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SommeTimes’ Académie <149>(イタリア・トレンティーノ=アルト・アディジェ州2: Trentino白)
前回は、Alto Adigeの白に関して学んでいきました。 Alto Adigeでは、標高差と谷の複雑さが、多品種の白ワインを多彩に展開させています。 Pinot Bianco、Gewürztraminer、Sauvignon Blanc、Kerner、Riesling。 品種ごとに居場所が与えられ、まるで山肌に細かな布を縫い合わせるように、白ワインの地図が作られていく産地がAlto Adigeです。 一方、南側のTrentinoに目を向けると、白ワインの見え方も少し変わってきます。 もちろん、ここにも多くの白品種がありますが、Trentinoの白を理解するうえで、特に重要になるのは、地場品種の Nosiolaです。 そして、山岳地帯の Müller-Thurgauや国際品種がその脇を固めています。 Alto Adigeが、多品種の精密なパッチワークだとすれば、Trentinoでは、谷、湖、風、斜面といった具体的な地形が、品種ごとの個性をもう少し大きなまとまりの中で支えていきます。

梁 世柱
7月21日


出会い <108> 良いテーブルワイン
山田堂, Bulles 2025. 北海道余市の新世代を語る時、どうしてもスター生産者の系譜や、ピノ・ノワールの可能性や、日本ワインの未来といった大きな言葉を使いたくなる。 だが、それはまるで同調圧力のように、造り手に重くのしかかってしまうことなのかもしれない。 偉大なワインではなく、良いテーブルワインで構わないじゃないか。 そう言えるだけの余白を、私たちは持っていた方がいいのだろう。 もちろん両者は、似ているようで少し違う。

梁 世柱
7月18日


田楽味噌とのペアリングを極める
田楽味噌の「田楽」は、田植えや豊作祈願に関わる歌舞から生まれ、平安時代に芸能として広まった「田楽舞」に由来するといわれている。 白い袴を身につけ、竹馬のような一本足の「高足」に乗って踊る田楽法師。 その姿が、串に刺して焼いた白い豆腐に似ていたことから、豆腐の串焼きを「田楽」と呼ぶようになったそうだ。 室町時代には、串に刺した豆腐に味噌を塗って焼く「豆腐田楽」が広まり、江戸時代になると、砂糖やみりんなどを加えた甘い練り味噌も用いられるようになった。 やがて、豆腐だけでなく、こんにゃく、なす、里芋なども使われるようになる。 甘い味噌を塗って焼く料理として、田楽は庶民の食卓に深く根を下ろしていった。 それとともに、「田楽」という言葉が指す料理の範囲も、少しずつ広がっていった。 現代における田楽味噌とは、味噌に砂糖やみりん、酒などを加え、火にかけながら練り上げた甘い味噌のことを指す。

梁 世柱
7月17日


権威があなたを裏切った日-ミシュラン・グレープ-
Michelin Guideが、ブルゴーニュの生産者に対する新たな格付けを発表した。 案の定、発表直後から議論が噴出した。 反応を、少し乱暴にまとめてしまえば、こんなところだ。 「あのドメーヌが、この位置なのはおかしい。」 「昔から偉大とされてきた生産者が、なぜ名前も知らないドメーヌより下なのか。」 「こんな格付けは信用できない。ミシュランも地に落ちた。」 一方で、Domaine Arnoux-Lachauxは、少し違う角度から異議を唱えた。 近年、ミシュランを受け入れず、プレスにもワインを提示していないにもかかわらず、現在のドメーヌを何に基づいて評価したのか。 順位ではなく、評価へ至るプロセスを問い、掲載の削除を求めた。 この二つは、同じ反論ではない。 一方は、プロセスへの問いである。 もう一方は、自分の記憶と違う、という不満だ。

