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ワインの王、王のワイン <ピエモンテ・ネッビオーロ特集:第二章>

過日、とあるワイン初心者の方から質問を受けた。ピエモンテ州の同じ造り手で、DOCGのワイン(Dogliani)よりも、DOCのワイン(Langhe Nebbiolo)の方が高いのは何故か、と。DOCGは最高位格付けでは無いのか、と。


まさに雨後の筍。次々と認定され続けるイタリアの最高位格付けたるDOCGは、既に意味消失して久しい。それは、ピエモンテ州に限ったとしても同様だ。Barbera d’Asti、Dolcetto di Dogliani Superiore、Erbaluce di Caluso、Ruche di Castagnole MonferratoといったDOCGは確かにどれも注目に値する素晴らしいワインだが、最高位格付けにふさわしい「品格」は無い。いや、品格の話をするのなら、最高位に座せるのはピエモンテ州ではネッビオーロしかそもそもあり得ない。そして、その頂点は当然、BaroloとBarbarescoだ。


本章では、ピエモンテ州の真に頂点たる2つのDOCGの中から、Baroloに焦点を当てて、細かく追っていく。各小自治体(コムーネ)に関しては、コムーネ内にある偉大なクリュと、そのクリュの代表例として、様々な造り手を紹介していく。


筆者はバローロという偉大な産地は、ブルゴーニュと同じように、全てのワインファンにとって、「憧れ」の対象となるべきと考えている。この地には、そうなるにふさわしいだけの、数多くの偉大なワイン、偉大な畑、そして偉大な造り手が集まっている。少々長文にはなってしまうが、筆者のありったけの情熱を注ぎ込んで、バローロの魅力を伝えていくので、少々お付き合い頂きたい。



Barolo DOCG

数度の改定は経たものの、現在の規定は2010年改定時のものがベースとなっている。

DOCG規定の主要部分は以下の通り。特に、葡萄畑の条件とクリュ名(M.G.A)記載時の規定が2010年に厳格化された。改定前に認定済みの畑に限っては、改定後の規定に該当していなくても問題ないとされた


*スタイル*

赤ワインのみ(ロッソ、リゼルヴァ)


*葡萄品種*

ネッビオーロ100%(認可クローンは、ミケ、ランピア、ロゼ


*熟成*

収穫翌年の1月1日から数えて、以下の通りに規定。

Barolo:38ヶ月の熟成、内18ヶ月は樽熟成

Barolo Riserva:62ヶ月の熟成、内18ヶ月は樽熟成


*葡萄畑*

土壌:粘土質、石灰質を中心としている。

立地:丘の斜面に位置する畑のみ。谷の低地、平坦な地、日当たりの悪い場所、湿度の高い場所は全て条件を満たさない。

高度:葡萄畑の標高は、最低170m、最高540mの範囲内。(Barbarescoよりも基本的に標高が高い)

方角:日当たりに特段優れていること。しかし、北向きの-45°~+45°(要するに真北を向いた畑)は除外する。

植樹:最低でも3,500本/ha

剪定:ギュイヨ


*最大収量と最低アルコール濃度*

クリュ名(M.G.A)記載の有無に関わらず、Barolo、Barolo Riserva共に以下の通り。

最大収量:8t/ha or 約56.0hl/ha

収穫時の最低潜在アルコール濃度:12.5%

リリース時の最低アルコール濃度:13.0%


*イタリアでは補糖が禁止されているにも関わらず、潜在アルコール濃度とリリース時の最低アルコール濃度に差異があるのは、最終的なアルコール濃度表示に±0.5%の誤差が認められているため。


クリュ名(M.G.A)を記載した場合、Barolo、Barolo Riserva共に以下の通り。

最大収量:7.2t/ha or 約50.4hl/ha

収穫時の最低潜在アルコール濃度:13.0%

リリース時の最低アルコール濃度:13.0%


また、クリュ名(M.G.A)を記載するワインが、6年以内の若木から造られる場合は、最大収量にさらに厳しい規制がかかり、以下の通りとなる。

3年目若木最大収量:4.3t/ha or 約30.1hl/ha

4年目若木最大収量:5.0t/ha or 約35.0hl/ha

5年目若木最大収量:5.8t/ha or 約40.6hl/ha

6年目若木最大収量:6.5t/ha or 約45.5hl/ha


また、特別に良好なヴィンテージに限って、最大20%の収量増が認められ、逆に極めて困難なヴィンテージの場合は、さらに厳しい収量制限が課される。



これらのDOCG規定は、余程熱心なワインファンか、ワインプロフェッショナルにしか必要ではない情報だが、現在Barolo DOCGは非常に厳しい規定のもとに品質管理がなされているということだけは、バローロを正しく知る上で、理解しておくべきだ。





Barolo Classico

小都市アルバから南西に約11km行くと、Barolo DOCGのエリアに入る。現在は11のコムーネ(小自治体)から形成され、総面積約2,000ha弱となっているが、徐々にエリアが拡大されてきた歴史がある。


1896年、イタリア農業省が制定したエリアは、以下の5つのコムーネだった。

Barolo(バローロ)

La Morra(ラ・モッラ)

Castiglione Falletto(カスティリオーネ・ファッレット)

Serralunga d’Alba(セッラルンガ・ダルバ)

Monforte d’Alba(モンフォルテ・ダルバ)


1909年、アルバ農業委員会がさらに以下の3つのコムーネを追加した。

Novello(ノヴェッロ)

Verduno(ヴェルドゥーノ)

・Grinzane Cavour(グリンツァーネ・カヴール)


1966年、Barolo DOCの設立に伴い、以下の3つのコムーネが追加された。

・Cherasco(ケラスコ)

・Diano d’Alba(ディアーノ・ダルバ)

・Roddi(ロッディ)


このように拡大してきたとはいえ、Barolo DOCGを理解するために知っておくべきコムーネは限られていると言える。本特集では、1896年に制定されたオリジナルの5つのコムーネに、1909年組のノヴェッロとヴェルドゥーノを加えた7つのコムーネを、非公式のバローロ・クラシコと呼称して、全Barolo DOCGの90%以上を生産しているこのゾーンを中心に、話を進めていく。裏を返せば、筆者がクラシコに含めなかった4つのコムーネに関しては、Barolo DOCGに含まれていること自体に疑問があるということだ。




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