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SommeTimes’ Académie <100>(イタリア・トスカーナ州: Part.1)
一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのが SommeTimes’ Académie シリーズ。 初心者から中級者までを対象 としています。 今回は イタリア・トスカーナ州 について学んでいきます。 イタリアを代表する銘醸地の一つである トスカーナ州 は、イタリアで最も偉大な黒葡萄の一つであるサンジョヴェーゼを主力にしつつ、国際品種やその他の地品種でも多大なる成功を収めてきました。 また、オーガニック/サスティナブルへの取り組みも、イタリアで先陣を切っており、イタリアワイン産業のリーダーとして、力強く歩んでいます。 トスカーナ州編第1回では、トスカーナ州の全体像を把握していきます。 3つの大ゾーン トスカーナ州には、3つの大ゾーンがあります。まず、中心部大きくカヴァーしているのが、サンジョヴェーゼが主体となる銘醸地の全てを含む、 大キアンティ・ゾーン です。そして、国際品種が主力となるティレニア海沿いの ボルゲリ・ゾーン 、同じくティレニア海に面しながらも地品種が主体の マレンマ・ゾーン です。

梁 世柱
7月15日


再会 <86> 紙パックワインの躍進
Giovannini Giorgio, Trebbiano IGT Rubicone. ¥4,900(3ℓ) 四角い 紙パック に収められたワイン。 それは、瓶に入った牛乳よりも、紙パックに入った牛乳が安っぽく見えてしまうことなどとは比べ物にならないほど強烈に、中に入ったワインのイメージを悪くしてしまうのだろうか。 重厚な瓶、見目麗しいラベル、目の詰まった天然コルク、そして抜栓という儀式。 視覚から得られる情報には、大多数の人が印象を操作されてしまう。 そういうものだ。いや、そういうものだと思われていた。

梁 世柱
7月14日


再会 <82> 外れの高地の極上クラシコ
Tenuta la Novella, Musignana 2022. 温暖化は伝統産地に新たなトレンドを呼び込んだ。 より 高地の冷涼ゾーンへの進出 だ。 このトレンドは、 ブルゴーニュ を例にすると最も分かりやすい。 長い歴史の中で、最上とされてきた村や葡萄畑の多くは、現在でもその優位性を保ってはいるものの、一部の低地にある畑が、温暖化に苦しんでいる。

梁 世柱
5月14日


出会い <80> 田舎ワインの素朴さ
Gismondi, Cerreto 2023. ¥3,800 ワインには、あらゆるタイプの魅力が本来宿っているのだが、 高級ワイン になればなるほど、その味わいは 「都会的」 になっていく傾向がある。 シャンパーニュとボルドーはその最も顕著な例であるし、今ではブルゴーニュにもバローロにもブルネッロ・ディ・モンタルチーノにもリオハにも、都会の空気がたっぷりと流れ込んでいる。 ニューワールド諸国の高級ワインは、例外を探す方が異常に大変な程度には、都会的だ。

梁 世柱
4月22日


出会い <78> アンフォラとサンジョヴェーゼ
Il Borro, “Petruna” Sangiovese is Anfora 2020. 1990年代半ばに、北イタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリアの東端で始まった オレンジワインの再興が、ワイン界にもたらしたものは、オレンジワインが第四のカテゴリーとして定着したことだけではない。 その過程で、 アンフォラ(地中に埋める円錐形のものはクヴェヴリ) という古代の容器もまた、世界各地へと再伝達されて行ったのだ。 アンフォラとオレンジワインを直接的に結びつける人は多いとは思うが、現在では、赤、白、ロゼ、オレンジワインの全てで、アンフォラの採用が広がっている。

梁 世柱
3月24日


出会い <77> Vin Santoの専門家
Giacomo Grassi, Vin Santo del Chianti Classico “Opre” 2011. ワインに芸術性を求めた時、行き着く先は2通りと個人的には思っている。 1つは、 シャンパーニュ方式で造られるスパークリングワイン 。 特殊な収穫方法から始まり、その製法のあらゆる段階における細部に至るまで、人類がワインと共に育んできたあらゆる叡智が込められている。 葡萄とテロワールに、ヒトの粋が詰め込まれたワイン。 芸術と呼ぶに相応しいと心から思う。

