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再会 <31> 後継者
Le Casot des Mailloles, Blanc de Casot 2020.

梁 世柱
2023年2月18日


出会い <30> 宝の山
Torrazzetta, Pavarolo Metodo Classico Bianco Brut 2014. 海外のワイン産地を訪れると、隙あらば現地のワインバーに足を運ぶ。 日本でも馴染みのあるワインが、現地で安く、しかも古いヴィンテージが出ていたりしたら飛びついたりもするが、基本的には「知らないワイン」を飲むことの方が圧倒的に多い。 「日本では何でも手に入る」というのは、実際のところは少々大袈裟な表現で、ことワインに限っては、未輸入ワインは山のようにある。 もちろん、日本のインポーターは飛び抜けて優秀で、新しい情報にも敏感なのだから、注目を集めているようなワイナリーは、かなり高い可能性で輸入されている。しかし、それでも「拾いきれない」と言えるほど、この世界は広いのだ。 フランスと並ぶ世界的なワイン大国であるイタリアも、その例に漏れない。 バローロ、バルバレスコ、キャンティ・クラシコ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、ソアーヴェ、プロセッコ、フランチャコルタ、エトナ。 日本でも知名度が確実に上位に入るそれらのワインであっても、まだまだ未輸入ワ

梁 世柱
2023年2月12日


再会 <30> 先見の明
Moreau-Naudet, Chablis 1er Cru Montmains 2013. 地方に行く機会があれば、できる限りスケジュールに組み込んでいることが一つある。 それは、ワインバーに行くこと。 東京で散々飲んでいるのに、なぜわざわざ地方で?と思う方もいるかも知れないが、これにはれっきとした理由がある。 東京都内にある飲食店の総数は、一つの都市内に存在する数としては、実はぶっちぎりの世界一。 World Cities Culture Forumの2019年度の統計から主要都市を抜粋すると以下のようになる。 No.1 東京、日本(148,582店舗) No.2 ソウル、韓国(83,239店舗) No.4 パリ、フランス(44,896店舗) No.7 ニューヨーク、アメリカ(26,697店舗) No.9 ロンドン、イギリス(18,110店舗) となっている。 そう、東京の飲食店数は世界2位のソウルを約65,000店鋪上回り、4位パリの約3倍、7位ニューヨークの約5.5倍、9位ロンドンの約8倍となっているのだ。 この数字が何を意味しているのか

梁 世柱
2023年2月4日


出会い <29> 後悔先に立たず
Txomin Etxaniz, Getariako Txakolina 2021. ¥3,500 ワインと共に生きる中で、様々な後悔に駆られることは少なからずある。 テイスティング会場で疲れ果ててしまい、途中で脱落した時などは、決まって後で後悔するし、同伴者が喜んでくれるだろう、と心から思ってワインリストをまじまじと眺めてやっと決めた選んだワインが、全然好みから外れてしまった時などは、後悔を超えて、一応プロとしては穴にでも入りたい気分になる。 当然、飲み過ぎたことによる後悔は数知れず。 素晴らしいワインを飲んでいたはずなのに、飲み過ぎてディテールを曖昧にしか覚えてない、というときは、「楽しかったから良し!」と自己弁護はするものの、後悔がずりずりと後ろ髪を引っ張り続けてくるものだ。 そんなさまざまなワインにまつわる後悔の中で、多くの人にとって筆頭に挙がるのは、「もっと飲んでおけば、もっと買っておけば良かった。」だろう。 10年前に一念発起してドメーヌ・ルロワをたくさん買っていれば、今頃小金持ちになれていたかも知れないし、それ以上にもっと飲んでおけば

梁 世柱
2023年1月29日


再会 <29> ボルドーの不思議
Ch. Cos d’Estournel 1990. 駆け出しの頃は随分とボルドーを飲んだ。 左岸の五大シャトー、左岸のスーパー・セカンズ、右岸サン=テミリオンの二大シャトー、右岸ポムロールのカルトシャトー群などなども含め、ありとあらゆるボルドーを飲み漁っていた。 当時はインポーターの試飲会でこれらのワインが出ることも珍しくはなかったので、それなりに無料で体験することもできたのだ。 ただ、私はボルドーが好きだった訳では決してない。 いや、心から美味しいと思えるボルドーに巡り合った回数が、飲んだ本数を考えるとあまりにも少なかった、と書いた方が良いかも知れない。 2000年代以降のボルドーは、徐々に「早飲みもできる」ワインへとアップデートされていったが、それまではとにかく「抜栓タイミングが難しすぎる」ワインが多かった。

