<みむろ杉:木桶菩提酛 2021>
それは数年前のこと。筆者とは旧知の仲でもある、アメリカ在住のナチュラル・ワインを専門とするワインライター(以降、Aさんと表記する)が、Facebook上に、「ナチュラル・サケが素晴らしい!」という旨の投稿をした。
その投稿を目にした筆者は、即座に反論のコメントをした。
「ナチュラル・サケってなに?そんなの無いよ?」
筆者のコメントに返答してきたワインライターも、その主張を全く譲らず、炎上の気配が漂い始めたため、議論の場をMessengerでのグループチャットへと移行した。
名は伏せさせていただくが、このグループチャットには、とある高名な日本酒の造り手(以降、Mさんと表記する)も参加した。
Aさんの主張をまとめるとこうだ。
オーガニックで栽培した米を、添加物を一切使わずに醸造したサケがある。それはナチュラル・サケと呼べるものだ。
Aさんのその時点での主張を探っていくと、どうやらオーガニック米を、乳酸菌と酵母を添加せずに醸した日本酒のことを具体的には指しているようだった。つまり、有機米を使用し、生モトか山廃モトを酒母とし、培養酵母を添加していないタイプの日本酒は、ナチュラル・サケである、という主張だ。
オーガニック農法がナチュラルと呼ぶべきものの絶対的前提条件であることには、筆者もMさんも、無条件の賛同を示した。
しかし、その他の部分が問題だった。
Aさんの主張には、ナチュラル・ワインにおける「野生酵母」に対する考え方が根底にあった。ワイン側の話をすれば、オーガニック農法で守られた葡萄畑に棲む微生物(酵母など)が、葡萄に引っ付いて醸造所へ運ばれ、酵母添加などをせずに醸造すれば、その畑の個性を素直に表現することになる、という筋書きだ。
この考え方に対して、Mさんは2つの回答をした。
コメント