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再会 <43> ブルゴーニュである理由
Dom. Georges Mugneret-Gibourg, Vosne-Roman é e 2014. (市場価格:6~7万円) 少し気が重いが、今日は ブルゴーニュ の話をしようと思う。 修行時代、どっぷりとクラシックワインに浸かっていた私は、王道のブルゴーニュにも真正面から挑んできた。 「ブルゴーニュは好きか?」(師) 「もちろん。」(私) 「そうか。君がもし、好きじゃない、なんて言ったら、もう君をリスペクトできないところだったよ。」(師) などという、恩師とのなんとも危なっかしい会話は、今となっては一生の記憶に残る思い出だが、このエピソードは、 いかにブルゴーニュがワインの世界にとって重要であるか を、物語っているとも言える。 世界各地のワインをテイスティングするようになり、プライヴェートでは、ほぼナチュラルワインしか飲まなくなった今でも変わらず、私はブルゴーニュが好きだ。 ブルゴーニュという神秘的な液体を、一人のワイン人として、最大限にリスペクトしている。 その前提の上で、あえてこう書こう。 単純な品質面で見るのであれば、ピノ・ノワール

梁 世柱
2023年8月13日


Wine Memo <10>
Ito Farm, Hanamusubi Petillant 2022. 私は物持ちがかなり良い方だ。 特に、家具や家電を壊れてもいないのに買い替えることには、かなり抵抗がある。 日本に戻ってきてから10年が過ぎたが、今ある家具や家電のほとんどが、一度も買い替えられることなく(壊れた洗濯機を除く)、元気に役割を果たしている。 趣味のギター関連機材に至っては、20年以上使い続けているものも数多くある。 大豪邸に住んでいるわけでも、倉庫があるわけでも無いので、何か大きな物を買う時は、以前にあったものを捨てねばならない。 もちろん、過去には捨てたこともあるのだが、 その捨てられたものがどこへ行ってどのように処理されるのか 、と考えると、どうにも自分の行いが正しいと思えなくなってしまうのだ。 現代風に良く言えば SDGs 、昔風に悪く言えば 貧乏くさい 考え方だが、私は「捨てない」方が心地良い。 同じ目線で、 ワインのことを見る のもまた面白かったりする。

梁 世柱
2023年8月10日


出会い <42> 幻の極甘口
L’Arco, Recioto della Valpolicella 2017. ¥11,500 世界三大貴腐ワイン といえば、フランス・ボルドーの ソーテルヌ 、ドイツ(主にモーゼル)のリースリング TBA 、そしてハンガリー・トカイの エッセンシア 。 バランスに優れた優等生的ソーテルヌ、強烈な甘味と強烈な酸のコントラストがダイナミックなTBA、グラスで普通に飲むとその高過ぎる糖分(と粘性)で、血糖値が一瞬で上がり過ぎるので、専用の小さなスプーンで「舐める」という、何とも尖りまくったエッセンシア。 三大貴腐ワインはどれもなかなか個性があって面白いのだが、ある程度生産量があるソーテルヌ以外(ディケムなどのトップシャトーを除いて)は、どれも 非常に高価なワイン となる。 そもそも貴腐菌で萎んだ葡萄から、なけなしの果汁を搾り出して造るのだから、コストが上がるのは当然だが、その最も極端な例である エッセンシア に至っては、 1haの葡萄畑から最大でも1 ℓ程度のワインしか造れないという、もはやビジネスとして成立しないレベルのものだ。...

梁 世柱
2023年8月6日


再会 <42> The Greatest Riesling on the planet
Weingut Keller, Riesling G.G. “Oberer Hubacker Monopol” 2021. 講演でも、SommeTimesでも、プライヴェートでも、私は底なしの 「リースリング愛」 を包み隠さず話してきた。 もちろん、シャルドネも、ソーヴィニヨン・ブランも好きだし、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーも好きだ。 ヨーロッパ各地の土着品種にも、ネッビオーロ、サンジョヴェーゼ、テンプラニーリョといった代表的なものに限らず、好きな葡萄品種はたくさんある。 葡萄品種という括りからは外れるが、シャンパーニュだって大好きだ。 それでも、私に至上の感動を与えてくれる、魂を奥底から揺り動かしてくれる唯一無二の葡萄が、リースリングであることには変わりない。