梁 世柱
7月15日


SommeTimes’ Académie <148>(イタリア・トレンティーノ=アルト・アディジェ州1: Alto Adige白)
イタリア北東部、オーストリアと国境を接する山岳地帯に、トレンティーノ=アルト・アディジェ州 があります。 この州のワインを理解するうえで、最初に大切なのは、州名を一つの塊として見すぎないことです。 行政上は一つの州ですが、ワインの流れは大きく二つに分けて考えると分かりやすくなります。 南側の Trentino。 そして北側の Alto Adige。ドイツ語圏の文脈では、Südtirol とも呼ばれる地域です。 Trentinoは、地場品種と山岳ワイン文化が色濃く残る地域。 一方のAlto Adige は、ドイツ語圏文化の影響を帯びながら、多品種の白と赤を細かく展開するアルプスの産地です。 この二重性を理解することこそが、トレンティーノ=アルト・アディジェを学ぶ最初の入口になります。 第一回では、Alto Adigeの白から学んでいきます。 Alto Adige / Südtirol D.O.C. 多品種で見る、アルプスの白 主な白品種:Pinot Bianco、Pinot Grigio、Chardonnay、Sauvignon...

梁 世柱
7月14日


再会 <108> 超現代的リースリング
Weingut Hermann Dönnhoff, Niederhäuser Klamm Riesling Kabinett 2022. トレンドは、一直線には進まない。 ある方向へ勢いよく進み、やがて飽和する。 すると、人々は突然その価値に疑問を抱き始める。 あまりにも使い回された「絶対」は、やがて退屈に変わる。 だから流行は揺り戻す。 しかし、その揺り戻しは、単なる逆走ではない。 過去へ戻るように見えて、実際には少し違う場所へ着地している。 一度獲得した知識や技術、美意識を身体のどこかに残したまま、かつての価値をもう一度見直す。 だから、二度目に現れる「昔」は、最初の昔とは別物だ。

梁 世柱
7月11日


ガスパチョの夏感を活かすペアリング
夏の定番料理として知られる、ガスパチョ。 よく冷えたガスパチョを口に含んだ瞬間に感じるのは、火を通さない野菜だけが持つ、少し荒い生命感だ。 トマトの酸味、きゅうりの青さ、ピーマンの青苦さ、玉ねぎの辛み、にんにくの強さ。 そこにオリーブオイルのなめらかさと、ヴィネガーの鋭い酸が重なる。 ガスパチョは、単なる冷たいトマトスープではない。 むしろ、サラダが液体になった料理だ。 夏野菜を噛む代わりに、飲む。 冷たさはすっと身体に入り、酸は乾いた喉を刺激し、青い香りが鼻の奥に抜けていく。 ここには、夏の食欲を無理に奮い立たせるような強さはない。 むしろ逆だ。 暑さで気だるくなった身体を、少しずつ軽い方向へ戻してくれる。 火を使った料理のように香ばしさで引っ張るのではなく、生の野菜が持つ水分と酸で、食卓に涼風を運んでくる。 ガスパチョは軽やかだが、決して単純ではない。 爽快感の中に潜む、少しだけ攻撃的な尖り。 そこをしっかりと捉えないと、ペアリングは成功しない。

梁 世柱
7月10日


難しい言葉の甘い香り
ワイン業界は、なぜこんなにも難しい言葉を愛してしまうのか。 ミネラル。テンション。エネルギー。 透明感。躍動感。垂直性。 そしてテロワール。 もちろん、それらの言葉がすべて無意味だと言いたいわけではない。 むしろ、私はその多くを日常的に使っている。 ミネラルという言葉に助けられたことは何度もあるし、テンションという一語でしか掴めない質感もある。 エネルギーという表現でなければ伝えきれない、液体の中の妙な動きも確かに存在する。 そして、テロワールは幻想ではなく、現実に作用しているものだと信じている。 だからこれは、外側から石を投げるための文章ではなく、かなり内側にいる人間としての、自戒である。 問題は、難しい言葉そのものではない。 本当の問題は、その言葉が誰に届くのかを、こちらが考えなくなった瞬間から始まる。

梁 世柱
7月9日


SommeTimes’ Académie <147>(イタリア・アブルッツォ州5: Tullum)
アブルッツォ白の支流 Terre Tollesi / Tullum D.O.C.G.で知る、PecorinoとPasserina アブルッツォ州の白ワインを学ぶとき、まず押さえるべき呼称は Trebbiano d’Abruzzo D.O.C. です。 ただし、この州の白はTrebbianoだけではありません。 より小さな範囲の中で、PecorinoとPasserinaという別の白葡萄に光を当てるD.O.C.G.があります。 それが、Terre Tollesi / Tullum D.O.C.G. です。 Tullumは、キエーティ県Tolloに限られた小さなD.O.C.G.。 決して目立つ存在ではありませんが、アブルッツォの土着白品種を理解するうえでは、見落としたくない存在です。

