と言える。 私自身も、この法的式の探究には真摯に取り組んできた一人だが、正直に申し上げると、私は数年前に諦めている。

梁 世柱
2024年7月7日


出会い <63> 環境のアロマ
Marzagana Elementales, Vita 2022. ¥8,000 ふと疑問に思った。 きっかけは、焼肉店でたらふく食べた後の、自分の衣服だった。 美味しかった記憶がすぐに蘇ってくるような、焼肉の匂いが染み付いていた。 そんなことは当たり前、と誰もが思うだろう。 そう、香りは揮発し、染み付くのだ。 生育期の葡萄畑を歩き回り、その畑から造られたワインを飲む、という経験をしたことがある人であれば、畑とワインのアロマの間に明らかな共通性を感じたことがあるのではないだろうか?

梁 世柱
2024年6月30日


再会 <63> Johannes Zillinger Part.2
Johannes Zillinger, Numen Rosé SL 2020. 偉大なロゼの探求。 私が長年取り組んできた研究テーマの一つだ。 夏に、よく冷やしてカジュアルかつリーズナブルに楽しむ。 そのシチュエーション自体は私も楽しんでいるのだが、それだけ、となると流石に違和感を隠せない。 白ワイン、赤ワイン、スパークリングワインなら、カジュアルなものから、徹底してシリアスなものまで当然のように幅広く存在し、マーケットでもしっかりと棲み分けがなされている。 オレンジワインもおおむね同様の形となりつつある。 しかし、ロゼだけはシリアスなものが極端に少ない。

梁 世柱
2024年6月23日


Not a wine review <2>
伝統深い飲み物が他文化との交流によって変化する、という現象は現代のトレンドなのかも知れない。 中には、極めてワイン的な変化をした一部の日本酒のように、(ワインとその文化に対する)憧れやコンプレックスが根底にあるとしか思えないものもあるため、全てを手放しで称賛することはできないが、新しい価値観が創造されること自体は、実にポジティヴな動きだと思う。 しかし我々は、この「新しさ」が革命なのか、進化なのか、を冷静に判断すべきではなかろうか。

梁 世柱
2024年6月22日


出会い <62> ティピシテを超えたブルゴーニュの偉大さ
Pierre-Henri Rougeot, Saint-Romain 2020. ¥9,300 気候変動、温暖化によって、伝統産地のワインが様変わりしつつあることは、SommeTimesでも度々取り上げてきた。いや、問題視してきた、と言って良いだろう。 単純な味わいの変化、という意味であれば、時代の嗜好によって、(特に1980年代以降は)これまでも10年単位で変化し続けてきたので、いまさら騒ぐようなことでもないのだが、今起こっている変化は人為的なものではなく、自然環境自体の変化がもたらしたもの、という点に大きな懸念がある。 つまり、テロワールとダイレクトに繋がったティピシテ(簡単に説明すると、「らしさ」となる。)が変わってしまっているということだ。 ワイン趣味が深まるほど、我々の多くはワインに「らしさ」を求めるものだ。 それが伝統産地の、比較的クラシックな表現のワインであれば尚更のこと。

梁 世柱
2024年6月17日


再会 <62> Johannes Zillinger Part.1
Johannes Zillinger, Parcellaire Blanc No.1 2021. オーストリアは、世界でも有数のナチュラルワイン銘醸地だ。 北海道とほぼ同じ国土面積、大阪府とほぼ同じ総人口。オーストリアはとても小さな国であるため、ここでいうナチュラルワイン銘醸地としての姿は、物量によるものではなく、圧倒的な質の高さによって獲得した評価である。 特に、Steiermark(シュタイヤーマルク)とBurgenland(ブルゲンラント)には、世界最上クラスと目されるナチュラルワイン生産者達が名を連ねる。 ルドルフ・シュタイナーがオーストリア(オーストリア=ハンガリー帝国)の生まれであることも、かの国でビオディナミ農法に真摯に取り組む造り手が相対的に多い理由の一つとなっているかも知れないが、それ以上に生真面目でやや内向的な(ここが重要なのです)国民性が、モノづくりの質を限りなく高めていると考えた方がしっくりとくる。

