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ヴィニュロンの一年 <2023年9月>
9月に入っても30度を超える真夏日が続いた長野市。 雨が非常に少なく、晴れ間の多い日が続いていたが、9月中旬から徐々に気温が下がり、雨の日が増え始め、天気が崩れ始めている。 ベト病やさび病、黒とう病 などが発生してしまっていたが、晴天少雨の天候にどうにか救われた状態だ。しかし、果実への被害は変わらずに発生している。 ブドウトリバの幼虫による食害被害 は未だ収まらず(ピークは過ぎた模様)、 鳥による食害、収穫前の降雨による裂果、裂果からの灰色カビ病 、更に 晩腐病 と、収穫が近づくにつれて厳しい状況に追いやられている。 昨年は9月の降雨量が非常に多かった為に、裂果が多く発生し、それによる病気の多発や水分過多による品質低下(糖度やPhに影響)などがあり苦労した。 今年は9月中旬まで雨が少なかったが、ここ数日の降雨で昨年に近い状況になってきてしまっている。収穫まで天候は一体どうなるのだろうか? 10月の 「収穫日」 を決定しなければならないが、果実の成熟具合を確認し(食味および糖度測定)、地元収穫ボランティア方達の都合を考慮した日時、および委託醸造先の

ソン ユガン
2023年9月28日


ヴィニュロンの一年 <2023年8月>
雨、雨、雨の 厳しい梅雨 が終わった途端、一転して 雨がほとんど降らない真夏日、猛暑日 が8月中旬まで続いた長野県。 7月末に発生した台風6号が発達しながら北上し、8月初旬に沖縄と九州に上陸し被害をもたらした。台風は進路を変えて北上した為に甲信越には影響がほとんどなかったが、被災された地および人たちの、一日も早い復旧復興を願うばかりである。 台風6号が通過した後も真夏日が続き、 日中気温が35度近くまで上がる日 も多く、地元の方達は 「昔の長野は30度になることもめったになかった。35度は異常だ。」 と話している。 気温35度の中で行う農作業は、想像以上にきつい。照りつける強烈な日差しと、猛烈な暑さの中で農作業を行っていると、徐々に息苦さを感じ呼吸が乱れ、体が悲鳴をあげる。無理をして作業を行えば「熱中症」になってしまう可能性がある為、なるべく直射日光を避ける服装や、こまめな水分補給などを心がけ対処している。 8月中旬以降も真夏日/猛暑日が続いているが、 雷雨やゲリラ豪雨も定期的に発生 しており、今後天候不順にならぬことを祈るばかりである。 【熱中

ソン ユガン
2023年8月29日


樽とワイン <後編>
後編となる本稿では、 David Ramey氏 が語った 「樽を使う本当の意味」 に、焦点を当てていく。 なお、今回の話は一人の醸造家による「意見」であるため、別の見解も当然存在していることはご理解いただきたい。 樽とはワインを入れるための容器である 私がDavidに対して最初に投げかけた質問は、 「なぜ樽を使うのか?」 というシンプルなものだった。 この質問を最初にもってきたのも、ちゃんとした意図があってのこと。 1980~2000年代をトップワインメーカーとして駆け抜けてきたDavidは、当時強大な影響力をもっていた米国のワイン評論家、ロバート・パーカーJr.の嗜好を、ワイン産業及びワイン市場が、部分的に「湾曲解釈」したことによって生まれた 「パーカリゼーション」時代 の当事者だ。 「More is More」 とでも言わんばかりの、濃厚で芳醇で、極端に凝縮したワインがもてはやされた時代を走ってきたDavidにとって、現代の 「Less is More」 な風潮はどう見えているのだろうか。 新樽100%が正義とされていた過去と、新樽比率が低い

