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出会い <69> サントリーニ島の赤ワインとは
Gavalas, Mavrotragano 2020. ¥9,800 マイナー品種特有のクセの強さは、一度その世界に魅了されてしまうとなかなか抜け出せないほど楽しさに満ち溢れたものだが、特に絶滅危惧種ともなると、興味は尽きないものだ。 かつてはヨーロッパ大陸のあらゆる場所に、個性豊かな地品種が数えきれないほど多く根付いていたが、その多くはすでに絶滅、または絶滅に瀕している。 直接的とも言える原因は、ワインを真剣に学んだことがある人なら、一度はその名を耳にしたことがあるであろう、史上最悪の害虫 フィロキセラ だ。 フィロキセラ(和名:ブドウネアブラムシ)は、葡萄樹の根や葉に毒を注入してコブのようなものを生成することによって、葡萄樹の生育を著しく阻害し、最終的には枯死にいたらせてしまう昆虫の一種。 1845~1858年の間、当時は未知の病害であった「うどんこ病」への対応に追われ、すっかり疲弊していたヨーロッパのワイン産業を、フィロキセラが襲い始めたのは、1863年のこと。

梁 世柱
2024年10月6日


出会い <60> 魅惑のソレラ
Ktima Ligas, Spira NV. テロワールと葡萄品種の相性は、高品質ワインにとって最も重要な条件だが、唯一無二の絶対的なもの、というわけでもない。 例えテロワールが(最高の産地と比較して)劣っていても、スタイル的に品質が頭打ちになりやすいタイプのものでも、 創意工夫次第では限界突破を果たせる ことが、確かにある。 とはいえ、 非常に稀なケース ではあるため、工夫すれば良い、というシンプルなものでもないのが難しいところ。 今回出会ったワインは、ギリシャの Pella という産地で造られている。 おそらく、Pellaのことを知っている人は、ギリシャ在住者でもない限り、ほとんどいないと思う(私も同様)が、ギリシャ第二の都市であるテッサロニキから近く、 南隣は高名なNaoussa と書けば、少しはイメージが湧くだろうか。

梁 世柱
2024年5月19日


サントリーニの今 <ギリシャ・サントリーニ特集:後編>
サントリーニ特集後編は、各生産者を取り上げながら、今の サントリーニの多様な姿 に迫ってみたい。生産者の数も限られる小さな島ではあるが、それぞれが 独自のスタイルと哲学 をもったワインを作っているのが、この島の魅力である。 先ずはサントリーニという産地を語る上で、特に重要な造り手を挙げよと言われたらまず名前の上がる二人、 ハリディモス・ハツィダキスとパリス・シガラス から始めよう。 サントリーニのぶどう畑は 細かく細分化されて所有 されており、全体で概ね 1,200の栽培農家 がいる。全ての農家は1911年に設立された唯一の協同組合であるサント・ワインズに加盟しており、長らくこのワイナリーが島を代表する生産者でもあった。 他のギリシャの産地と同様に、少しずつ状況が変わってきたのは近年になってからである。彼らのようなスター生産者の登場がその大きなきっかけとなったのは論をまたない。 ハリディモス・ハツィダキス (コンスタンティーナ・ハツィダキス) 観光客で混雑するサントリーニ空港でUberを捕まえて約20分、一面クルーラ仕立ての畑を過ぎ、ワイナリーに

別府 岳則
2023年10月28日


アシルティコと小さな島 <ギリシャ・サントリーニ特集:前編>
首都のアテネからプロペラ機で約40分。エーゲ海と点在する島々をしばらく眺めていると、あっというまに飛行機は サントリーニ への着陸準備を始める。小さなプロペラ機は強い風に左右にふらふらと揺さぶられながらなんとか着陸し、タラップを降りると6月だというのに真夏のような強い日差しと、先ほど飛行機を揺さぶった強風が出迎えてくれた。 世界の白ワインの中でも、特にその 特異性と品質の高さ で知られているのが、このサントリーニの アシルティコ である。どのボトルを飲んでも共通するのは、その 強靭なミネラリティ 、そして 高い酸とアルコール 。この産地が ワールドクラスの白ワイン産地 であることに、今さら異論を挟む余地はほとんどないだろう。 クルーラ という世界でも例のない特殊な栽培方法や、ほとんどが 自根の樹齢100年を軽く越すようなブドウ樹 が、今でも多く残されていることなども相まって、サントリーニはギリシャを代表する高品質ワインの産地として世界で知られることとなった。また、アシルティコは今ではエーゲ海の島々を飛び出し、ギリシャの大陸側でも広く栽培されるよう