梁 世柱
2024年6月9日


出会い <61> 辛口フルミントの聖地
Vino Gross, Iglič 2021. 世界は広い。そしてワインの世界もまた、広大だ。 日本は世界で最も成熟したワイン市場の一つであるため、レーダーの範囲をかなり広げてさえいれば、知られざる銘醸と出会える可能性も高いが、マイナー産地ならまだしも、マイナー品種ともなると、さすがに運と導きの比重が大きくなる。 オーストリアに来てから、グリューナー=ヴェルトリーナー、リースリング、ブラウフレンキッシュ、ツヴァイゲルトなどの「メジャー系」ワインを堪能しつつも、ゲルバー・ミュスカテラー、ノイブルガーといった「マイナー系」品種も数多くテイスティングしてきたが、数多くの興味深い発見の中で一つ、少し疑問符が浮かぶ品種があった。 フルミントだ。

梁 世柱
2024年6月2日


再会 <61> ネクスト・ステージ
Botanical Life, vin-shu plus rouge 1 ~terra~ 2022. ¥3,800 良いところも、そうとは言い切れないところも含めて、ワインに対して全面的に正直であることは、私がジャーナリストとして何よりも大切にしているポリシーだ。 そのワインの良い部分だけを探そう、というアイデア自体を否定しているわけではないが、建前とお世辞を並べただけの上っ面な賞賛は、少なくともジャーナリズムではないと私は思う。 しかし、状況によっては、ある程度譲歩せざるを得なくなることも確かにある。 記事化が確定している訪問先のワインに、疑問符が多く付いてしまった時などは、まさにそうだ。 そのような経験はいくつか思いあたるが、(後悔という意味で)最も印象に残っているのは、兵庫県にあるBotanical Lifeでの出来事。

梁 世柱
2024年5月26日


Wine Memo <26>
Florian Herzog, Neuburger 2022. 約10年ぶりにウィーンを訪れている。 美しい建築物の数々、スペース感たっぷりでゴミ一つ落ちていない街並み、至るところから聞こえてくるヴァイオリンのしらべ、隣国のドイツよりも遥かに美味しい料理、ゆったりとしたペースの人々、問題なく通じる英語、そして尽きることのないワインとビール。 世界各地に好きな街があるが、ウィーンは私にとって不動の、「移住したい街ランキング」第一位だ。 成田とウィーンを結ぶ便は、ロシア上空を回避するため、14時間の長旅に。 乗り継ぎが無い分、だいぶマシな方だが、やはり現地のホテルに到着した頃には疲労困憊になっていた。 とりあえずシャワーを浴びて、一息つこうとでも思っていた矢先、先にウィーン入りしていた友人から呼び出しが入る。

梁 世柱
2024年5月24日


出会い <60> 魅惑のソレラ
Ktima Ligas, Spira NV. テロワールと葡萄品種の相性は、高品質ワインにとって最も重要な条件だが、唯一無二の絶対的なもの、というわけでもない。 例えテロワールが(最高の産地と比較して)劣っていても、スタイル的に品質が頭打ちになりやすいタイプのものでも、創意工夫次第では限界突破を果たせることが、確かにある。 とはいえ、非常に稀なケースではあるため、工夫すれば良い、というシンプルなものでもないのが難しいところ。 今回出会ったワインは、ギリシャのPellaという産地で造られている。 おそらく、Pellaのことを知っている人は、ギリシャ在住者でもない限り、ほとんどいないと思う(私も同様)が、ギリシャ第二の都市であるテッサロニキから近く、南隣は高名なNaoussaと書けば、少しはイメージが湧くだろうか。

