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Wine Memo <33>
Stefano Amerighi, Syrah Cortona DOC 2021. 私が毎年2月に参加しているAnteprime di Toscanaというイベントでは、1日、もしくは2日毎にテーマの異なる試飲会が開催されるのだが、 L’Altra Toscana というトスカーナ州の「その他」を集めた試飲会が、実は密かな楽しみになっている。 Chianti Rufina、Carmignano、Montecucco、Maremmaといった、L’Altra Toscanaでは「お馴染み」のDOCやDOCGに加え、毎年もっとマイナーな産地から、交代でブースが出てくるのだ。 時に興味深い発見もあれば、肩透かしな年もあるが、2025年は「当たり」だった。

梁 世柱
2月22日


再会 <76> メルローの掘り出しもの
Castellina, Daino Bianco 2019. ¥5,000

梁 世柱
2月3日


偉大なるメルロー Masseto
かつて、 スーパートスカン(タスカン) と呼ばれる数々のワインが世界のワイン市場を席巻するほどの大ブームとなった頃、その 頂点に2つのワインが鎮座 していた。 一つは テヌータ・サン・グイドが手がけるサッシカイア 。1985年ヴィンテージがワイン・アドヴォケイト誌で満点を獲得したことをきっかけに、イタリア産カベルネ・ソーヴィニヨン・ブレンドの象徴となった銘柄だ。 もう一つに関しては、多少の異論はあるかも知れないが、アンティノリ一族が手掛ける オルネライア ではなく、同じオルネライアのスペシャルなメルローのキュヴェとなる、 マッセート がその地位に相応しいだろう。

梁 世柱
1月18日


出会い <73> 魔法のサンジョヴェーゼ
Chiara Condello, Predappio Sangiovese 2021. ¥4,500 サンジョヴェーゼ といえば、 イタリア・トスカーナ州 。 その地位と名誉と実力は、確かに揺るぎないものだ。 Chianti Classico 、 Brunello di Montalcino 、 Vino Nobile di Montepulciano 。サンジョヴェーゼの象徴たる三つの産地は、まるで不可侵の聖域が如く、色褪せない輝きを放ち続けている。 私自身、サンジョヴェーゼには強い関心と愛情を注いできたため、三大銘醸地に限らず、トスカーナ州以外やニューワールド諸国も含め、様々な産地のワインをテイスティングしてきたが、心の琴線に深く触れるワインは見つからなかった。 Chiara Condello と出会うまでは。

梁 世柱
2024年12月1日


再会 <67> マニア向けの極上バローロ
Pio Cesare, Barolo “Mosconi” 2018. ¥23,000 ワインの探究と 固有名詞 の数々は、切っても切り離せない関係にある。 ワインでしか用いられない特殊な 専門用語 も多々ある上に、それらを理解していないとアドヴァンスな話には全くついていけなくなったりもする。 その最たる例と言えるのは、 葡萄畑名 だろうか。 世界中に無数に存在する葡萄畑名は、それ単体では、基本的に 「識別記号」 として機能している。 このことは、 人の名前 に当てはめてみるとわかりやすいかも知れない。

梁 世柱
2024年9月1日


再会 <65> 大ピンチを救ってくれた、思い出のワイン
La Biancara (Angiolono Maule), Sassaia 2022. ¥3,700 約12年前の年末、私は 大ピンチ に陥っていた。 当時NYのワイン業界では無名に等しかった私を、なぜか新プロジェクトのワインディレクターとしてヘッドハントした、今は亡き大恩師でもあるシェフ、 デイヴィッド・ブーレー は、紛れもない 天才中の天才 だったが、いわゆる 「サイコ」 としても知られていた。 無理難題を突如押し付けてくるのは日常茶飯事 、その荒波をなんとか乗り切りながらの仕事は、今思えば刺激的で充実したものだった。 ところが、年末が近づいてきたある日、ブーレーは私に 「Mission Impossible」 と思えるような 超難題 を放り投げてきた。 当時働いてレストランは、フレンチの要素を取り入れた 高級和食店 。 そして、和食店の年末年始といえば、 おせち料理にも関連した難食材や料理 が多く出てくる。 普段なら、そういう料理に対するペアリングは日本酒でかわしてしたのだが、ブーレーは、 「子持ち昆布のお浸し

