Sam Vinciullo, Red “Cowaramup” 2020. ¥6,800
それは2017年のこと。私は、世界各国からメルボルンに集結した総勢50名(私も含む)のソムリエに加え、オーストラリア在住のMaster of Wineや高名なジャーナリスト、数えきれないワインメーカーたちと、一週間強に渡って、ワインの海をひたすら泳いでいた。
日本に帰国してから数年間は、海外産地を巡る機会がなかなか無かったこともあったが、何よりも同世代のとびきり優秀なソムリエたちと出会え、文字通り朝から晩までワインを片手に語り尽くしたのは、生涯の思い出だ。
開放的なNYから、想像よりも遥かに閉鎖的だった東京へ移り、随分と長い間「逆カルチャーショック」に苦しんでいた当時の私にとって、メルボルンはまさに「人生を変えてくれた」場所となった。
一週間のプログラムも実に素晴らしかった。
朝から大量のシラーズをブラインドテイスティングする、などという実にサディスティックな時間もあったが、イベントを通じて供されたワインは、超大手からマイクロガレージワイナリーまでカヴァーしつつ、スタイルもクラシックからナチュラルまで超広範囲に網羅していたため、これ以上なく充実した学びの時間となったものだ。
イベント期間中は、もはや何種類のワインをテイスティングしたのかも分からないほど、日々大量のワインに接していたのだが、中でもとある造り手のワインが、あまりにも鮮烈な印象と共に、私の脳裏に焼きついた。
Sam Vinciullo。
6年もの間、私が日本への輸入実現を心待ちにしていた造り手だ。