別府 岳則
2023年10月13日


レッツィーナの面白い可能性
皆さまこんにちは。 乃木坂しんの飛田です。 最近では周囲に独立された素晴らしいソムリエ、ソムリエールが増えてきており、その働き方の多様性を間近で見ながらますます面白い時代になってきたぞと可能性を感じつつ、自分においては危機感を感じる日々を過ごしております(苦笑)。 とは言いつつ、私自身も店舗以外のお仕事の機会を少しずついただいているので、様々なペアリングを考えていく際に、何かこう、「 困ったときのこれ1本 」となる複数のポジションをこなせる ユーティリティープレイヤー的存在 をいつも探しており、今日はそんなワインの中から1本をご紹介させていただきます。 そう、それはタイトルにも上げた「 レッツィーナ 」というワインです。 ソムリエの方はもちろん知っているのですが、一般の方には全く馴染みのないワインでしょうか。いや、ソムリエさんも教本で読んだだけで知らない、テイスティングしたこともない、という方ももしかしたら多いかもしれません。かくいう私もそうでした(笑)。 松脂を醸造時に添加して造る レッツィーナは、ギリシャにおける 伝統的ワイン...

SommeTimes特別寄稿
2023年5月19日


出会い <24> クスィノマヴロの、もう一つの可能性
Kir-Yianni, Kali Riza 2019. ¥3,000(税抜)

梁 世柱
2022年11月13日


再発見された銘醸地 <ギリシャ・ナウサ特集:導出編>
私は感覚的印象と論理的考察が入り混じって生じた 確かな疑念 を抱えて、ナウサの地に降り立った。 感覚的印象は、私がこれまで ナウサに素晴らしい可能性を感じつつも、実体験として心を激しく揺さぶるようなワインにはほとんど出会ってこなかった ことに起因する。 論理的考察は、 二つの疑問点 によって疑念を強める要因となってきた。 一つは、 「ナウサがもしギリシャの産地で無ければ」 、と言う疑問だ。 この場に私自身が嫌悪するブランド至上主義をもちこむ気は毛頭無い が、例えばナウサがもし、地品種ワインの世界的リーダーであるイタリアの産地だったとしたら、これほどの注目を集め得たのだろうか、と言う疑問がどうしても残っていた。別格のネッビオーロは横に置いておいたとしても、クスィノマヴロが果たしてサンジョヴェーゼ、アリアニコ、ネレッロ・マスカレーゼ、サグランティーノといった葡萄と横並びに語れるほどの資質をもっているのか。遠く離れた日本からでは、確信に至ることはできていなかった。ギリシャの偉大な赤ワインの産地はナウサしかない(事実とは異なるが)というイメージが先行した

梁 世柱
2022年10月31日


復活の起点 <ギリシャ・ナウサ特集:導入編>
アラビア半島を飛び立った私は、砂海に浮かぶ星々のように小さな ギザのピラミッド群 を眼下に収め、 荘厳なアクロポリス と 静 謐 なる霊峰オリンポス を横切りながら進んだ。 古代の神秘を巡るその道のりはまるで、けたたましいエンジン音を撒き散らす無機質な巨塊ではなく、優美に羽ばたく大鷲の背に乗っているかのように軽やかで、ずいぶんあっさりと、私は幻想の世界に没入していった。 そして、アレクサンドロス大王が治めた地に降り立った私は、強引に現実世界へと引き戻された。私が向かった先は、皆が思い浮かべるような、碧い海に囲まれた美しい島々ではない。そこは、激しく隆起する大地と混じり合うように拓かれた小村が点在する山の国、 マケドニア 。ギリシャでありギリシャではない、歴史的、文化的にも極めて独自性が強いこの地には、世界中が注目する一つの小産地、 ナウサ がある。 東から西へ 〜古代ワイン文明の中心地ギリシャ〜 ギリシャにおける最も原始的なワイン造りの痕跡は、 少なくとも紀元前4,000年、おそらくは4,500年ごろまで遡れる と考えられている。どちらにしても、