梁 世柱
2023年1月22日


出会い <28> その命は、永遠なのか
Julien Courtois, Ancestral 2002. ナチュラルワインは熟成するのか。 実に興味深いテーマだ。 答えを先に言うと、「ワイン次第」とはなってしまうのだが、これは慣行的に造られたクラシックなワインでも同じなので、ナチュラルワインだからどうと言う話でもない。 だが、極一部のナチュラルワインが、完全に常軌を逸したレベルの長期熟成能力をもつに至ることがあるのは、紛れもない事実である。 「常軌を逸した」とは、明らかに一般的な範疇から大いにはみ出していると言うことである。 大袈裟ではない。私は、何度も何度も体験してきたのだから。 偉大なブルゴーニュ、ボルドー、バローロ、リオハがもつ超長期熟成能力が比較にすらならないほどの、この世のものとは思えないような神秘に、私は確かに巡り合ってきた。

梁 世柱
2023年1月14日


再会 <28> ビオディナミとワインの因果関係
Hochkirch, Pinot Noir “Maximus” 2019. ¥6,800 Cause and Effect。小難しい日本語に訳すと、「因果関係」とでもなるだろうか。 ワインという「結果」と、そこに至るまでのプロセスである「要因」の間には、確かに因果関係が認められるケースが多い。ブルゴーニュに、バローロに、リオハに、ナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンに宿る「あの味」の後ろ側には、Cause and Effectが、まるで黄金の方程式が如く存在しているのだ。 しかし、この因果関係は、往々にして巨大な誤解の温床となっている。 その理由はただ一つ。本来、要因と結果の関係性は極めて複雑であるにも関わらず、我々の多くが、自らに都合の良い(理解しやすい)情報だけを切り取って、パズルのピースが全然足りていなくても、必死にその限定された因果関係を正当化しようとしてしまうからだ。 有名産地のワインだから美味しい。 有名生産者のワインだから美味しい。 高価なワインだから美味しい。 などというのは、その最たる例で、要因がそもそも時代遅れの権威主義的

梁 世柱
2023年1月8日


SommeTimes 2022年ベスト・パフォーマンス賞
2022年は、筆者の考え方が大きく変化した一年でもあった。 それは、ワインの教科書には必ず名前が載っているような、超有名ワインとの向き合い方だ。 私がワインを学び始めた頃、それらの「偉大」とされるワインの価格は、まだギリギリ手の届くものだった。当時学生の身分だった私にとって...

梁 世柱
2022年12月27日


出会い <27> 70’s Remake
Le P’tit Paysan, Old Vine Cabernet Sauvignon San Benito. ¥3,900 温故知新。 筆者が最も好きな熟語だ。 故きを温め、新しきを知る。 それは単純な過去回帰ではなく、過去のイデオロギーや成果を反芻し、深くリスペクトした上で、その先へと進みながら新たな道理を探求していくことだ。 つまり過去回帰はただの「レプリカ」だが、温故知新は「リメイク」であるということ。 人が現代人として自らの生きた証をたてるなら、当然リメイクの方が手っ取り早い。レプリカにどれだけ精魂込めても、膨大な過去作の大海に、いとも簡単に深く沈みこんでしまうからだ。 もちろん、レプリカそのものを批判している訳ではない。 ただ、レプリカがオリジナルよりも高く評価されることなど、ほとんど無いというだけのことだ。 この真理は、ワインの世界にも当てはまる。 そして、ワインの歴史を振り返ってみると、その時々の「最先端」は、ほぼ例外なく、何かしらの「リメイク」である、という事実が浮かび上がってくる。

梁 世柱
2022年12月25日


再会 <27> 王の帰還
Weingut Keller, Riesling “von der Fels” 2021. ¥9,000 嬉しさのあまり、筆者が30回は観たであろう映画のタイトルをそのままつけてしまったが、ドイツの真の王者であるヴァイングート・ケラーと、このワインにまつわるストーリーを表現するのに、これ以上のキャッチコピーは思い浮かばない。 もう長い間、日本市場から実質的に姿を消していたケラーは、我々に極めて重要な教訓を与えてくれた。 アップデートを怠ると、気づいた時には手遅れになっている、と。 今でこそ、ワイン業界関係者もワイン消費者も世代交代が進み、『ドイツワイン=甘い』、あるいは『やっぱりワインは辛口じゃないと!』(筆者は「辛口マッチョ信仰」と呼んでいる)といった古い考えは消滅寸前まで追いやられているが、この固定概念こそが、日本のワイン市場がドイツのトップワイン争奪戦に完全敗北した、最大の原因でもある。 それは、今から10年以上も前のこと。 当時すでに、明確に辛口路線へと力強く踏み切っていたドイツのリースリングは、ニューヨーク、ロンドンなどの最先端市場で、

