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無知を騙す分かりやすさの罪
※注:日本の政治に絡んだ言及がありますが、本題はそちらではありませんので、あらかじめご理解いただけますと幸いです。 参政党なる政党には、さしたる興味をもっていなかったのだが、先日の参院選の結果を見て、少し調べてみることにした。

梁 世柱
7月29日


リスキー過ぎる生ワイン
ジャーナリストとして、深く首を傾げるワインと出会った時、そのことに言及すべきかどうかは、実に悩ましい問題だ。 失敗は誰にでもある。 どれだけ熟達した造り手でも、人間である以上は、時に間違った選択をしてしまうことも、当然あるのだ。 そう思っているからこそ、私は基本的には、静観という立場を取るようにしているのだが、事態の重さ次第では、やはり書くべきではないか、と思い立つこともある。 今回は、そのケースに該当すると思っていただきたい。

梁 世柱
7月19日


ワインの賞味期限
ワインには賞味期限が設定されていない。これは、酸性かつアルコール分を含むことから、「腐敗しにくい」ものと判断されているからだ。 確かに、腐敗するかどうかを基準とするのであれば、未開栓のワインは永遠の賞味期限をもつとも言えるのだが、ワインのポテンシャルを超えた経年熟成や、熱劣化など、ワインの味わいを決定的に損なってしまう要素は、実際には多い。 では、一般的な抜栓後のワインの賞味期限(法的な意味ではなく)はどれくらいなのだろうか。 スパークリングワインや軽い白ワイン、ロゼワインなどは1~2日。しっかりとした白ワインなら2~3日、オレンジワインなら3~4日。赤ワインなら3~5日。一部の高級ワインであれば一週間程度。

梁 世柱
5月26日


ネズミ臭ワインのリターン問題
先日、ふらっと立ち寄ったイタリアンレストランが、期待を遥かに超えた大当たりで驚いた。 最初に頼んだ乾杯用のフランチャコルタが抜群に美味しく、自家製の黒オリーブ入りフォカッチャも極上で、オーダーした料理の全てが最高に美味だった。 合間合間にグラスで頼んだワインも全体的に美味しかったのだが、実は退店する時、あまり良い気分にはなれなかった。 その理由は、グラスで頼んだオレンジワインの、ネズミ臭(俗称、マメ臭)だ。

梁 世柱
5月9日


テーマ・テイスティング
私は昔、音楽に明け暮れていた。 主な楽器はギター、専攻は作曲で、実はアメリカの音楽大学を卒業までしている。 今はもう、音楽は完全な趣味で、本業がワインとなっているのだが、私にとっては 音楽もワインも、似ている部分が多い 。 まず、どちらも 何かしらのインスピレーションを元に表現をする 、という点が共通している。 音楽なら感情や情景などがインスピレーションに、ワインならテイスティングそのものがインスピレーションとなる。

梁 世柱
4月27日


凍ったワインはどうなるのか
先日、不覚にもワインを凍らせてしまった。 夕食用にワインを急冷しようと冷凍庫に入れたのだが、繋ぎのビールを飲みながら食事を進め、TVを観ている間に、すっかりと冷凍庫に入れたボトルの存在を失念してしまったのだ。 気付いたのは翌日の朝。 時すでに遅しだった。 ワインは完全に凍り、氷結によって膨張した液体がコルクを押し上げ、激しい液漏れを起こしていた。 急冷のために冷凍庫を利用することは良くあったが、凍らせてしまったのは初めて。 かなりショックを受けたが、ここはジャーナリスト魂を発揮して、凍ったワインに何が起こるのかをレポートさせて頂こう。

梁 世柱
4月7日


トランプ関税が、日本のワイン市場をどう動かすのか?
先日、EUが米国産のウィスキーに対して50%の関税を課すとしたことに対する報復として、米国のドナルド・トランプ大統領が、EU産のワインに対して200%の関税を課すという、暴挙にも等しい報復関税策をほのめかした。 本来なら、世界の経済リーダたる米国は、世界経済に混沌ではなく調和をもたらす存在としてあるべきだと私は考えるのだが、アメリカ・ファーストを掲げ、自国の利のみを徹底的に追求する「タフ・ネゴシエーター」であるトランプ大統領は、そのようなリーダー像に興味も関心も一切無いのだろう。 「世界中がアメリカから金をむしり取っている。」などと、ご本人は随分な被害妄想を抱えているようなので、流石に200%関税のような異常事態にはならないと願いたいが、最悪の結果は十分にあり得るのだろう。 このような貿易戦争は、我々にとっても対岸の火事とは言い切れない。 米国は日本に対し、25%の自動車関税を課すことをすでに発表しているが、貿易戦争の中で、2019年の日米貿易協定が破棄され、再び米国産ワインに対する関税が上昇する(2019年以降、段階的に引き下げられていた)可能