梁 世柱
2023年7月29日


出会い <41> 知ってる人の、知らないワイン
Herv é Villemade, Cour-Cheverny Blanc “Les Acasias” 2020. ¥6,000 ワインとの出会い、といっても、様々。 筆者のように、それなりに長い期間、世界各国のワインに幅広く触れていると、さすがに、 「知らない国の、知らない産地の、知らない造り手の、知らない葡萄品種のワイン」 、なんてものにはなかなか出会えなくなってしまうが(そろそろ、東欧、北欧、東南アジア、中米辺りにカヴァー範囲を広げるべきか。)、私が学び始めた頃は、知らないことだらけで、記憶に残る出会いがそこら中に転がっていたものだ。 その時に出会った数々のワインとのエピソードは、今も私にとって、 モチベーションの源泉 であり続けている。 では、そんな私が今、どんな出会いを楽しんでいるのか。 それは、大きく分けると4つのパターンになる。 良く知った国の、知らない産地。 良く知った産地の、知らない地域。 良く知った地域の、知らない造り手。 良く知った造り手の、知らないワイン。 そう、 知っているものと知らないものの組み合わせ に、私は出会い

梁 世柱
2023年7月23日


再会 <41> Remember Ahr
Meyer-Näkel, Spätburgunder G.G. “Silberberg” 2017. ヒトは忘れてしまう生き物だ。 たとえ相当ショッキングな出来事だとその瞬間には感じていても、情報がハイパースピード化した現代では、忘れるスピードもまた、加速度的に上がっている。 それこそ、9.11や3.11級の、かつ自身に馴染みのある地域で起こった出来事でも無い限り、多くの人々の記憶に焼きついて離れない、ということにはならない。 この悲しい現実は、大震災というカテゴリーについて考えると良く分かる。 6400人強の人々が犠牲になった1995年の阪神・淡路大震災のことを、まだ覚えている人はそれなりにいると思うが、28万人以上が亡くなった2004年のスマトラ島沖地震、31万人以上が亡くなった2010年のハイチ地震のことを覚えている人は、一体どれだけ日本にいるのだろうか。 それだけ多くの人が命を落とした出来事ですら、現代社会においては、芸能人のくだらないお騒がせ程度のことに、簡単に上塗りされてしまう。 世界では、もっともっと深刻な出来事が日々起こっているの

梁 世柱
2023年7月16日


Wine Memo <9>
domaine tetta, Bonbons Color é s 2021. その個性は、消すべきか、活かすべきか。 個性を研ぎ澄ました先にある オリジナリティ か、平均化の成れの果てとしての 999/1000 か。 人間社会に当てはめると、実にリアルな問題として浮かび上がってくるこのテーマは、ワインの世界でも、 ようやくまともに議論がされるようになった のではないだろうか。 そして、その議論の構造もまた、人間社会と酷似している。 個性を尊重する社会に!(品種やテロワールの個性を大切に!)と声高に叫びながらも、現実での個性派は生きづらさ(売りやすさ、分かりやすさ)という呪縛から逃げきれていない。

梁 世柱
2023年7月11日


出会い <40> 極上のローカルワイン
Nomads Garden, Pinot Meunier 2022. ¥3,200 日本は、世界で最も成熟したワイン市場の一つだ。 文字通り、ありとあらゆるワインが入手できるとすら思えるほど、 その規模と多様性は、世界でも群を抜いている と言えるだろう。 しかし、そんな日本にもまだ届いていない 未知のワイン が、実際には 驚くほどたくさん存在している 。 世界的銘醸地であり、日本でも人気が高い シャンパーニュ地方 の例を挙げよう。 シャンパーニュ地方で、ワインを生産(自社栽培、買い葡萄に関わらず)して販売しているワイナリーの数は、 2,100社を僅かに上回っている (栽培農家から生産者になるケースが、継続的に増えている)が、上位260社が全体の生産量の約70%を、全輸出量の約90%を担っている。 そして、2,100社強の全てが日本に輸入されているということは全く無い。 シャンパーニュ地方ほどのネームヴァリューがあっても、実態としての輸入は 「全てをカヴァーする」規模には決して至らない のだ。