梁 世柱
7月7日


出会い <107> 地場ワインの特設ステージ
Garofoli, Verdicchio dei Castelli di Jesi Classico Superiore “Serra Fiorese” 2021 長い年月、食卓を共にしてきた、同郷のワインと食を組み合わせる。 クラシックペアリングの大原則がもつ魅力は、美食的完成度だけではない。 郷土ペアリングという強固な文脈は、時に、ややマイナーなワインにさえ、強い光を当てる。 何かのきっかけがなければ、強い興味も関心も持たなかったかも知れないようなワインが、当たり前のように目の前にある。 そういう状況を、簡単に生み出すことができてしまうのだ。

梁 世柱
7月5日


水茄子を美味しく味わうペアリング
初夏を彩る食材の一つ、水茄子。 その魅力は、名前の通り、水にある。 もちろん、ただ水分が多いというだけではない。 水茄子を口に入れた瞬間に感じるのは、夏そのものが弾けるような瑞々しさだ。 皮は薄いが、張力がある。 パリッとしたファーストアタックのあと、食感はすぐにやわらかくなる。 もう一段深く噛むと、細胞の奥に抱え込んでいた水分がジュッとあふれ、青い香りとほのかな甘みが舌の上に広がる。 どこか火を待っている気配がある普通の茄子とは、あまりにも異なる野菜だ。

梁 世柱
7月3日


親愛なる純米酒愛好家へ
日本酒の世界には、純米酒以外を認めない人々がいる。 皮肉を込めて、あえて純米酒原理主義者と呼ぼう。 純米酒が好きだというだけなら、何の問題もない。 米と米麹と水だけで造られた酒の「純粋さ」に魅力を感じる。 醸造アルコールを使った酒よりも、純米酒の旨味、ふくらみ、やさしさを好む。 その気持ちは十分すぎるほど理解している。 そもそも、酒の好みは自由だ。 純米酒だけを飲む自由もある。 純米酒だけを扱う店があってもいい。 純米酒に造り手の思想を見出し、そこに深く共感する飲み手がいてもいい。 私が問題視しているのは、そこではない。 問題は、純米酒への嗜好が、いつの間にか他の酒を裁くための木槌に変わることだ。

梁 世柱
7月2日


SommeTimes’ Académie <146>(イタリア・アブルッツォ州4: Trebbiano)
奥深いグラデーションで魅せるアブルッツォの白 アブルッツォ州のワインにとって、Montepulcianoから造られる赤やロゼの存在感はとても大きなものですが、この州にはもう一つの重要な存在があります。 Trebbiano d’Abruzzo D.O.C. です。 Trebbianoという名前には、どうしても軽く、時に薄い日常的な白、あるいは大量生産的な白という印象がつきまといます。 実際、イタリア各地でTrebbianoの名を持つ葡萄やワインは広く見られ、すべてが個性的な白として語られるわけではありません。 しかし、Trebbiano d’Abruzzoは、それだけで片付けるには惜しいほど、優れたポテンシャルを有するワインです。

梁 世柱
6月30日


再会 <107> プレミアムカジュアルという違和感
Domaine Atsushi Suzuki, Passetoutgrain 2019. 現在、北海道余市において、Domaine Takahikoに次ぐスター生産者は?と問われると、多くの人がこの名を挙げるだろう。 Domaine Atsushi Suzuki。 北海道余市町登町に拠点を置く小規模ワイナリーで、造り手は鈴木淳之。 Domaine Takahikoで研修を積んだのち、2010年代半ばに独立した。 畑と醸造の規模は大きくないが、その経歴と、注目度の高い余市という産地性も相まって、日本ワイン愛好家の間では早くから注目されてきた存在だ。 畑は余市町登町にあり、ケルナー、ツヴァイゲルト、ミュラー・トゥルガウ、ピノ・ノワールなどを栽培している。 冷涼な気候を背景に、力強さよりも調和を重視したワイン造りが特徴的だ。 醸造所には、かつてリンゴの貯蔵庫として使われていた札幌軟石の石蔵を改装した建物が用いられており、余市という土地の農業的な背景ともつながりを持つワイナリーである。