梁 世柱
2024年5月19日


再会 <60> 南ローヌの伏兵
Domaine de Marcoux, Lirac Rouge “La Lorentine” 2021. ¥4,900 南ローヌは世界的な銘醸地だが、(少なくとも日本では)あまり理解されていない産地でもある。 この地ではChateauneuf-du-Pape(以降、CDP)の名声がずば抜けて高いため、南ローヌはCDPと「その他」のような構図になってしまっているようにすら思えるが、そのCDPですら、品種構成も土壌組成も極めて複雑なため、理解は容易ではない。 世界的な食のライト化に伴って、より軽いワインを好む風潮が強まっているのも、南ローヌにとって向かい風となっている。 最も名高いCDPは、難しい上に高価だから、気軽に試すことも難しい。 おそらく、CDPに次いで認知されているのはGigondasだと思うが、ワイン愛好家であっても、Gigondasを飲んだことがある人はかなりの少数派となるだろう。 さらに、今回の再会ワインであるLiracの赤ともなれば、ほとんどの人にとって未体験のワインとなる可能性は高い。

梁 世柱
2024年5月12日


Not a wine review <1>
Rampur, Double Cask.(免税店価格:約15,000円) 今週は「出会い」、「再会」のシリーズをお休みして、イレギュラーなレヴューをお届けしようと思う。 私は専門分野としているワインと日本酒以外にも、日常的にありとあらゆる酒類を嗜んでいるが、中でもビールとウィスキーへのこだわりが強い。 今回はSommeTimesでは初のレヴューとなるウィスキー、しかも、インド産のウィスキーが主役。 行きつけのインド料理店で、インド産ウィスキーを使ったハイボールは何度か飲んでいたので、生産していること自体は知っていたのだが、それほど良い印象をもっていたわけではなかった。 しかし、このRampur, Double Caskを飲んだ瞬間、私はインドウィスキーに対して決定的に誤った認識をもっていた事に気づかされたのだ。

梁 世柱
2024年5月5日


Wine Memo <25>
Mayer-Fonné, Riesling Grand Cru Schoenenbourg 2016. ¥7,500 アルザスのグラン・クリュは本当に難しい。 まず、51という数は明らかに多すぎる。しかも、(個人的な意見としては)その半数近くが、品質的にはグラン・クリュのステータスがかなり疑わしいのだから、信頼性がどうしても低くなる。 ブルゴーニュのグラン・クリュ群と比較するなら、アルザス・グラン・クリュの半数はプルミエ・クリュ相当といったところだろう。 平均的な面積(約34ha)が広すぎるのも問題だ。ブルゴーニュでは基本的に斜面中腹だけがグラン・クリュ認定されているのに対し、アルザスは斜面上部から下部までもれなくグラン・クリュとなるのが通例。

梁 世柱
2024年5月3日


出会い <59> 不可能を可能に
Lightfoot & Wolfville, Kekfrankos 2020. ¥4,000 ビオディナミ農法の難易度とリスクは、テロワールの条件によって大きく変動する。 同農法ではカビ系病害への対策が鬼門となるため、一般的には乾燥した地域では容易かつ低リスクとなる一方で、湿度と雨量が上がるほど、飛躍的に難度とリスクが跳ね上がる。 特に生育期に雨が多く湿度が高いエリアでは、「不可能」という声も良く聞く。 不可能というのは、概ね正しいだろう。 ビオディナミ農法の効果は、土壌の地力と葡萄樹の免疫力向上に集約されるため、基本的には品質向上を確約するタイプのものではない。

梁 世柱
2024年4月28日


Wine Memo <24>
Nyetimber, Cuvée Chérie Demi-Sec NV. 高品質かつテロワールに正直なワインでさえあれば、基本的には「なんでもあり」な私だが、それでも販売に四苦八苦するタイプのワインというのは僅かに存在する。 中でも特に、Demi-Secタイプのスパークリングがそうだ。 もはや本家本元と言えるChampagneですら、Demi-Secが絶滅危惧種と化しつつあるほど、生産量が減っているのには、ちゃんと理由があると思う。 端的に言うと、時代に合わない、のだ。 甘さを残したワインの販売難には、ドイツ、ソーテルヌ、トカイですら匙を投げはじめているのだから、辛口な味わいを求める大衆の「集の力」はそれだけ大きいと言うこと。