梁 世柱
2023年8月5日


アメリカ西海岸の最前線 -Sashi Moorman-
『レトロなワインであり、昔のスタイルのワイン。』 アメリカ西海岸の最前線に立つ サシ・ムーアマン は、自身のワインをそう表現した。 カリフォルニアでは、 Domaine de la Côte、Sandhi、Piedrasassi 、そしてオレゴンでは Evening Land のワインメーカーとして活躍するサシは、筆者とも懇意にしている造り手だが、私はあえて彼のワインをこう表現しようと思う。 『現代の知見で精巧に再現された、アンティーク調のワイン。』 そう、確かにレトロで昔風だが、サシのワインは、 「今」の先頭を駆け抜けている のだ。 ワインにおけるスタイル上の世界的なトレンドは、常に 「揺り戻し」 を繰り返しながら前進してきた。 1990〜2010年代初頭 にかけての 約20年間 は、広義でいうと 「技術の時代」 と考えて差し支えないと思うが、今の最先端は、 1960~1980年代と第二次世界大戦以前のアプローチを混ぜ合わせた 上で、 最新の知見を随所に取り入れたスタイル が主流となりつつある。 そして、その最先端スタイルの根幹を成しているもの

梁 世柱
2023年6月5日


New York Wineレポート Part.2
Part.1 に続いて、本編はNY州産ワイン(Finger Lakes)のレヴューパートとなる。 今回の生産者来日では、 Long Island、Hudson River、Lake Erie からもワインが出展されていたが、 産地ごとの特徴を掴むには数が少なかった...

梁 世柱
2023年4月22日


New York Wineレポート Part.1
SommeTimesでは、たびたび NY州 のワインを取り上げてきた。 筆者がNYで長年ワイン修行をしていた縁、ではなく、単純にこの産地が 面白く、そして素晴らしい可能性を秘めている からだ。 現在NY州には、以下の 11つのAVA (American...

梁 世柱
2023年4月7日


ビオディナミのリアル
3月10日、オレゴンから Evening Land Vineyardsのサシ・ムーアマン (他関連ワイナリー: Sandhi Wines、Domaine de la Côte、Piedrasassi )をゲストに迎え、「ビオディナミを説く」と題したオンライン・セミナーを開催した。 信じるか信じないか、といったどうにも宗教的な見解に至りがちなビオディナミ農法だが、原理はさておき、結果でのみその是非を判断すべき、というのが私自身の考え方だ。 だからこそ、ゲストにサシ・ムーアマンを迎えた。 以前、カリフォルニアの特集記事を組んだ際にも、徹底した現実主義者のサシならではの正直な言葉に、随分と助けられたからだ。 本記事はサシとの対談をもとに、ビオディナミのリアルを(私自身の備忘録も兼ねて)掘り下げていく内容となる。 また、ビオディナミ農法そのもに関する説明は、以前寄稿した Adavanced Académie 15 と 16 をご参照いただきたい。 実際のセミナーでは、5つのテーマに分けてディスカッションを行ったが、内容が重複する部分もあったため、整理した

梁 世柱
2023年3月11日


南アフリカの冷涼気候産地 <後編>
前編 に続き、後編でも昨年11月28日に開催された、オンラインセミナー 【 キャシー・ヴァン・ジルMWと巡る壮大な南アフリカワインの世界 Episode.2~冷涼気候産地~ 】の内容をレポートしていく。 前編では、南アフリカの冷涼気候を形成する決定的な要素である「 標高...

梁 世柱
2023年1月7日


南アフリカの冷涼気候産地 <前編>
11月28日、南アフリカワイン協会(Wines of South Africa : WOSA )が、オンラインワインスクール大手 Vinoteras との共催で、 【 キャシー・ヴァン・ジルMWと巡る壮大な南アフリカワインの世界 Episode.2~冷涼気候産地~...