梁 世柱
6月27日


カキフライと変化球ペアリング
カキフライは、オムライス、ハンバーグ、ナポリタンなどと並ぶ、日本の洋食を代表するメニューの一つ。 実は、牡蠣という食材そのものは、日本で古くから親しまれてきた。 一方で、パン粉をまとわせ、油で揚げ、レモンやタルタルソース、ウスターソースと一緒に食べるカキフライは、明治以降の洋食文化の中で育った料理だ。 タルタルのふわっとした感触の直後にくる外側の衣は、サクッと香ばしい。 内側はふっくらと熱を帯び、噛んだ瞬間に、牡蠣の旨味と潮の香りがじゅわっと広がる。 カキフライの魅力は、そのドラマチックな食感と風味の展開にこそあると私は思う。

梁 世柱
6月26日


水を差すジャーナリズム
どんなワインを造っても、それは造り手の自由。 どんなワインを好きだと言っても、それは飲み手の自由。 どんなワインにこだわって販売しても、それは売り手の自由。 その通りだ。 まったく、その通りだと思う。 ワインは、解答の用意された試験ではなく、誰かの好みを裁判所に引きずり出すような飲み物でもない。 それぞれがもつ「選択の自由」に外側から手を突っ込み、「これは正しい」「これは間違っている」と乱暴に決めつけることは、たしかに傲慢だ。 だが、問題はその先にある。 自由は、否定されるべきものではない。 しかし、自由を印籠のように掲げれば、すべての問いから逃れられるわけでもない。

梁 世柱
6月25日


SommeTimes’ Académie <145>(イタリア・アブルッツォ州3:Cerasuolo)
中部イタリアを代表するロゼの名品 アブルッツォ州の赤ワインを語るうえで、最も重要な葡萄は Montepulciano です。 そして、そのMontepulcianoから造られるワインの代表格としては、Montepulciano d’Abruzzo D.O.C. が挙げられますが、アブルッツォ州において、この葡萄にはCerasuolo d’Abruzzo D.O.C. という全く別の重要な表現があります。 Cerasuolo d’Abruzzoは、Montepulcianoから造られるロゼ(イタリア語では、ロザート)です。 ただし、淡く軽やかなロゼを想像すると、少し違います。 色はしっかりと濃く、果実味が豊かで、ロゼでありながら赤ワインに近い厚みを感じることもあります。 つまりCerasuolo d’Abruzzoは、淡く爽やかなロゼではなく、Montepulcianoの色、果実味、軽いタンニンを受け止めた、力強いロゼです。

梁 世柱
6月23日


出会い <106> 名声の中に
Ramiro Ibáñez, UBE Caserío de Miraflores Alta 2024 ここ十数年、スペインワインの地図はずいぶん忙しくなった。 かつてはリオハ、リベラ・デル・ドゥエロ、プリオラート、リアス・バイシャスあたりを押さえておけば、ひとまず話が通じた。 だが今はそう簡単ではない。 世界を驚かせたビエルソの赤、地中海の熱と野性を抱えたカタルーニャ、高標高と古木が生むグレドスの赤、火山島が育む強烈な個性をまとったカナリア諸島。 次々と新たなスター産地候補が、スマッシュヒット的に登場している。 しかし、日本ではまだ話題になりきっていない、隠れた存在が一つある。 アンダルシアだ。

梁 世柱
6月20日


バインセオと夏系ペアリング
バインセオを知っているだろうか。 バインセオは、南部ベトナムを代表する、非常にポピュラーな料理。 日本では、ときに「ベトナム風お好み焼き」のように紹介されるが、見た目も食べ方もたいして似ていないので、個人的にはあまり好きな呼び方ではない。 バインセオはまず、米粉を溶いた生地を薄く焼き、豚肉や海老、もやしなどを包み込む。 生地にはターメリックが加えられることが多く、鮮やかな黄色に焼き上がる。 薄く焼かれた米粉の皮は、パリッと香ばしく、軽い。 そこに豚肉の脂、海老の甘み、もやしのみずみずしさという異要素が、完璧な調和で重なる。

梁 世柱
6月19日
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