梁 世柱
2024年8月4日


エネルギーとテロワールの最大公約数 <Gorizia特集:後編>
Gevrey-ChambertinとChambolle-Musignyの違いを溢れんばかりの情熱で語り合う一方で、West Sonoma CoastとSanta Rita Hillsの違いには興味を示さないどころか、「カリ・ピノ」などと愛称まで付けてひとまとめにする。 まだ「カリフォルニア」と州単位になっているだけマシな方で、これがチリ、NZ、オーストラリア、南アフリカなら、もはや国単位となってしまうことは避け難い。 熱心な愛好家であっても、良く知らない産地のワインは、何も考えずに一括りにしてしまうものだ。 確かに 広範囲に適用されるテロワールのようなもの もあるが、 本質は常にディテールにこそ宿る のだから、より深い理解へと到達するためには、範囲をどんどん狭めていく必要がある。 しかし、残念ながら私自身を含む大多数の人の感応力は、一切の手がかりなしに、狭範囲に宿ったテロワールのエッセンスに辿り着けるほど、優れてはいない。 だからこそ、特定の産地のワインを深く理解する上で、気候、地勢、土壌、葡萄品種といったテロワール情報の整理

梁 世柱
2024年5月5日


2つの国、1つの文化 <Gorizia特集:前編>
イタリアのフリウリ・ヴェネツィア=ジュリア州とスロヴェニア領内に跨る街、 ゴリツィア (*)は、いつか必ず訪れようと思っていた場所だった。 (*):スロヴェニア語ではGoricaゴリツァ。以降、 両領土を合わせてGoriziaと表記 。 もちろん、Gorizia周辺で造られる極上ワインの数々に心惹かれて、という理由もあるが、 私にとってのGoriziaは、自身のルーツとも重なる部分が多い場所 なのだ。 少し、私のファミリーヒストリーを語ろう。 私自身は日本で生まれ育ったため、アイデンティティの比重はかなり日本人よりだが、私の祖国は朝鮮(一つのKorea)である。 そしてその祖国は、米ソ冷戦に巻き込まれる形で、南の大韓民国と、北の朝鮮民主主義人民共和国へと分断された。 ここから先は、 私の祖父母(母方)の話 となる。 祖父母は、ソウルで出会い結婚した。 1942年、祖父は日本軍からの徴用令状を受け、広島への赴任を命じられたが、 邑 長(日本で言うところの町長)が手を回してくれたおかげで、幸運にもそれを回避することがで

梁 世柱
2024年4月18日


革命の狼煙 <Montepulciano特集 2024年版>
モンテプルチアーノ を訪れる度に、私はなんとも言えない複雑な感情を抱いてきた。 Vino Nobile di Montepulciano という歴史的大銘醸が、品質において Chianti ClassicoやBrunello di Montalcino と同じ領域にあることは疑いようもないと常々感じてきたが、人気、知名度、価格など、品質以外のあらゆる点で、三大サンジョヴェーゼの一角とは言い難い現実があった。 消費者目線から見れば、過小評価によって低止まりした価格にありがたさも感じる部分はあるが、一人のワインプロフェッショナルとしては、モンテプルチアーノの偉大なワインが 真っ当な評価を受けていない ことに、苛立ちにも似た感情を覚えてきた。 確かに、Vino Nobile di Montepulcianoには、Chianti Classicoのような「集の力」も、Brunello di Montalcinoのような「わかりやすさ」もない。 あまりの不人気ぶりに、三者を品質的に同列と考えている私自身のテイスティング能力を疑ったことさえあ

梁 世柱
2024年3月30日


知られざるクラシコ <Chianti Classico特集 2024年版>
現地に赴いて日本国内未輸入ワインをテイスティングし続けると、素晴らしい品質と高い個性の完成度を有しているにも関わらず「なぜ未輸入のままなのか」という部分に、相当程度一貫した法則が存在していることに気付く。 「その産地の典型例ではない」 という法則だ。典型例ではない場合、販路に携わるあらゆる人々にとって、挑戦と困難が伴うのは間違いない。私自身、飲食店、酒販店、インポーターという三つのティアに関わってきたので、そのあたりの事情は重々理解している。その上で、あえて苦言を呈そう。 そのワインが上質なものである限り、典型例でないことを売り辛さの直接的な言い訳にするのは、怠慢以外の何物でもない。 消費者としても、典型例ばかり飲んでいると、その産地への理解が真に深まることはない。 そして、少し踏み込んで考えてみれば、疑問をもつ人も多いはずだ。 そもそも、典型例とは何なのだろうか、誰がどのような基準で決めたことなのだろう か、と。 有史以来、自由を求めて戦い続けてきた人類が、 なぜワインに自由な表現を認めないのか 。 なぜ、...