梁 世柱
2023年7月2日


再会 <40> のんびりヌーヴォーの価値
Remi Dufaitre, Beaujolais Villages Nouveau 2022. ¥3000 11月の第3木曜日午前0時。 1985年の制定以降、 ボジョレー・ヌーヴォーの解禁 を祝う瞬間として長年親しまれてきた、 日本ワイン市場最大規模のイベント である。 近年はその盛り上がりも 右肩下がりの傾向 にはあったが、 決定的な転機が2022年 に訪れたことを、記憶している人も多いだろう。 ロシアによるウクライナ侵攻が直接的な要因となって発生した 燃料危機 に伴い、 現地での物価と空路での輸送費が高騰 した結果、2022年度のボジョレー・ヌーヴォー輸入量は、前年比45%減ともされる量にまで落ち込んだ。 この数値は、サントリー社の統計によると、ピークを記録した2004年と比べると、なんと85%減にもなるとのことだ。 さらに、価格の高騰を押し切って輸入されたボジョレー・ヌーヴォーは、解禁日から半年以上経った現在でも叩き売りされている光景を頻繁に目にする。 生産者は輸出量減に苦しみ、インポーターは利益の圧縮に苦しみ、酒販店は在庫過多に苦しみ

梁 世柱
2023年6月25日


Wine Memo <8>
Fermier, Kerner 2022. 私がNYでソムリエ修行を始めて間もない頃は、とにかく手探りで勉強をしていた。 元々は必要に駆られてのことだったが、幼少からの「ハマり症」が功を奏したのか、分厚いワイン教本を読み漁る日々は苦痛ではなく、むしろこの上なく私の知識欲を満たしてくれた。 もちろん、当時まだ学生だった私には、ワインスクールに通うような余裕は全くなく、ひたすら独学で学んでいた。 今は私自身が教育者となり、「あの頃にスクールで体系的に学べていれば」と思うことも少なからずあるが、(随分と遠回りにはなったものの) 教えて貰わなかったこと自体は、結果的に良かった と思っている。 自分で考え、感じ取り、理解する力 を、ゆっくりと養うことができたからだ。 今回は、私がNYの日本酒バーで働いていた頃のエピソードを、一つ紹介しようと思う。 当時はまだ、ワインの勉強を始めたばかりのタイミングで、フランスやイタリアの超有名産地くらいしか、知識が蓄えられていなかった。 ある日のディナーで、そんな私のセクションに訪れたのは、ワイン関係の仕事をしているらしき

梁 世柱
2023年6月21日


出会い <39> 偉大なワインの最高の飲み頃
Van Volxem, Riesling Wiltinger Schlangengraben 2002. ワインはいつ開けても良い。 私が常にそう考えている理由は、数多くの先人たちによる、 「偉大なワインは、若くても、熟成していても、美味しいものだ。」 という類の意見に 同調しているからでは無い 。 むしろ、「いつ飲んでも美味しい」には 全くもって同意しかねる 。 「美味しい」 という感想は、 究極的に主観的 なものであるため、当然、 個々人の「好き嫌い」とは密接に関わっている 。 フレッシュな果実味が全開になった味わいが好きな人も、ほどほどの熟成を経て複雑性を増した味わいが好きな人も、長期熟成によって枯れた味わいが好きな人もいる。 少数派だとは思うが、ワインが若すぎて全然開いてない状態の方が好きな人もいるだろうし、果実味が跡形もなく抜け落ちるほどの熟成状態が好きな人もそれなりにいる。 その 嗜好のヴァリエーションは無限大に限りなく等しい ため、「美味しい」という主観を、「いつ飲んでも」というフルオープンなコンディションと連動させるのは、流石に無

