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再会 <85> ニューワールド的カジュアル古典美
Little Giant, Coonawarra Cabernet 2022. ¥2,600 ワインを学び始めた20年と少し前のこと。 世界の銘酒とされているワインを、なけなしの稼ぎを注ぎ込んで片っ端から飲み漁っていた中で、どうにもその良さが理解できなかったワインがいくつかあった。 その中の一つが、 オーストラリア で カベルネ・ソーヴィニヨンの銘醸地 として、当時からすでに名高かった Coonawarra だ。

梁 世柱
7月1日


再会 <84> 巨大ワイナリーの超良品
Penfolds, Koonunga Hill Autmn Riesling 2023. ¥3,000 ワインを深く学んでいくにつれ、巨大ワイナリーが造るワインに対して、無意識に偏見が溜まっていってしまう人は多い。 私自身もその例外ではないのだが、どうしてもより「手作り感」のあるものに魅力を感じるようになるのは、根っからのマニア気質な私にとって、それほど違和感のあることではない。 実際、私がプライヴェートな時間に、巨大ワイナリーのワインを口にすることは、1年間でも片手で数えられる程度しかない。

梁 世柱
6月18日


再会 <78> 魅惑のオーストラリア・リースリング
Ravensworth, Regional Riesling 2022. ¥4,500 リースリング は鏡のような葡萄品種だ。 葡萄が育ったテロワールを、どこまでも素直に表現することができる。 新樽を効かせたりといった手法が全く一般的では無い のも、また良い。 余計な味付けはせず、ただただ素材の味わいを活かす 。 リースリングという葡萄が、私の心に深く響く理由は、そこにあるのかも知れない。

梁 世柱
3月16日


再会 <48> 6年越しの衝撃
Sam Vinciullo, Red “Cowaramup” 2020. ¥6,800 それは 2017年 のこと。私は、世界各国から メルボルン に集結した総勢50名(私も含む)のソムリエに加え、オーストラリア在住のMaster of Wineや高名なジャーナリスト、数えきれないワインメーカーたちと、一週間強に渡って、ワインの海をひたすら泳いでいた。 日本に帰国してから数年間は、海外産地を巡る機会がなかなか無かったこともあったが、何よりも同世代のとびきり優秀なソムリエたちと出会え、文字通り朝から晩までワインを片手に語り尽くしたのは、生涯の思い出だ。 開放的なNYから、想像よりも遥かに閉鎖的だった東京へ移り、随分と長い間「逆カルチャーショック」に苦しんでいた当時の私にとって、メルボルンはまさに「人生を変えてくれた」場所となった。 一週間のプログラムも実に素晴らしかった。 朝から大量のシラーズをブラインドテイスティングする、などという実にサディスティックな時間もあったが、イベントを通じて供されたワインは、超大手からマイクロガレージワイナリーまでカヴ

梁 世柱
2023年10月29日


再会 <46> 好適品種と不良少年
Delinquente, Weird faces series. ¥2400~2700 青森のりんご、鳥取の梨、愛媛のみかん、岡山の桃、熊本のスイカ、山形のさくらんぼ。 我々は日常的に、様々な果物で、 名産地たる優れた味わい を当たり前のように楽しんでいる。 そして、当たり前だからこそ、 すぐに忘れてしまう。見えなくなってしまう。理解することを止めてしまう 。 なぜその場所が、名産地と呼ばれるようになったのかを。 要因は多々あれど、 真理は実にシンプル だ。 その果物が、その地に適応することができたから。 それだけのことなのだ。

梁 世柱
2023年10月1日


出会い <40> 極上のローカルワイン
Nomads Garden, Pinot Meunier 2022. ¥3,200 日本は、世界で最も成熟したワイン市場の一つだ。 文字通り、ありとあらゆるワインが入手できるとすら思えるほど、 その規模と多様性は、世界でも群を抜いている と言えるだろう。 しかし、そんな日本にもまだ届いていない 未知のワイン が、実際には 驚くほどたくさん存在している 。 世界的銘醸地であり、日本でも人気が高い シャンパーニュ地方 の例を挙げよう。 シャンパーニュ地方で、ワインを生産(自社栽培、買い葡萄に関わらず)して販売しているワイナリーの数は、 2,100社を僅かに上回っている (栽培農家から生産者になるケースが、継続的に増えている)が、上位260社が全体の生産量の約70%を、全輸出量の約90%を担っている。 そして、2,100社強の全てが日本に輸入されているということは全く無い。 シャンパーニュ地方ほどのネームヴァリューがあっても、実態としての輸入は 「全てをカヴァーする」規模には決して至らない のだ。