梁 世柱
2024年4月26日


再会 <59> どこまでも心地よい北海道ピノ
10R winery, 上幌ワイン “風” 2022. 好適品種がどうかの判断はとても難しい。 数値的に何か明確な指標があるわけでもないので、「葡萄がちゃんと熟す」という基準そのものが、実に曖昧なのだ。 私自身がその判断を行う際は、以下の4要素を基本的な考慮対象としている。 ・フェノールの熟度(不必要に未熟な味わいが生じていないかどうか) ・ミッドパレットの充実度(スカスカの味わいになっていないかどうか) ・果実味と酸とアルコール濃度のバランス(この判断が一番主観的となるだろうか) ・余韻の長さ(短く弱い余韻はあまり良くない) また、収量とその安定性、農薬への依存度といった味わい以外の要素も、現代では考慮対象とするのがスタンダードとなりつつある。

梁 世柱
2024年4月21日


出会い <58> ニュイ的ジャーマン・ピノの真打
Steintal, Spätburgunder Schlossberg G.G. 2021. 冷涼気候の中でも、特別に日当たりの良い区画だけが生み出せる、エレガンスの極地。 そして、ピノ・ノワールという品種において、その魔力が最大化されるのは、ブルゴーニュのグラン・クリュをおいて他に無かった。 過去形、なのは正しい。 もちろん、今でもブルゴーニュのグラン・クリュが特別な存在であることは変わらないのだが、酷暑と旱魃のヴィンテージが気候変動によって劇的に増えた現代では、エレガンスの最大化という一点において、疑問を抱かざるを得ないワインとなることも多い。 常軌を逸した高価格だけが、今のブルゴーニュの問題では無いのだ。 私自身、かつては遥かに手頃な価格と高い確率で出会うことができた「ブルゴーニュの魔法」を諦めきれず、ブルゴーニュ・オルタナティヴの探求に心血を注いできた。

梁 世柱
2024年4月15日


Wine Memo <23>
Geheimer Rat Dr. von Bassermann-Jordan, Deidesheimer Kieselberg Riesling Trockenbeerenauslese 2015. 世界三大貴腐ワインといえば、フランス・ボルドーのソーテルヌ、ハンガリーのトカイ、そしてドイツのリースリング・トロッケンベアレンアウシュレーゼ。 トカイの最高級品であるエッセンシアは、飲むというより「舐める」ので、比較対象にそもそもならない気もするが、極甘口ワインがたまらなく好きな私にとっての最上は、トロッケンベアレンアウシュレーゼ一択だ。 平均して8%前後のアルコール濃度、濃密極まりない甘味を、時に12g/Lを上回る凄まじい酸で中和したダイナミックかつ超多次元的なストラクチャー、糖分と合わさって強烈な粘性を生む凝縮したミネラル、桃源郷の余韻。 この地球上に、これほど甘美な液体は存在しないと、最高のトロッケンベアレンアウシュレーゼと巡り合う幸運に恵まれる度に思い知らされる。

梁 世柱
2024年4月11日


再会 <58> 幻のテロワールシャンパーニュ
Jacquesson, Vauzelle Terme 2004. 流通価格 約¥50,000~ 一番好きなワインは?という質問は非常に良く受ける。 回答にとても困る質問ではあるので、天邪鬼な私はいつも答えを変えるようにしているが、大体の場合、リースリング、シャンパーニュ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、サンジョヴェーゼ、ネッビオーロ辺りをループしているだろうか。 リースリングやネッビオーロと答えると、「なるほどね」と納得してもらえることも多いし、ピノ・ノワールと答えると大体は「やっぱりそうですか」となるが、十中八九「意外!」という反応が返ってくるのは、シャンパーニュとカベルネ・ソーヴィニヨンだ。 王道が好きで何が悪い、と思うが、別に私がシャンパーニュやカベルネ・ソーヴィニヨンを好んでいるのは王道だからではなく、その絶対的な品質故のこと。

梁 世柱
2024年4月7日
bottom of page