梁 世柱
3月10日


再会 <77> やはり素晴らしかったTerra Electae
Marchesi Gondi, Chianti Ruffina Riserva Terra Electae “Vigneto Poggio Diamante” 2021. 昨年トスカーナ州を訪れた際、私の中では決して評価の高い産地ではなかった Chianti Ruffina という地に、一筋の光を見た。 Ruffinaを評価してこなかった理由は、全てと言って良いほど、 過剰な国際品種のブレンド にあった。 そもそも、Ruffinaは、Chiantiの名を関するDOCGの中でも、 最も冷涼な産地の一つ 。 そのようなRuffinaにとっては、 繊細で優美な酒質こそが本質 のはずあり、それを覆い隠すようなカベルネ・ソーヴィニヨンのパワーには、違和感しか感じてこなかった。

梁 世柱
3月3日


トリッパのトマト煮込みにベストのサンジョヴェーゼとは?
イタリアを、そしてトスカーナ州を代表する郷土料理の一つである Trippa alla Fiorentina (トリッパのトマト煮込み フィレンツェ風)は、ホルモンやモツを食べる習慣がある日本人にとって、随分と馴染みやすいものかもしれない。 トリッパは、表面に開いた多数の大きな穴から日本語では「ハチノス」とも呼ばれる、牛の第二胃袋。 トリッパを、ソフリットと呼ばれるイタリア料理の香味ベース(オリーヴオイル、玉ねぎ、ニンニクをベースに多種多様な追加香味)、トマト、ハーブと共に煮込んだ非常にシンプルな料理だけに、素材の質と調理の巧みさが最終的な味わいに大きな影響を及ぼす。 トスカーナ州においては、Trippa alla Fiorentinaを食べれば、そのお店の実力が測れる、とすら言えるだろう。 そんなTrippa alla Fiorentinaに合わせられるローカルワインと言えば、当然の如く、サンジョヴェーゼである。

梁 世柱
3月1日


出会い <76> 補助品種の野心
Podere della Bruciata, Tizzo 2019. 葡萄栽培学と病害対策が現代に近い水準に進化するまで、ワイン造りは、 多品種栽培と多品種ブレンドが基本 であった。 それは、昔の人々が積み重ねた経験と観察眼に基づいた、 リスクヘッジ であった。 一つの葡萄が病害などによって不作に陥っても、他の品種が上手く育てば、ワインをつくることができる。 細かなブレンド比率や、テロワールなどといった概念よりも、 毎年ちゃんと葡萄を実らせることの方が遥かに大切だった ことは、想像に難くない。

梁 世柱
2月24日


Wine Memo <33>
Stefano Amerighi, Syrah Cortona DOC 2021. 私が毎年2月に参加しているAnteprime di Toscanaというイベントでは、1日、もしくは2日毎にテーマの異なる試飲会が開催されるのだが、 L’Altra Toscana というトスカーナ州の「その他」を集めた試飲会が、実は密かな楽しみになっている。 Chianti Rufina、Carmignano、Montecucco、Maremmaといった、L’Altra Toscanaでは「お馴染み」のDOCやDOCGに加え、毎年もっとマイナーな産地から、交代でブースが出てくるのだ。 時に興味深い発見もあれば、肩透かしな年もあるが、2025年は「当たり」だった。

梁 世柱
2月22日


再会 <76> メルローの掘り出しもの
Castellina, Daino Bianco 2019. ¥5,000

梁 世柱
2月3日


偉大なるメルロー Masseto
かつて、 スーパートスカン(タスカン) と呼ばれる数々のワインが世界のワイン市場を席巻するほどの大ブームとなった頃、その 頂点に2つのワインが鎮座 していた。 一つは テヌータ・サン・グイドが手がけるサッシカイア 。1985年ヴィンテージがワイン・アドヴォケイト誌で満点を獲得したことをきっかけに、イタリア産カベルネ・ソーヴィニヨン・ブレンドの象徴となった銘柄だ。 もう一つに関しては、多少の異論はあるかも知れないが、アンティノリ一族が手掛ける オルネライア ではなく、同じオルネライアのスペシャルなメルローのキュヴェとなる、 マッセート がその地位に相応しいだろう。