梁 世柱
2024年3月23日


再会 <56> いちご味のイタリア地葡萄
Ferdinando Principiano, Langhe Freisa 2022. ¥3,500 イタリアのマイナーな地品種を学ぶのは、この上なく楽しい。 フランス系国際品種や、イタリアの中でもより王道と言えるネッビオーロ、サンジョヴェーゼ、アリアニコなどとは随分毛色の違う個性派集団。 どの品種をとっても「洗練」とは少々遠く、自己主張が激しめなのも良い。 まるで、予定調和的な美意識を嫌い、「絶対にアルマーニなど来てやるものか!」っと、こちらから聞いてもいないのに声高に叫んでいる、ちょっとうるさいイタリア人のようだ。 そして、 イタリア各地のマイナー地品種それぞれに、豊かなストーリーがある ところも良い。

梁 世柱
2024年3月10日


出会い <55> 最高のメルロー
Chiacchiera, Piccola Viola 2021. Wine Memo <19> で述べたように、国際品種がブレンドされた一連のChiantiやVino Nobileに対して、私が異を唱え続けることは今後も変わらないだろう。 サンジョヴェーゼとその他の補助的地品種だけで構成されたワインの、調和に満ちた優美な味わいを思えば、国際品種による補強が「伝統の進化」とはどうにも思えない。 ワインにとって「美味しい」ことは正義だと思うが、それが 伝統かと問われれば話が違う のだ。 一方で、国際品種のみで造られたワインに素晴らしい「品質」のものが数多くあるのもまた事実なので、そ の探究は私にとって隠れた趣味的なもの となっている。

梁 世柱
2024年3月3日


目覚めたトスカーナ最後の巨人 <Chianti Rufina特集>
興味は常にもっていた。 テイスティングも定期的に行ってきた。 だが、歴史的銘醸地とされている Chianti R u fina (正確な表記はChianti R ù fina だが、以降Rufinaと表記)のワインが、私に最高の満足感を与えてくれることは、これまで一度もなかった。 15世紀初頭には既にその名が知られ、 コジモ三世 による世界初の「原産地認定」(1716年)においては、現在の Chianti Classico、Carmignano、Valdarno di Sopra と並び、Rufinaが内包する Pomino がその栄光を掴んだ。 19世紀に入る頃には、ずんぐりとした フィアスコ・ボトル に詰められ、 藁の腹巻き で飾られたRufinaが、良くも悪くもキアンティの代名詞となった。 歴史の重みはあれど、少なくとも現代のRufinaは、Chianti Classico、Brunello di Montalcino、Vino Nobile di Montepulcianoといった真の銘醸と並び得るワインでは到底ない。

梁 世柱
2024年3月2日


Wine Memo <20>
Cinciano, Bianco Preziano 2023. ブラン・ド・ノワール というのは、何もシャンパーニュの専売特許というわけではない。 他産地のスパークリングワインに、(シャンパーニュ方式であるかどうかに関わらず)ブラン・ド・ノワールが採用されることは昔から多々あるし、さらに近年では、もはや そもそもスパークリングですらないことも多いに増えてきた 。 ブラン・ド・ノワールのスティルワインが増えた背景としては、ワインスタイルの多様化と自由化、そして地球温暖化が主な理由として考えられる。 私もそれなりの興味をもって、様々な国の様々な黒葡萄から造られたブラン・ド・ノワールを試してきたが、それらは 「消極的」と「積極的」 なブラン・ド・ノワールに大別することができる。 消極的 、と書くと随分イメージが悪くなるかも知れないが、こ のタイプは基本的にシャンパーニュ方式の流れを組んでいるもの となる。

梁 世柱
2024年2月21日


Wine Memo <19>
Ca di Pesa, Serafino 2021. 今年もまた2月の トスカーナ にやってきた。 ニューリリースを祝う アンテプリマ展示会 だ。 6日間ほど、ひたすらサンジョヴェーゼの海を泳ぎ続ける日々は実に楽しいが、なかなか辛くもある。 若いサンジョヴェーゼをテイスティングし続けるのは、実際にかなり骨が折れる。 数時間テイスティングすればもう、強い色素で完全にお歯黒状態となり、強烈な酸の刺激で舌が痺れ、分厚いタンニンが歯茎にびっしりとへばりつく。 初日の緩いレセプションを終え、今年のアンテプリマは キアンティ・クラシコ からスタートした。 私はキアンティ・クラシコが大好きなのだが、 少々偏った「好み」 がある。 そう、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなどがブレンドされたクラシコが、とにかく好きでは無いのだ。(このタイプのクラシコは、明らかに減少傾向にある。)