梁 世柱
3月30日


トレンドと熟成
アメリカのワイン評論家であるロバート・パーカーJrが、世界中のワイン産業に巨大な影響力をもつに至った1990年代以降、繊細さよりもパワフルさを重視したワインが、続々と誕生した。 そのトレンドは、少なくとも2010年代前半までは続いていたのだが、2025年となった今、すっかりと軽快な味わいへと変貌したワインとの 垂直試飲 で、大きな違和感を感じることも増えてきた。 そう、ワインの性質が異なりすぎて、もはや垂直試飲として成立していない(ヴィンテージの差異や熟成の妙味が、強いワインメイキングによって覆い隠されている)のに加え、 パワーワインの飲み頃に関して、大いに疑問が浮かんでくる のだ。

梁 世柱
2月17日


国際品種とテロワール
1970~80年代。特に1976年の 「パリスの審判」 以降、伝統、新興問わず、世界各地のワイン産地に 巨大な変化 が訪れた。 カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、そしてシャルドネの大進出 だ。 これらの葡萄には、 ブレンドの中に15~20%程度含めるだけで、そのワインの味わいを数段階も「わかりやすい」ものとする特性 があった。 わかりやすさは、 圧倒的な売りやすさ にも繋がる。 歴史ある銘醸地ですら、その誘惑には抗えなかったのだから、新興産地がフランス系国際品種に支配されるのは必然だった。

梁 世柱
2月14日


「フェミニン」はNG
多様性を尊重 する、というのは 実に厄介なもの だ。 世界の集合意識 を無視し続けると、気付いた時には自分が、 今の時代にとって大切な価値観 から、どんどん ズレて いってしまう。 そして、その ズレ を「強いものイジメ」の現代社会は、どうやら決して許さないようだ。 政治家や著名人が、「ズレ」た失言をしてしまい、懸命に築き上げてきたキャリアを棒にふることすら、もはや珍しいことではなくなった。 この現象は、我々ワインに生きるものたちにとっても、決して対岸の火事ではない。 ワインの味わいや性質を表現する際に、 慣習的に用いられてきた言葉 の中には、 すでにズレてしまっているものが少なからず存在している からだ。

梁 世柱
2024年8月20日


テロワール表現のスイートスポット
今回の オーストリア訪問 では、世界各国から集結した複数名のMWやMSを含むトップワインプロフェッショナル達や、現地のトップ生産者達と、ひたすら一つのテーマに関する議論が繰り返された。 どのようなプロセスによって造られたワインが、客観的かつ論理的に観測可能な形で、テロワールを最も精密に表現しているのか 、というテーマだ。 私からこの議題をもちだしたこともあったが、多くは極々 自然発生的 に会話がこの議論へと繋がっていた。 つまり、今最先端でワインを追求しているプロフェッショナルたちの関心が、大いにこのテーマに対して集まっている、ということだ。

梁 世柱
2024年6月8日


2024年トレンド予想と課題
2023年の国内ワイン市場を襲った価格高騰は、2024年には更なる構造改革を市場に迫ってくる可能性が高い。 超高級ワイン(仮に、一本2万円以上としておく)の中でも、有名産地や有名銘柄に関しては、これまでとほぼ変わらず、高騰による売れ行きへの影響はミニマムに収まると考えられるが、それ以下の価格帯に関しては、難しくなるケースもさらに増えるだろう。

梁 世柱
2024年1月8日


テロワールの縦軸と横軸
ワインをより深く理解していく上で、 テロワール というコンセプトを無視することは、決してできない。 どれだけ技術が発展しても、その技術をいかに駆使しても、ワインの原料となる葡萄が 農作物 である以上、気候、土壌、地勢、ヴィンテージ、及びそれらの要素と葡萄品種の相性からの影響を、完全に避けることはできない。 『りんご』 を例にしよう。 りんごは名産地として知られている東北、中部地方はもちろんのこと、北海道でも沖縄でも栽培されている。 栽培に関する様々な知識、技術、そして必要であれば適切な農薬を用いれば、栽培そのものが絶対的に不可能となるケースは多くない。 ただし、 高品質なりんごが育つことと、単に育つことは異なる 。 この動かざる現実に対して発生するコンセプトこそが、 テロワール だ。

梁 世柱
2023年9月7日
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