梁 世柱
1月18日


出会い <73> 魔法のサンジョヴェーゼ
Chiara Condello, Predappio Sangiovese 2021. ¥4,500 サンジョヴェーゼ といえば、 イタリア・トスカーナ州 。 その地位と名誉と実力は、確かに揺るぎないものだ。 Chianti Classico 、 Brunello di Montalcino 、 Vino Nobile di Montepulciano 。サンジョヴェーゼの象徴たる三つの産地は、まるで不可侵の聖域が如く、色褪せない輝きを放ち続けている。 私自身、サンジョヴェーゼには強い関心と愛情を注いできたため、三大銘醸地に限らず、トスカーナ州以外やニューワールド諸国も含め、様々な産地のワインをテイスティングしてきたが、心の琴線に深く触れるワインは見つからなかった。 Chiara Condello と出会うまでは。

梁 世柱
2024年12月1日


再会 <67> マニア向けの極上バローロ
Pio Cesare, Barolo “Mosconi” 2018. ¥23,000 ワインの探究と 固有名詞 の数々は、切っても切り離せない関係にある。 ワインでしか用いられない特殊な 専門用語 も多々ある上に、それらを理解していないとアドヴァンスな話には全くついていけなくなったりもする。 その最たる例と言えるのは、 葡萄畑名 だろうか。 世界中に無数に存在する葡萄畑名は、それ単体では、基本的に 「識別記号」 として機能している。 このことは、 人の名前 に当てはめてみるとわかりやすいかも知れない。

梁 世柱
2024年9月1日


再会 <65> 大ピンチを救ってくれた、思い出のワイン
La Biancara (Angiolono Maule), Sassaia 2022. ¥3,700 約12年前の年末、私は 大ピンチ に陥っていた。 当時NYのワイン業界では無名に等しかった私を、なぜか新プロジェクトのワインディレクターとしてヘッドハントした、今は亡き大恩師でもあるシェフ、 デイヴィッド・ブーレー は、紛れもない 天才中の天才 だったが、いわゆる 「サイコ」 としても知られていた。 無理難題を突如押し付けてくるのは日常茶飯事 、その荒波をなんとか乗り切りながらの仕事は、今思えば刺激的で充実したものだった。 ところが、年末が近づいてきたある日、ブーレーは私に 「Mission Impossible」 と思えるような 超難題 を放り投げてきた。 当時働いてレストランは、フレンチの要素を取り入れた 高級和食店 。 そして、和食店の年末年始といえば、 おせち料理にも関連した難食材や料理 が多く出てくる。 普段なら、そういう料理に対するペアリングは日本酒でかわしてしたのだが、ブーレーは、 「子持ち昆布のお浸し

梁 世柱
2024年8月4日


エネルギーとテロワールの最大公約数 <Gorizia特集:後編>
Gevrey-ChambertinとChambolle-Musignyの違いを溢れんばかりの情熱で語り合う一方で、West Sonoma CoastとSanta Rita Hillsの違いには興味を示さないどころか、「カリ・ピノ」などと愛称まで付けてひとまとめにする。 まだ「カリフォルニア」と州単位になっているだけマシな方で、これがチリ、NZ、オーストラリア、南アフリカなら、もはや国単位となってしまうことは避け難い。 熱心な愛好家であっても、良く知らない産地のワインは、何も考えずに一括りにしてしまうものだ。 確かに 広範囲に適用されるテロワールのようなもの もあるが、 本質は常にディテールにこそ宿る のだから、より深い理解へと到達するためには、範囲をどんどん狭めていく必要がある。 しかし、残念ながら私自身を含む大多数の人の感応力は、一切の手がかりなしに、狭範囲に宿ったテロワールのエッセンスに辿り着けるほど、優れてはいない。 だからこそ、特定の産地のワインを深く理解する上で、気候、地勢、土壌、葡萄品種といったテロワール情報の整理