梁 世柱
2022年12月10日


ポルトガルの巨星
眠れる巨人と呼ばれてきたポルトガルは、もう眠ってなどいない。 それどころか、ヨーロッパで造られる「フランス品種系非フレンチワイン」に世界中がそっぽをむき出して以降、かつての大波に乗り損ねたポルトガルは、魅力的な地品種が数多く残る、 周回遅れのトップランナー とでも呼ぶべき存在になった。 とはいえ、フレンチ味に慣れすぎた市場がそう簡単に未知の味わいを評価する、ということもない。 面白いだけでは、偉大にはなれない。 ヨーロッパ中の地品種ワインが挑んだその高き壁の前には、無数の残骸が積み上げられている。 もちろん、優れたワイン=偉大なワイン、という時代でも無いのだから、進む方向は様々だ。 ヴィーニョ・ヴェルデの多種多様な表現、リスボンを中心とするナチュラル・ワインの盛り上がり、ドゥロやダオンの混植混醸、アレンテージョにおけるターリャ(アンフォラ)の復興、テロワールをより重視するようになったポルト。ポルトガル各地で様々な伝統が再発掘されつつ、「らしさ」もまた多様化しつつある中で、その全てをやってしまっているだけでなく、伝統品種ワインを「偉大なワイン」へと

梁 世柱
2022年12月8日


Coravinの有用性
抜栓したワインの品質をできるだけ長く維持するためのガジェットは、様々なフォーマットで、膨大な数のアイテムが開発されてきた。 それなりに有用なものもあれば、疑問点が多々あるもの、実に珍妙なものまで、そのヴァリエーションもまた非常に興味深く、ガジェット好きには興味の尽きないジャンルのアイテムとなっている。 そんな中で、まさに革命的なガジェットとして登場したのが、 Coravin だ。 すでにかなり認知されてはいるが、Coravinは、 ワインを抜栓しないままコルクに細い針を刺し、ガス注入と同時に針からボトル内のワインを吸い上げ、コルクの自然収縮を利用して針穴を閉じる、という仕組み になっている。 その効果は 「正しく使えば」 まさに絶大で、Coravinの発明によって、超高額ワインのグラス販売や、超多数のグラスワイン販売(200種類以上をグラスで提供という例もある)といった夢のようなプログラムを、非常に低いリスクで叶えることが可能になった。 また、家庭で保管してある大切なワインを少しずつ長期に渡って楽しむ、という凄いことまで出来てしまう。...

梁 世柱
2022年9月20日


南アフリカのパイオニアたち <後編>
前編ではクライン・コンスタンシアを中心にレポートしたが、ワイン産地としての豊かな歴史を誇る南アフリカには、まだまだパイオニアたちがいる。 確かにクライン・コンスタンシアは象徴的な存在ではあるが、それだけでは決して全容は見えない。多様なアイデンティティとスタイルが混在する在り...

梁 世柱
2022年5月18日


驚天動地の酒「新政」
本質を知ることを怠ると、自分にとって都合の良い形で理解してしまいがちだ。こういった 曲解 は、作品という結果を純然に楽しむだけの消費者であれば問題にはならないが、その価値を伝える役割と責任を担う「 伝え手 」にとっては、重大な過失に繋がり得る 深刻な怠慢 だ。 知らないなら語らない 。しかし、伝え手が本来守るべき約束事は、破られることが常。 私は新政を、いや、新生した新政を良く知らなかったから、語ることは避けてきた。しかし、他の有識者らしき人たちによって切り取られ、植え付けられてきた筆者の新生新政に対する断片的な認識は、その本質にいよいよ触れたとき、 何もかもが間違っていた と断じざるを得ないものだった。 筆者が21歳の時、ニューヨーク・マンハッタンで職を得た「酒蔵」という巨大な日本酒バーには、旧新政が常備されていた。刈穂、飛良泉、紅まんさく、雪の茅舎といった銘酒どころ秋田の佳酒が並ぶ中、旧新政は際立って地味な酒だった。売れ行きも芳しくなく、スタッフの誰かが抜栓しては他のスタッフに迷惑がられ、抜栓後の日数が経過し過ぎないギリギリのタイミングで急い

梁 世柱
2022年2月9日
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