梁 世柱
2023年7月2日


再会 <28> ビオディナミとワインの因果関係
Hochkirch, Pinot Noir “Maximus” 2019. ¥6,800 Cause and Effect 。小難しい日本語に訳すと、「 因果関係 」とでもなるだろうか。 ワインという「 結果 」と、そこに至るまでのプロセスである「 要因 」の間には、確かに因果関係が認められるケースが多い。ブルゴーニュに、バローロに、リオハに、ナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンに宿る「あの味」の後ろ側には、Cause and Effectが、まるで黄金の方程式が如く存在しているのだ。 しかし、この因果関係は、往々にして 巨大な誤解の温床 となっている。 その理由はただ一つ。 本来、要因と結果の関係性は極めて複雑であるにも関わらず、我々の多くが、自らに都合の良い(理解しやすい)情報だけを切り取って、パズルのピースが全然足りていなくても、必死にその限定された因果関係を正当化しようとしてしまうから だ。 有名産地のワインだから美味しい。 有名生産者のワインだから美味しい。 高価なワインだから美味しい。 などというのは、その最たる例で、要因がそもそ

梁 世柱
2023年1月8日


バロッサ・ヴァレーのイメージを覆すYelland & Papps 〜ミニマム・インターヴェンションの要「適地適品種」のブドウ〜
オーストラリア、バロッサ・ヴァレーのニュースターYelland & Pappsイエランド・パップス。 スーザンとマイケルのカップルが手掛けるワインは、日本入荷がまだ昨年10月に始まったばかり。生産量もとても少ないので、見かけたらぜひ飲んでみて欲しいワインを今回はご紹介します...

SommeTimes特別寄稿
2022年10月20日


再会 <16> ピラジンの何が悪いのか
Latta, Cabernet Franc “Benovolent” 2021. ¥5,500 ワインプロフェッショナルと一口に言っても、様々なタイプの人がおり、当然のようにそれぞれ異なったフィロソフィーをもっている。 私自身は基本的には非常にオープンなタイプだが、ある特定の考え方に対しては、頑なな態度を見せることも少なからずある。 例えば、ブルゴーニュ、ボルドー、シャンパーニュ、バローロ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、リオハ、プリオラートといった世界最高峰の銘醸地に対して、全くリスペクトをもっていないタイプのワインプロフェッショナルとは、どうも馬が合わない。 意外といるものだ。カリフォルニア至上主義とか、ゴリゴリのナチュラル至上主義とか、なかなかに偏った人たちが。 ワインの世界は広いから楽しいのに 、と何とももどかしい気持ちになる。 それが本人の「好み」なのであれば、何の問題も無いのだが、ワインのことを他者に伝える立場として、「カリフォルニアのピノ・ノワールは、ブルゴーニュよりも遥かに優れている。」なんて堂々と発言してしまうのは、流石にどう

梁 世柱
2022年7月10日


祝福の鐘は、葡萄畑から鳴り響く <オーストラリア・クラフト・ワイン特集:後編>
過ちを正すのは難しいことではない。だが、正したことを理解してもらえるかは、全く別の問題だ。「 他人の不幸は蜜の味 」という底知れぬ悪意は、カソリック教会における「 七つの罪源 」や、ダンテの叙事詩「 神曲 」などにおいて、人を罪へと導くものとして常に描かれてきたように、残念ながら、人という種にとって、極めて自然発生的なものだ。だからこそ、 消し去りたい過去ほど、他者によって消えない烙印のように刻まれてしまう 。だからこそ、「農」のワインであれば許されたはずの失敗は、「人」のワインであったが故に、許しを得る可能性が著しく制限されてしまった。 だが、それで良いのだろうか。失敗した人間の成長を認められないほど、人の心に善と許しは無いのだろうか。 決して違う、と私は信じていたい。 悪意ではなく、善意でもって、受け止めて欲しい 。 オーストラリアの、 自然を愛する造り手たちの想いと、結果に対する責任を 。 矛盾からのそれぞれの脱出 極端な醸造的欠陥が生じたワインは、テロワールを表現する能力を失う 。葡萄畑のありのままの自然な姿を表現しようという想いが暴走し