梁 世柱
2022年10月15日


ペロポネソスのダイナミズム <西ギリシャ特集>
ギリシャワインというと、近年、日本でもその存在感がじわりと出てきているのではないだろうか。今から10年ほど前、 サントリーニ島のアシリティコAssyrtiko が国際的に評価されたと同時に、その強烈な個性を印象付けた。 エーゲ海の島、海と空のブルーのコントラストに、くっきりと浮かび上がる真っ白い建物、強風からブドウを守るためにバスケット状に仕立てられたユニークなブドウ畑の風景、火山由来の極端に痩せた土地のテロワールが産み出す強靭な酸味と塩味を帯びた凝縮した果実味。 これらの要素は、視覚的効果を伴いながら、見知らぬ土地の固有品種から造られるワインにとって、少なくとも専門家の注目を集めるのに余りあるインパクトと付加価値を与えた。 それに続いたのが、対照的な 山のワイン、ナウサのクシノマヴロXinomavro だろうか。北イタリアのネッビオーロに特徴が似ているという点が、アピールポイントとなった。(ナウサのレポートは10月にアップデート予定) 世界的ワイン教育プログラムWSET®のLevel 3の教本では、これらに ネメアのアギオルギティコAgiorg

高橋 佳子
2022年9月12日


再会 <20> 孤島の伝説
Domaine Hatzidakis, Vinsanto 16, 2004. エーゲ海に浮かぶ孤島、 サントリーニ島 は、世界で最も美しい島の一つ。 そのことに異論を唱える人は少ないだろう。 火山島らしく隆起の激しいダイナミックな大地。断崖をくり抜きながらヒトが築き上げた純白の建築物と、ディープブルーに輝く海の鮮やかなコントラスト。そして、地表に置かれた籠のようにも見える古い葡萄樹の数々。 サントリーニ島は確かに、ポセイドンに愛されたとでも言いたくなるような、特別な場所だ。 世界中が喉から手が出るほど欲しがるような観光資源をもつサントリーニ島の主要産業は当然、観光業である。そして、高品質なレンズ豆の特産地であり、サントリーニ島特有のサントリン土を使用したセメント工業でも知られている。 我々のような「ワインにどっぷりと使った人たち」からすれば意外かも知れないが、サントリーニ島を全体として見ると、ワイン産業は「サントリーニ島ではワインも造ってる」というくらいの立ち位置となる。 実際に、 サントリーニ島の葡萄は次々と引き抜かれ、その上に高級ホテルや商業

梁 世柱
2022年9月11日


ミネラルって言葉、簡単に使ってない?
ソムリエあるある。テイスティングコメントで困ったときの「ミネラルの香りがします」。(特にワイン勉強したての初心者に多く見られる。)なんのこっちゃわからない香りをミネラルの香りと逃げるのはどうなんだろうと最近よく思う。そこで我々が何をミネラルと表現しているのか理解するために、...

SommeTimes特別寄稿
2022年7月8日


Why not drink Greek wine?
2021年は気候変動の波をグッと受けた厳しい年です。ギリシャでも、過去30年で最も深刻な熱波に見舞われ、各地で山火事が発生。被害を受けたワイナリーも多数でました。そして、何より引き続くコロナ化でワイナリーの状況は一層厳しさを増しています。...

SommeTimes特別寄稿
2022年1月6日


衝撃のブラインドテイスティング
ホテルニューオータニ博多の歴史あるメインダイニング、カステリアンルームでご活躍の千々和ソムリエは、世界各国の銘醸ワインだけでなく、カジュアルなワインや、日本ワインにも精通するトップソムリエです。幅広い視点から、そしてプライヴェートな体験も交えて展開されるコラムをお楽しみくだ...

SommeTimes特別寄稿
2021年11月11日


有為転変のミュスカ
世界で最も古いワイン産地の一つであるギリシャ共和国。 固有品種は300種を超えるとされ、一時衰退していたものの1980年代のEU加盟を皮切りに再び隆盛を取り戻し、大量生産されているものからナチュラルワインに至るまで、ラインナップは多岐に渡る国である。...

SommeTimes特別寄稿
2021年5月3日


香箱蟹とギリシャの出会い
師走のこの季節。何だか慌ただしく感じるこの時期は、一気に寒さが厳しくなり冬の魚達はしっかりと脂がのり、あれやこれやと美味しい季節となります。そして、日本料理において冬の味覚といえば…そう、蟹です!

SommeTimes特別寄稿
2020年12月25日
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