梁 世柱
2023年6月18日


再会 <39> ドイツで芽吹く、圧倒的な才能
Moritz Kissinger, Null Ohm Weiss 2021. ¥3900 オーストリア・ウィーン出身の映画俳優で、近年では007シリーズの犯罪組織「スペクター」の首領、フランツ・オーベルハウザー役の怪演でも知られるクリストフ・ヴァルツは、ドイツとオーストリアの違いを、 「戦艦とワルツ」 と表現した。 もちろん、戦艦はドイツの事を意味し、オーストリアがワルツだ。 確かに、 保守的なだけでなく、腰深く構えてゆっくりと着実に直進していく「ドイツらしさ」 を戦艦に喩えるのは、(オーストリア人らしいウィットに富んだ表現も含めて)何とも言い得て妙だ。 私自身は、そんなドイツの直進性と保守性が好きなのだが、分かりやすい変化や改革を望む声があるのも重々理解している。 オーストリアは、持ち前のアーティスティックな性質でもって、随分と前から南シュタイヤーマルクとノイジードラーセを中心に新たなスタイルを生み出してきたが、ドイツはどうなのだろうか。 どうか、ご安心いただきたい。 近年、 Baden、Pfalz、Rheinhessenを結ぶトライアングル.

梁 世柱
2023年6月10日


Wine Memo <7>
Cantina Riezo, Nerello Mascalese Bianco 2022. 出会い <26> 脱フレンチコンプレックス でも紹介した、 長野県高山村 にある Cantina Riezo 。 湯本ご夫妻 のイタリア好きが高じて、以前紹介した アリアニコ など、絶妙にマニア心をくすぐるワインを手がけているが、 主力商品はシャルドネ 。 高山村のテロワールは、 日本屈指のシャルドネ (味わいの路線としては、 上質なシャブリに近い )を生み出すことができると筆者自身も確信している。 派手さは無いものの、ミッドパレットの充実度が高く、テロワールとの確かな適合を感じられる素晴らしいワインなので、もし見かけたら入手してみていただきたい。 今回ワイナリーを訪問した際には、Cantina Riezoの葡萄畑を湯本さんたちと歩きながら、そんなシャルドネを横目に、私はイタリア品種に関する質問を繰り返したのだが、何よりも印象に残ったのは、ご夫妻の 「冷静な判断力」 だ。

梁 世柱
2023年6月9日


出会い <38> 第四のサンジョヴェーゼ
Le Rogaie, Morellino di Scansano “Forteto” 2022. Chianti Classico、Brunello di Montalcino、Vino Nobile di Montepulciano。 気高き三大サンジョヴェーゼに続く産地は、いったいどこなのだろうか。 再会 <38> で紹介した Valdarno di Sopra D.O.C は(品質、総合力、平均点の高さ、秀逸な造り手の数から見れば)一押しではあるものの、他にも優れた選択肢は存在するのだろうか。 例えば Carmignano D.O.C.G は、歴史的にも「第四のサンジョヴェーゼ」の地位に在り続けてきたと言えるが、個人的には 少々同意しかねる部分 がある。 Carmignanoは、数あるトスカーナ州のサンジョヴェーゼ主体産地の中でも、 異質な存在 だからだ。

梁 世柱
2023年6月4日


再会 <38> 最先端の古きもの
La Salceta, Valdarno di Sopra Sangiovese “Ruschieto” 2019. 特集記事で、トスカーナ州のサンジョヴェーゼを深堀りし続けてきたが、Chianti Classico、Vino Nobile di Montelpulciano、Brunello di Montalcino以外にも、優れたサンジョヴェーゼはある。 候補としては、Chianti Ruffino、Carmignano、Morellino di Scansano、Montecucco辺りが挙がってくると思うが、個人的に最も三大銘醸地の地位に近いと考えているのは、 Valdarno di Sopra D.O.C だ。 その名は歴史の中に埋もれてしまってきたが、 1716年にコジモ三世 が出した現代の原産地呼称制度の原型とも言える「 布告 」に含まれていたのは、 Chianti、Pomino、Carmignano 、そして Valdarno di Sopra であった。

梁 世柱
2023年5月28日


Wine Memo <6>
Grain-mur, Brise d’ é t é 風薫る 2022. 日本ワイン、特に長野県や北海道のワインを飲む時に、単純な銘柄や味わいとは 別のちょっとした楽しみ がある。 その楽しみとは、 裏ラベルに小さく書かれた「製造者」の欄 にある。 極小生産規模のワイナリー(ワインレーベル)にとって、大変お金のかかる醸造設備を整えるのは簡単ではない。 また、醸造設備をもてたとしても、経済的なことを考えれば、少量生産ではなかなか難しい。