梁 世柱
2022年1月31日


再会 <6> 違いを知り、追求するという楽しさ
William Downie, Pinot Noir “Baw Baw Shire” 2018. ¥10,000 世界中のワイン、産地、品種、造り手に日々めまぐるしく接していると、どうしても 「小さなマイブーム」の波 が生じてしまい、特定のワインに集中的に接する時期がある一方で、しばらく接することがなくなるワインも出てきます。 特にマイナー産地、マイナー品種のような特殊性の高いワインは、公平公正がポリシーの筆者であっても、一過性の興味から抜け出せないことが少なくありません。 いや、本音で言うと、そういったワインの追求をもっともっと深いところまでやりたいのですが、そもそも造り手も生産量も少なく、俯瞰して比較しながらの検証がとても難しいという実情があります。特定の造り手の、見知らぬ品種を使った特殊なワイン、というのは飲む分には最高に楽しいのですが、その産地と品種の相性や、浮かび上がってくるテロワールの個性を知るには、どうしても不十分になってしまいます。 さて、筆者のそんなストレスをいつも軽快に吹き飛ばしてくれる品種こそ、 ピノ・ノワール です。...

梁 世柱
2022年1月29日


栄光の落日 <オーストラリア・クラフト・ワイン特集:前編>
2015年頃から約3年間、熱狂していたと言っても決して大袈裟ではないワインが、私にはあった。一人のプロフェッショナルとして、常に公正公平であれるようにと、 ワインと造り手に対して感情移入することを徹底して避けてきた 筆者にとって、それは 極めて例外的な出来事 だった。どこか 停滞感 が漂っているように感じていた オーストラリア という国に、突然変異的に発生した、底抜けに明るく、親しみやすく、どこまでも人懐っこいワインたち。ヨーロッパ伝統国ではすでに一大勢力となりつつあったナチュラル・ワインとはどこか違う雰囲気を纏った、未知の魅力に溢れたワインに、私はまさに虜になった。新しいワインを試すたびに、驚きと発見がある。ワインそのものも、それらのワインを使ったペアリングも、私の知的好奇心を、これでもかと刺激した。だが、私と オーストラリア・クラフト・ワイン の蜜月の日々は、長続きしなかった。 本特集では、筆者がなぜオーストラリア・クラフト・ワインに熱狂し、激しく失望し、数年を経て、また愛するようになったのかを、パーソナルな視点と客観的な視点を織り交ぜながら

梁 世柱
2022年1月15日


オーストラリアワインの多様性と可能性
Australian Food & Beverage Showcase Japan ブラインド・テイスティング オーストラリアは広い。 国土面積では世界6位。ヨーロッパがほぼすっぽりと入ってしまう大きさ。 だからオーストラリアのワインは多様だ。...

別府 岳則
2021年12月7日


偉大なる難曲の名を冠したワイナリー「ジャイアント・ステップス」
ジャイアント・ステップスとは、1960年に、ジャズ史上最高の天才と評されるサクソフォーン奏者ジョン・コルトレーンが発表したオリジナル曲であり、同名のアルバムでもある。ジャイアント・ステップスは、長3度という当時では非常に珍しかった転調を16小節の1コーラス間に10度も繰り返...

梁 世柱
2021年12月3日


Rockford=粋なオージーワイン
このコラムでは、私が粋(Iki=生=活)と感じるワインを色々と紹介させていただきたいと思っております。 このワインは今注目のワインでも、頻繁に話題に出てくるようなワイナリーでもありません。しかし、多くのワイン有識者を虜にして離さないワインであり、それが意外と語られることがな...

SommeTimes特別寄稿
2021年10月8日


オーストラリアワイン市場の現状への思い
現在、期間限定でフリーの仕事をさせて頂いている関係で、友人のオーストラリアワインインポーターの販促を手伝う事となり、とりあえず自宅のあるさいたま市のワインショップや酒屋を中心に、リサーチを兼ねて出来る限りお店を回らせていただいたのですが、オーストラリアワインに対する認識や知...

SommeTimes特別寄稿
2021年8月13日


葡萄を知る <5> ピノ・ノワール:New World後編
New World後編では、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、そして日本のピノ・ノワールに関して学んでいきます。

梁 世柱
2021年1月10日
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