梁 世柱
2024年2月16日


Limoncelloの魅力
イタリアといえば、ワインファンにとっては、もちろんワイン大国だが、食通にとっては、パスタやピッツァの国、そして、 カクテル好きにとっては、リキュール王国 となる。 イタリアンリキュールの中でも人気が高いのは、ハーブ類を中心に独自のレシピで配合した ビター系リキュール(Amaro と呼ばれる)で、その王者は間違いなく Campari だが、アルコール濃度がCampariの半分程度で、苦味も穏やかな Aperol も非常に良く知られている。 他にもカンパーニャ州の Strega やロンバルディア州の Fernet-Branca をはじめ、バジリカータ州の Amaro Lucano 、エミリア=ロマーニャ州の Amaro Montenegro 、シチリア島の Amaro Averna など、「ご当地Amaro」の枠を超えて、世界的に愛される名品は数多い。 もしイタリア産のAmaroが無くなってしまったら、世界中でどれだけ膨大な数のカクテルレシピが消失してしまうかは、もはや想像すらつかない。 そして、そんなイタリアンリキュールの中でも、孤高の存在と言える

梁 世柱
2023年10月4日


道の交わる地 <カンパーニャ州:サンニオ地方特集>
omnes viae Romam ducunt. 全ての道はローマに通ず。 古代ローマ帝国時代に、ヨーロッパ中の主要都市からローマへと道が繋がっていたことから、17世紀の詩人ラ・フォンテーヌが、「起点や手段に関わらず、全ては一つの真理へと集約していく」ことを意味するものとし...

梁 世柱
2023年9月30日


ワインスタンドの直汲みワイン
「善く国を治める者は、必ずまず水を治める。」 古代中国の春秋時代、斉の宰相であり、良く知られた法家でもあった 管仲 が残した言葉だ。 私は今、 北アフリカのリビア に思いを馳せている。 9月10日、リビア東部を襲った地中海熱帯様低気圧(通称、 メディケーン )は、 沿岸都市デルナ にある、老朽化した2つのダムを決壊させ、 推定死者数1万人超 と考えられる、未曾有の大災害を引き起こした。 東西で政治的分断が起きているリビアでは、避難指示の伝達網も機能しておらず、何よりも政治の基本である治水を、後回しにしてきた。 その決定的怠慢が、多くの人々の命を奪うことにつながったのは確かだが、そもそもなぜ メディケーンがそこまで破壊的な威力をもつに至ったか 、そして、 国土の90%が砂漠であるリビアを襲ったのか は、 別の問題 だ。 そう、メディケーンが凶暴化した理由として可能性が高いものの一つ(ハリケーンの激化は、実際にはかなり複雑な要因によって起きていると考えられている。)とされているのは、地中海の海水温の上昇、つまり 地球温暖化 である。 さらに、 気候変

梁 世柱
2023年9月24日


カンパーニャ風ステーキと極上ローカルペアリング
ペアリングを学ぶ上で、 クラシックペアリングやローカルペアリング と呼ばれるものの真髄を知るには、 イタリアは避けては通れない国 だ。 イタリアという国に来ると、 郷土料理と郷土ワインが、驚異的な完成度のペアリングとなっている ケースが非常に多いことに、とにかく驚かされる。 その「結びつき」の強さは、筆者が経験した範囲では、フランス、スペイン、ドイツ、オーストリアやギリシャよりも強く、 おそらく世界一 とすら考えられる。 20の州があるイタリアは、 20の異なる小国家の集合体 とも言われるほど、各地域の文化的独立性が強く(イタリア人いわく、方言もかなり強烈とのこと)、 その影響は食文化の細部にまで及んでいる のだ。 そして、さらに驚くべきは、 その結びつきが、料理とワインという枠を超えて、食材とワインにまで及んでいる ことだ。

梁 世柱
2023年9月22日


ボンゴレ・ロッソと極上ローカルペアリング
カンパーニャ州の名物料理 と言えば、なんと言っても ナポリ風ピザ だが、 パスタ類 にも 名品 が多い。 パスタ通の最終到着地であり、極めてシンプルが故に最も難しいパスタとも言われる Spaghetti aglio e olio (イタリア南部全域で見られるニンニクとオリーヴオイルのパスタだが、唐辛子を使わないバージョンはカンパーニャ州が発祥)、ほっこりとするトマトソースベースの Gnocchi alla sorrentina 、カボチャとショートパスタのスープである Minestrone alla napoletana 、アンチョビ、ケッパー、オリーヴ、唐辛子を効かせた Spaghetti alla puttanesca など、日本でも馴染み深いものが数多くカンパーニャ州を発祥の地としている。 中でも、筆者が特に好きなのは、アサリなどの二枚貝をふんだんに使用した、 Spaghetti alle vongole だ。一般的には、 veraci (ボンゴレ・ビアンコ)の方が有名だが、地元の人におすすめを聞いたところ、満場一致で rossi...

梁 世柱
2023年9月22日
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