梁 世柱
2022年12月18日


出会い <26> 脱フレンチコンプレックス
Cantina Riezo, Ciao Ciao Rosso “Aglianico” 2020. ¥2,600 長い間、不思議に思ってきたことがある。 19世紀後半、ヨーロッパ全土がフィロキセラ禍に襲われた際に、失職したフランス人ワインメーカーの多くがニューワールドへと進出した、という歴史があるとはいえ、それから100年以上経った今でも、なぜフランス系品種ばかりが「国際品種」となっているのか。 確かにフランス系国際品種は、栽培学上も、醸造学上も研究が進んでいるため、導入はしやすいだろう。 しかし、世界中に数多あるテロワールに、フランス系国際品種しか適合しない、と考えるのは流石にどうにも無理がある。 そして、このことが長年疑問視されてこなかった、と言う不思議もまたある。いや、正確に言うと、その他品種にチャレンジはしていたが、売上が悪かったので撤退した、と言うケースもかなりあるのだが、それにしても世界のワイン産業は、異常なほどフランス色の強い文化を受け入れ続けてきたのだ。

梁 世柱
2022年12月11日


再会 <26> Terroir in California
The Ojai Vineyard, Riesling “Kick on Ranch” 2017. ¥4,200 カリフォルニア・ワインと聞くと、どうも派手で煌びやかな印象をもっている人が多いだろう。 多くのワインが「ブランド化」され、ヨーロッパの銘醸ワインを凌ぐ超価格で取引されるワインも少なくない。筆者個人としては、そのような「技術の粋」にはすっかり興味を失って久しいが、より大きなカリフォルニアとして括れば、長大なFavorite Listが出来上がる程度には、強く心惹かれ続けている産地だ。 ちなみに、カリフォルニア州の面積は約424,000㎢。フランス(約643,800㎢)よりは小さいが、ドイツ(約357,600㎢)や日本(約377,900㎢)よりも大きい。 こんなに広ければ、多種多様なテロワールがあって至極当然。そして、テロワールが違えば好適品種もまた異なるというのは、ワイン界の不文律だ。

梁 世柱
2022年12月4日


出会い <25> 世界一のサンソー
Leeu Passant, Old Vines Lötter Cinsault 2018. (国内輸入無し) 南アフリカで様々なエリア、様々な葡萄品種のワインをテイスティングする中で、度々唸らされたのは、やはりLeeu Passantだった。 世界最高峰の醸造家であるアンドレア・マリヌーの抜きん出た才能が、夫であるクリス・マリヌーの卓越した栽培技術によって最大限に発揮される。 二人の名を冠したMullineuxブランドで、その圧倒的な実力は散々証明してきたが、スワートランドに特化したMullineuxとは別プロジェクトとなるLeeu Passantは、南アフリカ各地に極僅かながら残る非常に古い畑とマリヌー夫妻のコラボレーションという、反則的なワインだ。 南アフリカ特集記事の第一章でもLeeu Passantのシャルドネについて軽く触れたが、現地で私の心を強烈に掴んだのは、このワインだった。

梁 世柱
2022年11月27日


再会 <25> 二人の天才
Figli Luigi Oddero, Barolo “Vignarionda” 2015. ¥34,000

梁 世柱
2022年11月20日


出会い <24> クスィノマヴロの、もう一つの可能性
Kir-Yianni, Kali Riza 2019. ¥3,000(税抜)

梁 世柱
2022年11月13日


再会 <24> スペインのニューリーダー
Envinate, Palo Blanco 2020. ¥4,700 スペインにおいて、進化のタイミングはクラスター的に発生することが多い。 近代を振り返ってみても、「四人組」を中核としたプリオラート、ペスケラを中心としたリベラ・デル・デュエロ、ラウル・ペレスを中心としたガリシアなど、各地域がまるで順番待ちでもしているかのように異なるタイミングで、突然現れたスター生産者に引っ張られながら進化を果たしてきた。 しかし今スペインで起こっている進化は、これまでの例とは少し異なっている。 一つの生産者がムーヴメントを引っ張っている点では相変わらずだが、今回のスーパースターは、なんと三箇所の全く異なる地域で、同時多発的に進化を促しているのだ。 造り手の名は「エンヴィナーテ」。 2005年のデビューから瞬く間に、スペインワインのスタイルを大幅にアップデートした、新たな「四人組」だ。 大学の同窓であったロベルト・サンタナ、アルフォンソ・トレンテ、ラウラ・ラモス、ホセ・マルティネスは、ガリシア地方のリベイラ・サクラ、アルマンサ地方のフミーリャ、そしてカナリア諸島