梁 世柱
2024年5月5日


2つの国、1つの文化 <Gorizia特集:前編>
イタリアのフリウリ・ヴェネツィア=ジュリア州とスロヴェニア領内に跨る街、 ゴリツィア (*)は、いつか必ず訪れようと思っていた場所だった。 (*):スロヴェニア語ではGoricaゴリツァ。以降、 両領土を合わせてGoriziaと表記 。 もちろん、Gorizia周辺で造られる極上ワインの数々に心惹かれて、という理由もあるが、 私にとってのGoriziaは、自身のルーツとも重なる部分が多い場所 なのだ。 少し、私のファミリーヒストリーを語ろう。 私自身は日本で生まれ育ったため、アイデンティティの比重はかなり日本人よりだが、私の祖国は朝鮮(一つのKorea)である。 そしてその祖国は、米ソ冷戦に巻き込まれる形で、南の大韓民国と、北の朝鮮民主主義人民共和国へと分断された。 ここから先は、 私の祖父母(母方)の話 となる。 祖父母は、ソウルで出会い結婚した。 1942年、祖父は日本軍からの徴用令状を受け、広島への赴任を命じられたが、 邑 長(日本で言うところの町長)が手を回してくれたおかげで、幸運にもそれを回避することがで

梁 世柱
2024年4月18日


革命の狼煙 <Montepulciano特集 2024年版>
モンテプルチアーノ を訪れる度に、私はなんとも言えない複雑な感情を抱いてきた。 Vino Nobile di Montepulciano という歴史的大銘醸が、品質において Chianti ClassicoやBrunello di Montalcino と同じ領域にあることは疑いようもないと常々感じてきたが、人気、知名度、価格など、品質以外のあらゆる点で、三大サンジョヴェーゼの一角とは言い難い現実があった。 消費者目線から見れば、過小評価によって低止まりした価格にありがたさも感じる部分はあるが、一人のワインプロフェッショナルとしては、モンテプルチアーノの偉大なワインが 真っ当な評価を受けていない ことに、苛立ちにも似た感情を覚えてきた。 確かに、Vino Nobile di Montepulcianoには、Chianti Classicoのような「集の力」も、Brunello di Montalcinoのような「わかりやすさ」もない。 あまりの不人気ぶりに、三者を品質的に同列と考えている私自身のテイスティング能力を疑ったことさえあ

梁 世柱
2024年3月30日


知られざるクラシコ <Chianti Classico特集 2024年版>
現地に赴いて日本国内未輸入ワインをテイスティングし続けると、素晴らしい品質と高い個性の完成度を有しているにも関わらず「なぜ未輸入のままなのか」という部分に、相当程度一貫した法則が存在していることに気付く。 「その産地の典型例ではない」 という法則だ。典型例ではない場合、販路に携わるあらゆる人々にとって、挑戦と困難が伴うのは間違いない。私自身、飲食店、酒販店、インポーターという三つのティアに関わってきたので、そのあたりの事情は重々理解している。その上で、あえて苦言を呈そう。 そのワインが上質なものである限り、典型例でないことを売り辛さの直接的な言い訳にするのは、怠慢以外の何物でもない。 消費者としても、典型例ばかり飲んでいると、その産地への理解が真に深まることはない。 そして、少し踏み込んで考えてみれば、疑問をもつ人も多いはずだ。 そもそも、典型例とは何なのだろうか、誰がどのような基準で決めたことなのだろう か、と。 有史以来、自由を求めて戦い続けてきた人類が、 なぜワインに自由な表現を認めないのか 。 なぜ、...

梁 世柱
2024年3月23日


再会 <56> いちご味のイタリア地葡萄
Ferdinando Principiano, Langhe Freisa 2022. ¥3,500 イタリアのマイナーな地品種を学ぶのは、この上なく楽しい。 フランス系国際品種や、イタリアの中でもより王道と言えるネッビオーロ、サンジョヴェーゼ、アリアニコなどとは随分毛色の違う個性派集団。 どの品種をとっても「洗練」とは少々遠く、自己主張が激しめなのも良い。 まるで、予定調和的な美意識を嫌い、「絶対にアルマーニなど来てやるものか!」っと、こちらから聞いてもいないのに声高に叫んでいる、ちょっとうるさいイタリア人のようだ。 そして、 イタリア各地のマイナー地品種それぞれに、豊かなストーリーがある ところも良い。

梁 世柱
2024年3月10日
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