梁 世柱
2023年5月26日


出会い <37> 日本らしさ、長野らしさ
Vino della Gatta SAKAKI, 赤獅子 2022. ¥4,200 日本でのワイン造りが、猛スピードで広がっていることをご存知の方も多いだろう。 特に、 長野県と北海道 では、毎年のように新しい造り手が数多くデビューしているため、追いかけ続けるのも大変だ。 だからこそ、発見に満ちた地方(?)巡業は楽しいし、長野県東御市にある「 東御ワインチャペル 」のような、地元産ワインに密着した専門ショップは、私にとっての「駆け込み寺」であり、ここを訪れるのは、ある意味での「聖地巡礼」のようなものだ。 そして、今回の訪問でも、素晴らしい出会いに恵まれた。 ワイナリーの名は、 Vino della Gatta SAKAKI 。 日本の中では年間の降水量が少なく、晴天率も国内随一となる「 中央高原型内陸盆地性気候 」、 平均10度を超える昼夜の寒暖差 、長野では一般的な火山灰由来の粘土質土壌である「黒ボク土」ではなく、 「砂礫土壌」が主体 、といったテロワールの特徴が見られる 長野県坂城町 に、葡萄畑が拓かれている。

梁 世柱
2023年5月21日


Wine Memo <5>
Living Roots, Session Sparkling White. ハイブリッド品種のサスティナブル適正 に関しては、SommeTimesでも度々触れてきたが、具体例はあまり出していなかったように思う。 私自身、ハイブリッド100%の場合、結構好き嫌いが出てしまうし、 単純に料理と合わせることが難しくなる と考えているが、 ヴィニフェラとのブレンド に関しては、非常に高いポテンシャルを感じている。 それは、味わいにおいても、サスティナビリティにおいてもだ。 少しヴィニフェラを足すだけで、ハイブリッド特有の弱さ、物足りなさが相当カヴァーされるため、むしろ 日常用のワイン としては、 価格も含めてプラス要素が非常に大きい 。

梁 世柱
2023年5月15日


再会 <37> 不人気な超銘醸ワイン
Ch. la Nerthe, Ch â teauneuf-du-Pape Blanc “Clos de Beauvenir” 2001. 日本のワイン市場は 世界屈指の多様性 を誇っているが、 意外と偏っていたりする 部分もある。 そしてその偏りが、「 世界的には極めて高く評価されているのに、日本ではなぜか不人気 」というカテゴリーを生み出してしまうことがあるのだ。 大きな括りでは、 ロゼワインやリースリング などがその筆頭候補に挙がるだろうか。 そして、ワイン王国 フランス にも、日本では不人気な世界的超銘醸ワインが存在している。 ローヌ地方 のワインだ。 北ローヌ の赤ワインでは、 C ô te-Rotie、Ermitage、Cornas が、白ワインでは Condrieu が名高いが、日本では少数のトップ生産者を除いて、語られることがあまりにも少ない。 南ローヌ といえば、なんといっても Châteauneuf-du-Pape(以降、CDPと表記) の赤ワインだが、それなりの頻度でこのワインを飲む人が、日本に一体どれほどいるだろうか。...

梁 世柱
2023年5月13日


出会い <36> 食用葡萄の地酒
Rita Farm & Winery, 花火 田舎式スパークリング ニューマスカット. ¥2,500 日本酒を学び始めて間もない頃、どうしても好きになれなかった酒があった。 コシヒカリで造った純米酒だ。 ご存じの方も多いとは思うが、一般的に日本酒は 酒造好適米 という特殊な米から造られる。ワインで言うところの、 ヴィティス・ヴィニフェラ種 (ヴィニフェラの全てが醸造用というわけではないが)と同じような「 専用原料 」だ。 山田錦、雄町、五百万石など様々な酒造好適米が存在しているのだが、コシヒカリはその仲間では無く、普通の食用米となる。 そして、専用原料では無いコシヒカリで造られた日本酒には、 ミッドパレットが無い 。どうにも 構造が緩く、ふわふわ していて、 余韻も短い 。 昔ながらの価値観では、到底高く評価できるタイプの味わいとはならなかったのだ。 今なぜ、この昔話を持ち出したかというと、「 過去を恥じているから 」に他ならない。 そういう時代だった、と言ってしまえばそれまでだが、私自身、 固定された価値観に縛られていた のは間違いない。しかも

梁 世柱
2023年5月7日
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