梁 世柱
2022年11月6日


出会い <23> 140年後の奇跡
Alheit Vineyards, Lost and Found 2019. あのタイプの産地に行ったのは久しぶりだった。 真っ直ぐに伸びる道の左右に、遠くの小山にぶつかるまで広がる平坦な葡萄畑。 レッドブルでも飲んだかのように、異様に元気な葡萄樹。 寸分の狂いもなく、精緻に整えられた畝の配列。 ぴたりと姿を消す鳥たち。 一眼見ればすぐにわかる。そこは、超大量生産型の産地だった。 ブリードクルーフBleedekloofの総作付面積は13,000ha強。造り手の数は僅か30軒足らず。 平均値を出すと、なんと1ワイナリー辺り433haという凄い数字が出てくる。 日本的な表現をすると、1ワイナリー辺りの作付平均値が東京ドーム約92個分に相当するというのだから、その広さが具体的に想像できる人はほとんどいないだろう。 もちろん、あくまで平均値であるため、それよりも遥かに小さいワイナリーも、その逆もまた存在する。 ブリードクルーフにあるワイナリーだけを集めたテイスティングも、あの葡萄畑を通過した後だったからか、どうも最初はなかなかスイッチが入らず。...

梁 世柱
2022年10月28日


再会 <23> 天使の歌声か、悪魔の囁きか
Klein Constantia, Vin de Constance. ¥11,000 (2018年ヴィンテージ国内価格) ぎっしりと詰まった南アフリアでのスケジュール表を眺めていたら、心の昂りを抑えきれなくなった。 いつか必ず訪問したいと願ってきた、クライン・コンスタンシア。 その輝かしい名が、プリントアウトされたなんとも無機質な紙に、確かに刻まれていたのだ。 そもそも私は昔から歴史が好きなので、最古参のワイナリーとか、始まりの地といったパワーワードにはすこぶる弱い。 流石に、最古参のワイナリーだからワインも素晴らしいに違いない!などと言った安直な色眼鏡をかけたりはしないが、そういう場所には何かと特別な雰囲気が漂っているものだ。 南アフリカで最初の葡萄畑は、大航海時代の1652年に、オランダ東インド会社の現地法人代表だったヤン・ファン・リーベックによってケープ・タウンに開墾され、1659年には南アフリカで(記録上)最初のワインが造られた。そして、30年後の1685年に、クライン・コンスタンシアの大元となった「コンスタンシア・エステート」の歴史が

梁 世柱
2022年10月23日


出会い <22> 極甘口ワインの聖地、南アフリカ
Savage, Not tonight Josephine 2020. ¥6,000(375ml) 南アフリカでの旅では、数多くの古いヴィンテージをテイスティングする機会に恵まれた。歴史を少しずつ紐解いていくような体験は何者にも代え難かったが、一貫して納得せざるを得ないことが一つあった。 それは、南アフリカワインは、新しいヴィンテージの方が確実に品質が高い、ということだ。 その根源たる理由は11月からの南ア特集記事で詳細に書く予定だが、端的にいうと、アパルトヘイトの終焉がターニングポイントとなっているということになる。 アパルトヘイトが完全に終わったのは、ネルソン・マンデラが大統領となった1994年。そして、1994年以前の南アフリカは、国際社会から「総スカン」をくらっていたのだ。 分かりやすく表現するなら、現在のロシアや北朝鮮と同じような扱い(軍事的脅威故ではなく、人道的な意味で)を受けていたとも言える。 当然、40年近くもの間、苛烈な経済制裁が課されていたため、南アフリカワインが先進国の目に触れる機会は極めて限られていた。...

梁 世柱
2022年10月16日


再会 <22> 地球の裏側で再会
Capensis, “Fijnbosch 2019”. ¥27,000(国内予想価格) 3年に一度、南アフリカのケープワインで開催される巨大な南アフリカワイン展示会「Cape Wine」。 前回は2018年に開催されたが、新型コロナ禍の影響により延期となり、2022年10月に満を持しての開催となった。 乗り継ぎ待ちの時間次第では30時間ほどの旅程となる南アフリカは、日本からすれば文字通りの「地球の裏側」となるが、西ケープの壮大な山々と、ダイナミックにうねる丘陵地に拓かれた葡萄畑を見ると、疲れもどこかへ吹き飛んでしまう。 筆者にとっても、待ちに待った初めての南アフリカだったからか、アフリカ大陸に降り立つこと自体が初めてだったからか、肌にピリピリと感じる、どうにも慣れない鋭い視線(南アフリカにはアジア人は非常に少ない)からか、高揚感と共に、いつもよりは少し気が引き締まっていたように思う。 Cape Wine 2022は3日間に渡って開催されたが、巨大な会場と数多のワイナリー、そして膨大な数のワイン、会場を埋め尽くす人々の熱気に圧倒され、3日間のテイス

梁 世柱
2022年10月10日
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