衝撃のブラインドテイスティング

ホテルニューオータニ博多の歴史あるメインダイニング、カステリアンルームでご活躍の千々和ソムリエは、世界各国の銘醸ワインだけでなく、カジュアルなワインや、日本ワインにも精通するトップソムリエです。幅広い視点から、そしてプライヴェートな体験も交えて展開されるコラムをお楽しみください。


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今回は、過去に行ったブラインドテイスティングで、最も衝撃を受けたワインを御紹介します。


このワインに出会ったのは、数年前に博多のソムリエ仲間が10名位集まったある会合での事。


私は、コンクールは別として、普段のブラインドテイスティングでは銘柄や葡萄品種等は気にせず、グラスの中のワインが、どのようなワインなのかをコメントするよう心がけていて、大人数でする時はいろんなソムリエのコメントや考え方を聞けるのですごく勉強になるし、新たな発見も良くあるのでブラインドテイスティングは率先して挑むタイプの人間だ。


ただ、この時に関しては先輩の悪ふざけによって余興として始まり、会の主催でもあった先輩の自信満々な表情から、デイリーワインではない…レアな生産者のワイン、もしくはなかなか手に入らない国のワイン…または選択肢にないような珍しい葡萄品種から造られたワインとかだろうか…という今思えば非常に痛い先入観をもってしまっていた。


会場の店内は、ブラインドテイスティングにはもってこいと言えるほど明るい照明で、先輩のどや顔と共にワインが登場。


トレイにのった状態でも淡い色調で透明感のあるラズベリーレッドとみて取れたので、色素の薄い葡萄か冷涼な山地のワインか…と思いを巡らせていた。


香りを嗅いだ瞬間にラズベリーやレッドチェリー等の赤系果実の香りが感じられ、クリーンで程よい濃縮感があり、空気に触れさせると香りが広がりグリーンペッパーやセージの香り、オークのニュアンスはそれほど強くなくエレガントな印象。


味わいは、しっかりとしたアタックにドライで酸味のバランスが良く、アルコールのボリューム感も中程度。適度なタンニンがありコクのある構成のミディアムボディ…余韻に赤い果実の香りがあり、更にスパイシーな香りも感じられる。調和が取れていて心地よいワイン。


といったコメントをしながら、

これは間違いなくピノ・ノワールだと直感で感じた。


グラスの中からワインが「さぁ!私の産地を当てなさい!」と言ってきているようで、

「この葡萄ってあれですよね?」

と私が探ると、他のソムリエも、

「問題は産地ですよね。国から行きます?北?南?」とコメントしてきたので、

ブルゴーニュなのか…?なんにせよ美味しいワインだ!

と思っていると先輩より、「そろそろ良い?」

と言われたので、

「ヨーロッパです。」と反則的な広範囲を答えると、

「ヨーロッパのどこ?」との返事が返ってきました。


やっぱりブルゴーニュか…にしては軽やかかな….分からん…と思っていると、やがてイランシー、ジュヴレ・シャンベルタン、シャンボール・ミュジニーなど銘醸地の名前が出てくるようになり、鉄っぽさある?紅茶のニュアンスは?と自問自答し、当たる自信は無かったが「コート・ドールかコート・ド・ニュイ」と答えて結果発表。



生産者:ティミオプロス

ワイン名:ナウサ・ジューヌ・ヴィーニュ・ド・クシノマヴロ

葡萄品種:クシノマヴロ100%

ワインタイプ:赤ワイン

生産国:ギリシャ

生産地:ナウサ

ヴィンテージ:2018

参考小売価格:1,700円(税抜)

インポーター:ラシーヌ


私のテイスティング能力の低さはおいといて、とにかくコストパフォーマンスの高さに驚愕。


ギリシャにこんなエレガントな素晴らしいワインがあるのか!」と叫んでいた。。。


恥ずかしながら当時の私にギリシャワインという選択肢は無かったが、今ではその先輩には感謝しかない。

それ以降はグラスワインとして使用するなど、その魅力に取り憑かれてしまった。


クシノマヴロ(黒い酸)は名前の通り、酸味をしっかりと感じ、穏やかなタンニンと豊かな果実味のある品種で、もっとタンニンが強く凝縮感のあるワインが多いと思っていたが、このワインは少しだけ若い全房を混ぜる事でフレッシュさとハーブ感を与えエレガントで爽やかなワインに仕上げている。


コルドン・ロワイヤ(広く普及している剪定方法の一つで、高品質型の剪定の一つとされる)で仕立てられ、ビオディナミ農法で自然酵母を使用と、随所に拘りがうかがえる。


中ぶりのバルーン型のグラスで香りを楽しみながら、これから博多では鍋が楽しまれる時期になるので、ぜひご家庭で、もつ鍋やすき焼き、寄せ鍋等と合わると美味しくいただけると思います。

ワイン好きな友人などを招いてブラインドで提供すると、盛り上がる事間違いなしの一本です!


<ソムリエプロフィール>

千々和 芳朗 / Chijiwa Yoshirou


ホテルニューオータニ博多 カステリアンルーム ソムリエ

1979年福岡生まれ。大学を卒業後グランド・ハイアット福岡に入社し、様々なレストランにてソムリエとして研鑽を積み、2019年7月より現職。

JSA日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ、ASI国際ソムリエ協会認定ディプロマ取得。

第一回ボルドー&ボルドーシュペリュールソムリエコンクールファイナリスト

第二回ボルドー&ボルドーシュペリュールソムリエコンクール準優勝


<ホテルニューオータニ博多 カステリアンルーム>

1978年に創業した歴史ある老舗ホテルのメインダイニング。長年にわたりストックされてきたワインや毎月開催されるワイン会やメーカーズディナーを求めて全国からワイン愛好家が集うフランス料理店。